漢字の覚え方 用
漢字には発音・意味・構造上の漢字の仲間があります。今日は『用(ヨウ)』yòngという字を中心とした漢字の仲間を説明します。この漢字の仲間には用(ヨウ・もちいる)、庸(ヨウ・もちいる)、傭(ヨウ・やとう)、甬(ヨウ)、踊(ヨウ・おどる)、涌(ヨウ・わく)、勇(ユウ・いさむ)、湧(ユウ・わく)、通(ツウ・とおる)、痛(ツウ・いたい)、桶(トウ・おけ)、樋(トウ・ひ)という漢字が含まれます。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて漢字の足し算で覚えると便利です。『用』に何を足したら、甬、踊、涌、勇、通、痛、桶、樋になるのかを考えていきます。用、通は小学2年生、勇は小学4年生、痛は小学6年生、湧、庸、踊は中学校で習う常用漢字です。学校に関係なく一緒に覚えましょう。
『用(ヨウ)』yòngは、板に棒で穴をあける様子を描いた会意文字です。漢字の足し算で覚えるならば、中(板に穴をあける)+卜(棒)=用・?(板をつらぬく。転じて通用する。用いる)です。漢字の部首は『用・もちいる』、意味は『用(もち)いる』、『通用する』、『用具』、『仕事』、『資金』です。
『説文解字』には「卜に従い中に従う」とあります。藤堂は「板に棒で穴をあけ通すことからつらぬき通すはたらきをいう」としています。
板に穴を空けて、工具・用具を表すのは漢字の世界では良くあります。二枚の板に縦穴をあける漢字が工で工具(きり・のみ)http://bit.ly/101tzpr を表します。用も同様の漢字の成り立ちです。
音読みは呉音が『ユウ』、漢音が『ヨウ』、訓読みが『用(もち)いる』です。心(意)を用いるのを用意(ヨウイ)、公の仕事を公用(コウヨウ)、費やす資金を費用(ヒヨウ)、心を使って警戒することを用心(ヨウジン)といいます。
用(ヨウ・もちいる)は小学校2年生で習う漢字http://bit.ly/1TnGMiq です。
『庸(ヨウ)』yōngは、強く棒で板に穴を開ける様子を描いた形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、庚(かたい棒)+用(板をつらぬく)=庸(板をつらぬく。転じて通用する。用いる。一般の)です。漢字の部首は『广・まだれ』、意味は『通用する』、『一般の』、税の一種『租・庸・調(ソ・ヨウ・チョウ)』です。
音読みは呉音が『ユウ』、漢音が『ヨウ』です。訓読みは常用外に『庸(もち)いる』があります。採用して用いることを登用、登庸(トウヨウ)、平凡な普通の事を凡庸(ボンヨウ)、中ぐらいの普通のやり方の中庸(チュウヨウ)といいます。
良い意味の漢字で『いさお』、『つね』、『のぶ』、『のり』、『もち』、『もちう』、『やす』と名前に使われます。
庸(ヨウ・もちいる)は中学生で習う常用漢字です。
『傭(ヨウ)』yōngは、人を傭(やと)う様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、イ(人間)+庸(用いる)=傭(人を用いる。やとう。傭う)です。漢字の部首は『イ・にんべん』、意味は『傭(やと)う』です。
音読みは呉音が『ヨ』、漢音が『ヨウ』です。訓読みは『傭(やと)う』です。お金を出して傭われた兵隊を傭兵(ヨウヘイ)といいます。
『傭(やと)う』は普通『雇(やと)う』http://bit.ly/1retTGS と書きます。
傭(ヨウ・やとう)は常用漢字から外れています。
『甬(ヨウ)』yǒngは、人が足踏みする様子を描いた形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、マ(人間)+用(上下につらぬく)=甬(人が足踏みする。人がつらぬく)です。漢字の部首は『用・もちいる』、意味は『足踏みする』、『人がつらぬく』です。
音読みは呉音が『ユウ』、漢音が『ヨウ』です。外部から見えないように人がつらぬいて通れる道を甬道(ヨウドウ)といい、皇帝の通る道でした。現在では石畳の小道、中庭の通路の意味がありますが、我が国では使われていません。甬は常用漢字から外れていますが、踊(ヨウ)、通(ツウ)などの旁(つくり・漢字の右半分)として活躍しています。
『踊(ヨウ)』yǒngは、足でリズムをとって踊る様子を描いた形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、足+甬(人が足踏みする)=踊(足でリズムをとって踊る。おどる)です。漢字の部首は『足・あしへん』、意味は『踊(おど)る』です。
