小学校5年生で習う漢字④(任~領)
小学校5年生で習う漢字を説明します。『小学校5年生で習う漢字①』(圧~群)と 『小学校5年生で習う漢字②』(経~職)、 『小学校5年生で習う漢字③』(制~独)、『小学校5年生で習う漢字④』(任~領)に分割しています。ご了承下さい。
漢字の説明の前に、漢字の成り立ちの話をしましょう。最古の漢字辞書は後漢(西暦100年頃)の許慎(キョシン)の「説文解字(セツモンカイジ)」です。許慎はその中で漢字の成り立ちについて、四種類あるとしました。中学の教科書に掲載されるようになったので、解説致します。
①.物の形を象った(かたどった)『象形文字』(ショウケイモジ)、②.象形文字を基に点を打つことにより示された『指事文字』(シジモジ)、③.文字を組み合わせて造った『会意文字』(カイイモジ)、④.意味と音を示す文字を組み合わせた『形声文字』(ケイセイモジ)の四種です。『会意文字』と『形声文字』は漢字の足し算で表す事が出来ます。個々の漢字についてはまとめてありますので象形・指事・会意・形声 五年生も御覧ください。
漢字の成り立ちについての解釈は四通りです。どの時代の漢字に重点を置くか、また「説文解字(セツモンカイジ)」にどれほど敬意を払うかにより、解釈が違う場合が稀にあります。ある辞書では『見』を象形文字、別の辞書では目+儿の会意文字としています。漢字の解釈については諸説あることを御承知下さい。
『任(ニン)』rènは、任(まか)せる様子を表わす形声文字です。漢字の足し算覚えるならば、イ(人間の動作)+壬(かかえこむ)=任(抱え込んだ重い荷物。仕事。仕事を引き受ける。任せる)です。漢字の部首は『イ・にんべん』、意味は『抱え込んだ重い荷物』、『仕事』、『任(まか)せる』です。荷物ではなく工具という説もあります(白川)。
音読みは呉音が『ニン』、漢音が『ジン』、訓読みが『任(まか)せる』です。仕事の結果について責めを負うことを責任(セキニン)、抱え込んだ重い仕事を任務(ニンム)、干渉しないで自由にさせることを放任(ホウニン)、思うままに任されること・行うことを任意(ニンイ)といいます。
呉音の『ニン』は漢音では『ジン』と読むことがあります。人(ニン・ジン)、忍(ニン・ジン)、刃(ニン・ジン)などの漢字もそうです。音読みの呉音、漢音については『呉音と漢音』http://bit.ly/1LUTTpI もご覧ください。
とても良い意味の漢字で『たえ』、『たか』、『たかし』、『ただ』、『たね』、『たもつ』、『と』、『とう』、『ひで』と名前に使われます。
任(ニン)は壬(ニン・ジン)の漢字の仲間で、妊(ニン)、賃(チン)などの仲間の漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 壬』をご覧ください。
『燃(ネン)』ránは、肉を焼く様子・燃える様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、火(火)+月(肉)+犬(犬・動物)+灬(火)=燃(動物の肉が燃(も)える。燃える)です。漢字の部首は『火・ひへん』、漢字の意味は『燃(も)える』です。
然は燃(も)えている様子を表していましたが、燃えるにかかわらず、様子を表す漢字になりました。燃えるを表す漢字は火を足した燃(ネン)を使います。
音読みは呉音が『ネン』、漢音が『ゼン』、訓読みは『燃(も)える』です。熱を出して燃えることをを燃焼(ネンショウ)、燃やすのに必要な材料を燃料(ネンリョウ)、機械が消費する燃料の効率を燃費(ネンピ)といいます。
燃(ネン)は然(ネン・ゼン)の漢字の仲間で、撚(ネン)などの仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 然』をご覧ください。
『能(ノウ)』néngは、能(よ)く働く様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、ム(耜・すき。働く・タイ)+月(肉)+ヒヒ(足)=能(手足を使ってよく働く)です(藤堂)。漢字の部首は『月・にくづき』、意味は『物事が出来る力』、『はたらき』、『技術に優れた事』です。
水生昆虫を象(かたど)った象形文字であるという説(白川)、熊(くま)のような力のある動物という説もあります。
音読みは呉音が『ノウ』、漢音が『ドウ』、訓読みが常用外の『能(よ)く』、『能(あた)う』です。物事が出来る力を能力(ノウリョク)、出来る見込み・ありうることを可能(カノウ)、動物が経験によらずに本来持っている能力を本能(ホンノウ)、弁舌に優れていることを能弁(ノウベン)といいます。
非常に良い意味の漢字で『たか』、『ちから』、『とう』、『のり』、『ひさ』、『みち』、『むね』、『やす』、『よき』、『よし』と名前に使われます。
また、耐(た)える・耐える状態の意味では、音読みは呉音が『ナイ』、漢音が『ダイ』と読みます。
能(ノウ)の漢字の仲間には、態(タイ)などの仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 能』 をご覧ください。
『破(ハ)』pòは、石で皮が破れる様子を漢字にした形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、石(いし)+皮(かわ)=破(石で皮が破れる)です。部首は『石』、意味は『破れる』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ハ』で、訓読みは『破(やぶ)れる)です。破壊(ハカイ)、破局(ハキョク)、難破(ナンパ)、破天荒(ハテンコウ)の破です。
