漢字の覚え方 或

　今日は『或（ワク）』huòという漢字の仲間について説明します。基本になる漢字は『或』です。音読みは『ワク』、『コク』、『イキ』、意味は『区域』、『ある区域』、『ある』です。或、惑、域、國、摑などがこの漢字の仲間です。漢字学者の藤堂はこのような漢字の仲間を『単語家族』と表現していました。

『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『或』に何を足すと惑、域、國になるのかを考えます。国（國）は小学校2年生で習う漢字 、域は小学校6年生で習う漢字 、惑は中学生 で習う常用漢字です。漢字の足し算で一緒に覚えましょう。

　『或（ワク）』huòは、武器を持って守る一定の区域を表わす会意文字です。漢字の足し算では、一＋口(範囲）＋一（囲む）＋戈（武器）＝或（武器を持って守る一定の区域。或。ある）です。漢字の部首は『戈・ほこがまえ』、意味は『ある区域』、『ある』です。

原義は『区域』ですが、『ある区域』から『ある』を指す指示代名詞に使われることが多く、原義の『区域』は『域（イキ）』という別の漢字を使います。

音読みは呉音が『ワク』、漢音が『コク』、訓読みは『或（あ）る』です。或人（あるひと）、或者（あるもの）の或です。

『或（ワク・ある）』は中学校で習う常用漢字から外れています。

　『域（イキ）』yùは、武器を持って守る一定の区域・土地を表わす会意文字です。漢字の足し算では、土（土地）＋或（武器を持って守る一定の区域・土地）＝域（武器を持って守る一定の区域・土地。区画。境）です。漢字の部首は『土・つちへん』、意味は『区域』、『境』、『区画』です。

音読みは呉音が『イキ』、漢音が『ヨク』、訓読みは常用外に『域（さかい）』があります。くぎられた一定範囲の場所を区域（クイキ）、一定範囲の土地を地域（チイキ）、神聖な地域・触れてならない問題を聖域（セイイキ）といいます。

非常に大事な漢字で『くに』、『むら』と人名に使われます。

『域（イキ・さかい)』は小学校6年生で習う漢字です。

　『惑（ワク）』huòは、心が狭い或（ワク）にとらわれている様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、或（狭いワク）＋心＝惑（心が狭い或（ワク）にとらわれている。惑う。まどう）です。漢字の部首は『心・こころ』、意味は『惑（まど）う』、『困る』です。

音読みは呉音が『ワク』、漢音が『コク』、訓読みは『惑（まど）う』、『惑（まど）わせる』です。ある人の行為で他の人が困ることを迷惑（メイワク）、太陽の周りを回る星を惑星（ワクセイ）、本当かどうか疑うことを疑惑（ギワク）といいます。

『惑（ワク・まどう）』は中学生 で習う常用漢字です。

　『国・國（コク）』guóは、境界で囲んだ国・國を表す形声文字です。漢字の足し算では囗（囲み）＋或（戈・くいで囲んだ領域）＝国（境界で囲んだ国）です。漢字の部首は『囗・くにがまえ』、意味は『領地』、『国家』、『郷里』です。正字は國ですが、常用漢字に登録されている国を使って下さい。異体字に四方を囲む圀があります。

音読みは呉音・漢音ともに『コク』、訓読みは『国（くに）』です。国家（コッカ）、国語（コクゴ）、国土（コクド）、国宝（コクホウ）、帰国（キコク）の国です。

国（コク・くに）は 小学校2年生で習う漢字です。

　『掴・摑（カク）』guóは、手の中へ握り取るを表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、扌（て）＋国（四角で囲んだ領域）＝掴・摑（手の中へ握り取る。掴む。つかむ）です。漢字の部首は『扌・てへん』、意味は『掴（つか）む』です。正字は摑ですが、掴が好んで使われます。

音読みは呉音が『キャク』、漢音が『カク』、訓読みは『摑（つか）む』です。

摑（つか）むは攫（つか）むhttp://bit.ly/1m7WN07 とも書きます。

『摑（カク・つかむ）』は人名用漢字です。

http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-aa52.html

『漢字の覚え方 或』　或　域　惑　國　摑

参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。

少し練習しましょう。

1.ある（　）人。

2.ちいき（　　　）の問題。

3.せいいき（　　　）なき関税撤廃。

4.めいわく（　　　）を掛けない。

5.ぎわく（　　　）の目で見る。

6.わくせい（　　　）探査機。

7.こっか（　　　）試験。

8.江戸時代の さこく（　　　）。

9.こくご（　　　）と算数。

解説です。基本の漢字は或、区域は土を足して域、惑（まど）うは心を足して惑、國・国（くに）は□（くにがまえ）を足して國です。

解答です。或る、或、地域、聖域、迷惑、疑惑、惑星、国家、鎖国、国語。

漢字の覚え方 夗

　今日は『夗（エン）』yuànという漢字を基本にした漢字の仲間について説明します。基本になる漢字は『夗』です。二人の人が丸くなっている様子を表しています。宛、苑、怨、腕、椀、碗などがこの漢字の仲間です。漢字学者の藤堂はこのような漢字の仲間を『単語家族』と表現していました。

