漢字の覚え方 朱
漢字には発音・意味・構造上の漢字の仲間があります。今日は『朱(シュ)』zhūという漢字の仲間について説明します。基本になる漢字は『朱』です。音読みは『シュ』、意味は『朱(あか)い』、『切り株』、その他に『動かない』、『丸い』、『低い』があります。朱(シュ・あか)、株(シュ・かぶ)、珠(シュ・たま)、殊(シュ・ことさら)、侏(シュ)、誅(チュウ・ほろぼす)、蛛(チュウ・くも)などがこの漢字の仲間です。これらの漢字は同じという構成要素をもつので、漢字の足し算で表すことが出来ます。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて、まとめて漢字の足し算でを覚えると便利です。朱(シュ・あか)に何を足すと株、珠、殊、侏、誅、蛛になるのかを考えます。株は小学校6年で習う漢字 、朱、珠、殊は中学校で習います。
『朱(シュ)』zhūは、切り株の朱色(シュいろ)の部分を指す指事文字です。漢字の足し算で覚えるならば、木+ノ+一=朱(切り株の赤い部分。切り株。赤い部分転じて朱(あか)。朱色)です。漢字の部首は『木・き』、漢字の意味は『切り株』、『動かない』、『丸い』、『低い』、『朱色の部分』、『朱(あか)』です。
もともと『切り株』を表す漢字でしたが、朱色(シュいろ)を表す漢字として使われるようになりました(藤堂)。水銀から朱色(シュいろ)をとる象形であるという説(白川)もあります。
音読みは呉音が『ス』、漢音が『シュ』、訓読みは常用外(普段使わない読み方)に『朱(あか)』があります。朱色(シュいろ)の公式の印を朱印(シュイン)、南方をつかさどる火・夏の神鳥を朱雀(スジャク・スザク)、鷺(さぎ)に似た赤味を帯びた大型の水鳥を朱鷺(とき)といいます。
東洋では高貴な色で、『あか』、『あけ』、『あけみ』、『あや』と名前に使われます。
朱(シュ)は中学生で習う常用漢字です。
少し漢字の成り立ちの話をしましょう。最古の辞書は後漢(西暦100年頃)の許慎(キョシン)の「説文解字(セツモンカイジ)」です。許慎はその中で漢字について六種の原理を説明しています。これを『六書(リクショ)』といいます。六種類のうち四種類は漢字の成り立ちについて、残りの二種類は漢字の使用法についてしるしています。
彼は、漢字(=文字)の成り立ちを、物の形に象(かたど)った『象形』(ショウケイ)、象形文字を基に点や線を足すことによって示された『指事』(シジ)、文字を組み合わせた『会意』(カイイ)、意味と音・声を示す文字を組み合わせた『形声』(ケイセイ)の四種類に分類しました。
『朱』は木を象(かたど)った象形文字に点を足すことによって出来た『指事文字』です。『株』は木に朱、『珠』は王に朱、『殊』は歹に朱、『侏』はイに朱、『誅』は言に朱、『蛛』は虫に朱を組み合わせた文字です。『朱(シュ)』の音・声(音符)含みますから『形声文字』です。
漢字の殆(ほとん)どはこの『形声文字』です。漢字が足し算であるというのは、この漢字の成り立ちに関わっています。『形声文字』は音・声(音読み)が同じなので、音・声(音読み)を基にして漢字の足し算で、漢字を覚えようとしているわけです。
『株(シュ)』zhūは、切り株を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、木(き)+朱(切り株の赤い部分)=株(切り株の赤い部分。切り株)です。漢字の部首は『木・き』、漢字の意味は『切り株』、『草木を植える単位』、『得意』、『身分・評価』、『株式』です。
音読みは呉音・漢音が『チュウ』、漢音が『シュ』、訓読みが『株(かぶ)』、『株(くいぜ)』です。我が国では一定の出資金を募る制度を株式(かぶシキ)、親分(おやブン)相等の身分を親分株(おやブンかぶ)、切り株(かぶ)を守ること・進歩がないことを守株(シュシュ)といいます。
古い習慣に頼りにして、進歩がないことを守株(シュシュ)といいます。その由来です。
☆昔、中国の宋(ソウ)の国の農夫が、偶々(たまたま)、切り株(かぶ)に当たって死んだ兎(うさぎ)を拾った。それから農夫は田を耕すことをを止めて、切り株の傍(そば)で、次の兎が来るのを待ったが、兎は来るはずもなく、国中の笑い者になってしまった。
良い意味の漢字で『もと』、『より』と名前に使われます。
株(シュ)は小学校6年で習う漢字です。
