今日は『三(サン)』sānという漢字の『単語家族』について説明します。基本になる漢字は『三』です。音読みは『サン』、意味は『三(サン)』、『美しい』、『細かい』です。三、彡、杉、疹、診、珍、参、滲、惨などがこの漢字の『単語家族』です。
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『三』・『彡』に何を足すと杉、疹、診、珍、参、滲、惨になるのかを考えます。三は小学校で1年生で、参は3年生、杉、診、珍、惨は中学校で習います。一緒に覚えましょう。
『三(サン)』sānという漢字は、占(うら)ないに用いる算木(サンぎ)三本の映像を漢字にした指事文字(シジモジ)です。漢字の部首は『一・いち』、漢字の意味は『みっつ』です。漢字では、一から四までの数字を、算木を増やす映像で表現しています。
音読みは呉音・漢音ともに『サン』です。訓読みは『み』、『みっつ』、『みっ』です。三軍(サングン)、三途(サンズ)、三巴(みつどもえ)、三下(サンした)、三河(みかわ)の三です。三味線(しゃみせん)は常用漢字の付表にある特別な読み方です。
世界最古の漢字の字典 許慎 『説文解字』 建光元年(121年) には、天地人之道也。とあり、天と地と人を表すとされています。
三(サン)は小学校1年生で習う漢字です。
『彡(サン)』shānは、精密な美しい刺繍の模様を表す指事文字です。漢字の部首は『彡・さんづくり』、実際に彡の漢字が単独で使われることはありませんが、彩、杉、髟などの旁(つくり)に使われます。漢字の意味は『美しい』、『細かい』です。
音読みは呉音が『セン』、漢音が『サン』です。
彡(サン)は常用漢字(日常生活で使う義務教育で習う漢字)ではありません。
『杉(サン)』shānは、美しい杉(すぎ)の木を表わす形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、木+彡(美しい)=杉(美しい木。細かい葉の木。杉(すぎ))です。漢字の部首は『彡・さんづくり』、漢字の意味は『杉・すぎ』です。
音読みは呉音が『セン』、漢音が『サン』、訓読みは『杉(すぎ)』です。杉の間を通る爽(さわ)やかな風を杉風(サンプウ)、杉の木の板を杉板(すぎいた)といいます。
杉(サン・すぎ)は中学校で習う常用漢字です。
『診(シン)』zhěnは、細かいところを全部診(み)て判断する様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、言(言葉・判断する)+人(全部)+彡(細かい)=診(細かいところを全部診(み)る。診る)です。漢字の部首は『言・ごんべん』、漢字の意味は『細かいところを全部診(み)る』、『診(み)る』です。
『説文解字』には「視るなり」とあります。
音読みは呉音・漢音ともに『シン』、訓読みは『診(み)る』です。医者が患者の体を診て調べることを診察(シンサツ)、医者が患者の体を診て病気や症状の判断を下すことを診断(シンダン)、医師の診察を受けることを受診(ジュシン)といいいます。
診(シン)は中学校で習う常用漢字です。
漢字の世界では『みる』について、ニュアンスの違いがあります。
見(み)る 目立つ。目に止まる。現れる。見(ケン)http://bit.ly/ZCbIEZ
視(み)る 真っ直ぐ視る。注意して視る。視(シ)http://bit.ly/1Vps6QQ
看(み)る 手をかざして看る。よくみる。看(カン)http://bit.ly/1Z5TbdM
診(み)る すみずみまでみる。診(シン)http://bit.ly/1ygC0wK
察(み)る すみずみまでみる。察(サツ)http://bit.ly/1zwPD77
覧(み)る 高い所から下を覧る。覧(ラン)http://bit.ly/25ApacQ
臨(のぞ)む 高い所から下を臨む。臨(リン)http://bit.ly/1WvVxot