破(ハ)は皮(ヒ)の漢字の仲間で、彼(ヒ)、波(ハ)、破(ハ)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 皮』をご覧ください。
『犯(ハン)』fànという漢字は、法を犯(おか)す様子を漢字にしたものです。漢字の足し算で覚えるならば、犬(犭・けものへん)が使われています。
犭(犬の行動)+㔾(わく)=犯(犬が枠を破って飛び出す。犯す)です。漢字の部首は『犭・けものへん』、意味は『犯(おか)す』、『罪人』です。
音読みは漢音が『ハン』、呉音が『ボン』、訓読みは『犯(おか)す』です。犯人(ハンニン)、犯罪(ハンザイ)、主犯(シュハン)、共犯(キョウハン)の犯です。
犯(ハン)は㔾(ハン)の漢字の仲間で、氾(ハン)、範(ハン)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 犯』をご覧ください。
『判(ハン・バン)』pànは、契約に関する書類を半分にした形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、半(半分の書類)+刂(りっとう・刀)=判(書類を半分にする・区別する)です。漢字の部首は『刂・りっとう』です。
契約の書類というのは、契約者の各々が半文づつを持ちます。この契約書に押すのが判子(ハンこ)です。契約が拗(こじ)れた時に白黒をつけるのが裁判(サイバン)、判決(ハンケツ)、判定(ハンテイ)です。『判』は結論を下すことを意味します。
音読みは呉音・漢音ともに『ハン』、慣用音が『バン』で、訓読みは、『判(わか)る』です。判別が必要なときは『判(わか)る』を使います。『善悪が判(わか)る』、『違いが判(わか)る』です。
昔の役所の官名を判官(ホウガン・ハンガン・源義経のこと)と読みます。また書類のサイズや(A4判)、大型の金貨(小判・大判)も指し示す漢字です。
判(ハン)は半(ハン)の漢字の仲間で、伴(ハン)、絆(ハン)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 半』をご覧ください。
建築の話をします。版築(ハンチク)という建築方法があります。板の間(あいだ)に土や石灰(現在ではコンクリート)を入れて叩いて固める建築方法です。版築に使われる左側の板を『爿(ショウ)』qiang、右側を『片(ヘン)』piànといいます。『爿(ショウ)』はベッドや床などの意味に発展し、『片(ヘン)』は片側を示す意味になりました。
『版(ハン)』bǎnという漢字は版築(ハンチク)の板を示す漢字です。時代が下がると出版用の板を版と呼ぶようになりました。
『版(ハン)』bǎnは、建築用の板を漢字にしたものです。漢字の足し算で覚えるならば、片(かたへん)+板(いた)=版(版築用の板)です。 漢字の部首は『片・かたへん』、意味は『建築用・印刷用の板』です。
音読みは漢音『ハン』、呉音が『ヘン』です。版築(ハンチク)、出版(シュッパン)、絶版(ゼッパン)、版図(ハント)の版です。
版(ハン)は反(ハン)の漢字の仲間で、坂(ハン)、板(ハン)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 反』をご覧ください。
『比(ヒ)』bǐを説明します。『比』は人が二人くっついて並んでいる様子を漢字にした会意文字です。漢字尾の足し算で覚えるならば、ヒ(人間)+ヒ(人間)=比(二人の人を比べる。比べる)です。漢字の部首は『比・くらべる』、意味は『比べる』、『そろって』、『ならべる』です。
古い字体の篆文(テンブン)も記載しておきます。
草書体の『比(ヒ)』からひらがなの『ひ』が、旁(つくり)からカタカナの『ヒ』が出来ました。
音読みは呉音・漢音ともに『ヒ』です。訓読みは『比べる(くらべる)』です。くらべることを漢語で比較(ヒカク)、ある物質の密度の比を比重(ヒジュウ)、二つの数量をくらべたときの割合を比率(ヒリツ)、二つの量において一方が
他方の定数倍になることを比例(ヒレイ)といいます。背を比べることを背比べ(せいくらべ)といいます。
比(ヒ)の漢字の仲間には、批(ヒ)、庇(ヒ)、陛(ヘイ)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 比』をご覧ください
『くらべる』は『較べる』と書くこともできます。こちらは常用外の使い方になるので『比べる』が一般的です。『較べる』の元意は馬車の左右の手すりのことです。左右に並んでいるので『較べる』の意味になりました。
『肥(ヒ)』féiは、肥(ふと)った人を表す漢字です。漢字の足し算で覚えるならば、月(身の変形・お腹)+巴(卩の変形・屈んだ人)=肥(お腹の出た肥った人。肥る。ふとる)です。楷書体では、身体を表す月(にくづき)ですが、甲骨文字ではお腹を表す身(シン・お腹)が使われています。漢字の部首は『月・にくづき』、漢字の意味は『肥(ふと)る』、『土地に養分がある』です。
音読みは呉音が『ビ』、漢音が『ヒ』、訓読みが『肥(こ)える』と常用外の『肥(ふと)る』です。からだがふとることを肥満(ヒマン)、土地が肥えていることを肥沃(ヒヨク)、農作物を肥えさせる栄養を肥料(ヒリョウ)といいます。
肥(ヒ)は巴(ハ)の漢字の仲間ではなく、絶(ゼツ)・色(シキ)と同じく卩(セツ)に近い漢字です。詳しくは『漢字の覚え方 卩・節』をご覧ください。
