今日は数字の一~十の漢字http://bit.ly/1Dj8euf について説明します。実際に算木(サンぎ)で数字を表しているのは、一~五までの数字で、六~十までは仮借(カシャ)と呼ばれる転用です。
百、千、万、億、兆、京の漢字についても説明します。
漢字の説明の前に、漢字の成り立ちの話をしましょう。最古の漢字辞書は後漢(西暦100年頃)の許慎(キョシン)の「説文解字(セツモンカイジ)」です。許慎はその中で漢字の成り立ちについて、四種類あるとしました。
①.物の形を象った(かたどった)『象形』(ショウケイ)、②.象形文字を基に点を打つことにより示された『指事』(シジ)、③.文字を組み合わせて造った『会意』(カイイ)、④.意味と音を示す文字を組み合わせた『形声』(ケイセイ)の四種です。『会意』と『形声』の文字は漢字の足し算で表す事が出来ます。
『一(イチ)』yīは、占ないに用いる算木(サンぎ)一本の映像を漢字にした指事文字(シジモジ)です。漢字の部首は『一・いち』、漢字の意味は『ひとつ』、『同じ』、『ある』です。漢字では、一から四までの数字を、算木を増やす映像で表現しています。
音読みは呉音が『イチ』、漢音が『イツ』。訓読みは『一(ひと)』、『一(ひとつ)』です。一日(イチニチ・ついたち)、一番(イチバン)、一致(イッチ)、一見(イッケン)、一人(ひとり)の一です。
詳しくは『漢字の覚え方 一』をご覧ください。
『二(ニ)』èrという漢字は、占ないに用いる算木(サンぎ)二本の映像を漢字にした指事文字(シジモジ)です。漢字の部首は『二・に』、漢字の意味は『ふたつ』です。漢字では、一から四までの数字を、算木を増やす映像で表現しています。
音読みは呉音が『ニ』・漢音が『ジ』です。訓読みは『ふた』、『ふたつ』です。二軍(ニグン)、二世(ニセイ)、二天(ニテン)、二日(ふつか)、二十日(はつか)、二十歳(はたち)、二人(ふたり)の二です。二の『単語家族』には弐、仁があります。
詳しくは『漢字の覚え方 二』をご覧下さい。
『三(サン)』sānという漢字は、占ないに用いる算木(サンぎ)三本の映像を漢字にした指事文字(シジモジ)です。漢字の部首は『一・いち』、漢字の意味は『みっつ』です。漢字では、一から四までの数字を、算木を増やす映像で表現しています。
音読みは呉音・漢音ともに『サン』です。訓読みは『み』、『みっつ』、『みっ』です。三軍(サングン)、三途(サンズ)、三巴(みつどもえ)、三下(サンした)、三河(みかわ)の三です。三味線(しゃみせん)は常用漢字の付表にある特別な読み方です。
三の『単語家族』には彡、参などがあります。詳しくは『漢字の覚え方 三』をご覧下さい。
『四(シ)』sìという漢字は、占ないに用いる算木(サンぎ)四本の映像を漢字にしたものです。古くは指事文字(シジモジ・線で表わす漢字)で亖と書いていましたが、デザインの変更があり四になりました。漢字の足し算では、□+八=四で、会意文字です。漢字の部首は『□・くにがまえ』、漢字の意味は『よっつ』です。
音読みは呉音・漢音ともに『シ』です。訓読みは『よ』、『よっつ』、『よっ』、『よん』です。四海(シカイ)、四天王(シテンノウ)、四番(よんばん)、四日(よっか)の四です。四の『単語家族』には泗、駟などがあります。詳しくは『漢字の覚え方 四』をご覧下さい。
『五(ゴ)』wǔは、占ないに用いる算木(サンぎ)を交差させる映像、容器の蓋(ふた)の映像を漢字にしたものです。意味は『交差する』、『五の』、『容器の蓋』です。一から四の数字は簡単に、算木を増やす映像で表現していました。五については、算木を並べるのではなく、交差させて五の数を示しました。ⅠⅡⅢⅣⅤのローマ数字に似ていますね。漢字の部首ですが『二』です。二と関係ありませんが、『五』という部首がないので、便宜上『二』に入っています。