『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『夗』に何を足すと宛、苑、怨、腕、椀、碗になるのか考えます。宛、怨、は中学生で習うようになった常用漢字 、腕は中学生 で習う常用漢字です。中学何年生 で習うかは教科書によって異なります。苑は人名用漢字です。漢字の足し算で、一緒に覚えましょう。

　『夗（エン）』yuànは、人が丸くなっている様子を表す象形文字です。漢字の意味は『曲がる』、『丸い』です。『夗』は単独で使う事はありませんが、苑、怨、腕、椀、碗の音符（漢字の音読みと意味を表すパーツ）として重要です。

　『苑（エン）』yuànは、丸い囲いの植物園を表す形声文字です。漢字の足し算では、艹（植物）＋夗（丸い囲い）＝苑（丸い囲いの植物園。庭園）です。

『園（エン）』yuán とほとんど同じ意味の漢字です。漢字の部首は『艹・くさかんむり』、漢字の意味は『庭園』です。　

音読みは呉音が『オン』、漢音が『エン』です。訓読みは『苑（その）』です。宮苑（キュウエンキン）、外苑（ガイエン）、御苑（ギョエン）、苑地（エンチ）の苑です。『苑』は人名用漢字です。

　少し漢字の読み方の話をします。漢字の読み方は漢字を中国から輸入したときの読み方音読みと大和（やまと）言葉にあわせた訓読み（くんよみ）があります。音読みには、最初に輸入した中国江南地方の音である呉音（ゴオン）、遣唐使が持ち帰った長安の音である漢音（カンオン）、鎌倉仏教を通して入ってきた唐宋音（トウソウオン）、我が国で慣用的に使われる慣用音（カンヨウオン）があります。

『苑』は漢音の『エン』を使います。『怨（オン・エン）』は呉音の『オン』、漢音の『エン』両方使います。統一した方が良いのですが、怨霊（オンリョウ）を漢音の怨霊（エンレイ）、怨恨（エンコン）を呉音の怨恨（オンゴン）とは今更（いまさら）読めないので区別しています。平安時代に呉音を禁止して漢音に統一する法律を施行しましたが、失敗して今に至り、『オン』と読んだり『エン』と読んだりしています。

音読みの呉音と漢音については呉音と漢音もご覧ください。

　『宛（エン）』wǎnは、家の下で丸くなる様子、転がる様子を漢字にした形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、宀（屋根）＋夗（丸い）＝宛（家の下で丸くなる。転がる）です。漢字の部首は『宀・うかんむり』、意味は『曲がる』、『転がる』です。わが国では『転がる』から転じた『割り当てる』、『宛名（あてな）』の意味があります。

音読みは呉音が『オン』、漢音が『エン』です。訓読みは『宛（あ）て』です。宛転（エンテン）、宛名（あてな）、宛先（あてさき）の宛です。

『宛（エン・あて）』は平成22年に新たに追加された常用漢字（ジョウヨウカンジ・一般社会で使用する2136字）で、中学生で習うようになった常用漢字 です。

　『怨（オン・エン）』yuànは、怨む様子を表す形声文字です。『夗』は屈んだ人の姿です。『怨』は、丸くなって残念に思う気持ち。神様に跪（ひざまず）いて恨み言を曰う気持ちとも言われています。漢字の足し算では、夗（屈む）＋心＝怨（屈んだ人の気持ち。残念に思う。怨む）です。漢字の部首は『心・こころ』、意味は『怨む（うらむ）』です。

音読みは呉音が『オン』・漢音が『エン』です。訓読みは『怨む（うらむ）』です。怨念（オンネン）、怨恨（エンコン）、怨霊（オンリョウ）の怨です。

『怨（うら）む』は『恨（うら）む』とも書きます。恨は艮（コン）、根（コン）、限（ゲン）などと同じ『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 艮』をご覧ください。