『非(ヒ)』fēiは、羽が左と右にそむいた様子を象(かたど)った象形文字です(藤堂)。漢字の部首は『非・あらず』、意味は『そむく』、『~ではない』、『みとめない』、『そしる』などの多くの意味があります。櫛(くし)を描いているという説(白川)もあります。漢字の意味は同じです。
音読みは呉音・漢音ともに『ヒ』です。常ではないことを非常(ヒジョウ)、人の悪い点をそしることを非難(ヒナン)、正しい事(是)と認められないこと(非)を是非(ゼヒ)といいます。
非(ヒ)の漢字の仲間には、悲(ヒ)、扉(ヒ)、誹(ヒ)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 非』をご覧ください。
『備(ビ)』bèiは、戦に備(そな)えて矢を用意しておく様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、イ(人の作業)+?(矢の入ったえびら)=備(矢を用意しておく。備える。そなえる)です。漢字の部首は『イ・にんべん』、漢字の意味は『備(そな)える』、『用意』です。
音読みは呉音が『ビ』、漢音が『ヒ』、訓読みが『備(そな)える』です。備えてある品を備品(ビヒン)、参考のために本文に書き添えることを備考(ビコウ)、忘れた場合に備えることを備忘(ビボウ)といいます。
備(ビ)は?(ビ)の漢字の仲間で、糒(ビ)などの仲間の漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 備』をご覧ください。
『俵(ヒョウ)』biàoは、イ(人の作業)に表を足したもので、表にして分ける様子を示す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、イ(にんべん・人の作業)+表=俵(表にあらわして分ける)です。漢字の部首は『イ・にんべん』です。
ばらばらにして分けることを俵散(ヒョウサン)、多くの人に分けることを俵分(ヒョウブン)という様に使っていました。わが国ではバラバラにする前の袋状の入れ物を『俵(たわら)』として表現しています。
音読みは呉音・漢音ともに『ヒョウ』、訓読みは『俵(たわら)』です。土俵(ドヒョウ)、米俵(こめだわら)、炭俵(すみだわら)の俵です。
俵(ヒョウ)は表(ヒョウ)の漢字の仲間です。詳しくは『漢字の覚え方 表』をご覧ください。
『評(ヒョウ)』píngは、左右の言い分を聞いて善悪を判断する様子を描いた形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、言(言葉)+平(水平をみる)=評(左右の言い分を聞いて善悪を判断する。評価する)です。漢字の部首は『言・ごんべん』、漢字の意味は『評価する』、『世間の噂』です。
音読みは呉音が『ビョウ』、漢音が『ヘイ』、慣用音が『ヒョウ』です。左右の意見を出し合い相談することを評議(ヒョウギ)、左右見比べて価値を下すことを評価(ヒョウカ)、善悪を指摘して評価を下すことを批評(ヒヒョウ)、世間の人が批評して判定することを評判(ヒョウバン)といいます。
評(ヒョウ)は平(ビョウ)の漢字の仲間で、坪(ビョウ)、鮃(ビョウ)などの仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 平』をご覧ください。
『貧(ヒン・ビン)』pínは、お金(貝)を分ける様子を漢字にした形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、分(わける)+貝(お金・財宝)=貧(お金を分け与えて貧しくなる)です。部首は『貝』、意味は『貧しい』の他に『少ない』の意味があります。
音読みは漢音が『ヒン』、呉音が『ビン』でどちらも使います。訓読みは『貧(まず)しい)』です。血が少ない事を貧血(ヒンケツ)、貧しくて困っている事を貧困(ヒンコン)、貧しくて乏しいことを貧乏(ビンボウ)、貧しく窮めていることを貧窮(ヒンキュウ)、少なくて弱く見える事を貧弱(ヒンジャク)といいます。
貧(ヒン)は分(フン)の漢字の仲間で、紛(フン)、粉(フン)などの仲間の漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 分』をご覧ください。
『布(フ)』bùは、広い布(ぬの)・巾(きれ)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、父(広い)+巾(布)=布(広い布。布。ぬの)です。漢字の部首は『巾・はば』、漢字の意味は『広い布』、『広げる』です。
音読みは呉音が『フ』、漢音が『ホ』、訓読みが『布(ぬの)』です。食器類をふく布を布巾(フキン)、動植物が広いある範囲を占めていることを分布(ブンプ)、配って広く行き渡らせることを配布(ハイフ)、中国の布と杖を持ち歩いた禅僧、弥勒菩薩の化身、七福神の一人を布袋(ホテイ)といいます。
布(フ)は父(フ)の漢字の仲間で、斧(フ)、釜(フ)などの仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 父・布』 をご覧ください。
『婦(フ)』fùは、帚(ほうき)を持って帰りを待っている女性を表す漢字です。漢字の足し算で覚えるならば、女(女性)+帚(ほうき)=婦(帚(ほうき)を持って夫の帰りを待つ女性。夫のある女性)です。漢字の部首は『女・おんな』、漢字の意味は『夫のある女性』、『成人の女性』、『資格のある女性』です。
音読みは呉音が『ブ』、漢音が『フ』です。夫と妻を夫婦(フウフ)・夫妻(フサイ)、賢い婦人を賢婦(ケンプ)、官位が五位以上の女官を命婦(ミョウブ)といいます。
