今日は『九(キュウ・ク)』jiǔの漢字の仲間ついて説明します。究、軌、仇、鳩、旭、尻は同じ仲間の漢字、染は九に近い漢字です。基本漢字は『九』です。読み(音符)は『キュウ』か『キ』です。意味は『いきどまり』、『まがる』です。
旭、尻は音が違いますがここでは便宜上まとめて扱います。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて漢字の足し算でを覚えると便利です。『九』に何を足したら究、軌、仇、鳩、旭、尻になるか考えます。九は小学校1年、究は3年生で習う漢字、軌は中学校で習う常用漢字です。学校に関係なく一緒に覚えましょう。
『九(キュウ・ク)』jiǔは、手で示すいきどまりの状態(藤堂)、または龍の飛ぶ姿(白川)を漢字にした象形文字と言われています。意味は『いきどまり』、『まがる』です。いきどまりの数字の『九』を表します。漢字の部首は『乙・おつ』です。
音読みは漢音の『キュウ』か、呉音の『ク』と読みます。訓読みは『ここのつ』、『ここの』です。九州(キュウシュウ)、九死(キュウシ)、九月(クガツ)、九重(キュウチョウ・ここのえ)、九日(ここのか)、九十九折(つづらおり)の九です。九十九折(つづらおり)は常用漢字の付表にある特別な読み方です。
『九(キュウ・ク)』は小学校1年生で習う漢字です。
『究(キュウ)』jiūは、つきあたりまで究明する様子を漢字にした形声文字です。漢字の足し算では穴+九(いきどまり)=究(穴の中を行き止まりまで探す。究める)です。部首は『穴・あなかんむり』、意味は『究める』です。
『穴』は穴の意味の他に『穴を探る』という漢字の部分に使われます。探(タン)、深(シン)『漢字の覚え方
深・探』も穴に関係した漢字です。『究』は穴の奥まで探して究めることです。
音読みは漢音の『キュウ』が普通で、呉音の『ク』は使いません。訓読みは『究める(きわめる)』です。研究(ケンキュウ)、追究(ツイキュウ)、探究(タンキュウ)、究極(キュウキョク)の究です。
『究(キュウ)』は小学校3年生で習う漢字です。
『軌(キ)』guǐは車の轍(わだち)の曲がっている様子を漢字にした形声文字です。漢字の足し算では、車+九(まがる)=軌(馬車の通った跡)です。部首は『車』、意味は『跡(あと)』、『道筋』です。
音読みは『キ』です。通った車の車輪の跡、人生の足跡を軌跡(キセキ)、車や天体の道筋を軌道(キドウ)、常に踏み外してはならない道筋を常軌(ジョウキ)といいます。
『軌(キ)』は中学校で習う常用漢字です。
同じあとでも足跡(あしあと・ソクセキ)の映像を漢字にしたものが『跡(セキ)』です。漢字の覚え方 亦・夜で紹介します。
『仇(キュウ)』qiú、chóuは、仇(かたき・あだ)を示した形声文字です。漢字の足し算では、イ(人間)+九(いきどまり)=仇(いきどまりの人。かたき)です。部首は『イ・にんべん』、意味は『かたき』です。
音読みは漢音の『キュウ』で、呉音の『グ』は使う事がありません。訓読みは常用外の『かたき・あだ』があります。かたきの事を仇敵(キュウテキ)、仇を討つのを仇討ち(あだうち)といいます。
かたきは『敵』の字を使うのが普通です。詳しくは『漢字の覚え方
啇』をご覧ください。
『仇(キュウ)』は中学校で習う常用漢字から外れています。
『旭(キョク)』xùは、隠れていた太陽が一気に昇る様子を示した形声文字です。漢字の足し算では、日(太陽)+九(いきどまり)=旭(いきどまりの太陽が一気に昇る。旭。あさひ)です。部首は『日・にち』、意味は『旭(あさひ)』です。
音読みは漢音の『キョク』で、呉音の『コク』は使う事がありません。訓読みは『旭(あさひ)』です。朝日(あさひ)http://bit.ly/1pmTzld を旭日(キョクジツ)といい、北海道中央部にある都市に旭川市(あさひかわし)があります。
非常に縁起の良い漢字で『あき』、『あきら』、『あさ』、『あさひ』、『てる』と名前に使われます。
『旭(キョク)』は人名用漢字です。
『鳩(キュウ・はと)』jiūは、鳥(とり)の鳩(はと)を表す形声文字です。漢字の足し算では、九(いきどまり)+鳥(とり)=鳩(いきどまって、集まった鳥です。群れをつくる鳥。鳩。はと)です。漢字の部首は『鳥・とり』、漢字の意味は『鳩(はと)』です。
音読みは呉音が『ク』、漢音が『キュウ』で、訓読みが『鳩(はと)』です。鳩が首を集める様に人が相談する様子を鳩首会談(キュウシュカイダン)、鳲鳩(シキュウ・かっこう)が自分で巣を作らないで、他の鳥の巣に卵を産むことを鳩居(キュウキョ)といいます。この場合の鳲鳩(シキュウ)とは鳩(はと)ではなく郭公(かっこう)のことです。
『鳩(キュウ・はと)』は人名用漢字です。
『尻(コウ・しり)』kāoは、尻(しり)を表す形声文字です。漢字の足し算では、尸(しり)+九(いきどまり)=尻(人体のいきどまりの場所。尻。しり)です。漢字の部首は『尸・しかばね』、漢字の意味は『尻(しり)』です。我が国では『物事の後始末』、『計算の締め』の意味にも使います。
音読みは呉音が・漢音ともに『コウ』で、訓読みが『尻(しり)』です。尻をすえてうずくまることを尻坐(コウザ)、尻にある尾(お)を尻尾(しっぽ)、帳簿の最後の計算を帳尻(チョウじり)といいます。
