漢字には発音・意味・構造上の漢字の仲間があります。今日は『睪(エキ)』yìという字を基本とした漢字の仲間について説明します。この漢字の仲間には睪(エキ)、澤・沢(タク・さわ)、驛・駅(エキ)、譯・訳(ヤク・わけ)、繹(エキ)、釋・釈(シャク・とく)、擇・択(タク・えらぶ)、鐸(タク・すず)という漢字が含まれます。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて漢字の足し算で覚えると便利です。『睪(エキ)』に何を足したら澤、驛、譯、繹、擇、鐸になるのかを考えてます。駅(驛)は小学3年生 、訳(譯)は小学6年生 、沢(澤)、釈(釋)、択(擇)は中学校で習う常用漢字です。学年、学校に関係なく一緒に覚えましょう。
『睪(エキ)』yìは、次々と並んでいるものを見る、また並んでいるものから択・擇(えら)ぶ様子を表す会意文字です(藤堂)。漢字の足し算で覚えるならば、罒(目)+幸(並んだ人)=睪(次々と並んでいるものを見る・擇(えら)ぶ)です。漢字の部首は『目・め』、意味は『並ぶ』、『伺い見る』、『択・擇(えら)ぶ』です。
甲骨文字まで遡(さかのぼ)って罒を獣(けもの)、幸(腐敗していく様子)の象形と解釈する説(白川)もあります。
音読みは呉音が『ヤク』、漢音が『エキ』です。我が国では睪(エキ)の漢字自体を使うことはありませんが、繹(エキ)、鐸(タク)の漢字の一部として活躍しています。また、常用漢字の澤、驛、擇、釋では、省略形の尺に換えられ、沢、駅、択、釈の字体が使われることが多いです。
睪(エキ)の仲間の漢字は、古い時代に『驛・繹・譯(ヤク・エキ)、釋(シャク・セキ)』と『澤・鐸・擇(タク)』いう二系統の発音に分かれたと考えられています。
尺(シャク)についてです。
『尺(シャク)』chǐは、人が手の幅で長さを測る様子を描いた象形文字です。古代中国では22.5cmで、我が国では30.3cmにあたります。漢字の部首は『尸・しかばね』、漢字の意味は『長さの単位』、『ものさし』です。
音読みは呉音が『シャク』、漢音が『セキ』です。テープ状の巻いてあるものさしを巻尺(マキジャク)、わずかな土地を尺地(シャクチ)、尺八寸の長さの竹製の縦笛を尺八(シャクハチ)といいます。
睪(エキ・タク)の省略形に用います。
尺(シャク)は小学校6年生で習う漢字http://bit.ly/1SSc4hW です。『漢字の覚え方 尺』http://bit.ly/1tkspU4 もご覧ください。
『駅・驛(エキ)』yìは、馬が駅々に立ち寄っていく様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、馬+尺・睪(ひとつ、ひとつ・並んだ)=駅・驛(馬が乗り継ぐ所。宿場。駅。えき)です。漢字の部首は『馬・うまへん』、意味は『駅(えき)』です。
本字は驛、常用漢字体は省略形の駅を使います。
音読みは呉音が『ヤク』、漢音が『エキ』です。駅の建物を駅舎(エキシャ)、宿場から宿場へ物品を届けること・リレーによる長距離競走を駅伝(エキデン)といいます。
呉音の『ヤク』は漢音の『エキ』になることがあります。音読みの呉音、漢音については『呉音と漢音』⑯ もご覧ください。
駅(エキ)は小学校3年生で習う漢字http://bit.ly/1Ro3ucX です。
『繹(エキ)』yìは、一つ一つたずねる様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、糸(つながる)+睪(ひとつ、ひとつ)=繹(一つ一つたずねる様子。たずねる。つづく)です。漢字の部首は『糸・いとへん』、意味は『たずねる』、『つづく』です。
音読みは呉音が『ヤク』、漢音が『エキ』です。一つの事から他の事へ押しひろめて述べることを演繹(エンエキ)、物事があとからあとから生じるさまを繹繹(エキエキ)といいます。
繹(エキ)は常用漢字から外れています。
『訳・譯(ヤク)』yìは、言葉を一つ一つ他の文句に言い換える様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、言(言葉)+尺・睪(ひとつ、ひとつ)=訳・譯(言葉を一つ一つ他の文句に言い換える。ヤク。わけ)です。漢字の部首は『言・ごんへん』、意味は『言い換える』、『訳(わけ)』です。
本字は譯、常用漢字体は省略形の訳が使われています。中国大陸では、译を使います。
音読みは呉音が『ヤク』、漢音が『エキ』、訓読みが『訳(わけ)』です。ある言語の文章を他の言語に置き換えることを翻訳(ホンヤク)、双方の言葉を翻訳してそれぞれの相手に伝えることを通訳(ツウヤク)といいます。
訳(ヤク・わけ)は小学校6年生で習う漢字http://bit.ly/21pbuvo です。