『婦(フ)』は帰りを待っている女性、『帰(キ)』は女性が帰りを待っている場所を表します。
婦(フ)は帚(ソウ)を使った漢字で、帚(ソウ)の漢字の仲間には、箒(サウ)、掃(ソウ)、帰(キ)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 帚』 をご覧ください。
『富(フ・フウ)』fùは、豊かな財産を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、宀 (べん・家)+畐(ゆたか)=富(家を豊かにする。富む)です。部首は『宀・うかんむり』、意味は『豊かな財産』、『ゆたか』です。
音読みは呉音が『フ』、漢音『フウ』。訓読みは『富む(とむ)』、『富(とみ)』です。富豪(フゴウ)、豊富(ホウフ)、富貴(フウキ・フッキ)、貧富(ヒンプ)、富国強兵(フコクキョウヘイ)、富山(とやま)の富です。
富(フ)は畐(フク)の漢字の仲間で、福(フク)、幅(フク)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 畐』をご覧ください。
『武(ブ)』wǔ は、戈(ほこ)を持って歩く様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、戈(ほこ・武器)+止(足)=武(戈(ほこ)を持って歩く。たけだけしい)です。漢字の部首は『止・とまる』、漢字の意味は『強く勇ましい』、『軍事・戦力』です。
音読みは呉音が『ム』、漢音が『ブ』です。勇気があり強くていさましいことを武勇(ブユウ)、軍隊・兵隊の力を武力(ブリョク)、文事と軍事を文武(ブンブ)といいます。
呉音がマ行(ム)の場合、漢音ではバ行(ブ)になることがあります。音読みの呉音、漢音については『呉音と漢音』http://bit.ly/1LUTTpI もご覧ください。
非常に良い意味の漢字で『いさ』、『いさむ』、『たけ』、『たける』、『たつ』と名前に使われます。
武(ブ)の漢字の仲間には、鵡(ム)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 武』をご覧ください。
『復(フク)』fùは、同じ道を引き返す様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、彳(行)+复(重なる・再び)=復(再び同じ道を行く。かえる。もとの位置に戻る)です。漢字の部首は『彳・ぎょうにんべん』、漢字の意味は『かえる』、『もとの位置に戻る』、『同じことを繰り返す』、『仕返しする』です。
音読みは呉音が『ブク』、漢音が『フク』です。行って帰ってくることを往復(オウフク)、もとの位置や位にかえることを復位(フクイ)、悪い状態からもとに戻ることを回復(カイフク)、習ったことを繰り返すのを復習(フクシュウ)、仕返しをして報いることを報復(ホウフク)といいます。
『複(フク)』fùは、表と裏地の重なった衣服を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、衤(衣服)+复(重なる)=複(表と裏地の重なった衣服。二枚の)です。漢字の部首は『衤・ころもへん』、意味は『二つの』、『二つ以上の』、『同じことを行う』です。衣服だけでなく、人や行動にも使います。
音読みは呉音が『ブク』、漢音が『フク』です。同じことが重なりあうことを重複(チョウフク)、二つ以上の数を複数(フクスウ)、文章などを写しとることを複写(フクシャ)といいます。
復(フク)、複(フク)は复(フク)の漢字の仲間で、腹(フク)、覆(フク)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 复』をご覧ください。
『仏(フツ)』fú、fóは、仏様(ほとけさま)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、イ(人間)+弗(フツ。Buddahaの音訳)=仏・(佛)(真理を得て衆生を強化する仏。ほとけ。ブッダ)です。漢字の部首は『イ・にんべん』、漢字の意味は『仏(ほとけ)』、『仏蘭西(フランス)』です。正字は佛ですが、常用漢字体の仏を使って下さい。
音読みは呉音が『ブツ・ブチ』、漢音が『フツ』、訓読みが『仏(ほとけ)』です。仏さまの教えに基づく宗教を仏教(ブッキョウ)、仏の姿を思い、仏の名を唱えることを念仏(ネンブツ)、仏(ほとけ)と仏の教えと僧を仏法僧(ブッポウソウ)といいます。また、フランスを漢字で表す時に仏蘭西という漢字を使います。
佛(フツ)は弗(フツ)の『単語家族』で、拂(フツ)、沸(フツ)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 弗』 をご覧ください。
『編(ヘン)』biānは、糸でとじて書物を作る様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、糸(いと)+扁(竹製の書類)=編(書類を糸でとじて書物を作る。編(あ)む)です。漢字の部首は『糸・いとへん』、漢字の意味は『糸でとじて書物を作る』、『物を組み合わせて仕立てる』、『編(あ)む』、『文章』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ヘン』、訓読みは『編(あ)む』です。資料を整理し、雑誌・書物などにまとめることを編集(ヘンシュウ)、書物などを方針を変えて編集し直すことを改編(カイヘン)、小説などの短い文章の作品を短編(タンペン)といいます。
