漢字の覚え方 束
今日は『束(ソク)』shùという漢字の仲間について説明します。基本になる漢字は『束』です。音読みは『ソク』、意味は『束(たば)ねる』、『まとめる』、『束(たば)』、『つつしむ』、『縮める』です。束、速、勅、漱などがこの漢字の仲間です。また、束を使った漢字の剌、疎 があります。漢字学者の藤堂はこのような漢字の仲間を『単語家族』と表現していました。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて漢字の足し算で覚えると便利です。『束』に何を足すと速、勅、漱、剌、疎になるのかを考えます。速は小学校3年生で習う漢字 で、束は小学校4年生で習う漢字 、勅、疎は中学生 で習う常用漢字です。漢字の足し算でまとめて覚えましょう。
『束(ソク)』shùは、木を紐(ひも)で束(たば)ねる様子を表わす会意文字です。漢字の足し算で覚えるならば、木+口(ひもで縛る)=束(木をひもで縛って、束ねる。たばねる)です。漢字の部首は『木・きへん』、意味は『束(たば)ねる』、『まとめる』、『束(たば)』、『つつしむ』、『縮める』です。
『説文解字』には「縛(しば)るなり。口と木に従う」とあります。
音読みは呉音が『ソク』、漢音が『ショク』、訓読みは『束(たば)ねる』です。髪を束ねることを束髪(ソクハツ)、礼服の帯をしめること・朝廷の礼服を束帯(ソクタイ)、縛って束ねること・自由を制限することを束縛(ソクバク)、物事を収めてまとめることを収束(シュウソク)、相手を縛る取り決めを約束(ヤクソク)、御札を束ねたものを札束(サツたば)といいます。
『身支度』、『つつしみ』、『まとめ』を表す非常に重要な漢字で、『き』、『さと』、『つか』、『つかぬ』、『つかね』と名前に使われます。
『束(ソク・たばねる)』は小学校4年生で習う漢字です。
『速(ソク)』sùは、距離を縮めるように速く進む様子を表わす形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、辶(進む)+束(束ねる・縮める)=速(距離を縮めるよう速く進む。速い。はやい)です。漢字の部首は『辶・しんにょう』、意味は『速(はや)い』『速(すみ)やか』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ソク』、訓読みは『速(はや)い』、『速(はや)める』、『速(すみ)やか』です。物事の変化が非常に速い事を急速(キュウソク)、速く物事を成し遂げることを速成(ソクセイ)、遅い事と速い事を遅速(チソク)、効果が速やかなことを速効(ソッコウ)といいます。
『速さ』を表す非常に重要な漢字で、『ちか』、『つぎ』、『とう』、『はや』、『はやし』、『はやみ』、『めす』と名前に使われます。
漢字の部首は『辶・しんにょう』は足で道 を行くことを表しています。足の向きや状態はいろいろあります。
☆前向きの場合 進(すす)む 迫(せま)る 迎(むか)える 邀(むか)える 近(ちか)づく 過 (すぎ)る 逼(せま)る 追(お)う 遂(と)げる 逢(あ)う 遇(あ)う 遭(あ)う 遘(あ)う 邂(あ)う 逅(あ)う 連(つら)なる 通(とお)る 透(とお)る 達(とお)る 遣(つか)わす 這(は)う 辿(たど)る 迄(いた)る 込(こ)む 適(かな)う 遡(さかのぼ)る
☆後ろ向きの場合 退(しりぞ)く 逆(さか)らう 逃(に)げる 逡(しりぞ)く 遁(のが)れる 避(さ)ける 遠(とお)のく 遺(のこ)す 迭(か)わる 迂(まが)る 逝(ゆ)く 違(そむ)く 遜(へりくだ)る 遮(さえぎ)る
☆廻る場合 廻 (めぐ)る 巡(めぐ)る 辺(あた)り 遊(あそ)ぶ 遍(あまね)く 迷(まよ)う
☆足のスピード 速(はや)い 遅(おそ)い 迅(はや)い 遥(はる)か
速(はや)いの反対は遲(おそ)いですが、羊の仲間ではなく犀(サイ)の仲間の漢字です。犀は書くのが大変なので、常用漢字では羊を使った遅(チ)が使われます。
『速(ソク・はやい)』は小学校3年生で習う漢字です。
『遅(チ)』chíは、犀(サイ)がゆっくり歩く様子を表す漢字です。漢字の足し算では、辶(進む)+犀(サイ・ゆっくり歩く)=達(犀(サイ)がゆっくり歩く。遅い。遅れる)です。漢字の部首は『辶・しんにょう』、漢字の意味は『遅(おそ)い』、『遅(おく)れる』、『気長に待つ』です。
音読みは呉音が『チ』、漢音が『ジ』、訓読みは『遅(おそ)い』、『遅(おく)れる』です。物事が定時より遅れて延びることを遅延(チエン)、遅いことと速いことを遅速(チソク)、日が長くなり遅くまで明るくなった春の日を遅日(チジツ)といいます。遅は中学校で習う常用漢字です。
待ってあげる意味を表すため、『まつ』と名前に使われることがあります。
漢字の世界では、速度が速いのは『速』、時間が早いのは『早』と使い分けます。早(ソウ)は草(ソウ)などと同じ『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 早』http://bit.ly/1OflHn5 をご覧ください。
