今日は辛、新、薪、親、辞という漢字の仲間を説明します。基本の漢字は『辛』xīnです。取っ手のある針の形で、入墨をする様子を表す象形文字(ショウケイモジ)です。『辛(つら)い』、『辛(から)い』の意味があります。読み方は『シン』が基本です。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて漢字の足し算でを覚えると便利です。辛に何を足したら新、薪、親、辞、言になるのかを考えます。小学生2年で新、親、言を習い、4年で辞、中学校で辛、薪を習います。学校、学年に関係なく一緒に覚えましょう。
基本漢字の『辛』xīnは、取っ手のある針の形で、入墨をする様子を表す象形文字(ショウケイモジ)です。刺すような痛みをを表す(藤堂)といわれています。漢字の部首は『辛・しん』、漢字の意味は『辛(から)い』、『辛(つら)い』、『辛(かのと)』です。
音読みは、呉音・漢音ともに『シン』、訓読みは『辛(から)い』で、常用外の読み方に『辛(から)い』、『辛(かのと)』があります。辛(つら)いことを我慢することを辛抱(シンボウ)、辛(から)くて酸(す)っぱい味・辛(つら)く苦(くる)しいことを辛酸(シンサン)、辛(から)くて苦(にが)い味・辛(つら)く苦(くる)しいことを辛苦(シンク)、非常に手厳しいことを辛辣(シンラツ)、辛(から)い味を辛味(からミ)、口当たりが辛いもの・手厳しいことを辛口(からくち)、唐辛(トウがらし)の辛です。
十干の八番目(甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸)を表します。十干は(木→火→土→金→水)からなり兄弟で表すので、金(かね)の弟(おとうと)で辛(かのと)と読みます。東洋では十干(幹)と十二支(枝)を使って60の組み合わせで、年を数えます。辛亥革命(シンガイカクメイ)は辛亥(シンガイ・かのとでいのししの年)の年に起った革命です。
辛口(からくち)のお酒は良いですね。日本酒で辛口と言えば、糖分の少ないスッキリした味の御酒をいうようです。ついつい飲みすぎます。
従姉妹が信州の超辛口の純米吟醸を送ってくれました。ちなみに、吟醸とは漢字的には吟(ギン・口に含んで良く味わう)じて醸(ジョウ・かもす・酒として発酵させる)、大変美味しいお酒です。吟味した米を使うわけですが、お米の外側を削るそうです。 まあ兎に角この世のものと思えぬ旨さです。
『辛(シン)』は中学校で習う常用漢字です。
『新(シン)』xīnという漢字は、立(辛の省略形)に木と斤を足したものです。親族が亡くなった場合に、新しい神木を山へ切りに行きます。その神木で親族の『魂』がやどる霊牌を作るのです。辛はその神木に付けた目印の針です。斤は斧(おの)です。『新』は新しく木を斧で切ることです。
漢字の足し算では、辛(シン・目印)+木(葬儀用の木)+斤(おのづくり・斧)=新(葬儀用の木を新しく切る。新しい)です。部首は『斤・おのづくり』、意味は『新しい』です。音読みは呉音・漢音ともに『シン』、訓読みは『新(あたら)しい』、『新(あら)た』、『新(にい)』です。
新しく聞く情報が新聞(シンブン)、結婚したての細君が新妻(にいづま)、新しいことと旧いことで新旧(シンキュウ)、新しく鮮度の良いのが新鮮(シンセン)、あらためて新しくするのが更新(コウシン)、新しい宿場町が新宿(シンジュク)です。江戸時代の有名な学者に新井白石(あらいハクセキ)さんがいます。
『新』が『あたらしい』、『あらた』と二通りの読み方があります。これはもともと大和言葉の『あらためる・あらたしい』に漢字の『新』をあてはめまたことに由来します。『たしい』より『らしい』の方が、はるかに言いやすいのでやがてひっくり返り『あたらしい』になりました。今では『あらたしい』は使われず『あらた』が残っています。
