今日は爻、交、効、較、校、学、覚、教という漢字の仲間を説明します。基本の漢字は『爻』、『交』です。意味は『交わる』、読み方は『コウ』が基本で、『キョウ』、『カク』と読むこともあります。元になる映像は違いますが、同じ趣旨の漢字です。小学生1年で学、校、2年生で交、教、4年生で覚、5年生で効を習い、中学校で肴、絞、較を習います。
『爻(コウ)』yáoという漢字は、千木(ちぎ・木が交差する)造りの建物の描いた象形文字(ショウケイモジ)です。漢字の部首は『爻』、意味は『交差する』です。『爻』という漢字自体は使われませんが、学、覚、教、肴という漢字のパーツとして活躍しています。

『交(コウ)』jiāoという漢字は人の足が交差する様子を描いた象形文字です。漢字の部首は『亠・なべぶた』です。漢字の意味は『交わる』、『交差する』、『手で渡す』、『代わり合う』です。
少し漢字の読み方の話をします。漢字の読み方は漢字を中国から輸入したときの読み方音読みと大和(やまと)言葉にあわせた訓読み(くんよみ)があります。音読みには、最初に輸入した中国江南地方の音である呉音(ゴオン)、遣唐使が持ち帰った長安の音である漢音(カンオン)、鎌倉仏教を通して入ってきた唐宋音(トウソウオン)、我が国で慣用的に使われる慣用音(カンヨウオン)があります。
呉音は『キョウ』といった小さい『ョ』が入って優しい感じがします。漢音は『コウ』で少し硬い感じがします。どちらの発音が残っているかは漢字によって違います。
音読みは漢音の『コウ』が普通で、呉音の『キョウ』は使いません。訓読みは、『交(まじ)わる』、『交(ま)ぜる』、『交(か)わす』、『交(か)う』です。

親しく交わることを親交(シンコウ)、交わり互い違いになることを交差(コウサ)、手渡すことを交付(コウフ)、行き交い通ることを交通(コウツウ)、他の人と代り合うことを交代(コウタイ)といいます。『交』は多くの使い方があり非常に重要な漢字です。
『交』は小学生2年で習う漢字 です。
学、覚、教に『爻』(コウ)がパーツとして使われている話をしましたが、現在の字体(常用漢字体)ではよくわかりません。旧字体の學を見てください。かんむりの部分に爻(コウ・交わる)が入っているのがわかります。
『學・学(ガク・カク)』xue、xiaoという漢字は、生徒と先生が勉強している映像を示した漢字です。漢字の足し算では、爻(交わる)+両手(両手)+冖(わかんむり・覆う)+子=学(先生と生徒の交わり・学ぶこと)です。漢字の部首は『子』です。


現在は常用漢字体である『学』を使うのが普通です。戦争に負ける前は、正字体(旧字体)である『學』が使われていました。
音読みは呉音の『ガク』が普通で、漢音の『カク』は使いません、訓読みは『学(まな)ぶ』です。学ぶ所を学校(ガッコウ)、学び習う(問う)ことを学問(ガクモン)、学問と芸術を学術(ガクジュツ)、学問に励むことを勉学(ベンガク)といいます。
『学』は小学校1年で習う漢字です。
非常に良い意味の漢字で『あきら』、『さと』、『さとる』、『さね』、『たか』、『のり』、『ひさ』、『まなぶ』、『みち』と名前に使われます。
『敎・教(キョウ)』jiaoは、生徒と先生が勉強している映像を先生の側から示した漢字です。漢字の足し算では、爻(交わる)+子(両手)+攴(ぼくづくり・動作)=敎(先生と生徒の交わり・教えること)です。漢字の部首は『攴・ぼくづくり』です。



動作を表す攵(ぼくづくり)は、篆文で攴(ボク)pū、楷書体では攵(ボク)pūのデザインをとります。
常用漢字体である『教』を使うのが普通です。戦争に負ける前は、正字体(旧字体)である『敎』が使われていました。
音読みは呉音の『キョウ』が普通で、漢音の『コウ』は使いません。訓読みは『教える(おしえる)』です。教育(キョウイク)、教授(キョウジュ)、仏教(ブッキョウ)、教典(キョウテン)、教養(キョウヨウ)の教です。
『教』は小学校2年で習う漢字です。
知識の受け渡しを意味する重要な漢字で、『おしえ』、『かず』、『かた』、『こ』、『たか』、『なり』、『のり』、『みち』、『ゆき』と名前に使われます。
似た漢字に『孝(コウ)』、『考(コウ)』がありますが、『孝』は老に子で親孝行の漢字、『考』は老に丂で良く考えるの漢字です。『考(コウ)』は『校』の漢字の影響を受けていると言われています。少し系列の違う漢字です。筆遣いのデザイン上一緒になっています。
『覚(カク)』jueは、『學』の子を見に替えたものです。漢字の足し算では、爻(交わる)+両手(両手)+かんむり(覆う)+見=覚(生徒と先生の交わりの中で見て覚える)です。漢字の部首は『見・みる』です。