『勅(チョク)』chìは、君主が力ずくで命令する様子を表わす形声文字です。漢字の足し算では、束(束ねる)+力=勅(君主が力ずくで命令する。いましめる)です。漢字の部首は『力・ちから』、意味は『いましめる』、『天子の詔』です。だらけないようにグッと引き締める様子をいいます。転じて天子の命令・戒告を表します。
音読みは呉音は『チキ』、漢音が『チョク』です。訓読みは常用外に『勅(みことのり)』があります。天子の詔・勅(みことのり)を勅命(チョクメイ)、天子の許しを勅許(チョッキョ)、天子の命令でつくられた書物を勅撰(チョクセン)といいます。
非常に重要な漢字で『ただ』、『て』、『とき』と人名に使われます。
『勅(チョク・みことのり)』は中学生 で習う常用漢字です。
『漱(ソウ)』sòu、shùは、漱(うがい)をする様子を表わす形声文字です。漢字の足し算では、氵(水)+束(速く)+欠(かがむ)=漱(屈んで水をすばやく含む。うがい。口を漱ぐ。すすぐ)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、意味は『漱(うがい)』、『漱(すす)ぐ』、『漱(くちすす)ぐ』です。
音読みは呉音が『ス』、漢音が『ソウ』、訓読みは『漱(うがい)』、『漱(すす)ぐ』、『漱(くちすす)ぐ』です。
晋の孫楚という人が、「石に枕し、流れに漱(くちすす)ぐ」と言うべきところを「石に漱(くちすす)ぎ、流れに枕す」と言い間違えました。漱石とは歯を磨くことで、枕流とは耳を洗うことだと言い張って間違いを認めなったことから、負け惜しみの強いことを漱石枕流(ソウセキチンリュウ)といいます。
夏目漱石(なつめソウセキ)の名前の由来になっている故事です。
『漱(ソウ・すすぐ)』は人名用漢字です。
ほぼ同じ意味の漢字に『嗽(ソウ)』sòuがあります。
『嗽(ソウ)』sòuは、嗽(うがい)をする様子・咳(せき)する様子を表わす形声文字です。漢字の足し算では、口+束(速く)+欠(かがむ)=嗽(屈んで水をすばやく含む。うがい。口を漱ぐ。咳(せき)をする)です。漢字の部首は『口・くちへん』、味は『嗽(うがい)』、『嗽(すす)ぐ』、『咳(せき)をする』です。
音読みは呉音が『ス』、漢音が『ソウ』、訓読みは『嗽(うがい)』、『嗽(すす)ぐ』です。咳(せき)をすることを咳嗽(ガイソウ)・嗽咳(ソウガイ)、嗽(うがい)をすることを含嗽(ガンソウ)といいます。
『嗽(ソウ・うがい)』は常用漢字から外れています。
『剌(ラツ)』làは、強いはねかえりを表わす会意文字です。漢字の足し算では、束(束ねる)+刂(刀)=剌(刀を撥ねかえす木の束。強い跳ね返り)です。漢字の部首は『刂・りっとう』、意味は『はねる』です。
音読みは呉音が『ラチ』、漢音が『ラツ』です。魚が元気よくはねる様子を溌剌・溌溂(ハツラツ)といいます。
『剌(ラツ)』の単語家族には、頼(ライ)、瀬(ライ)、獺(ダツ)、溂(ラツ)、喇(ラツ)、辣(ラツ)などがあり別の機会に説明致します。詳しくは『漢字の覚え方 剌』http://bit.ly/2beoTSm をご覧ください。
『剌(ラツ・はねる)』は常用漢字から外れています。
『疎(ソ)』shūは、まとまって離れている様子を表わす形声文字です。漢字の足し算では、疋(ソ・離れる)+束(束ねる)=疎(まとまって離れている)です。漢字の部首は『疋・ひき』、意味は『まとまって離れる』、『うすい』、『通る』、『疎(うと)い』、『疎(おろそ)か』です。
音読みは呉音が『ショ』、漢音が『ソ』、訓読みは『疎(うと)い』と常用外の読み方に『疎(おろそ)か』があります。空襲に備えて住民を地方に分散させることを疎開(ソカイ)、遠ざかって関係が薄いことを疎遠(ソエン)、意思などが通じることを疎通(ソツウ)といいます。
中国では、ほぼ同じ意味の『疏(ソ)』を使うのが普通です。
『疋(ソ)』の単語家族には、楚(ソ)、礎(ソ)、疎(ソ)、疏(ソ)、蔬(ソ)などがあり別の機会に説明致します。詳しくは『漢字の覚え方 疋』 http://bit.ly/1JXetBr をご覧ください。
『疎(ソ・うとい)』は中学生 で習う常用漢字です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-4e7d.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.髪を たば( )ねる。
2.やくそく( )する。
3.物事が しゅうそく( )する。
4.きゅうそく( )に発展。
5.君主の ちょくめい( )。
6.ちょくせん( )和歌集。
7.夏目 そうせき( )。
8.元気 はつらつ( )。
9.学童 そかい( )。
10.付き合いが そえん( )に。
解説です。基本の漢字は束、速(はや)いは辶(しんにょう)を足して速、天子の命令は力を足して勅、漱(すす)ぐは氵(さんずい)を足して漱、嗽(うがい)は口(くちへん)を足して嗽、跳ね返すは刂(りっとう)を足して剌、疎(うと)いは疋(ひき)を足して疎です。
解答です。束、約束、収束、急速、勅命、勅撰、漱石、溌剌、溌溂、疎開、疎遠。
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