『新(シン)』は小学校2年で習う漢字です。
『薪(シン)』xīnは、新しく切り出してきた木そのものです。漢字の足し算では、艹(くさかんむり・植物)+新(葬儀用の木を新しく切る)=薪(葬儀用に新しく切り出した木。まき。たきぎ)です。漢字の部首は『艹・くさかんむり』です。
音読みは呉音・漢音ともに『シン』で、訓読みは『たきぎ』、『まき』です。訓読みの『まき』は常用外の読み方です。薪を採ることを採薪(サイシン)、薪を採り、水を汲むことを薪水(シンスイ)といいます。
中国の故事で、薪に臥(ふ)し、胆(きも)を甞(な)めることを臥薪嘗胆(ガシンショウタン)といいます。意味は復讐(フクシュウ)するために自らを苦しい環境に置き、将来の成功を期することです。
臥薪嘗胆の解説です。薪(たきぎ)の上で寝るのは痛くて辛く、胆(きも)は苦いです。中国の戦国時代の呉王『夫差(フサ)』は父の復讐を誓い、自ら薪の上で寝ることで敗戦の屈辱を思い出し、仇の越王を破りました。敗れた越王『勾践(コウセン)』は苦い胆を嘗(な)めることで屈辱を忘れないようにし、呉王を破り雪辱を果たした。復讐するために自らを苦しい環境に置き、将来の成功を期することを『臥薪嘗胆』といいます。
レバーの為に一言。胆は熱を加えたり、干したりするから苦いので、血抜き処理した生のレバーはグリコーゲンを含んでいて甘くて美味しいのです。
『薪(シン)』は中学校で習う常用漢字です。
『親(シン)』qīnという漢字は、新しくできた親族の霊牌・位牌を拝む(見る)こととされています。漢字の足し算では、辛(シン・目印)+木(葬儀用の木)+見(みる・見る事)=親(親族の葬儀用の霊牌・位牌を拝む。親)です。霊牌・位牌に亡親の魂(たましい)がやどるのです。漢字の部首は『見・みる』です。
意味は『親の霊牌』、『親』ですが、じかに接することから『自ら(みずから)』、『親しい間柄』をも意味します。音読みは呉音・漢音ともに『シン』で、訓読みは『親(おや)』、『親(した)しむ』、『親(した)しい』です。
父親と母親を両親(リョウシン)、親しく近い(戚)血縁者を親戚(シンセキ)、親しくせまる(切)ことを親切(シンセツ)、親しみ愛(いつく)しむことを親愛(シンアイ)、自ら書いた手紙を親書(シンショ)といいます。親切は親を切る事ではありません。切迫(セッパク・差し迫ること)という熟語から解るように、『切』にはせまるの意味があります。
『親(シン)』は小学校2年で習う漢字です。
『辭・辞(ジ)』cíという漢字があります。亂(乱)れた糸を辛(シン・刃物)で断ち切る映像を示す漢字です。漢字の足し算では、亂(ラン・乱れる)+辛(シン・刃物)=辭・辞(乱れをさばくこと。さばく言葉)です。言葉に関係するので舌を足すと覚えても良いでしょう。
『辤・辞(ジ)』cíもあります。こちらは受け取るに辛いを足した漢字で、辞退することです。漢字の足し算では、受(ジュ・受け取る)+辛(シン・辛い)=辤・辞(受け取らないこと。やめる)です。漢字の部首は『辛・シン』です。
従って、『辞』には『ことば』、『やめる』、『ことわる』の意味があります。正式な字体は『辭・辤』ですが、常用漢字体の『辞』が使われます。音読みは呉音の『ジ』が普通で、漢音の『シ』と読むこともあります。訓読みは『辞める(やめる)』です。
職をやめることを辞職(ジショク)、辞めることを公表する書類を辞表(ジヒョウ)、官職の任命の書類(令)を辞令(ジレイ)、言葉の源を辞源(ジゲン)、感謝の言葉を謝辞(シャジ)、言葉を説明する書物を辞書(ジショ)といいます。
『辞(ジ)』は小学校4年で習う漢字です。
『辛』を使った漢字に言(ゲン・ゴン)、辠(ザイ・つみ)があります。