意味は『見て覚える』のほかに、一瞬で見て覚える『認識する・悟(さと)る』、『目が覚(さ)める』の意味があります。
音読みは呉音・漢音ともに『カク』です。古い時代の読み方に、呉音『キョウ』、漢音『コウ』がありましたが、我が国では使いません。訓読みは『覚(おぼ)える』、『覚(さ)める』です。視覚(シカク)、自覚(ジカク)、覚悟(カクゴ)、発覚(ハッカク)、覚醒(カクセイ)、目覚(ざ)め、見覚(おぼ)えの覚です。
悟り、目覚めを表す良い意味の漢字で、『あき』、『あきら』、『さだ』、『さと』、『さとし』、『さとる』、『ただ』、『ただし』、『よし』と名前に使われます。
『覚』は小学校4年生で習う漢字http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/4-31ef.htmlです。
『肴(コウ)』yao、xiaoは、肉のご馳走を『爻』の字に重ねたものです。漢字の足し算では、爻(かさねる)+月(にくづき・肉)=肴(さかな)です。漢字の部首は『月・にくづき』です。

音読みは呉音が『ギョウ』、漢音が『コウ』、訓読みは『さかな』です。酒肴(シュコウ)とは、酒の肴のことです。『肴』は中学校で習う常用漢字です。
海で泳ぐ『さかな』は『魚』と書きますが、ご馳走になると『肴』と書いて構いません。大和言葉(やまとことば)と漢字(中国から輸入した)は、一対一に対応していないので、こういうことが良くあります。
『校(コウ・キョウ)』jiaoは、『爻』千木造りの建物そのものです。漢字の足し算では、木(きへん・木)+交(交わる)=校(木を交えて造る建物)です。漢字部首は『木』です。

意味は『千木造りの建物』、『勉強する建物・学び舎』、『付き合せて較べる』です。音読みは漢音の『コウ』が普通で、呉音の『キョウ』と読むことはありません。
『学び舎』関係の熟語には学校(ガッコウ)、校長(コウチョウ)、登校(トウコウ)などがあります。
『付き合せて較べる』関係の熟語には校正(コウセイ)、校閲(コウエツ)などがあります。特別な読み方に、校倉造り(あぜくらづくり)があります。東大寺の正倉院の建物に使われている建築法で『千木造りの建物』の一種です。『校』は小学校1年で習う漢字http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/1-faaf.htmlです。
『較(カク・コウ)』jiaoは、馬車の中の二本の手すりの事です。前に付いている手すりと『軾』と交わるので『較』と呼ばれます。漢字の足し算では、車(くるまへん・くるま)+交(交わる)=較(車の手すり。『校』にあてて比較する)です。
映像ではこんな感じです。

漢字の部首は『車・くるま』です。意味は『馬車の手すり』、『つきあわせて較べる』です。
『校』に『つきあわせて較べる』の意味がありますが、『校』は主に建物の意味に使われるようになりました。『つきあわせて較べる』の意味には『較』の漢字が使われるようになっています。馬車は使われなくなりつつあるので、馬車の手すりの意味で『較』を使うことはありません。
音読みは呉音が『キョウ』で、漢音の『コウ』、慣用音の『カク』を使います。訓読みは『較(くら)べる』です。比較(ヒカク)、較差(コウサ)、較正(コウセイ)の較です。『較』は中学校で習う常用漢字です。
『較(カク・コウ)』は二本の手すりを表しますが、人が二人並んだ『比(ヒ)』という漢字があります。こちらも『比(くら)べる』と読みます。

『比(ヒ)』について。詳しくは『漢字の覚え方 比』http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-7a4d.htmlをご覧ください。
『効(コウ)』xiaoは、力が交わって発揮されることです。漢字の足し算では、交(交わる)+力(ちから)=効(力が交わって効果がること。効き目)です。『金文』という古い古い字体では矢に攴(ぼくづくり・手の動作)で書かれていました。漢字の部首は『力』です。意味は『効果がある』です。

音読みは呉音の『ギョウ』は使わず、漢音の『コウ』を使います。訓読みは『効(き)く』です。効果(コウカ)、効力(コウリョク)、薬効(ヤッコウ)、有効(ユウコウ)、時効(ジコウ)、薬が効(き)くの効です。
良い意味の漢字で『いたる』、『かず』、『かた』、『すすむ』、『なり』、『のり』と名前に使われます。
友人が風をひいたので、良くなるようにイラストを手直ししました。治療中の皆様、薬に力があって良く効(き)きますようお祈り申し上げます。
『役に立つ』と『機能する』の意味には『利く』http://bit.ly/20hvSiR を使います。例えば、左利き(左が機能する)は『利く』です。
『効』は小学校5年で習う漢字http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/5-5492.html です。
『郊(コウ)』jiaoは、邑(むら)と邑(むら)が交わったところのことです。漢字の足し算では、交(まじわる)+阝(おおざと・邑)=郊(邑と邑が交わったところ)です。部首は『阝・おおざと』です。