『珠(シュ)』zhūは、真珠(シンジュ)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、王(玉。宝石)+朱(赤。丸い)=珠(赤くて丸い宝石。真珠。シンジュ)です。漢字の部首は『王・たま』、漢字の意味は『真珠(シンジュ)』、『真珠に似た珠(たま)』です。
『玉(たま・宝石)』は漢字の部首になると『、』を省いて『王(オウ)』の形になります。
音読みは呉音が『ス』、漢音が『シュ』、訓読みが『珠(たま)』です。貝の内部でつくられる丸い珠(たま)を真珠(シンジュ)、真珠や宝玉・美しい物を珠玉(シュギョク)、仏教で火炎が燃え上がっている様子の珠(たま)を宝珠(ホウジュ・ホウシュ)、仏具に用いる108個の珠(たま)を数珠(じゅず)といいます。数珠(じゅず)は常用漢字表に記載されている特別な読み方です。
良い意味の漢字で『たま』、『み』と名前に使われます。
珠(シュ)は中学生で習う常用漢字です。
『殊(シュ)』shūは、木を切る様に人を殺すことを表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、歹(死・骨)+朱(切り株)=殊(木を切る様に人を殺す。極刑。転じて殊(こと)さら)です。漢字の部首は『歹・かばね、がつ』、漢字の意味は『死刑』、『断つ』、『殊(こと)さら』です。
音読みは呉音が『ズ・ジュ』、漢音が『シュ』、訓読みが『殊(こと)』です。死を覚悟すること・死刑のことを殊死(シュシ)、ほかと著(いちじる)しく異なることを・特別なことを特殊(トクシュ)、ほかよりも特に優れた功績を殊勲(シュクン)といいます。
殊(シュ)はは中学生で覚える常用漢字です。
『侏(シュ)』zhūは、小さい人を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、イ(人間)+朱(低い)=侏(低い人。小さい人。小さい俳優)です。漢字の部首は『イ・にんべん』、漢字の意味は『小さい人』です。
音読みは呉音が『ス』、漢音が『シュ』です。小さい人や道徳・学問的に小さな人を侏儒(シュジュ)といいます。芥川龍之介の作品に『侏儒の言葉』があります。
侏(シュ)は中学校で習う常用漢字から外れています。
『誅(チュウ)』zhūは、罪を言い渡して殺す様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、言(言い渡す)+殊(死刑)=誅(罪を言い渡して殺す)です。漢字の部首は『言・ごんべん』、漢字の意味は『罪を言い渡して殺す』、『ほろぼす』、『責める』です。
音読みは呉音・漢音ともに『チュウ』です。罪を明らかにして殺すことを誅殺(チュウサツ)、天の下す罰・天に代わって下す罰を天誅(テンチュウ)、厳しく取り立てることを誅求(チュウキュウ)といいます。
誅(チュウ)は中学校で習う常用漢字から外れています。
『蛛(チュウ)』zhūは、巣を張って動かない蜘蛛(くも)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、虫(むし)+朱(動かない)=蛛(巣を張って動かない蜘蛛。くも)です。漢字の部首は『虫・むしへん』、漢字の意味は『蜘蛛(くも)』です。
蜘(チ・ためらう虫)と一緒に使って蜘蛛(チチュウ・くも)を表します。
音読みは呉音・漢音ともに『チュウ』です。足が八本で糸を出し網を張って小形の虫を捕まえる肉食動物を蜘蛛(チチュウ・くも)といいます。(網を張らない蜘蛛もいます)
蛛(チュウ)は中学校で習う常用漢字から外れています。『部首索引 虫(むし)』も御覧ください。
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.しゅいん( )船。
2.すじゃく( )。
3.かぶしき( )。
4.とくしゅ( )任務。
5.しゅくん( )賞。
6.しゅじゅ( )の言葉。
7.罪人を ちゅうさつ( )する。
8.くも( )の糸。
解説です。基本の漢字は朱、株(かぶ)は木を足して株、珠(たま)は王を足して珠、殊(こと)には歹(かばね)を足して殊、誅(罪を言い渡す)は言(ごんべん)を足して誅、蜘蛛(くも)は虫を足して蛛です。
解答です。朱印、朱雀、株式、特殊、殊勲、侏儒、誅殺、蜘蛛。
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