『言(ゲン・ゴン)』yánは、はっきり言う様子を表す会意文字です。漢字の足し算では辛(シン・刃物・はっきり)+口=言(はっきり言う。言葉)です。デザインの都合で辛の部分は変形されています。古い字形(篆文・テンブン)で見ると、辛の字だとわかります。漢字の部首は『言・ことば』、意味は『言う(いう)』、『言葉』、『口に出して言ったこと』です。
実は漢字の『音(オン)』も『言(ゲン)』に近く同じ『辛』を使っていることが分かります。
音読みは呉音が『ゴン』、漢音が『ゲン』、訓読みは『言う(いう)』、『言(こと)』です。言語(ゲンゴ・ゴンゴ)、伝言(デンゴン)、進言(シンゲン)、証言(ショウゲン)、言い種(いいぐさ)、言葉(ことば)の言です。
漢字の世界では、漢字によって多少ニュアンスの違いがあります。
云(い)う 口ごもって云う。引用して云う。 『漢字の覚え方 云』http://bit.ly/1Tnh3Xf
言(い)う はっきり言う。 『漢字の覚え方辛』http://bit.ly/1vDDBdB
謂(い)う あることについて話す。 『漢字の覚え方 胃』http://bit.ly/1wflL22
曰(いわ)く 言った事には。~が言うのには。『漢字の覚え方 口』http://bit.ly/1XmVkQX
話(はな)す 勢いよく話す。 『漢字の覚え方 舌』http://bit.ly/1vZXObd
喋(しゃべ)る ペラペラ喋る 『漢字の覚え方 枼』http://bit.ly/1R7K6Mw
です。
『言(ゲン)』は小学校2年で習う漢字です。
『辠・罪(ザイ)』zuìは、辠・罪(つみ)を表す漢字です。漢字の足し算で表すと、自(鼻)+辛(刃物)=辠(鼻を切り落とす刑罰)です。罪は、罒(網)+非(悪いこと)=罪(網をかぶせて悪いことを取り締まる。法にそむいた行為。罪。つみ)です。漢字の部首は『网・あみがしら』、漢字の意味は『法にそむいた行為』、『刑罰』、『悪いこと』です。秦の始皇帝のときに造られた新しい漢字です。
もとの漢字は、辠(ザイ)で皇(コウ)と似ているために書き換えられたといわれています(藤堂)。漢字の足し算で表すと、自(鼻)+辛(刃物)=辠(鼻を切り落とす刑罰)です。
音読みは呉音が『ザイ』、漢音が『サイ』、訓読みが『罪(ツミ)』です。罪をおかすことを犯罪(ハンザイ)、問われている罪の事実を罪状(ザイジョウ)、罪を犯した者の生命を絶つことを死罪(シザイ)、罪をわびることを謝罪(シャザイ)といいます。
罪(ザイ)は小学校5年生で習う漢字です。
辛の親戚筋の漢字に章 障 彰 商(ショウ)があります。音読みは『ショウ』、意味は『あきらか』。入れ墨を施術する様子を漢字にしたものです。『漢字の覚え方 章』にも掲載します。
『章(ショウ)』zhāngは、入れ墨を施術する様子を漢字にしたものです。漢字(篆文・テンブン)の足し算では、音+十(一まとめ)=章(音楽・楽曲の一まとめ)です。古い字体の金文(キンブン)では、墨溜(だ)まりのある辛(シン・入れ墨用の針)の形で、もともとは入れ墨の模様を表す漢字です。意味は『入れ墨(良い意味)』、『しるし・模様』、『あきらかにする』、『音楽・文章の一区切り』です。
金文のほうの字体も掲載しておきます。漢字の部首は『立』になります。
音読みは呉音・漢音ともに『ショウ』です。一区切りの文を文章(ブンショウ)、楽曲の区切りを楽章(ガクショウ)、あきらかにすることを表章(ヒョウショウ)、しるしを紋章(モンショウ)といいます。大変良い意味の漢字なので、『あき』、『あきら』、『あや』、『たか』、『とし』、『ゆき』と名前に使われる漢字です。
章(ショウ)は小学校3年生で習う漢字です。
