漢字の覚え方 爪・爫・㕚
今日は『爪・爫・㕚(ソウ)』zhǎo、zhuǎという漢字の仲間について説明します。基本になる漢字は『爪』・『爫』・『㕚』です。音読みは『ソウ』、意味は『爪(つめ)』、『掻(か)く』、『手』です。爪、抓、笊、争(爭)、諍、箏、浄(淨)、蚤、掻、騒などがこの漢字の仲間です。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて漢字の足し算でを覚えると便利です。『爪』・『爫』・『㕚』に何を足すと抓、笊、争、諍、箏、浄、蚤、掻、騒になるのかを考えます。争は小学校4年生で習う漢字 、浄、騒は中学校で習う常用漢字、爪は中学生で習うようになった常用漢字 です。
字体は爪・爫・㕚とあり、原字は㕚で、一般的に単独では爪が使われ、漢字の冠(かんむり・かしら)では、爫になります。
『爪・爫・㕚(ソウ)』zhǎo、zhuǎ は、爪(つめ)を表わす指事文字です。漢字の足し算で覚えるならば、又(手)+丶丶(爪を表す点)=㕚(手の爪を表す漢字。爪。つめ)です。漢字の部首は『爪・つめ』、意味は『爪(つめ)』、『手の先の部分』です。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』、訓読みは『爪(つめ)』です。爪と牙・国家を守る武臣を爪牙(ソウガ)、爪(つめ)を切る道具を爪切り(つめきり)、足の先を爪先(つまさき)といいます。
爪(つめ)は複合語になると爪先(つまさき)と爪(つま)と読むことがあります。これは、日本語の変遷の問題といわれています。日本語(大和言葉)のエ列乙類(専門用語です。詳しくは直接参考図書をご覧ください)のえは、あい→えと変化したために、あと深い関係にあり、複合語では時としてあに戻るためと考えられています。
酒(さけ)→酒樽(さかだる)、爪(つめ)→爪先(つまさき)、雨(あめ)→雨雲(あまぐも)、竹(たけ)→竹群(たかむら)、菅(すげ)→菅原(すがわら) などの例があります。
参考図書 『日本語の文法を考える』 大野晋 岩波新書 p196 『日本語の変遷』 金田一京助 講談社学術文庫 p155
爪(ソウ)は新たに中学校で習うようになった常用漢字 です。
瓜(うり)と非常に似ていますが、別字です。「爪(つめ)にヽ(つめ)なし、瓜(うり)にヽ(つめ)あり」と覚えます。
『抓(ソウ)』zhuāは、抓(つま)む様子を表わす形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、扌(手の動作)+爪(手の先の部分)=抓(手で抓(つま)む。抓(つ)ねる)です。漢字の部首は『扌・てへん』、意味は『抓(つま)む』です。我が国では『抓(つ)ねる』の意味にも使います。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』、訓読みは『抓(つま)む』、『抓(つ)ねる』です。
『抓(つま)む』は、摘つま)む』と書くのが普通です。
抓(ソウ)は常用漢字から外れています。
『笊(ソウ)』zhàoは、笊(ざる)を表わす形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、竹(竹製品)+爪(手先の動作)=笊(手を使う竹製品。笊。ざる)です。漢字の部首は『竹・たけかんむり』、意味は『笊(ざる)』です。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』、訓読みは『笊(ざる)』です。
笊(ソウ)は常用漢字から外れています。
『争(ソウ)』zhēngは、手と手で物を取り合う様子を表す会意文字です。漢字の足し算で覚えるならば、爫(手)+ヨ(手)+亅(物)=爭・争(手と手で物を取り合う。争う。あらそう)です。漢字の部首は『亅・はねぼう』、意味は『争(あらそ)う』です。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』、訓読みは『争(あらそ)う』です。兵器を持って戦い争うことを戦争(センソウ)、同じ目的に向かって競い争うことを競争(キョウソウ)、意見を主張して争うことを争議(ソウギ)といいます。
本字は爫(つめかんむり)を使うの爭ですが、常用漢字体の争を使って下さい。
争(ソウ)は小学校4年生で習う漢字です。
『諍(ソウ)』zhèngは、言い争う様子を表す会意文字です。漢字の足し算では、言(言葉)+爭(争う)=諍(言葉と言葉で争う。諍(いさか)う)です。漢字の部首は『言・ごんべん』、意味は『諍(いさか)う』、『いさめる』です。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』、訓読みは『諍(いさか)う』です。君主のあやまちを諌(いさ)める臣下を諍臣(ソウシン)といいます。
諍(ソウ)は常用漢字から外れています。
『筝(ソウ)』zhēngは、手(爪)で奏(かな)でる箏(こと)を表す形声文字です。漢字の足し算では、竹(竹製品)+爭・争(手と手。引っ張り合う)=箏・筝(手で奏でる箏。弦を張った箏。こと)です。漢字の部首は『竹・たけかんむり』、意味は『箏(こと)』です。一般的に大陸から伝来した弦楽器を琴(キン)『漢字の覚え方 今』http://bit.ly/1tnWgdc といいます。狭義には柱のないものが琴(こと・キン)、柱のあるものが箏(こと・ソウ)で、我々が思い浮かべる『こと』とは、本来『箏(こと)』のことです。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』、訓読みは『箏(こと)』です。箏(こと)で奏(かな)でる曲を箏曲(ソウキョク)といいます。