良い意味の漢字で『つら』、『よし』と名前に使われます。
編(ヘン)は扁(ヘン)の『単語家族』で、偏(ヘン)、遍(ヘン)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 扁』 をご覧ください。
『弁(ベン)』biànは、理屈めいた議論をする・弁(わきま)える様子を表す形声文字です。正字は辯・辨(ベン)、常用漢字体が弁(ベン)です。漢字の足し算では、辡(刃物)+言(言葉)=辯(切れ味鋭い議論をする)、辡(刃物)+刂(刀で分ける)=辨(けじめをつけて分ける。弁(わきま)える。)です。漢字の部首は『廾・にじゅうあし』、漢字の意味は『理屈めいた議論をする』、『方言』、『弁(わきま)える』、『けじめをつけて処理する』です。
音読みは呉音が『ベン』、漢音が『ヘン』、訓読みが常用外の『弁(わきま)える』です。理屈を立ててその人の主張を助けることを弁護・辯護(ベンゴ)、人に与えた損害をけじめをつけて埋め合わせすることを弁償・辨償(ベンショウ)、調理済みの携帯食を弁当・辨当(ベントウ)といいます。
また、花弁(はなびら)を表す漢字『瓣(ベン)』bianの常用漢字体も、弁(ベン・ハン)です。漢字の足し算では、辡(刃物・分かれる)+瓜(うり)=瓣(瓜の花の一枚、一枚。花びら状のもの)です。はなびらを漢語で花弁・瓣弁(カベン)、管の出入り口にある花びら状の調節装置を弁・瓣(ベン)といいます。
辯(ベン)、辨(ベン)、瓣(ベン)みな同じ辡(ベン)『単語家族』の違う漢字ですが、現在我が国では省略形の弁(ベン)で代用しています。
『保(ホウ)』bǎoは、子供を背負(せお)って保護している様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、イ(人間)+呆(子供)=保(子供を背負(せお)って保護する。養い育てる)です。漢字の部首は『イ・にんべん』、漢字の意味は『養い育てる』、『大切にする』、『保(たも)つ』、『請け負う』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ホウ』、慣用音が『ホ』、訓読みは『保(たも)つ』です。幼児を保護し育てることを保育(ホイク)、危険からかばい守ることを保護(ホゴ)、温度を一定に保つことを保温(ホオン)、事故など経済的不安に備えて、掛け金を出し合い、請け負う制度を保険(ホケン)といいます。
保(ホウ)は呆(ホウ)の漢字の仲間で、褓(ホウ)などの仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 呆』 をご覧ください。
『墓(ボ)』mùは、遺体(イタイ)に土を掛けて見えなくする形声文字で、御墓(おはか)を表します。遺体(イタイ)に土を掛けて見えなくするの場所が『墓(ボ)』mùです。漢字の足し算で覚えるならば、莫(みえない)+土=墓(死体に土をかける様子)です。部首は『土・つち』です。
音読みは呉音の『モ』は使わず、漢音の『ボ』を使います。訓読みは『墓(はか)』です。墓地(ボチ)、墓穴(ボケツ)の墓です。
呉音がマ行(モ)の場合、漢音ではバ行(ボ)になることがあります。音読みの呉音、漢音については『呉音と漢音』http://bit.ly/1LUTTpI もご覧ください。
墓(ボ)は莫(マク・ボ)の仲間の漢字で、暮(ボ)、慕(ボ)などの仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 莫』をご覧ください。
『報(ホウ)』bàoは、報(むく)いる様子を表す会意文字です。漢字の足し算で覚えるならば、幸(手枷)+卩(屈んだ人)+又(手の動作)=報(相手に仕返しをする。御返しをする。転じて報(むく)いる。報(しら)せる)です。漢字の部首は『土・つち』、漢字の意味は『報(むく)いる』、『報(しら)せる』です。
音読みは呉音が『ホ・ホウ』、漢音が『ホウ』、訓読みは『報(むく)いる』、『報(しら)せる』です。労務の対価として給付される金銭を報酬(ホウシュウ)、仕返しをすることを報復(ホウフク)、告げ知らせることを報告(ホウコク)、ある物事の事情についての知らせを情報(ジョウホウ)といいます。
良い意味にも、悪い意味にも使われ、良い意味では『お』、『つぐ』と名前に使われます。
報(ホウ・報いる)は?を使った漢字です。『漢字の覚え方 服』もご覧ください。
『豊(豐)(ホウ)』fēngは、作物が豊(ゆたか)かな様子を表す形声文字です。正字は豐、常用漢字体は豊です。漢字の足し算で覚えるならば、丰丰(穀物を高く盛る)+山(高く)+豆(たかつき)=豊(豐)(収穫した作物がたかつきの上に一杯である。豊かである。ゆたか)です。漢字の部首は『豆・まめ』、漢字の意味は『豊(ゆた)か』、『作物がよく実る』、『豊臣(とよとみ)氏』です。
中国大陸では簡体字の丰(ホウ)を使います。
音読みは呉音が『フ』、漢音が『ホウ』、訓読みが『豊(ゆた)か』です。作物がよく実って収穫が多いことを豊作(ホウサク)、豊かであることを豊富(ホウフ)、豊かで潤(うるお)いのあることを豊潤(ホウジュン)といいます。
大変縁起の良い漢字で、『あつ』、『かた』、『て』、『と』、『とよ』、『のぼる』、『ひろ』、『ひろし』、『みのる』、『もり』、『ゆた』、『よし』と姓・名前・地名に使われます。
豊(ホウ)は丰(ホウ)の仲間の漢字で、他に峰(ホウ)、逢(ホウ)、縫(ホウ)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 丰』をご覧ください。