『尻(コウ・しり)』は中学校で習う常用漢字です。
腰かけに坐(すわ)る部分は臀部(デンブ)といいます。
九(キュウ)を使った漢字に染(セン)があります。
『染(セン)』rǎnは、箱の中の液体に糸を浸して染める様子を表す会意文字です。漢字の足し算では、氵(水・液体)+杂・朹・匭(木製の箱)=染(箱の中の液体に糸を浸して染める。そめる)です(藤堂)。漢字の部首は『木・き』、漢字の意味は『染(そ)める』、『染(し)み込む』、『影響を受ける』です。
『設文解字』には木は草木染の材料、九は染色する回数とあります。
音読みは呉音が『ネン』、漢音が『ゼン』、慣用音が『セン』、訓読みは『染(そ)める』、『染(し)み』です。糸などに色素をしみ込ませて着色することを染色(センショク)、有毒成分の影響で汚れることを汚染(オセン)、病原体が体内に侵入すること・影響を受け、それに染まることを感染(カンセン)といいます。
染(セン)は小学校6年生で習う漢字です。
九(キュウ)に近い漢字に丸(ガン)があります。
『丸(ガン)』wánは、人が丸くかがむ様子を表す会意文字です。指事文字とする説もあります。漢字の足し算では、人+乁(曲線)=丸(人が背中を丸める。丸い)です。漢字の部首は『ヽ・てん』
、漢字の意味は『丸(まる)める』、『丸い(まるい)』です。
音読みは呉音が『ガン』、漢音が『カン』、訓読みは『丸(まる)』、『丸い(まるい)』です。丸薬(ガンヤク)、弾丸(ダンガン)、丸顔(まるがお)、日の丸(ひのまる)の丸です。
丸(ガン)は小学校2年生で習う漢字です。
数字について掲載ページです。
『一~十』については『小学校で習う漢字 一~十』http://bit.ly/1Dj8euf をご覧ください。
『十』については『漢字の覚え方 十』http://bit.ly/1vHBPIs をご覧ください。
『九』については『漢字の覚え方 九』http://bit.ly/1stAJfE をご覧ください。
『八』については『漢字の覚え方 八』http://bit.ly/1oh7Q82 をご覧ください。
『七』については『漢字の覚え方 七』http://bit.ly/1syuLKo をご覧ください。
『六』については『漢字の覚え方 六』http://bit.ly/1nuIhQf をご覧ください。
『五』については『漢字の覚え方 五』http://bit.ly/1Njlajg をご覧ください。
『四』については『漢字の覚え方 四』http://bit.ly/1MD9Txx をご覧ください。
『三』については『漢字の覚え方 三』http://bit.ly/1ygC0wK をご覧ください。
『二』については『漢字の覚え方 ニ』http://bit.ly/1zexxch をご覧ください。
『一』については『漢字の覚え方 一』http://bit.ly/1NtgKrn をご覧ください。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-34a9.html
『漢字の覚え方 九』 九 究 軌 仇 鳩 旭 尻 丸 染
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.きゅうしゅう( )地区の天気予報。
2.相撲の ここのえ( )部屋。
3.つづら( )折。
4.けんきゅう( )の成果。
5.技を きわ( )める。
6.事件を ついきゅう( )する。
7.火星の きどう( )。
8.車輪のあとを きせき( )という。
9.きゅうてき( )に出会う。
10.赤穂浪士のあだ( )討ち。
11.きゅうしゅ( )会談。
12.ちょうじり( )合わせ。
解説です。数字の九は九、つきあたり究めるには穴を足して究、車の道筋は軌、つきあたりの敵は仇、頭をつきあわせる鳥が鳩、体のいきどまりが尻です。
解答です。九州、九重、九十九、研究、究める、追究、軌道、軌跡、仇敵、仇討ち、鳩首。
少し漢字の成り立ちの話をしましょう。最古の辞書は後漢(西暦100年頃)の許慎(キョシン)の「説文解字(セツモンカイジ)」です。許慎はその中で漢字について六種の原理を説明しています。これを『六書(リクショ)』といいます。六種類のうち四種類は漢字の成り立ちについて、残りの二種類は漢字の使用法についてしるしています。
彼は、漢字(=文字)の成り立ちを、物の形に象(かたど)った『象形』(ショウケイ)、象形文字を基に点を打つことにより示された『指事』(シジ)、文字を組み合わせた『会意』(カイイ)、意味と音・声を示す文字を組み合わせた『形声』(ケイセイ)の四種類に分類しました。
『九』は行き詰りの手や龍を象(かたど)った文字なので『象形文字』です。『究』は穴に九、『仇』はイに九、『鳩』は九に鳥、『軌』は車に九、『旭』は九に日、『尻』は尸に九を組み合わせた文字です。『九(キュウ)』の音・声(音符)含みますから『形声文字』です。
漢字の殆どはこの『形声文字』です。漢字が足し算であるというのは、この漢字の成り立ちに関わっています。『形声文字』は音・声(音読み)が同じなので、音・声(音読み)を基にして漢字の足し算で、漢字を覚えようとしているわけです。