今日は『今(コン・キン)』jīnという漢字の『単語家族』について説明します。基本になる漢字は『今』です。蓋で押さえた瞬間を表しています。今、吟、貪、琴、衿、衾、含などがこの漢字の『単語家族』です。また『今』と近い『単語家族』に念、捻、唸、稔、金があります。
単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来、『単語家族』ごとにまとめて覚えると便利です。『今』に何を足すとどんな漢字になるのか漢字(楷書体)の構成を考えます。金は小学校1年、今は2年、念は4年で、吟、貪、琴、含、捻は中学校で習います。学校、学年に関係なく一緒に覚えましょう。
『今(コン・キン)』jīnは、蓋で押さえた瞬間を示す会意文字です。意味は『いま』、『ふくむ』です。漢字の足し算では、亼(シュウ・蓋)+一(存在)=今(蓋で押さえた瞬間。今)です。漢字の部首は『人・ひとやね』です。
今は『いま』の意味で使われ、『ふくむ』の意味では吟、含の漢字が使われます。
音読みは呉音が『コン』で、漢音が『キン』です。訓読みは『いま』です。古今(コキン・ココン)、今月(コンゲツ)、今上(キンジョウ)、今朝(けさ)、今日(コンニチ・きょう)、今年(ことし)の今です。今朝(けさ)、今日(きょう)、今年(ことし)常用漢字表の付表に掲載されている特別な読み方です。今井、今田、今川、今、今日子と人名・地名に多く使われる縁起の良い漢字です。沖縄では今帰仁(なきじん・いまき→なき)という地名があり有名です。
呉音が『コン』と読むとき、漢音では『キン』と読むことがあります。呉音と漢音については呉音と漢音
もご覧ください。
『今(コン・キン)』は小学校2年生で習う漢字です。
『吟(ギン)』yínは、口をふさいで出す歌声を示す形声文字です。『吟(ぎん)じる』様子を表す漢字です。漢字の足し算では、口+今(ふくむ)=吟(口をふさいで出す歌声。吟じる)です。漢字の部首は『口』、意味は『詩歌(シイカ)を読む・吟じる』、『うめく』の他に『舌で内容を確かめる』があります。
音読みは『ギン』で、訓読みは『吟(ぎん)じる』です。呻吟(シンギン)、詩吟(シギン)、吟味(ギンミ)、吟醸酒(ギンジョウシュ)の吟です。
『吟(ギン)』は中学校で習う常用漢字です。
『貪(ドン)』tānは、財貨を貯め込む様子を示す会意文字です。意味は『貪(むさぼ)る』です。漢字の足し算では、今(ふくむ)+貝(財貨)=貪(財貨を貯め込む。むさぼる)です。漢字の部首は『貝』です。
音読みは慣用音の『ドン』が普通で、漢音の『タン』と読む事もあります。訓読みは『貪(むさぼ)る』です。欲深い人を貪欲(ドンヨク)、賄賂をとる官僚を貪官(タンカン)といいます。
『貪(ドン)』は平成22年から新しく常用漢字に登録された漢字です。中学校で習います。
『琴(キン)』qínは、楽器の琴を示す形声文字です。漢字の足し算では、王×2(楽器のかたち)+今(含む)=琴(中に共鳴させる楽器。こと)です。漢字の部首は『玉・王(たま・オウ)』です。
音読みは漢音の『キン』げ普通で、呉音の『ゴン』と読むこともあります。訓読みは『こと』です。琴瑟(キンシツ)、琴線(キンセン)、木琴(モッキン)、和琴(ワゴン)、竪琴(たてごと)の琴です。
我が国では十三弦(ゲン)の箏(ソウ)を指します。箏(ソウ)については『漢字の覚え方
爪』 をご覧ください。
おおごとを『瑟(シツ)』といいます。弦(ゲン)がびっしり(必)張られたことで二十五弦、十五弦など琴にくらべて大型のものです。夫婦仲の良いことを琴瑟相和(キンシツアイワす)といいます。
『琴(キン)』は中学校で習う常用漢字です。
『衿(キン)』jīnは、着物の衿(えり)を示す形声文字です。漢字の足し算では、衤(ころもへん・衣服)+今(含む)=衿(衣で含む部分。衿)です。漢字の部首は『衤・ころもへん』です。
音読みは『キン』、訓読みは『えり』です。開衿(カイキン)、衿元(えりもと)の衿です。
『衿(キン)』は人名用漢字です。
『衾(キン)』qīnは、掛け布団を示す形声文字です。漢字の足し算では、今(含む)+衣(衣服・身にまとう)=衾(人を含む衣。掛け布団)です。布団のことで、建具(たてぐ)の襖(ふすま)とは別です。漢字の部首は『衣・ころも』です。