音読みは呉音・漢音ともに『ゴ』です。訓読みは『いつ』、『いつつ』です。三々五々(サンサンゴゴ)、五月(ゴガツ・さつき)、五日(いつか)、五感(ゴカン)、五穀(ゴコク)の五です。五の仲間の漢字には伍(ゴ)、吾(ゴ)、悟(ゴ)があります。詳しくは『漢字の覚え方 五』をご覧下さい。
『六(ロク)』liùは、覆(おお)いをした穴、高い土盛りをした場所。神様を呼ぶための幕舎の象形文字です。数字の六を示すようになりました。このような漢字の用法を仮借(カシャ)といいます。六~九の漢字はもともと意味の違う漢字を借りて、数字を表すようになったものです。漢字の部首は『八』、意味は『六(ロク)』、『高い』です。『高い』の意味は『陸(リク)』liuに引き継がれているといわれています。
音読みは呉音が『ロク』、漢音が『リク』です。訓読みは『む』、『むつ』、『むっつ』、『むい』です。意味としては、『六(ロク)』。六日(むいか)、六衛府(リクエフ)、六法(ロッポウ・リクホウ)、六根(ロッコン)の六です。坴(リク)、陸(リク)、睦(ボク)が同じ漢字の仲間です。詳しくは『漢字の覚え方 六』をご覧ください。
『七(シチ)』qīは、骨を切る映像を漢字にしたものです。意味は『きる』です。『七(シチ)』が『切る』の意味に使われることはなく、数字の『七』を表す漢字として使われます。『切る』の意味は漢字の『切(セツ)』に引き継がれています。
数字の五・六・七・八・九・十は元々の別の意味がある漢字に、数字を後から当てはめたものです。 漢字のこのような用法を仮借(カシャ)と言います。『七』の漢字の部首は『一・いち』です。
音読みは呉音の『シチ』が普通で、漢音の『シツ』と読むこともあります。訓読みは『なな』、『ななつ』、『なの』です。七福神(シチフクジン)、七月(シチガツ)、七宝(シッポウ)、七重(ななえ)、七日(なのか)、七夕(シチセキ・たなばた)の七です。七夕(たなばた)は常用漢字の付表にある特別な読み方です。
切(セツ)、叱(シツ)も七の仲間の漢字です。詳しくは『漢字の覚え方 七』をご覧下さい。
七夕(たなばた)は棚(たな・天に架かる橋・神の供物を載せる棚)と機織(はたおり)からきていると言われています。
『八(ハチ・ハツ・や・やっつ・よう)』bāは、両手を八の字に開いた映像を示す指事文字です。象形文字ととる説もあります。漢字の部首は『八』、漢字の意味は『開く』、『分ける』、『分けられた二つ』です。やがて数字の八(ハチ)を数える漢字として使われるようになりました。
音読みは『ハチ』、『ハツ』、訓読みは『やっつ』、『や』、『よう』です。意味としては、『八(ハチ)』です。八百屋(やおや)、八幡(ハチマン)、八日(ようか)、八卦(ハッケ)の八です。
『八』が数字の八に限定されるようになったので、『分ける』は『分(フン)』・『半(ハン)』の漢字に引き継がれました。また漢字の八からカタカナのハが出来ました。
興味のある方は『漢字の覚え方 八・分』、『漢字の覚え方 八・半』をご覧ください。
『九(キュウ・ク)』jiǔは、手で示すいきどまりの状態、または龍の飛ぶ姿を漢字にした象形文字です。意味は『いきどまり』、『まがる』です。いきどまりの数字の『九』を表します。漢字の部首は『乙・おつ』です。
音読みは漢音の『キュウ』か、呉音の『ク』と読みます。訓読みは『ここのつ』、『ここの』です。九州(キュウシュウ)、九死(キュウシ)、九月(クガツ)、九重(キュウチョウ・ここのえ)、九日(ここのか)、九十九折(つづらおり)の九です。九十九折(つづらおり)は常用漢字の付表にある特別な読み方です。究(キュウ)、仇(キュウ)、鳩(キュウ)の漢字の仲間があります。