監(み)る 上から下のものをみて、みさだめる。監(カン)http://bit.ly/25ApacQ
観(み)る 多くのものを比べて観る。批評する。観(カン)http://bit.ly/11kw1b1
眺(なが)める 右に左にと広く見渡す。眺(チョウ)http://bit.ly/2t44mNH
望(のぞ)む 遠くの見えにくいものをもとめみる。望(ボウ)http://bit.ly/1v84fty
『疹(シン)』zhěnは、細かいぶつぶつが全身に出るの様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、疒(病気)+人(全部)+彡(細かい)=疹(細かいぶつぶつが全身に出る。発疹)です。漢字の部首は『疒・やまいだれ』、漢字の意味は『全身に出る細かいぶつぶつ』、『発疹(ホッシン)』です。
音読みは呉音・漢音ともに『シン』、訓読みは『診(み)る』です。体に細かいぶつぶつが出ることを発疹(ホッシン)、こすって(麻)しまう発疹を麻疹(マシン・はしか)、蕁麻(いらくさ)で痒くなるようなアレルギー性の発疹を蕁麻疹(ジンマシン)といいます。
疹(シン)は常用漢字から外れています。
『珍(チン)』zhēnは、肌理(きめ)細かく美しい宝石を表す形声文字です。漢字の足し算では、王(玉・宝石)+人(すみずみまで)+彡(細かい)=珍(肌理(きめ)細かく美しい宝石。転じてめったにない。珍しい)です。漢字の部首は『王・おう、ぎょくへん』、漢字の意味は『美しい宝石』、『めったにない』、『普通と変わっている』です。
音読みは呉音・漢音ともに『チン』、訓読みは『珍(めずら)しい』です。めったにない客を珍客(チンキャク)、珍しいものとして大切にすることを珍重(チンチョウ)、珍しくて風変わりなことを珍奇(チンキ)といいます。
珍(チン・めずらしい)は中学校で習う常用漢字です。
『参(サン)』cān、shēnは、かんざしをした女性が仲間に加わる様子の象形文字です。漢字の部首は『ム』、意味は『仲間に入る』、『そこへ行く』、『照らし合わせる』と『そろわない』です。
音読みは呉音・漢音ともに『サン』、訓読みは『参(まい)る』です。『そろわない』の意味では、呉音・漢音ともに『シン』と読みます。集まりに加わることを参加(サンカ)、他人の意見などを照らし合わせて自分の考えの手掛かりにすることを参考(サンコウ)、墓に参ることを墓参(はかまい)り、そろわないことを参差(シンシ)といいます。
なお、人蔘(ニンジン)は人参(ニンジン)と書くのが普通です。
参(サン)は小学校4年生で習う漢字です。
人蔘(ニンジン)については『漢字の覚え方 参』をご覧ください。
『滲(シン)』shènは、滲(し)み出る様子の形声文字です。漢字の足し算では、氵(水)+参(参る)=滲(水がやってくる。滲み出る。しみでる。にじむ)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、意味は『滲(し)みる』、『滲(にじ)む』です。
音読みは呉音・漢音ともに『シン』、訓読みは『滲(し)みる』、『滲(にじ)む』です。液体が滲(し)み出ることを滲出(シンシュツ)、水が滲(し)みとおることを滲透(シントウ)といいます。
滲出(シンシュツ・にじみ出る)、滲透(シントウ)は常用漢字の浸を使って浸出(シンシュツ・溶け出る)、浸透(シントウ)と書くことが多いです。滲(にじ)むと浸(ひた)すでは多少ニュアンスが違います。滲は常用漢字から外れています。
浸(シン)jinについては『漢字の覚え方 帚』をご覧ください。
『惨(サン)』cǎnは、心に滲(し)みる痛ましい・惨(みじ)めな様子の形声文字です。漢字の足し算では、忄(心の動き)+参(滲みる)=惨(心に滲(し)みいる痛ましい・惨(みじ)めな様子。惨め。みじめ)です。漢字の部首は『忄・りっしんべん』、意味は『惨(みじ)め』、『むごい』です。
