漢字の覚え方 戔
漢字には発音・意味・構造上の漢字の仲間があります。今日は『戔(セン・サン)』jiānという字を基本とした漢字の仲間を説明します。この漢字の仲間には戔(セン・サン)、浅(セン・あさい)、残(ザン・のこる)、錢(セン・ぜに)、綫、践(セン・ふむ)、餞(セン・はなむけ)、賤(セン・いやしい)、濺(セン・そそぐ)、箋(セン)、盞(セン・さかずき)という漢字が含まれます。共通した漢字の意味は『小さい』、音読みは『セン』や『サン』です。これらの漢字はという『戔(セン・サン)』同じ構成要素を持つので、漢字の足し算で表すことが出来ます。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて漢字の足し算で覚えると便利です。基本漢字『戔』に何を足したら浅、残、錢、綫、践、餞、賤、濺、箋、盞になるのかを考えます。浅、残は小学4年生、錢は小学5年生 、践、箋は中学校で習う常用漢字です。学年、学校に関係なく一緒に覚えましょう。
基本漢字『戔(セン)』jiānは、小さいもの、少ないものを表す会意文字です。漢字の足し算で覚えるならば、戈(ほこ・削る)+戈(ほこ)=戔(削って、削って小さくする。少なくする)です。戔の字自体を使うことはあまりありませんが、淺、殘、錢などの漢字の部分として働いています。
『日本書紀』では、スサノオノミコトに素戔嗚尊の漢字をあてています。
『浅(セン)』qiǎnは、海や川などの水深が浅い様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、氵(水)+戔(小さくけずる)=淺・浅(水深が浅い。浅い。あさい)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、漢字の意味は『浅(あさ)い』です。
音読みは呉音・漢音ともに『セン』、訓読みが『浅(あさ)い』です。深いことと浅いことを深浅(シンセン)、学問が浅いことを浅学(センガク)、考えの浅いことを浅慮(センリョ)、岸から遠くまで浅いことを遠浅(とおあさ)といいます。
『浅(セン・あさい)』は小学校4年生で習う漢字http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/4-24ef.htmlです。
『錢(セン)』qiánは、小さい銭(ぜに)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、金(金属)+戔(小さい)=銭・錢(金属製のちいさいお金。銭。ぜに)です。漢字の部首は『金・かねへん』、漢字の意味は『銭(ぜに)』、『おかね』です。
音読みは呉音が『ゼン』、漢音が『セン』、訓読みが『銭(ぜに)』です。お金のことを金銭(キンセン)、古い銭を古銭(コセン)、入浴料金をとって入浴する風呂屋を銭湯(セントウ)、身に付いたお金・自分のお金を身銭(みぜに)、小額の金銭を小銭(こぜに)といいます。
春雨に小銭握って飯屋かな 風船
『銭』は小学校5年生で習う漢字http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/5-1427.htmlです。
『残(ザン)』cánは、骨が後に残(のこ)る様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、歹(骨)+戔(けずる。小さくする)=残・殘(骨が後に残(のこ)る。残る。そこなう。むごい)です。漢字の部首は『歹・がつへん』、漢字の意味は『残(のこ)る』、『そこなう』、『むごい』です。
音読みは呉音が『ザン』、漢音が『サン』で、訓読みが『残(のこ)る』です。後に残る悔しい思いを残念(ザンネン)、残って仕事をすることを残業(ザンギョウ)、無慈悲なことを平気ですることを残忍(ザンニン)といいます。
『残(ザン・のこる)』は小学校4年生で習う漢字です。
『綫(セン)』xiànは、細い糸を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、糸(いと)+戔(小さい)=綫(細い糸。細い糸状のもの。線)です。漢字の部首は『糸・いと』、漢字の意味は『線(セン)』、『すじ』、『線路』などですです。
我が国では、泉(いずみ)を使った線(セン)が好まれて使われますが、中国(大陸)では戔(小さい)を使った綫(セン)、线(セン)が使われます。漢字の成り立ちは違いますが、意味は同じです。
音読みは呉音・漢音ともに『セン』です。真っ直ぐな線を直綫(チョクセン)、電気の通る線を電綫(デンセン)、鉄道の通る細長い路を綫路(センロ)、海と空の境の線を水平綫(スイヘイセン)といいます。
『線(セン)』は泉(セン)の漢字の仲間です。詳しくは『漢字の覚え方 泉』をご覧ください。
『線(セン)』は小学校2年生で習う漢字です。
『践(セン)』jiànは、一歩一歩確実に進む様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、足(歩く)+戔(小さい)=践・踐(一歩一歩確実に進むのもの)です。漢字の部首は『足・あしへん』、漢字の意味は『歩一歩確実に進む』、『実行する』、『踐(ふ)む』です。
音読みは呉音が『ゼン』、漢音が『セン』、訓読みが『践(ふ)む』です。言ったとおりに実行することを実践(ジッセン)、皇太子が天子の位につくことを践祚(センソ)といいます。
『践(セン・ふむ)』は中学生 で習う常用漢字です。
践(ふ)むは踏(ふ)むと書くのが普通です。
『踏(トウ・ふむ)』は沓の漢字の仲間です。詳しくは『漢字の覚え方 沓』http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-1efa.html をご覧ください。
