今日は『屯(チュン・トン)』zhūn・túnという漢字の仲間について説明します。基本になる漢字は『屯(チュン・トン)』です。屯、純、屯、頓、春などがこの漢字の仲間になります。音読みは『チュン』、『トン』、『ジュン』、『シュン』などで、意味は『こもる』、『集める』、『ずっしりと』です。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて漢字の足し算でを覚えると便利です。『屯』に何を足すと鈍、純、沌、頓、春、鰆、椿になるのかを考えます。春は小学校2年生で習う漢字 、純は 小学校6年生で習う漢字 、屯 は中学生 、鈍も中学生 で習い、頓は中学生で習うようになった漢字 沌、椿は人名用漢字です。学校、学年に関係なく一緒に覚えましょう。
『屯(チュン・トン)』zhūn・túnは、草の芽を表す会意文字です。漢字の足し算で覚えるならば、一(地面)+屮(草の芽)=屯(地面の下の草の芽。こもる。集まる。群がる)です。漢字の部首は『屮・くさのめ』、漢字の意味は『こもる』、『集まる』、『群がる』、『ずっしりと』です。
音読みは二通りあります。『こもる』の意味では呉音・漢音ともに『チュン』、『集まる』・『群がる』の意味では呉音が『ドン』、漢音が『トン』です。兵隊が集まってとどまることを駐屯(チュウトン)、兵隊が集まるところを屯営(トンエイ)、諸国から集めた穀物を入れる倉を屯倉(トンソウ・みやけ)といいます。
屯(トン・みやけ)は中学生で習う常用漢字です。
『鈍(ドン)』dùnは、鈍(にぶ)い金属を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、金(金属)+屯(こもる)=鈍(こもる金属。鈍(にぶ)い。角が尖っていない刃物。鈍(のろ)い。鈍(なま)る)です。漢字の部首は『金・かねへん』、漢字の意味は『鈍(にぶ)い』、『鈍(のろ)い』、『鈍(なま)る』です。
音読みは呉音が『ドン』、漢音が『トン』、訓読みが『鈍(にぶ)い』と常用外の『鈍(のろ)い』、『鈍(なま)る』です。刺激に対する反応が鈍(にぶ)いことを鈍感(ドンカン)、知恵の働きが鈍(にぶ)いことを鈍才(ドンサイ)、鋭利でない武器を鈍器(ドンキ)といいます。
鈍(にぶ)いの反対は鋭 (するど)いです。鋭(エイ・するどい)は兌(ダ)の仲間の漢字です。詳しくは 『漢字の覚え方 兌』 をご覧ください。
鈍(ドン・にぶい)は中学生で習う常用漢字です。
『純(ジュン)』chúnは、織物(おりもの)の端を(はし)表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、糸(織物)+屯(こもる・集まる)=純(織物の端の混じり合ってない部分。純)です。漢字の部首は『糸・いとへん』、漢字の意味は『色の混じらない』です。
音読みは呉音が『ジュン』、漢音が『シュン』です。混じりけがないことを純粋(ジュンスイ)、飾り気や穢(けが)れがないことを純真(ジュンシン)、真っ白なことを純白(ジュンパク)といいます。
とても良い意味の漢字で『あつ』、『あつし』、『あや』、『いたる』、『いと』、『きよし』、『すなお』、『すみ』、『つな』、『とう』、『まこと』、『よし』と名前に使われます。
純(ジュン)は 小学校6年生で習う漢字で習う漢字です。象形・指事・会意・形声 六年生 もご覧ください。
『沌(トン)』dùnは、水がこもる様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、氵(水)+屯(こもる)=沌(水がこもる。水がぐるぐるとまわって滞る。もやもやする)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、漢字の意味は『もやもやする』です。
音読みは呉音が『ドン』、漢音が『トン』です。もやもやした宇宙のはじめの状態・入り混じって区別のつかない様子を混沌・渾沌(コントン)といいます。
沌(トン)は人名用漢字です。
『頓(トン)』dùnは、頓(ぬか)ずく様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、屯(こもる・すっしり)+頁(頭)=頓(頭がずっしり。頭を下げる頓(ぬか)ずく。とどまる。急にずっしりと)です。漢字の部首は『頁・おおがい』、漢字の意味は『頓(ぬか)ずく』、『とどまる』、『急に』です。
音読みは呉音・漢音ともに『トン』、訓読みが『頓(ぬか)ずく』です。頭を地につけてお辞儀をすることを頓首(トンシュ)、整えて物を落ち着かせることを整頓(セイトン)、
