漢字の覚え方 云
今日は『云(ウン)』yúnという漢字の『単語家族』について説明します。基本になる漢字は『云』です。音読みは『ウン』、『コン』、意味は『もやもやした』です。云、雲、芸、耘、魂などがこの漢字の『単語家族』です。
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『云』に何を足すと、雲、芸、耘、魂になるのかを考えます。雲は小学校2年生 で、藝(芸)(ゲイ)は小学校4年生 、魂は中学校で習う常用漢字、云は人名用漢字です。学年、学校に関係なく一緒に習いましょう。
『云(ウン)』yúnは、もやもやした様子・口ごもる様子を表した象形文字です。漢字の部首は『二・に』、漢字の意味は『雲(くも)』、『もやもや』、『ふわふわ』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ウン』、訓読みは『云(い)う』です。これは何?これはどう?と云うことを云何(イカン)、それ以下を省略して云うことを云云(ウンヌン・ウンウン)といいます。
云(い)うは言(い)うhttp://bit.ly/1vDDBdBと書くのが普通です。
漢字の世界では、漢字によって多少ニュアンスの違いがあります。
云(い)う 口ごもって云う。引用して云う。 『漢字の覚え方 云』http://bit.ly/1Tnh3Xf
言(い)う はっきり言う。 『漢字の覚え方 辛』http://bit.ly/1vDDBdB
謂(い)う あることについて話す。 『漢字の覚え方 胃』http://bit.ly/1wflL22
曰(いわ)く 言った事には。~が言うのには。 『漢字の覚え方 口』http://bit.ly/1XmVkQX
話(はな)す 勢いよく話す。 『漢字の覚え方 舌』http://bit.ly/1vZXObd
喋(しゃべ)る ペラペラ喋る 『漢字の覚え方 枼』http://bit.ly/1R7K6Mw
です。
意思を伝える大事な漢字で『おき』、『これ』、『とも』、『ひと』と名前に使います。
云(ウン)は人名用(地名・人名に使える漢字)です。
云(ウン)は専(セン)の省略字体として漢字の部分に使われることがあります。伝(デン)、転(テン)などがそうです。詳しくは『漢字の覚え方 専』http://bit.ly/1IjzgE3 をご覧ください。
少し漢字の成り立ちの話をしましょう。最古の辞書は後漢(西暦100年頃)の許慎(キョシン)の「説文解字(セツモンカイジ)」です。許慎はその中で漢字について六種の原理を説明しています。これを『六書(リクショ)』といいます。六種類のうち四種類は漢字の成り立ちについて、残りの二種類は漢字の使用法についてしるしています。
彼は、漢字(=文字)の成り立ちを、物の形に象(かたど)った『象形』(ショウケイ)、象形文字を基に点や線を足すことによって示された『指事』(シジ)、文字を組み合わせた『会意』(カイイ)、意味と音・声を示す文字を組み合わせた『形声』(ケイセイ)の四種類に分類しました。
『云』はもやもやした様子を象(かたど)った象形文字です。『雲』は雨に云、『耘』は耒に云、『芸』は艹に云、『魂』は云に鬼を組み合わせた文字です。『云(ウン)』の音・声(音符)含みますから『形声文字』です。
漢字の殆(ほとん)どはこの『形声文字』です。漢字が足し算であるというのは、この漢字の成り立ちに関わっています。『形声文字』は音・声(音読み)が同じなので、音・声(音読み)を基にして漢字の足し算で、漢字を覚えようとしているわけです。
『雲(ウン)』yúnは、雲の様子を表した形声文字です。漢字の足し算では、雨(水分)+云(もやもやした湯気)=雲(水分がもやもやと空気中に浮かんでいる様子。くも)です。漢字の部首は『雨・あめ』、漢字の意味は『雲(くも)』、『もやもやとしたもの』です。
読みは呉音・漢音ともに『ウン』、訓読みは『くも』です。雲を海に例える表現を雲海(ウンカイ)、雲のようにみえる星間のガスの塊(かたまり)を星雲(セイウン)、雲や水のように流れて生きる自由人・諸国を行脚する修行僧を雲水(ウンスイ)、強い上昇気流によって発達した雲を入道雲(ニュウドウグモ)といいます。
雲(ウン)は小学校2年生で習う漢字 です。