音読みは呉音の『コン』は使わず、漢音の『キン』を使います。訓読みは『ふすま』です。同衾(ドウキン)、夜衾(よぶすま)の衾です。
同衾(ドウキン)し 一線越えぬと 夏の嘘 風船
『衾(キン)』は中学校で習う常用漢字から外れています。
『含(ガン)』hánは、口の中に含む様子を示す形声文字です。漢字の足し算では、今(含む)+口(くち)=含(口の中に含む)です。部首は『口』、意味は『含む』です。
音読みは慣用音の『ガン』が普通で、呉音の『ゴン』、漢音の『カン』は使いません。訓読みは『含(ふく)む』、『含(ふく)める』です。含蓄(ガンチク)、包含(ホウガン)、含羞(ガンシュウ・はにかみ)の含です。
呉音が『ゴン』と読むとき、漢音では『カン』と読むことがあります。呉音と漢音については呉音と漢音
もご覧ください。
『含(ガン)』は中学校で習う常用漢字です。
ここで少し感じの変わった仲間を紹介します。今の仲間ですが、今よりも強いイメージを持つ『単語家族』念 捻 稔 唸 鯰です。基本の漢字は『念』です。強く心で思うのが念、手で強く捻(ひね)るのが捻、口で強く唸(うな)るのが唸になります。音も『ネン』niànと粘っこい感じがします。漢字文化の変化の中で、音が変わったものとおもわれます。
『念(ネン)』niànは、心の中で思う様子を表す漢字です。漢字の足し算では、今(含む)+心(心の動き)=念(心の中に強く思う。念じる)です。漢字の部首は『心・こころ』。漢字の意味は『念(ねん)じる』です。
音読みは呉音の『ネン』が普通で、漢音の『デン』は使いません。信念(シンネン)、無念(ムネン)、念願(ネンガン)、念仏(ネンブツ)、念力(ネンリキ)の念です。
呉音のナ行『ネン』は、漢音ではダ行『デン』と読むことがあります。呉音と漢音については『呉音と漢音』③もご覧ください。
『念(ネン)』は小学校4年生で習う漢字 です。
『捻(ネン)』niǎnは、捻る様子を示す漢字です。漢字の足し算では、扌(手)+念(強く含む)=捻(手の中に強く含む。包む。手でひねる)です。漢字の部首は『扌・てへん』、意味は『捻(ひね)る』です。
音読みは呉音の『ネン』が普通で、漢音の『デン』は使いません。訓読みは『捻(ひね)る』です。捻挫(ネンザ)、捻転(ネンテン)、捻出(ネンシュツ)の捻です。
『捻(ネン)』は平成22年度に追加された中学校で習う常用漢字です。
捻出(ネンシュツ)は拈出(ネンシュツ)とも書きます。拈(ネン)は、占 店 点 粘 拈 貼 帖 鮎など同じ漢字の仲間です。詳しくは『漢字の覚え方 占』をご覧ください。
『稔(ネン)』rěnは、穀物が稔る様子を示す漢字です。漢字の足し算では、禾(のぎへん・穀物)+念(強く含む)=稔(穀物を強く含む。稔る)です。部首は『禾・のぎへん』、意味は『みのる』です。
音読みは慣用音の『ネン』が普通で、呉音の『ニン』、漢音の『ジン』あまり使いません。訓読みは『稔(みの)る』です。豊かに稔ることを豊稔(ホウネン)といい、日本酒・地名にその名があります。穀物が熟すことを稔熟(ジンジュク)といいます。
呉音のナ行『ニン』は、漢音ではザ行『ジン』と読むことがあります。呉音と漢音については呉音と漢音 もご覧ください。
とても良い漢字なので、『みのる』、『みのり』、『とし』、『ゆたか』と人名に使われます。人名用漢字です。
『唸(ネン)』niànは、唸る様子を示す漢字です。漢字の足し算では、口(含む)+念(強く含む)=唸(口の中で強く含む。唸る)です。部首は『口』、意味は『唸(うな)る』です。
音読みは慣用音の『ネン』、呉音・漢音の『テン』があります。訓読みは『唸(うな)る』です。あまり使われない漢字です。
『唸(ネン)』は常用漢字から外れています。
『鯰(ネン)』niánは、『なまず』を表す漢字で、我が国で造られた国字です。漢字の足し算では、魚+念(強く思う)=鯰(強く思う魚。鯰。なまず)です。音読みは『ネン』、訓読みは『なまず』です。
『なまず』の漢字はもともと『鮎(ネン・なまず)』niánでしたが、我が国では、『鮎(あゆ)』として使用しているので、漢字の造字方法(発音が同じ)に基づいて、新しく漢字を造ったのです。
