漢字には『単語家族』と呼ばれる発音・意味上の漢字の仲間があります。今日は音、暗、闇、意、億、憶、臆という漢字の仲間を説明します。基本の漢字は『音』です。読み方はそれぞれの漢字で違い、『オン』、『イン』、『アン』、『イ』、『オク』です。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて漢字の足し算で覚えると便利です。『音』に何を足したらどんな漢字になるのか漢字の構成を考えます。小学生1年で音、3年生で暗、意、4年生で億を習い、中学校で憶、闇、臆を習います。
『音(オン・イン・おと・ね)』yinという漢字は、もともとは言(ゲン)という漢字に-が入った会意文字です(藤堂)。漢字の部首は『音』です。漢字の意味は『音(おと)』、『音(ね)』です。
藤堂によれば、舌などで調整の加わった声を『言(ゲン)』といい、調整の加わらない声を『音(オン)』といったとしています。
音読みは『オン』、『イン』、訓読みは『おと』、『ね』です。音楽(オンガク)、音程(オンテイ)、雑音(ザツオン)、母音(ボオン・ボイン)、音物(インモツ)、発音(ハツオン)、音信(オンシン)、笛の音(ね)、虫の音(ね)の『音』です。
『音』は小学校1年で習う漢字http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/1-faaf.htmlです。
口に-を入れた漢字で『曰(エツ・いわく)』yueがあります。『言ったことには』という意味です。「いわくありげ」の曰くです。『音』は、『曰』に関係しそうですが、漢字の足し算でいう、立+曰ではありません。言に近い漢字です。
現在使われている漢字は、楷書体(カイショタイ)と呼ばれるものです。直接の元(もと)になる書体は、篆文(テンブン)と言い、秦の時代に確立した書体です。篆文の書体で『言』と『音』を見てください。言という漢字に-が入っているのがわかります。
『言(ゲン)』yanは辛(シン・はっきり)に口(くち)を足したも会意文字です。部首は『言』、意味は『はっきりと口(くち)に出して言う』ことです。『音(オン)』yinは、言の口に-を入れ、『はっきりと言わない音(おと)』という意味です。
口(くち)を、神との誓約に使う器である口(サイ)と解釈し、神のお告げが良くなければ、辛(シン・入墨を入れる針)で罰を受ける誓約。その儀式が『言』、暗くなって神のお告げが口(サイ)の中に-で示されるのが『音』という解釈(白川)もあります。
『言(ゲン・ゴン)』yanは、はっきり言う様子を表す会意文字です。漢字の足し算で覚えるならば、辛(シン・刃物・はっきり)+口=言(はっきり言う。言葉)です。デザインの都合で辛の部分は変形されています。古い字形(篆文・テンブン)で見ると、辛の字だとわかります。漢字の部首は『言・ことば』、意味は『言う(いう)』、『言葉』、『口に出して言ったこと』です。
実は漢字の『音(オン)』も『言(ゲン)』に近く同じ『辛』を使っていることが分かります。
音読みは呉音が『ゴン』、漢音が『ゲン』、訓読みは『言う(いう)』、『言(こと)』です。言語(ゲンゴ・ゴンゴ)、伝言(デンゴン)、進言(シンゲン)、証言(ショウゲン)、言い種(いいぐさ)、言葉(ことば)の言です。
『言』は小学校2年で習う漢字 http://bit.ly/1gpSgnEです。
『暗(アン・くらい)』anという漢字は、日(太陽)に音(くらい中での音)を合わせた形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、日(ひへん・太陽)+音(くらい中での神の訪れ)=暗(暗いこと)です。部首は『日・ひへん』です。
音読みは『アン』で、訓読みは、『暗い(くらい)』です。明暗(メイアン)、暗室(アンシツ)、暗愚(アング)、暗闇(くらやみ)の『暗』は『暗い』意味です。言葉を発しないで頭の中で覚えることも『暗』で、暗記(アンキ)、暗算(アンザン)などと使います。『暗』は小学校3年で習う漢字http://bit.ly/1Ro3ucX です。
『闇(アン・くらい・やみ)』anという漢字があります。『暗』と同じ意味を持つ漢字です。『暗』は古い書物には出ておらず、古い時代は『闇』という漢字が使われていたようです。
『闇』を漢字の足し算で覚えるならば、門+音(くらい中での神の訪れ)=(門を閉じたように暗い)です。漢字の部首は『『門・もんがまえ』、『闇』は平成22年に常用漢字(一般社会で使用する漢字)として追加登録されたため、中学校で習う漢字になりました。