詳しくは『漢字の覚え方 九』をご覧ください。
『十(ジュウ)』shíは、十を表す指事文字です。意味は『十』、『まとまった』、『多くの』です。数を表す算木をまとめ、中央に横の算木を置いた形です。漢字の部首は『十』です。
音読みは呉音の『ジュウ』を使います。漢音の『シュウ』は使いません。慣用音の『ジッ』があります。訓読みは『とお』、『と』です。十二支(ジュウニシ)、十干(ジッカン)、十戒(ジッカイ)、二十日(はつか)、十八番(ジュウハチバン・おはこ)の十です。
十の慣用音『ジッ』の解説です。古代の日本では古代中国語の影響で『十・ジフ』と発音していました。フは日本語の促音便(ソクオンビン)が適用されます。カ行、サ行、タ行、ハ行の前で『フ』は、『ッ』と発音する促音便になります。十干(ジフカン→ジッカン)、十戒(ジフカイ→ジッカイ)、十手(ジフテ→ジッテ)、十得(ジフトク→ジットク)、十哲(ジフテツ→ジッテツ)などと読みます。
十の『単語家族』には什(ジュウ)、汁(ジュウ)があります。詳しくは『漢字の覚え方 十』をご覧ください。
『百(ヒャク)』bǎiは、白に一を足した漢字で、数字の百を表す形声文字です。既存の漢字に一を足して数を表す漢字に百・千があります。漢字の部首は『白・しろ』、意味は『百(ヒャク)』、『多くの』です。
音読みは呉音が『ヒャク』、漢音が『ハク』、訓読みは『もも』です。百回(ヒャッカイ)、百薬(ヒャクヤク)、百代(ヒャクダイ)、百合(ゆり)の百です。大変縁起の良い漢字で人名・地名に使われています。百合(ゆり)という漢字ですが、多くの鱗茎(リンケイ)が合わさっている根をもつため百合と書くようです。大和言葉(やまとことば)のゆりは揺れる(ゆれる)からといわれています。
非常に重要な漢字で、百地(ももち)、百里(ヒャクリ)、八百津(やおつ)、八百善(やおゼン)、百子(ももこ)、小百合(さゆり)など地名、人名、屋号に良く使われ、お目出度い漢字の一つです。
百は白と同じ『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 白』をご覧ください。
『千(セン)』qiānは、人の姿を示した漢字です。古い字体では人に一を足して千と書きます。千は1000という数詞を意味します。人がどんどん進むからといわれています。このような漢字の用法を仮借(カシャ)といます。人は人間の行為全般を示しますが、千、億のように数を示す漢字にも使われます。漢字の部首は『十・じゅう』です。
音読みは呉音・漢音ともに『セン』で、訓読みは『ち』です。千金(センキン)、千里(センリ)、千歳(センザイ・ちとせ)の千です。大変縁起の良い漢字で、千葉(ちば)、八千代(やちよ)、千代(ちよ)、千沙(ちさ)など人名・地名に使われています。
『万・萬(マン)』wànは、長く長く続く様子を描いた象形文字です。萬は大きなはさみをもったサソリを描いているといわれています。また万は卍の変形といわれ、こちらも長い・大きいを表します。漢字の部首は『一・いち』、意味は『千の十倍』、『非常に多い』です。
萬はサソリを表す漢字蠆(タイ)と非常に近い漢字です。萬が正字ですが、常用漢字体の万を使って下さい。
発音の話をします。中国では六朝時代のm音が、唐の時代にはb・w音に変化しました。『万(ma・マ→ba・waバ)』です。現在では『万』waの発音ですから、唐の時代の音が引き継がれています。一方我が国では、漢音(唐時代のb・w音)が主流ですが、呉音(六朝時代のm音)の変化した慣用音『マン』も使います。『万・マン』と読んだり『万・バン』と読んだりするのです。気をつけましょう。