『餞(セン)』jiànは、旅立つ人を送る小さな宴会を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、食(食事)+戔(小さい)=餞(旅立つ人を送る小さな宴会。送る。はなむけ)です。漢字の部首は『食・しょくへん』、漢字の意味は『旅人を送る』、『餞(はなむけ)』です。
訓読みの『餞(はなむけ)』は旅立つ人の馬の鼻を、旅立つ方に送る人が向けてやることから餞(はなむけ)といいます。
音読みは呉音が『ゼン』、漢音が『セン』、訓読みが『餞(はなむけ)』です。旅立つ人を見送ること・金品を贈ることを餞別(センベツ)、卒業式の前に予(あらかじ)め開く餞(はなむけ)の会を予餞会(ヨセンカイ)、送別のための宴を餞宴(センエン)といいます。
『餞(セン・はなむけ)』は常用漢字から外れています。
『賎(セン)』jiànは、お金が少なくなっていく様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、貝(財貨)+戔(小さい)=賎・賤(お金が少なくなっていく。やすい。転じて賤しい。いやしい)です。漢字の部首は『貝・かいへん』、漢字の意味は『やすい』、『賤(いや)しい』、『身分が低い』、『そまつな』です。
音読みは呉音が『ゼン』、漢音が『セン』、訓読みが『賤(いや)しい』、『賤(しず)』です。やすい価格の事を賤価(センカ)、身分が高いことと低いことを貴賤(キセン)、そまつな家を賤家(しずのや)といいます。
『賤(セン・いやしい)』は常用漢字から外れています。
『濺(セン)』jiānは、水や涙が流れる様子を表す形声文字です。。漢字の足し算で覚えるならば、氵(水)+賎(少なくなっていく)=濺(小さい水や涙が流れる。水や涙が流れる)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、漢字の意味は『小さいしぶきをふりかける』、『涙を濺(そそ)ぐ』です。
音読みは呉音・漢音ともに『セン』、訓読みが『濺(そそ)ぐ』です。杜甫の春望という詩に、時に感じては花にも涙を濺(そそ)ぎ という有名な句があります。飛び散るしぶきを濺沫(センマツ)といいます。
『濺(セン・そそぐ)』は常用漢字から外れています。
『桟(サン)』zhànは、小さい木をつなげた桟橋や桟敷(さじき)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、木(木材)+戔(小さい)=桟・棧(小さい木をつなげた桟橋や桟敷。かけはし)です。漢字の部首は『木・きへん』、漢字の意味は『小さい木をつなげた橋』、『かけはし』です。
音読みは呉音が『ゼン』、漢音が『サン』です。舟が付けれるようにした小さな板の橋を桟橋(サンバシ)、小さい板でつくった仮設の席を桟敷(さじき)といいます。
『棧(サン)』は常用漢字から外れています。
『箋(セン)』jiānは、小さな竹製の札(ふだ)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、竹(竹製品)+戔(小さい)=箋(小さい竹製の札。付箋。ふせん)です。漢字の部首は『竹・たけかんむり』、漢字の意味は『小さな竹製の札』です。
音読みは呉音・漢音ともに『セン』です。目印やメモを書き付けるための小さい竹製の札です。現在では紙が使われていますが、紙が発明される前は竹でつくられていました。この札のことを付箋(フセン)、手紙を書くためのものを便箋(ビンセン)といいます。
『箋(セン)』は平成22年度より中学生で習うようになった常用漢字 です。
『盞(サン)』zhǎnは、小さい皿・さかずきを表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、戔(小さい)+皿(さら)=盞(小さい皿。さかずき)です。漢字の部首は『皿・さら』、漢字の意味は『盞(さかずき)』です。
音読みは呉音が『セン』、漢音が『サン』です。訓読みは『盞(さかずき)』です。一杯の酒・さかずきを一盞(イッサン)、酒を飲むためのさかずきを漢語で酒盞(シュサン)といいます。
東京の千住にはスサノオノミコトを祀った素盞雄神社があります。
『盞(サン)』は常用漢字から外れています。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-0b2b.html
『漢字の覚え方 戔』 浅 銭 残 践 賎 濺 餞 桟 箋 盞
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.とおあさ( )の海。
2.あさい( )長政。
3.こぜに( )を貯める。
4.せんとう( )へ行く。
5.ざんねん( )に思う。
6.ざんぎょう( )する。
7.鉄道の せんろ( )。
8.公約の じっせん( )。
9.せんべつ( )を渡す。
10.きせん( )問わず。
11.花に泪を そそ( )ぐ。
12.さんばし( )から出港。
13.ふせん( )をつける。
14.いっさん( )傾ける。
解説です。基本の漢字は戔、浅(あさ)いは氵(さんずい)を足して浅、銭(ぜに)は金(かねへん)を足して銭、残(のこ)すは歹(がつへん)を足して残、賎(いや)しいは貝(かいへん)を足して賎、濺(そそ)ぐは氵(さんずい)を足して濺、桟橋(さんばし)は木(きへん)を足して桟、付箋(フセン)は竹(たけかんむり)を足して箋、盞(さかずき)は皿を足して盞です。
解答です。遠浅、浅井、小銭、銭湯、残念、残業、線路、綫路、実践、餞別、貴賎、濺ぐ、桟橋、付箋、一盞。
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盞も家族ですか?
投稿: | 2016年8月 7日 (日) 12時03分
コメント有難う御座います。
盞(セン)も戔(サン・セン)の『単語家族』です。
漢字の足し算では、戔(小さい)+皿(さら)=盞(サン・小さい皿。さかずき)です。
後日、ブログに追加記載しておきます。
有難う御座いました。
投稿: 風船 | 2016年8月 7日 (日) 12時10分