ずしんと落ち着いてしまって挫(くじ)けることを頓挫(トンザ)、急に死亡することを頓死(トンシ)といいます。
頓(トン・ぬかずく)は中学生で習うようになった漢字です。
『春(シュン)』chūnは、日の光で草木が生え出る季節を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、艹(植物)+屯(草の芽)+日(太陽)=春(草木の生え出る季節。春。はる)です。漢字の部首は『日・ひ』、漢字の意味は『春(はる)』、『元気な時期』、『男女の慕う心』などです。
音読みは呉音・漢音ともに『シュン』、訓読みは『春(はる)』です。春の立つ日を立春(リッシュン)、春の夜明け前の眠りを春眠(シュンミン)、若く元気な様子を青春(セイシュン)といいます。
春(シュン・はる)は小学校2年生で習う漢字 です。
『鰆(シュン・さわら)』chūnは、春に獲れる鰆(さわら)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、魚+春(はる)=鰆(春に獲れる魚。鰆。さわら)です。漢字の部首は『魚・さかなへん』です。
春になると産卵のために沿岸に寄って良く獲れるようになります。旬は冬から春で、特に産卵前の冬には脂がのって美味しいとされています。焼き物、ばらずし、吸い物など和食に欠かせない魚で、関西・瀬戸内海でよく食べられています。
音読みは呉音・漢音ともに『シュン』。訓読みが『鰆(さわら)』です。鰆は常用漢字から外れています。
鰆は常用漢字から外れています。
魚を使った漢字について詳しくは『部首索引 魚』をご覧下さい。
『椿(チン・つばき)』chūnは、中国では根元がどっしりした科の樹木を表す形声文字です。漢字の足し算では、木+春・屯(こもる・どっしり)=椿(こもる樹木。根元のどっしりした樹木。香椿(チャンチン))です。
我が国では新春に花の咲く椿(つばき)にこの漢字を宛てています。漢字の部首は『木・きへん』です。漢字の意味は『椿(つばき)』です。
椿(つばき)は日本原産の樹木で、冬に日陰で花を咲かせる性質が好まれ、多くの園芸品種があります。種子を絞った椿油(つばきあぶら)は食用油、整髪料に使われます。
香椿(チャンチン)は臭気のある樹木です。なので、象のように口吻が長く、臭気のある虫、カメムシは椿象(かめむし)の漢字が宛てられています。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-a2b7.html
『漢字の覚え方 屯・春』 屯 純 鈍 頓 沌 春 鰆 椿
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.とんでん( )兵。
2.自衛隊 ちゅうとん( )地。
3.どんき( )による犯行。
4.どんかん( )な人物。
5.じゅんすい( )な気持ち。
6.こんとん( )とした世界。
7.整理 せいとん( )。
8.せいしゅん( )時代。
9.はる( )爛漫。
10.さわら( )のばらずし。
11.かんつばき( )。
解説です。基本の漢字は屯、鈍(にぶ)いは金(かねへん)を足して鈍、純(ジュン)は糸を足して純、渾沌(コントン)は氵(さんずい)をたして沌、頓(ぬか)ずくは頁(おおがい)を足して頓、春(はる)は日を足して春、鰆(さわら)は魚を足して鰆、椿(つばき)は木を足して椿です。
解答です。屯田、駐屯、鈍器、鈍感、純粋、渾沌、整頓、青春、春、鰆、寒椿。
少し漢字の成り立ちの話をしましょう。最古の辞書は後漢(西暦100年頃)の許慎(キョシン)の「説文解字(セツモンカイジ)」です。許慎はその中で漢字について六種の原理を説明しています。これを『六書(リクショ)』といいます。六種類のうち四種類は漢字の成り立ちについて、残りの二種類は漢字の使用法についてしるしています。
彼は、漢字(=文字)の成り立ちを、物の形に象(かたど)った『象形』(ショウケイ)、象形文字を基に点を打つことにより示された『指事』(シジ)、文字を組み合わせた『会意』(カイイ)、意味と音・声を示す文字を組み合わせた『形声』(ケイセイ)の四種類に分類しました。
『屯』は地面と草の芽を組み合わせた文字なので『会意』です。『鈍』は金に屯、『純』は糸に屯、『沌』は氵に屯、『頓』は屯に頁、『春』は屯に艹と日を組み合わせた文字です。これらの漢字は『屯(トン)・(ジュン)・(シュン)』の音・声(音符)含みますから『形声文字』です。
漢字の殆どはこの『形声文字』です。漢字が足し算であるというのは、この漢字の成り立ちに関わっています。『形声文字』は音・声(音読み)が同じなので、音・声(音読み)を基にして漢字の足し算で、漢字を覚えようとしているわけです。