『彰(ショウ)』zhāngは、入れ墨の鮮やかな模様を表す形声文字です。漢字の足し算では、章(あきらか)+彡(模様)=彰(鮮やかな模様。あきらか)です。漢字の部首は『彡・さんづくり』、意味は『あきらか』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ショウ』です。正義をあきらかにすることを彰義(ショウギ)、善い行いを世にあきらかにすることを表彰(ヒョウショウ)・顕彰(ケンショウ)といいます。『章』と同じく大変良い意味の漢字なので、『あき』、『あきら』、『あや』、『ただ』、『てる』と名前に使われます。『
彰(ショウ)は中学校で習う漢字です。
『障(ショウ)』zhàngは、まともにさえぎる様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、阝(こざとへん・土)+章(あきらか)=障(土を盛ってあきらかにさえぎる。障る。)です。部首は『阝・こざとへん』、意味は『さえぎる』、『さわる』です。良い意味にも良くない意味にも使います。
阝・こざとへんの漢字は防、阻、障とふせぐ、さえぎるの意味に使われる事があります。
音読みは呉音・漢音ともに『ショウ』です。訓読みは『障る(さわる)』。まともに防ぐことを保障(ホショウ)、さえぎられて障りになることを障害(ショウガイ)・故障(コショウ)、部屋をさえぎるものを障子(ショウジ)といいます。『
障(ショウ)は小学校6年生で習います。
『商(ショウ)』shāngは、商(あきな)う様子・古代中国王朝の殷商(インショウ)を表すを形声文字です。漢字の足し算では、章(あきらか)+高(高い)=商(古代中国の高台に住む人たち。商人。しょうにん)です。高台に住んでいた殷王朝の商の人たちの末裔が商人になったといわれており、漢字の世界では、商(あきな)うに商の漢字を使います。漢字の部首は『口・くち』、漢字の意味は『商(あきな)う』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ショウ』、訓読みは『商(あきな)う』です。物を売って商いすることを商売(ショウバイ)、商売をする人・商の国の人を商人(ショウニン)といいます。
商(ショウ)は小学校3年生で習う漢字です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-e091.html
『漢字の覚え方 辛・新』 辛 新 薪 親 辞 章 彰 障 商
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.大根の からみ ( )成分。
2.しんぼう ( )出来ない。
3.非常に つら( )い境遇。
4.学者 あらいはくせき( )。
5.しんぶん( )を読む。
6.しんきゅう ( )交代。
7.江戸時代 しんすい( )給与令が出される。
8.しんせき ( )から御酒が届く。
9.旅人に しんせつ( )にする。
10.大統領に しんしょ( )を送る。
11.じひょう( )を提出する。
12.じしょ( )を引く。
13.王家の もんしょう( )。
14.第一 がくしょう( )。
15.大家の ひょうしょうしき( )。
16.自動車が こしょう( )する。
17.権利を ほしょう( )する。
18.しょうにん( )と農民。
解説です。辛い(からい・つらい)の関係は『辛』、新しいは木と斤(おの)を足して『新』、薪は新にくさかんむりを足して『薪』、親しい、親は木を見るにかえて『親』、言葉には舌を足して『辞』です。
文章、楽章は章、あきらかにするは彡を足して彰、遮(さえぎ)る、守るが阝(こざとへん)の障、商(あきな)うは章の省略形に高いを足して商です。
解答です。辛味、辛抱、辛い、新井白石、新聞、新旧、臥薪、薪水、親戚、親切、親書、辞表、辞書、紋章、楽章、表彰式、故障、保障、商人。今日はこの辺で終わりにします。