『意(イ)』yiは、心の中の動き全般を表す漢字です。漢字の部首は『心』、『言(ゲン)』yanが外に向けて発する漢字なのと対照的です。
漢字の足し算で覚えるならば、音(外に発しない言葉)+心(したごころ・こころ)=意(心の中の動き・気持ち)です。実際に言葉を考えるのは、頭です。しかし、昔は心で考えると思われていました。恋、愛、悲、意、感など心の動きに関しては、心を使った漢字が多いのです。
『意』の音読みは『イ』で、訓読みは『こころ・むね・おき・もと』などが人名に使われています。田沼意次(たぬまおきつぐ)さんの『意(おき)』です。ただ、訓読みは常用外の読み方で、中学校の国語の授業で使うことはありません。
意見(イケン)、意思(イシ・考え)、意志(イシ・こころざし)、意識(イシキ)、意味(イミ)、得意(トクイ)、注意(チュウイ)、用意(ヨウイ)、好意(コウイ)の意です。
『意』は小学校3年で習う漢字http://bit.ly/1Ro3ucX です。
『億(オク)』yiは、人の考えられる最大の数を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、イ(にんべん・人)+意(心の動き・考え)=億(人の考えられる最大の数)です。漢字の部首は『イ・にんべん』です。1000万の十倍を『億(オク)』と言います。
人が予想(兆・きざし)も出来ないような大きな数を『兆(チョウ)』といいます。
音読みは呉音が『オク』、漢音が『ヨク』です。億兆(オクチョウ)は、大変多くの人で人民を表し、億劫(オックウ)は、もともと仏教の言葉でとてつもない長い時間を表し、現在では面倒を表します。
縁起の良い漢字で『おく』、『はかる』、『やす』と名前に使われます。
『憶』は小学校4年生で習う漢字http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/4-31ef.htmlです。
『憶(オク)』yiは、心の動きのなかでも考える事と胸の奥の感情を表す漢字です。漢字の足し算で覚えるならば、忄(りっしんべん・心の動き)+意(心の中の動き・気持ち)=憶(考えること・心の中の動き)です。漢字の部首は『忄・りっしんべん』です。
映像ではこんな感じです。
記憶(キオク)、追憶(ツイオク)、憶測(オクソク)、憶病(オクビョウ)の憶です。憶測、憶病は、心の奥の思いを表す『臆』の漢字を使って臆測、臆病と書いても良いです。『憶』は中学校で習う常用漢字です。
『臆(オク)』yiは、胸の奥の気持ちのことです。漢字の足し算で覚えるならば、月(からだの部分)+意(心の中の動き・気持ち)=臆(胸の奥にある気持ち)です。臆は胸の奥の骨を示すという説明があります。胸の奥の気持ちを表します。漢字の部首は『月・にくづき』です。
臆病(オクビョウ)、臆面(オクメン)の臆です。常用漢字ではなかったので、『憶』の漢字が良く使われます。また、昔は『憶』と『臆』の区別をあまりしていなかったようです。
『臆』は平成22年から常用漢字に追加されて中学校で習う漢字になりました。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-abf0.html
『漢字の覚え方 音・意』 音 暗 闇 意 億 憶 臆
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.おんがく ( )の授業。
2.テストに備えて あんき( )する。
3.くらやみ ( )を怖れる。
4.個人の いし( )を尊重する。
5.いし( )が固い。
6.漢字は とくい( )でない。
7.こうい( )をよせる。
8.宝くじ賞金 いちおくえん( )。
9.おっくう ( )な仕事。
10.きおく ( )の彼方。
11.相手の気持ちを おくそく( )する。
12.おくめん( )もない態度
13.おくびょう( )な性格。
解説です。音の関係は『音』、『アン』と読んで、暗い・覚えるは『暗』、考え・気持ち全般は『意』、大きい数字は『億』、『オク』と読んで、考える・覚える『憶』か『臆』です。
解答です。音楽、暗記、暗闇、意思、意志、得意、好意、一億円、億劫、記憶、憶測、臆測、臆面、憶病、臆病。
高浜虚子の句に 黄金虫擲つ(なげうつ)闇(やみ)の深さかな という句があります。黄金虫の色と闇の対照(コントラスト)、静けさと時間の流れを感じて 大変良い句だ思います。