『耘(ウン)』yúnは、土をふわふわ耕す様子を表した形声文字です。漢字の足し算では、耒(すき)+云(ふわふわ)=耘(雑草を取り、耒(すき)で土を耕してもやもやとふわふわにする)です。漢字の部首は『耒・すき』、漢字の意味は『耘(くさぎ)る』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ウン』、訓読みは『耘(くさぎ)る』です。雑草を取り土を耕(たがや)すことを耕耘(コウウン)、鋤(すき)や鍬(くわ)で田畑を耕すことを耘鋤(ウンジョ)といいます。
耘(ウン)は常用漢字から外れています。
『芸(ウン)』yúnは、もやもやした雑草をとる様子を表した形声文字です。漢字の足し算では、艹(植物)+云(もやもや)=芸(もやもやした雑草をとる。芸(くさぎ)る。香りのある植物)です。漢字の部首は『艹・くさかんむり』、漢字の意味は、『もやもやした雑草をとる』、『香りのある植物』、『ヘンルーダ』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ウン』、訓読みは『芸(くさぎ)る』です。香りのある植物の『ヘンルーダ』も指します。書物にはさんで防虫剤に使用しました。ヘンルーダの香りを芸香(ウンコウ)、書斎(ショサイ)のことを芸閣(ウンカク)といいます。
芸(ウン)は常用漢字から外れています。
藝(ゲイ)の省略字体の芸(ゲイ)と字体が被(かぶ)っており、芸(ウン)は常用漢字ではないので使われることはありません。本来は藝能人(ゲイノウジン)が正しい字で、芸能人(ウンノウジン)は正しくありません。書くのが大変なので日常的に使っているわけです。
では、藝(ゲイ)です。
『芸・藝(ゲイ)』yìは、自然の植物に手を加えて栽培する様子を表す漢字です。漢字の足し算では、艹(植物)+埶(手を加える)+云(もやもやした雑草)=藝・芸(雑草を取って手を加えて栽培する。形よく仕上げる。転じて、技術。わざ)です。漢字の部首は『艹・くさかんむり』、漢字の意味は、『形よく仕上げる』、『技術』、『才能』です。
書くのが大変なので、別の漢字の『芸(ウン・雑草をとる)』yunを、『藝(ゲイ)』yiとして使っています。常用漢字体(一般社会で使う漢字)は『芸(ゲイ)』なので、『芸(ゲイ)』を使って下さい。
音読みは呉音が『ゲ』、漢音が『ゲイ』です。宴会などで歌や踊りなどの芸を披露する人を芸者(ゲイシャ)、遊芸を職業とする人を芸人(ゲイニン)、人間による技術の成果・能力を芸術(ゲイジュツ)といいます。
芸(ゲイ)は小学校4年生 http://bit.ly/1fwNaWz で習う漢字です。
藝(ゲイ)は埶(ゲイ)と同じ『単語家族』です。熱(ネツ)などの仲間の漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 埶』http://bit.ly/1VppouX をご覧ください。
『魂(コン)』húnは、もやもやした人間の魂(たましい)を表した形声文字です。漢字の足し算では、云(もやもや)+鬼(死んだ人・霊)=魂(もやもやした人間の魂。たましい)です。漢字の部首は『鬼・おに、きにょう』、漢字の意味は、『魂(たましい)』です。
漢字の世界では、死後空に昇天(ショウテン)する『たましい』を『魂(コン)』、しばらくの間地上に留まる(骨を表す白+鬼)『たましい』を『魄(ハク)』http://bit.ly/1rkEIHJ といいます。
音読みは呉音が『ゴン』、漢音が『コン』、訓読みは『魂(たましい)』、です。『たましい』を漢語で魂魄(コンパク)、魂(たましい)と胆(きも)・心の動き・たくらみを魂胆(コンタン)といいます。
良い意味の漢字で『たま』、『みたま』、『もと』と名前に使われます。
魂(コン)は中学校で習う常用漢字です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/post-3d81.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.口ごもって い( )う。
2.にゅうどうぐも( )。
3.こううん( )機。
4.書斎のことを うんかく( )とも。
5.げいのうじん( )。
6.こんぱく( )する。
解説です。基本の漢字は云、雲(くも)は雨を足して雲、耘(くさぎ)るは耒(すき)を足して耘、芸(ウン)は艹(くさかんむり)を足して芸、藝(ゲイ)は艹と埶を足して藝、魂(たましい)は鬼を足して魂です。
解答です。云う、入道雲、耕耘、芸閣、芸能人、藝能人、魂魄。
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