『防(ボウ)』fángは、土盛りを左右に広げて防ぐ(ふせぐ)様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、阝(土盛り)+方(左右)=防(土盛りを左右に広げて防ぐ。ふせぐ)です。漢字の部首は『阝・こざとへん』です。意味は『防(ふせ)ぐ』です。
音読みは呉音が『ボウ』、漢音が『ホウ』、訓読みは『防(ふせ)ぐ』です。防止(ボウシ)、消防(ショウボウ)、防風(ボウフウ)、予防(ヨボウ)、堤防(テイボウ)の防です。
防(ボウ)は方(ホウ)の仲間の漢字で、妨(ボウ)、紡(ボウ)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 方』をご覧ください。
『貿(ボウ)』màoは、門をあけて取引する様子を漢字にした形声文字です。漢字の足し算では、卯(ぼう・門をあける)+貝(取引をする)=貿(門を開いて取引する。あきなう)です。漢字の部首は『貝』です。貿は卯の仲間ですが、良く使う漢字である留、溜、瑠(リュウ)に引っ張られてデザインが留と同じになっています。
音読みは漢音が『ボウ』が普通で、呉音の『ム・モ』は使いません。貿易(ボウエキ)とは各地の産物を取引する事です。現在では外国との取引をいいます。
貿(ボウ)は卯(ボウ)の漢字の仲間で、ほかには、昴(ボウ)などの漢字があります。詳しくは 『漢字の覚え方 卯・貿』 をご覧ください。
『暴(ボウ・バク)』bào、pùは、動物の死体を解剖し太陽に曝(さら)す様子を表す会意文字です。漢字の足し算で覚えるならば、日(太陽)+共(両手)+氺(動物の死体)=暴(動物の死体を解剖し太陽に曝(さら)す。むき出しにする。荒々しくする)です。漢字の部首は『日・にち』、意味は『さらす』、『むき出しにする』、『荒々しくする』、『にわかに』です。
音読みは二通りあります。『荒々しくする』、『にわかに』の意味では、呉音が『ボウ』、漢音が『ホウ』、訓読みが『暴(あば)れる』です。『さらす』、『むき出しにする』の意味では呉音が『ボク』、漢音が『ホク』、慣用音が『バク』、訓読みが『暴(あば)く』です。荒々しく乱暴な行為を暴行(ボウコウ)、にわかに吹く荒々しい風を暴風(ボウフウ)、風雨にさらすこと・悪事を暴くことを暴露(バクロ)といいます。
暴(ボウ・バク)の『単語家族』には、爆(バク)、曝(バク)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 暴』をご覧ください。
『務(ム)』wùは、力を尽くしてやるべき仕事を表す形声文字です。漢字の足し算では、矛(ほこ)+攵(動作)+力=務(武器を持ち力ずくで打開する。力を尽くしてやるべき仕事。務(つと)め)です。漢字の部首は『力・ちから』、漢字の意味は『力を尽くしてやるべき仕事』、『務(つと)め』です。
動作を表す攵(ぼくづくり)は、篆文で攴(ボク)pū、楷書体では攵(ボク)pūのデザインをとります。
音読みは呉音が『ム』、漢音が『ブ』、訓読みが『務(つと)め』です。立場に応じてしなければならない務めを義務(ギム)、書類の作成・処理など机の上の仕事を事務(ジム)、職業や事業の継続して行う仕事を業務(ギョウム)といいます。
呉音がマ行(ム)の場合、漢音ではバ行(ブ)になることがあります。音読みの呉音、漢音については『呉音と漢音』http://bit.ly/1LUTTpI もご覧ください。
非常に良い意味の漢字で『かね』、『ちか』、『つとむ』、『つよ』、『なか』、『みち』と名前に使われます。
務(ム)の漢字の仲間には、霧(ム)などの漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 矛』をご覧ください。
『夢(ム)』mengは、夢(ゆめ)からさめる様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、艹罒(目)+冖(かぶさる)+夕(夕方)=夢(夢(ゆめ)からさめる。夢。ゆめ)です。漢字の部首は『夕・ゆうべ』、漢字の意味は『夢(ゆめ)』、『はかない』、『実現させたい願い』です。
音読みは呉音が『ム』、漢音が『ボウ』、訓読みが『夢(ゆめ)』です。夢の中・ある事に熱中することを夢中(ムチュウ)、現実的でない考えを夢想(ムソウ)、夢の中での神仏のお告げ・夢を見るという枕を夢枕(ゆめまくら)、夢(ゆめ)と現実(ゲンジツ)・はっきりしない状態を夢現(ゆめうつつ)いいます。
呉音がマ行(ム)の場合、漢音ではバ行(ボウ)になることがあります。音読みの呉音、漢音については『呉音と漢音』http://bit.ly/1LUTTpI もご覧ください。
夢(ム)の仲間の漢字には、儚 (ボウ・はかない)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 夢』 をご覧ください。
『迷(メイ)』míは、道に迷(まよ)う様子を表した形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、辶(進む)+米(小さくて見えない)=迷(道が見えなくて迷う。まよう)です。漢字の部首は『辶・しんにょう』です。意味は『迷(まよ)う』、『迷(まよ)わす』です。
音読みは呉音が『マイ』、漢音が『ベイ』、慣用音が呉音から変化した『メイ』です。訓読みは『迷(まよ)う』、『迷(まよ)わす』です。人を惑わすこと、煩わしいことを迷惑(メイワク)、出口がわからない建物・解決できない事件を迷宮(メイキュウ)、迷った子供を迷子(まいご)といいます。