『釈・釋(シャク)』shìは、しこりを一つ一つ釈(と)く様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、釆(バラバラにする)+尺・睪(ひとつ、ひとつ)=釈・釋(しこりを一つ一つ釈(と)く。ときほぐす)です。漢字の部首は『釆・のごめへん』、意味は『釈(と)く』、『ときほぐす』、『解き放つ』です。
本字は釋、常用漢字体は省略形の釈を使います。中国大陸では、释を使います。
音読みは呉音が『シャク』、漢音が『セキ』、訓読みに常用外の『釈(と)く』があります。液の濃度を薄めることを稀釈(キシャク)、言葉の内容を解きほぐして明らかにすることを解釈(カイシャク)、拘束を解いて自由にすることを釈放(シャクホウ)といいます。
バラバラにすることを日本語で『とく』というのですが、漢字の世界では色々な漢字を使い分けています。
釈(と)く ひとつ、ひとつ。釈きほぐす。 『漢字の覚え方 尺』http://bit.ly/1tkspU4
解(と)く ばらばらにする。解きほぐす。 『漢字の覚え方 解』http://bit.ly/1N1uZka
溶(と)く 水の中で溶かす。 『漢字の覚え方 溶』http://bit.ly/1xUYpv5
説(と)く ひとつひとつ説明する。 『漢字の覚え方 説』http://bit.ly/1GMPByp
梳(と)く 櫛(くし)で髪をさらさらにする 『漢字の覚え方 疋』http://bit.ly/1JXetBr
解釈(カイシャク)、解説(カイセツ)のように二語の熟語にしても使います。
梵語のSakyaの音訳に釈迦(シャカ)という漢字を使います。
釈(シャク・とく)は中学校 で習う常用漢字です。
『択・擇(タク)』zhái、zéは、一つ一つを択(えら)ぶ様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、扌(手の動作)+尺・睪(ひとつ、ひとつ)=択・擇(一つ一つ択(えら)ぶ。えらぶ)です。漢字の部首は『扌・てへん』、意味は『択(えら)ぶ』です。
本字は擇、常用漢字体は省略形の択を使います。中国大陸では、择を使います。
音読みは呉音が『ジャク』、漢音が『タク』、訓読みは常用外の『択(えら)ぶ』です。えらぶことを選択(センタク)、二つのうち一つを択ぶことを択一(タクイツ)、択んで採用することを採択(サイタク)といいます。
択(えら)ぶは選(えら)ぶと書くのが普通です。選(セン)は巽(ソン)の漢字の仲間です。詳しくは『漢字の覚え方 巽』をご覧ください。
択(タク・えらぶ)は中学校 で習う常用漢字です。
『沢・澤(タク)』zéは、一つ一つの支流を様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、氵(水・川)+尺・睪(ひとつ、ひとつ)=沢・澤(一つ一つの川。沢。さわ)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、意味は『沢(さわ)』、『うるおい』、『つや』、『めぐみ』、『物が多くある』です。
本字は澤、常用漢字体は省略形の沢を使います。中国大陸では、泽を使います。
音読みは呉音が『ジャク』、漢音が『タク』、訓読みは常用外の『沢(さわ)』です。沢の水を沢水(さわみず)、数量が多いことを沢山(タクサン)、光の反射による輝きを光沢(コウタク)といいます。
非常に良い意味の漢字で『ます』と名前に使われます。
沢(タク・さわ)は中学校 で習う常用漢字です。
『鐸(タク)』duóは、一つ一つ鳴る大きな鈴を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、金(金属)+尺・睪(ひとつ、ひとつ)=鐸(一つ一つの鳴る鈴。大鈴)です。漢字の部首は『金・かねへん』、意味は『大きな鈴』です。
音読みは呉音が『ダク』、漢音が『タク』です。訓読みは『鐸(すず)』。木製の大鈴を木鐸(ボクタク)、銅製の大鈴を銅鐸(ドウタク)といいます。
鐸(タク・すず)は常用漢字から外れています。
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-1527.html
『漢字の覚え方 睪』 駅 驛 繹 訳 譯 釈 釋 択 擇 沢 澤 鐸
少し練習しましょう。
1.木造のえきしゃ( )。
2.えきでん( )競走。
3.えんえき( )法。
4.ほんやく( )家
5.つうやく( )の仕事。
6.被告人を しゃくほう( )する。
7.言葉の かいしゃく( )。
8.せんたく( )肢。
9.さわみず( )を飲む。
10.こうたく( )のある素材。
11.どうたく( )の出土。
解説です。基本の漢字は睪、駅(エキ)は馬を足して駅(驛)、繹(たずねる)は糸(いとへん)を足して繹、訳(ヤク)は言(ごんべん)を足して訳(驛)、釈(と)くは釆(のごめへん)を足して釈(釋)、擇(えら)ぶは扌(てへん)を足して択(擇)、沢(さわ)は氵(さんずい)を足して沢(澤)、鐸(おおきな鈴)は金(かねへん)を足して鐸です。
解答です。駅舎、駅伝、演繹、翻訳、通訳、釈放、解釈、選択、沢水、光沢、銅鐸。