省略字体の筝のほかに、本字の箏が使えます。
箏(ソウ)は常用漢字から外れています。
『浄(ジョウ)』jìngは、水の綺麗な様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、氵(水)+爭・争(手と手)=淨・浄(手と洗う綺麗な水。浄(きよ)い)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、意味は『浄(きよ)い』です。争(争う・手と手)の原義には関係ない(藤堂)ともいわれています。
本字は淨ですが、常用漢字体の浄を使って下さい。
音読みは呉音が『ジョウ』、漢音が『セイ』、訓読みは常用外の『浄(きよ)い』です。汚れたものを浄(きよ)くすることを浄化(ジョウカ)、心身を洗い浄めることを洗浄(センジョウ)、汚れや迷いのない土地・仏の世界を浄土(ジョウド)といいます。
非常に良い意味の漢字で『きよ』、『きよし』、『しず』と名前に使われます。
水をかけて洗うことを洗滌(センジョウ・センデキ)http://bit.ly/2cyVQPw といいますが、滌(ジョウ)http://bit.ly/2cyVQPw が常用漢字でないため洗浄(センジョウ)と書くことがあります。
浄(ジョウ)は中学生 で習う常用漢字です。
『蚤(ソウ)』zǎoは、掻(か)ゆい虫・蚤(のみ)を表わす形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、㕚(手の動作)+虫(むし)=蚤(掻(か)ゆい虫。蚤。のみ)です。漢字の部首は『虫・むし』、意味は『蚤(のみ)』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ソウ』、訓読みは『蚤(のみ)』です。早(ソウ)の替わりに使われることがありまうす。早いことと晩(おそ)いことを早晩・蚤晩(ソウバン)といいます。
妻の方がの体が大きい夫婦を蚤(のみ)の夫婦といいます。部首索引 虫(むし)も御覧ください。
蚤(ソウ)は常用漢字から外れています。
『掻(ソウ)』sāoは、掻(か)く様子を表わす形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、扌(手の動作)+蚤(のみ・かゆい)=搔・掻(かゆいとところを掻く。かく)です。漢字の部首は『扌・てへん』、意味は『掻(か)く』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ソウ』、訓読みは『掻(か)く』です。痒(かゆ)い所を掻くことを掻痒(ソウヨウ)、頭を掻くことを掻頭(ソウトウ)といいます。
隔靴掻痒(カッカソウヨウ)とは靴(くつ)を隔(へだ)てて痒(かゆ)いところを掻(か)くですから、もどかしいことを表す四字熟語です。
省略字体の掻のほかに、本字の搔が使えます。
掻(ソウ)は常用漢字から外れています。
『騒(ソウ)』sāoは、馬が痒(かゆ)くて騒(さわ)ぐ様子を表わす形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、馬(うま)+蚤・掻(のみ・かゆい・掻く)=騷・騒(馬が痒くて騒(さわ)ぐ。前足で掻いて騷(さわ)ぐ)です。漢字の部首は『馬・うま』、意味は『騒(さわ)ぐ』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ソウ』、訓読みは『騒(さわ)ぐ』です。事件が起こり世の中が乱れることを騒動(ソウドウ)、喧(やかま)しく騒ぎ立てる様子を喧騒(ケンソウ)、騒がしい様子を騒然(ソウゼン)といいます。
『説文解字』には書かれていませんが、漢字の世界で 馬は、動作を表すことがあるようです。
騒(さわ)ぐhttp://bit.ly/1fPT7gj 騰(あ)がるhttp://bit.ly/1sYc9oI
篤(あつ)いhttp://bit.ly/1Mc0f0o 驚(おどろ)くhttp://bit.ly/1rewZLf
本字は騷ですが、常用漢字体の騒を使って下さい。
騷(ソウ)は中学生 で習う常用漢字です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-3abc.html
http://bit.ly/1fPT7gj 『漢字の覚え方 爪』 爪 争 浄 騒
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.つまさき( )。
2.つめき( )り。
3.手で つね( )る。
4.ざる( )を使う。
5.せんそう( )と平和。
6.きょうそう( )社会。
7.いさか( )いが絶えない。
8.空気の じょうか( )。
9.極楽 じょうど( )。
10.のみ( )の夫婦。
11.痒いところを か( )く。
12.米 そうどう( )。
解説です。基本の漢字は爪か㕚、冠では爫、抓(つね)るは扌(てへん)を足して抓、笊(ざる)は竹(たけかんむり)を足して笊、争(あらそ)うはヨと亅(はねぼう)を足して争、諍(いさか)いは争に言(ごんべん)を足して諍、浄(きよ)いは氵(さんずい)を足して浄、蚤(のみ)は虫を足して蚤、掻くは扌(てhん)を足して掻、騒ぐは馬を足して騷です。
解答です。爪先。爪切り、抓る、笊、戦争、競争、諍い、浄化、浄土、蚤、掻く、騒動。
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爪は常用漢字になりましたよね?
投稿: あれ? | 2020年6月29日 (月) 07時59分
ありがとうございます。
投稿: 風船あられ | 2020年6月29日 (月) 20時20分