音読みには、漢字を輸入した時期により違いがあります。六朝時代の江南地方の読み・呉音(ゴオン)、唐の長安の読み・漢音(カンオン)、鎌倉時代に輸入した読み・唐宋音(トウソウオン)、日本で慣用的に読まれる慣用音(カンヨウオン)があります。訓読みは大和言葉(やまとことば)に合わせた読み方です。
中国では六朝時代のm音が、唐の時代にはb音に変化しました。『迷(mai・マイ→bei・ベイ)』です。現在では『迷』miの発音ですから、再びm音に戻ったのです。一方我が国では、漢音(唐時代のb音)が主流ですが、呉音(六朝時代のm音)から変化した慣用音の『メイ』を使っています。
音読みの呉音、漢音については『呉音と漢音』http://bit.ly/1LUTTpI もご覧ください。
迷(メイ)は米(マイ)の『単語家族』で、謎(メイ)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 米』 をご覧ください。
『綿(メン)』miánは、白い布のもとになる長い糸を表す会意文字です。漢字の足し算では、糸(つながる糸)+帛(白い布)=綿(白い布のもとになる長い糸。メン。わた)です。漢字の部首は『糸・いと』、漢字の意味は『綿(わた)』、『つらなる』、『細かい』です。
音読みは呉音が『メン』を使い、漢音が『ベン』は使いません。訓読みが『綿(わた)』です。長く続いて途切れない様子を綿綿(メンメン)、細かく行き届いた様子を綿密(メンミツ)、絹からとった繊維を真綿(まわた)、植物の棉(わた)からとった繊維を木綿(モメン)、麻(あさ)や楮(こうぞ)からとった繊維を木綿(ゆう)といいます。
植物の棉(わた)も常用漢字の綿(わた)と書くのが普通です。絹からとった繊維を真綿(まわた)と言うことがあります。
呉音がマ行(メン)の場合、漢音ではバ行(ベン)になることがあります。音読みの呉音、漢音については『呉音と漢音』http://bit.ly/1LUTTpI もご覧ください。
『つらなる』ことを表す縁起の良い漢字で、『つら』、『ます』、『まさ』、『やす』、『わた』と名前に使われます。
綿(メン)は棉(メン)と同じ『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 綿』をご覧ください。
『輸(ユ)』shūは、取り出して移す様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、車(車で運ぶ)+兪(舟をくりぬく。取り出す)=輸(取り出して移す)です。漢字の部首は『車・くるまへん』、漢字の意味は『うつす』です。
音読みは呉音が『ス』、漢音が『シュ』、慣用音が『ユ』です。荷物を運び入れること・外国から国内に入れることを輸入(ユニュウ)、国内から外国へ送り出すことを輸出(ユシュツ)といいます。
輸(ユ)は兪(ユ)の『単語家族』には、癒(ユ)、愉(ユ)、諭(ユ)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 俞』をご覧ください。
『余(ヨ)』yúは、柄のついた刃物を漢字にしたものです。膿(うみ)を取り去る外科用の刃物。もしくは、道路で使う穢れを除く神器の刃物です。漢字の部首は『人』。意味は『取り除く』、『はみ出す』、『すすむ』、『のばす』です。
道路は危険な場所だったのでしょうか?戦争で敵が攻めてくるのが道路です。敵を殺してしまう場所が道路です。敵の首を運ぶのも道路です。従って道路は常に怨念(オンネン)、穢れ(けがれ)、邪霊(ジャレイ)に満ちており、穢れを除いて神聖な道路に戻して置く必要があったのです。
『餘(ヨ)』yúは飠(食べ物)+余(はみ出す)=餘(食べ物の余りで、食べ物の余りを表す漢字です。漢字の部首は『食』。『余(ヨ)』と『餘(ヨ)』は本来別の漢字ですが、現在では『余』に統一され、『餘』の漢字は使いません。
『余・餘』の音読みは呉音・漢音ともに『ヨ』です。訓読みは『余(あま)す』、『余(あま)る』です。余剰(ヨジョウ)、余白(ヨハク)、余罪(ヨザイ)、余興(ヨキョウ)、余韻(ヨイン)、余裕(ヨユウ)の余です。
余(あま)るは剰(あま)ると書くことがあります。興味のある方は『漢字の覚え方 乗』をご覧ください。
余(ヨ)の『単語家族』には、途(ト)、除(ジョ)、塗(ト)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 余』をご覧ください。
『預(ヨ)』yùは、人に余裕を持たせて預(あず)ける様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、予(押しやる・伸びる)+頁(人員)=預(人員を押しやって預(あず)ける。預ける。あずける)です。漢字の部首は『頁・おおがい』、意味は『預(あず)ける』、『神の言葉を預かる』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ヨ』、訓読みは『預(あず)ける』、『預(あず)かる』です。お金を預けることを預金(ヨキン)、国庫などにお金を預けることを預託(ヨタク)、神から預かった言葉を預言(ヨゲン)といいます。
預(ヨ)は予(ヨ)の『単語家族』で、野(ヤ)、序(ジョ)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 予』をご覧ください。
『容(ヨウ)』róngは、中に入れる様子や中身を表わした形声文字です。漢字の足し算では、宀(家・うつわ)+谷(満たす)=容(中に入れる。その中身。姿)です。漢字の部首は『宀・うかんむり』、意味は『中に入れる』、『中身』、『姿』、『許す』、『受け入れる』、『たやすい』です。