音読みは呉音が『キョウ』で、漢音の『コウ』を使います。城から近い場所を近郊(キンコウ)、遠い場所を遠郊(エンコウ)といいます。緑豊かな少し離れた場所は郊外(コウガイ)といいます。
生活する場所を表す良い意味の漢字で、『おか』、『さと』、『ひろ』と名前に使われます。
『郊』は中学校で習う常用漢字です。
『絞(コウ)』jiaoは、絞める(しめる)ことです。漢字の足し算では、糸(いとへん・ロープ)+交(交わる)=絞(ロープを使って絞める)です。もともとの映像はロープを使って首を絞めることでした。部首は『糸』です。

音読みは漢音の『コウ』を使い、呉音の『キョウ』は使いません。訓読みは『絞(し)める』、『絞(し)まる』、『絞(しぼ)る』です。絞首刑(コウシュケイ)、カメラのレンズを絞(しぼ)る、首が絞(し)まる、絞(しぼ)り染めの絞です。
絞(しぼ)るは搾(しぼ)るとも書きます。『搾(サク)』は、搾(手で狭くする)イメージです、乍(サク)の『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 乍』http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-c6b9.htmlをご覧ください。
『絞』は中学校で習う常用漢字です。
『攪(カク・まぜる)』は(手に交えると見るで、交差するように混ぜる)という漢字です。『拌(ハン・まぜる)』(半分になるように混ぜる)と一緒に使って『攪拌(カクハン)』という熟語で使います。二字の熟語にしたほうが聞いたときに解りやすいので同じ意味の漢字は一緒に使われます。

交の仲間の漢字には、『狡(コウ・ずるい)』(人と交差するように逃げる狡い動物)、『鮫(コウ・さめ)』(交差させるように襲ってくる魚)などの漢字もあります。
『鮫(コウ・さめ)』jiaoは、体を左右に振って、交差させるように襲ってくる鮫を表す漢字です。漢字の足し算では、魚+交(交差させる)=鮫(体を交差させて襲う魚。鮫。さめ)です。漢字の部首は『魚・さかなへん』、意味は『鮫(さめ)』です。

音読みは呉音が『キョウ』、漢音が『コウ』、訓読みが『鮫(さめ)』です。鮫珠(コウシュ)というのは真珠(シンジュ)の別名です。真珠貝(シンジュガイ)のいる海に鮫(さめ)が棲んでいるからです。
鮫は魚を用いた漢字です。魚について詳しくは『部首索引 魚(うお・さかな)』http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-019b.html をご覧下さい。
『鮫』は常用漢字からは外れています。
『狡(コウ)』jiaoは、身を交わして、逃げる獣(けもの)を表す形声漢字です。漢字の足し算では、犭(獣)+交(交差させる)=狡(体を左右にくねらせて、逃げる獣。狡い。ずるい)です。漢字の部首は『犭・けものへん』、意味は『狡(ずる)い』です。

音読みは呉音が『キョウ』、漢音が『コウ』、訓読みが『狡(ずる)い』です。するり(猾・滑)と身を交わして狡い様子を狡滑(コウカツ)、ずるい兎(うさぎ)を狡兎(コウト)といいます。
『狡』は常用漢字からは外れています。
『餃(コウ)』jiaoは、餃子(ギョウザ)を表す形声漢字です。漢字の足し算では、食(ショクモツ)+交(交差させる)=餃(皮を交差させてつくる食べ物。餃子)です。漢字の部首は『食・しょくへん』、意味は『餃子(ギョウザ)』、『水飴』です。

音読みは呉音が『キョウ』、漢音が『コウ』、慣用音が『ギョウ』です。
『餃』は常用漢字からは外れています。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-3e78.html
『漢字の覚え方 爻・交』 交 学 教 覚 肴 校 較 郊 絞 鮫 狡
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.こうつう ( )の規則。
2.がっこう( )に行く。
3.きょういく( )の現場。
4.きょうよう ( )のある人。
5.朝の めざ( )め。
6.かくご( )を決める。
7.酒の さかな( )。
8.文章を こうせい( )する。 (機械の場合は較正を使います)
9.ひかく( )検討する。
10.事件が じこう( )になった。
11.薬のこうか ( )があった。
12.こうがい( )の住宅地。
13.カメラのレンズを しぼ( )る。
14.こうしゅけい( )は縛り首のこと。
15.こうかつ( )な手段。
解説です。交わるの関係は『交』、学ぶ関係は子を使って『学』、教えるも子と攵を使って『教』、覚える・覚めるは見を使って『覚』、ご馳走は月(肉)を足して『肴』、建物は木を足しては『校』、較べるは車を足して『較』、効き目は力を足して『効』、街中から離れると阝を足『郊』、絞めるは糸(ロープ)を足して『絞』、鮫(さめ)は魚を足して『鮫』、狡(ずる)いは犭(けものへん)を足して『狡』です。
解答です。交通、学校、教育、教養、目覚め、覚悟、肴、校正、比較、時効、効果、郊外、絞る、絞首刑、狡猾。