『怨（オン・エン・うらむ）』は平成22年に新たに追加された常用漢字でで、中学生で習うようになった常用漢字 です。

引き続き読み方の話です。『念（ネン・デン）』niànの呉音は『ネン』、漢音は『デン』です。怨念（オンネン）は古い時代に入ってきた言葉なので呉音（古い時代の読み方）で『オンネン』と読みます。『霊（リョウ・レイ）』lingの呉音は『リョウ』、漢音は『レイ』です。怨霊（オンリョウ）は古い時代に入ってきた言葉なので呉音で『オンリョウ』と読みます。『根（ゴン・コン）』henの呉音は『ゴン』、漢音は『コン』です。怨恨（エンコン）は平安時代に入ってきた言葉なので漢音（平安時代の読み方）で『エンコン』と読むのです。

　『婉（エン）』yuān、wǎnは、婉曲な様子、女性のやさしい様子を表す形声文字です。『宛』は転がるで遠まわしに表現することです。漢字の足し算で覚えるならば、女（女性のやさしい表現）＋宛（遠まわし）＝婉（婉曲な様子、女性のやさしい様子）です。漢字の部首は『女・おんなへん』、意味は『婉曲（エンキョク）な様子』です。

音読みは呉音が『オン』、漢音が『エン』です。しとやかで美しい様子を婉美（エンビ）・婉麗（エンレイ）、遠まわしな様子を婉曲（エンキョク）といいます。

『婉（エン）』は常用漢字ではありません。

　『腕（ワン）』wànは、手首から肩までの部分を表す漢字です。特に丸く曲げられる手首の付け根を指します。漢字の足し算で覚えるならば、月（身体）＋宛（曲がる）＝腕（丸く曲がる手首。腕。うで）です。漢字の部首は『月・にくづき』、意味は『腕（うで）』です。

音読みは呉音・漢音ともに『ワン』、訓読みは『腕（うで）』です。腕力（ワンリョク）、扼腕（ヤクワン）、腕白（ワンパク）、利き腕（うで）の腕です。

『腕（ワン・うで）』は中学生 で習う常用漢字です。

　『椀、碗（ワン）』wǎnは、円形の食器・お椀・碗を表す漢字です。木製のものが椀、磁器（ジキ）製のものが碗です。漢字の足し算で覚えるならば、木・石＋宛（曲がる）＝椀、碗（円形の食器・お椀・碗）です。漢字の部首は『木・きへん』、『石・いしへん』、意味は『お椀・碗（わん）』です。

音読みは呉音・漢音ともに『ワン』です。茶碗（チャワン）、椀子（ワンこ）蕎麦の椀、碗です。

『椀、碗（ワン）』は常用漢字からはずれています。

　『鴛（エン）』yuānは、鴛鴦（おしどり）の雄（おす）を漢字にしたものです。漢字の足し算で覚えるならば、夗（丸い）＋鳥＝鴛（背中の丸い鴛鴦の雄）です。部首は『鳥』、意味は『鴛鴦（おしどり）の雄』です。

鴛鴦（エンオウ・おしどり）の雌は『鴦（オウ）』yāngといいます。漢字の足し算では、央（真ん中のくぼんだ）＋鳥＝鴦（真ん中のくぼんだ鴛鴦の雌）です。雄雌合わせて、鴛鴦（エンオウ・おしどり）です。

鴦（オウ）は、央、英、映と同じ『単語家族』（発音・意味上の漢字の仲間）です。詳しくは『漢字の覚え方 央』をご覧ください。

『鴛（エン）』は常用漢字ではありません。

http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-9f28.html

『漢字の覚え方 夗』 宛 腕 怨 椀

参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。

少し練習しましょう。

1.神宮 がいえん（　　　　）。

2.新宿 ぎょえん（　　　　）。

3.あてさき（　　　　）不明。

4.あてな（　　　　）書き。

5.えんこん（　　　　）による犯罪。

6.おんりょう（　　　　）のたたり。

7.えんきょく（　　　　）な言い方。

8.わんりょく（　　　　）に訴える。

9.利き うで（　　　）。

10.わんぱく（　　　　）相撲。

11.ちゃわん（　　　　）と箸（はし）。

12.おしどり（　　　　）

解説です。基本の漢字は夗、御苑（ギョエン）の苑は艹（くさかんむり）を足して苑、宛先（あてさき）の宛は宀（うかんむり・家）を足して宛、婉はしなやかで女を足して婉、腕（うで）は身体の一部なので月（にくづき）をたして腕、お椀、碗は木か石を足して椀、碗、鴛（おしどりの雄）は鳥を足して鴛いう漢字になります。

解答です。外苑、御苑、宛先、宛名、怨恨、怨霊、婉曲、腕力、腕、腕白、茶碗、鴛鴦