元の漢字『鮎(ネン・なまず)』niánは、魚+粘(粘る。ヌルヌルした)=鮎(ヌルヌルした魚。鮎。なまず)です。
我が国では、『鯰(ネン)』を『なまず』、『鮎(ネン)』を『あゆ』に使っています。中国と日本では生息する動植物に差があり、漢字も違う字を使用することが多いのです。
鮎(ネン・あゆ・縄張りを占める魚)は、占 店 点など同じ漢字の仲間です。詳しくは『漢字の覚え方 占』をご覧ください。
魚を使った漢字については部首索引
魚(うお・さかな) もご覧下さい。
今の仲間の漢字には、『金』もあります。古い字体をみると『今』が含まれています。音読みも呉音が『コン』、漢音が『キン』で『今』と同じです。『今』に含むの意味があり、砂金を含む土が漢字の成り立ちです。
『金(キン)』jīnは、土の中に含まれる砂金を表す形声文字です。漢字の足し算では、今(含む)+‥(粒)+土(つち)=金(土の中に含まれる砂金。金属)です。漢字の部首は『金・かね』、漢字の意味は『金属』、『お金』、『金曜日』です。
『説文解字』には「金は土中にある形に象(かたど)る。今の聲(こえ・セイ)」とあります。
音読みは呉音が『コン』、漢音が『キン』で、訓読みは『かね』、『かな』です。金魚(キンギョ)、砂金(サキン)、金剛(コンゴウ)、黄金(オウゴン・こがね)の金です。
金(キン)は小学校1年生で習う漢字です。
大和言葉では、黄色に輝く金を黄金(こがね)、白く輝く銀を銀(しろがね)、赤く輝く銅(あかがね)、黒く輝く徹を鉄(くろがね)と呼んでいました。
銀(ギン)は艮(コン)の『単語家族』、銅ドウ)は同(ドウ)の『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 艮』、『漢字の覚え方
同』 をご覧ください。
今の仲間の漢字には、『飲(イン)』は『陰(イン)』もあります。古い字体をみると『今』が含まれています。音読みも呉音が『オン』、漢音が『イン』で『今』に近いです。
『飲(イン)』yìnは、食物・水を飲み込むことを表す形声文字です。漢字の足し算では、食+欠(体をかがめる)=飲(体をかがめて食物・水を飲み込む。飲む。のむ)です。漢字の部首は『食・しょくへん』、意味は『飲む』です。
常用漢字体は、省略形の『飲』が登録されていますが、本字は今+酉(酒壺)+欠で、今お酒を飲んでいる様子を表します。
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音読みは呉音が『オン』、漢音が『イン』、訓読みは『飲(の)む』です。御酒を飲むことを飲酒(インシュ)、飲むことと食べることを飲食(インショク)、鯨のように大量に飲むことを鯨飲(ゲイイン)といいます。
飲(イン)は小学校3年生で習う漢字です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-0f8c.html
『漢字の覚え方 今』 今 吟 貪 衿 衾 琴 含 念 捻 稔 唸 金 飲
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.きょう( )の朝刊。
2.こんげつ( )の家賃。
3.こきんわかしゅう( )。
4.しぎん( )の会。
5.材料を ぎんみ( )する。
6.どんよく( )な性質。
7.心の きんせん( )にふれる。
8.わごん( )を弾く。
9.衣服の えり( )。
10.がんちく( )に富んだ言葉。
11.しんねん( )を貫く。
12.費用を ねんしゅつ( )する。
13.スキーで ねんざ( )する。
14.稲が豊かに みの( )る。
15.さきん( )が産出する。
16.おうごん( )の鷲像。
解答です。今は今、口に含んで味わうのが吟、お金を含むのが貪、音を含む楽器が琴、体を含む服の部分が衿、体を含む布団が衾、口に含むのが含、心に含む強い思いが念、手で強く含むのが捻、稲が含むのが稔、唸るは口を足して唸、‥(砂金)と土を足して金です。
今日、今月、古今和歌集、詩吟、吟味、貪欲、琴線、和琴、衿、襟、含蓄、信念、捻出、拈出、捻挫、稔る、実る、砂金、黄金。
追記 東北楽天ゴールデン(黄金)イーグルス優勝おめでとうございます。祝福いたします。平成25年9月26日 風船拝