音読みは呉音が『モン』、漢音が『バン』、慣用音が『マン』です。非常に長い年月・長寿を祝福すろ言葉を万歳(バンザイ)、多くの国を万国(バンコク)、どうしても助からない状況を万死(バンシ)、我が国最古の歌集を万葉集(マンヨウシュウ・マンニョウシュウ)といいます。
『億(オク)』yìは、イ(にんべん・人)に意を足し合わせたものです。漢字の足し算では、イ(にんべん・人)+意(心の動き・考え)=億(人の心の動き・考え)です。漢字の部首は『イ・にんべん』です。人が想像できる(意)最も大きな数字が億といわれています。
1000万の十倍を『億』と言います。億兆(オクチョウ)は大変多くの人で人民を表し、億劫(オックウ)は、もともと仏教の言葉でとてつもない長い時間を表し、現在では面倒を表します。『億』は小学校4年で習う漢字です。億は音や意と同じ『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 音』をご覧ください。
億は人の想像できる最も大きな数字ですが、その一万倍が兆です。人の想像の一万倍ですから、兆(きざ)しを表す兆という漢字が使われています。
『兆(チョウ)』zhàoという漢字は、占ないに使う亀の甲羅に出来る『ひび』を表した象形文字です。漢字の部首うは『儿・ひとあし』です。意味は『分かれる』・『離れる』です。『兆』そのものは占いの意味の『兆(きざ)し』、『まえぶれ』の意味に使われています。
音読みは呉音は『ジョウ』、漢音が『チョウ』、訓読みは『兆(きざ)し』です。春の兆し(きざし)、兆候(チョウコウ)、前兆(ゼンチョウ)、吉兆(キッチョウ)、兆民(チョウミン)の兆です。また数の単位として億の一万倍を兆といいます。縁起の良い漢字で『とき』、『よし』と読んで名前に使われます。『兆』は小学校4年生で習う漢字です。兆の『単語家族』には挑、跳、眺などがあります。詳しくは『漢字の覚え方 兆』をご覧ください。
兆にも上があって、兆の一万倍は京(ケイ・キョウ)です。億兆(オクチョウ)、兆民(チョウミン)に多くの人民の意味があり実際に数字の概念があります。京兆(ケイチョウ)は地名や都を指しますから、京(ケイ・キョウ)を実際の数字に使うことはないようです。
『京(ケイ)』jīngは、都市の高い建物の映像を漢字にした象形文字(ショウケイモジ)です。『高い』、『高い建物のある街』、『大きい』の意味があります。また大きいことから、数の大きい単位『兆』の万倍を『京(ケイ)』といいます。(中国では現在用いられていません)。
音読みは呉音が『キョウ』、漢音『ケイ』、唐宋音が『キン』です。訓読みは常用外の『みやこ』があります。漢字の部首は『亠・なべぶた』です。
京都(キョウト)、東京(トウキョウ)、京阪神(ケイハンシン)、京浜(ケイヒン)、上京(ジョウキョウ)、北京(ペキン)の京です。『京』は小学校2年生で習う漢字です。京の『単語家族』には鯨、涼などがあります。詳しくは『漢字の覚え方 京』lをご覧ください。
多くの数字の計算をする、スーパーコンピューターの名前が『京(ケイ)』です。
わが国では、万進法が採用されており、京の一万倍を垓(ガイ・世界果ての意味)、垓(ガイ)の一万倍を秭(シ・穀物の上の意味)という数字もあるようですが、実際に使われることはありません。
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
以上で、数字についての漢字の成り立ちの説明はおしまいです。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-9662.html
『漢字 一~十』