音読みは呉音・漢音ともに『サン』、慣用音が『ザン』、訓読みは『惨(みじ)め』です。悲しくいたましいことを悲惨(ヒサン)、凄(すご)くむごたらしいことを凄惨(セイサン)、ひどい負け方を惨敗(ザンパイ)といいます。
惨(サン)は中学校で習う常用漢字です。
少し変わった漢字に津(シン)jīnがあります。彡(うるおい)が含まれている字体があり、彡(サン)shānと似ている読み方をします。
『津(シン)』jīnは、筆(ふで)でしめらせた潤(うるおい)いを表す形声文字です。漢字の足し算では、氵(水)+聿(ふで)+彡(良い感じ)=津(筆でしめらせた潤い。転じて潤いある安らかな水辺。津。つ)です。漢字の部首は『氵・水』、漢字の意味は『筆でしめらせた潤い』、『安らかな港』、『渡し場』、『潤う』です。
常用漢字体(普段使う漢字の字体)は津(シン)ですが、良い感じと『シン』という音(オン)を表す彡(シン)が入った字体があります。
音読みは呉音・漢音ともに『シン』、訓読みが『つ』です。人体を流れる液体を津液(シンエキ)、興味があとからあとから湧いてくる様子を興味津津(キョウミシンシン)、全国の港や浜・国中至る所を津津浦浦(つつうらうら)、港を襲う大波を津波(つなみ)といいます。
安らかな漢字で『す』、『ず』、『つ』、『づ』と地名・人名に広く使われます。
津(シン)は中学校で習う常用漢字です。
津(シン)は聿(イツ)を使った漢字です。詳しくは『漢字の覚え方 聿』をご覧ください。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-adea.html
『漢字の覚え方 三』 三 杉 診 珍 参
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.さんがつみっか( )。
2.みかわ( )の国。
3.さんず( )の川。
4.すぎいた( )。
5.健康 しんだん( )。
6.しんさつ( )券。
7.はしか( )。
8.ちんきゃく( )の到来。
9.さんか( )表明。
10.しんしゅつ( )性中耳炎
11.国民に広く しんとう( )する。
12.ひさん( )な状態。
13.ざんぱい( )を喫する。
解説です。基本の漢字は三、彡、杉は木(きへん)を足して杉、診(み)るは言(ごんべん)を足して診、疹(体のつぶつぶ)は疒(やまいだれ)を足して疹、珍(めずら)しいは王(おうへん)を足して珍、参(まい)るは厽(かんざしの象形)を足して参、滲(にじ)むは氵(さんずい)を足して滲、惨(みじ)めは忄(りっしんべん)を足して惨です。
解答です。三月三日、三河、三途、杉板、診断、診察、麻疹、珍客、参加、滲出、浸透、滲透、悲惨、惨敗。
数字について掲載ページです。
『一~十』については『小学校で習う漢字 一~十』http://bit.ly/1Dj8euf をご覧ください。
『十』については『漢字の覚え方 十』http://bit.ly/1vHBPIs をご覧ください。
『九』については『漢字の覚え方 九』http://bit.ly/1stAJfE をご覧ください。
『八』については『漢字の覚え方 八』http://bit.ly/1oh7Q82 をご覧ください。
『七』については『漢字の覚え方 七』http://bit.ly/1syuLKo をご覧ください。
『六』については『漢字の覚え方 六』http://bit.ly/1nuIhQf をご覧ください。
『五』については『漢字の覚え方 五』http://bit.ly/1Njlajg をご覧ください。
『四』については『漢字の覚え方 四』http://bit.ly/1MD9Txx をご覧ください。
『三』については『漢字の覚え方 三』http://bit.ly/1ygC0wK をご覧ください。
『二』については『漢字の覚え方 ニ』http://bit.ly/1zexxch をご覧ください。
『一』については『漢字の覚え方 一』http://bit.ly/1NtgKrn をご覧ください。