音読みは呉音が『ユウ』、漢音が『ヨウ』です。訓読みは『容(い)れる』、『容(かたち)』です。中に入れる量を容量(ヨウリョウ)、入れた中身を内容(ナイヨウ)、姿(すがた)・容(かたち)を容姿(ヨウシ)、受け入れて認めることを容認(ヨウニン)、たやすいことを容易(ヨウイ)といいます。
とても良い意味の漢字で、『いるる』、『おさ』、『かた』、『かたち』、『なり』、『ひろ』、『ひろし』、『まさ』、『もり』、『やす』、『よし』と名前に使われます。歴史上の人物では、幕末の京都守護職、松平容保(まつだいらかたもり)さんがいらっしゃいます。
容(ヨウ)は谷(コク)の『単語家族』で、溶(ヨウ)、欲(ヨク)、浴(ヨク)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方
谷』をご覧ください。
『略(リャク)』lüèは、田畑を測量してはかる事を表す形声文字です。漢字の足し算では、田(田畑)+各(基点と基点を結ぶ)=略(基点と基点を結ぶんで測量する。はかる)です。漢字の部首は『田・た』、意味は『はかる』、『省(はぶ)く』、『ほぼ』、『侵略する』です。
やがて『はかりごと』を表す策略(サクリャク)など知恵の意味がつき、省略(ショウリャク)など省くの意味になりました。他人の土地をはかって、税金をとることから侵略(シンリャク)の意味にも使われます。
音読みは呉音が『ラク』、漢音が『リャク』、訓読みは常用外に、『略(はか)る』があります。策略(サクリャク)、省略(ショウリャク)、侵略(シンリャク)、略図(リャクズ)の略です。
略(リャク)は各(カク)の『単語家族』で、洛(ラク)、落(ラク)、絡(ラク)などの仲間の漢字があります。詳しくは『漢字の覚え方 各』をご覧ください。。
『留(リュウ)』liúは、留(とど)まる様子を表す会意文字です。川の流れとの両側にある池と田んぼからなると考えられています。漢字の足し算では、丣(川の流れの両側の水溜り)+田(田んぼ)=畱・留(川の流れの両側にある溜池。転じて留(とど)まる。留(と)まる)です。漢字の部首は『田・た』、漢字の意味は『留(とど)まる』、『留(と)まる』です。
異体字に畱(リュウ)・畄(リュウ)があります。
白川は田をそえたものから灌漑用の溜池(ためいけ)の形、藤堂は動きやすいものをある場所(田)で留めることを示すとしています。
音読みは呉音が『ル』、漢音が『リュウ』、訓読みが『留(と)まる』です。『留(とど)まる』は常用外(普段使わない読み方)なので高校生から使って下さい。あることに心を留(とど)まらせることを留意(リュウイ)、主人がいない間に留まってその家を守ること・家にいないことを留守(ルス)、決定を先延ばしにして留まることを保留(ホリュウ)といいます。
草書体からひらがなの『る』ができました。
留(とど)まることを表す大事な漢字で『たね』、『とめ』、『ひさ』と名前に使われます。
留(リュウ)の『単語家族』には、柳(リュウ)、溜(リュウ)、瘤(リュウ)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 留』 をご覧ください。
『領(リョウ)』lǐngは、首筋の綺麗なところを表す形声文字です。漢字の足し算では、令(きれい)+頁(首・頭)=領(首筋の綺麗なところ。転じて大事な場所)です。漢字の部首は『頁・おおがい』です。漢字の意味は『首』、『うなずく』、『大事な場所』、『収める』、『受け取る』です。
たたんだ衣服をの受け渡しに領(首筋)を持つことから、『収(おさ)める』、『受け取る』の意味に使います。
音読みは呉音が『リョウ』・漢音は『レイ』です。身体の大事な(首と腰)場所・重要なことを要領(ヨウリョウ)、おさめている土地を領土(リョウド)、理解してうなずくことを領解・了解(リョウカイ)、受け取ることを受領(ジュリョウ)、受け取り収めることを領収(リョウシュウ)、首(くび)と袖(そで)、転じて目立つ人物を領袖(リョウシュウ)といいます。presidentの訳語に大統領(ダイトウリョウ)を使います。
呉音の『リョウ』は漢音では『レイ』になることがあります。霊(リョウ・レイ)などの漢字もそうです。音読みの呉音、漢音については呉音と漢音 もご覧ください。
領(リョウ)は令(リョウ・レイ)の『単語家族』で、冷(レイ)、零(レイ)、鈴(レイ・リン)などの漢字の仲間があります。詳しくは『漢字の覚え方 令』をご覧ください。
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本、下記の本をお読みください。
篆文(テンブン)を中心にした体系的な記述・韻の説明は、諸橋轍次先生の『新漢和辞典』、藤堂明保先生の『漢字源』・『漢字の過去と未来』を参考にさせて頂いてます。
甲骨文字・金文のもつ呪術的な解釈には白川静先生の『字通』・『字統』・『漢字』・『中国古代の文化』を参考にさせて頂いています。
漢字の伝来や常用漢字の解釈については、大島正二先生の『漢字伝来』、高島俊男先生の『漢字と日本人』を参考にさせて頂いています。
日本語については、金田一京助先生の『日本語の変遷』、大野晋先生の『日本語の文法を考える』、新村出先生の『広辞苑』を参考にさせて頂いております。
最近の研究については、落合淳思先生の『漢字の成り立ち』を参考にさせて頂いております。
医学用語については伊藤正男・井村裕夫・高久史麿先生の『医学大辞典』を参考にさせて頂いております。
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