音読みは呉音が『ユ・ユウ』、漢音が『ヨウ』、訓読みが『踊(おど)る』です。舞踊(ブヨウ)、盆踊(おど)り、踊(おど)り子の踊です。
踊(ヨウ・おどる)は中学生 で習う常用漢字(日常生活で使う漢字2136字)です。
『涌(ヨウ・ユウ)』yǒngは、突き出すように水が涌き出る様子を描いた形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、氵(水)+甬(人が上下に足踏みする)=涌(水が突き出すように涌く。湧き出す)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、意味は『涌(わ)き出す』、『涌(わ)く』です。
音読みは呉音が『ユウ』、漢音が『ヨウ』、訓読みが『涌(わ)く』です。涌き出る泉を涌泉(ヨウセン・ユウセン)といいます。非常に重要な漢字で、人名・地名に使われます。プロ野球の西武(現在はロッテ)の投手に涌井(ワクイ)さんとおっしゃる方がいます。全く同じ意味の漢字に勇を使った湧があります。
涌(ヨウ・ユウ・わく)は人名用漢字です。
『蛹(ヨウ)』yǒngは、昆虫の蛹(さなぎ)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、虫(むし)+甬(上下に通じる)=蛹 (昆虫が上下の形になって、成虫に突き出る。蛹)です。漢字の部首は『虫・むしへん』、意味は『蛹(さなぎ)』です。
音読みは呉音が『ユウ』、漢音が『ヨウ』、訓読みが『蛹(さなぎ)』です。昆虫の幼虫が蛹(さなぎ)になることを蛹化(ヨウカ)、蚕(かいこ)の蛹(さなぎ)を蚕蛹(サンヨウ)といいます。
蛹(ヨウ・さなぎ)は常用漢字から外れています。
『勇(ユウ)』yǒngは、人が足踏みして勇気を出す様子を描いた形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、甬(足踏みする)+力(ちから)=勇(人が足踏みをして勇気を出す。いさむ)です。漢字の部首は『力・ちから』、意味は『勇気を出す』、『奮い立つ』です。
音読みは呉音が『ユ・ユウ』、漢音が『ヨウ』、訓読みが『勇(いさ)ましい』です。心を奮い立たせる気持ちを勇気(ユウキ)、勇気をもって決断力があることを勇敢(ユウカン)、勇気のある男を勇士(ユウシ)、勇ましい姿を勇姿(ユウシ)といいます。鯨(くじら)のことを勇を使って勇魚(いさな)といいます。
勇ましくて、非常に良い意味の漢字ですので、『いさ』、『いさお』、『いさまし』、『いさみ』、『いさむ』、『お』、『さ』、『そよ』、『たけ』、『たけし』、『とし』、『はや』、『よ』と名前に使われます。
勇(ユウ・いさむ)は小学校4年生で習う漢字http://bit.ly/1IR0lNd です。
『湧(ヨウ・ユウ)』yǒngは、突き出すように水が涌き出る様子を描いた形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、氵(水)+勇(人が上下に足踏みする)=湧(水が突き出すように涌く。湧き出す)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、意味は『湧(わ)き出す』、『湧(わ)く』です。
音読みは呉音が『ユウ』、漢音が『ヨウ』、訓読みが『湧(わ)く』です。涌き出る泉を湧泉(ヨウセン・ユウセン)、海洋で海底から表面へ湧き上がる流れを湧昇流(ユウショウリュウ)といいます。
湧(ヨウ・ユウ・わく)は平成22年度の改定により新たに登録された中学生で習うようになった常用漢字 です。
『通(ツウ)』tōngは、通る様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、辶(進む)+甬(上下に通す)=通(つきぬける。通す)です。漢字部首は『辶・しんにょう』、意味は『通(とお)る』、『通(かよ)う』、『知らせる』、『通りがよい』、『手紙を数える言葉』です。
音読みは呉音が『ツウ』、漢音が『ツ・トウ』、訓読みは『通(とお)る』、『通(かよ)う』です。貫き通ることを貫通(カンツウ)、知らせることを通知(ツウチ)、共に通りが良い事を共通(キョウツウ)、通りの良い大きな道を大通り(おおどおり)、学校に通うことを通学(ツウガク)といいます。
漢字の部首は『辶・しんにょう』は足で道 を行くことを表しています。足の向きや状態はいろいろあります。
☆前向きの場合 進(すす)む 迫(せま)る 迎(むか)える 邀(むか)える 近(ちか)づく 過 (すぎ)る 逼(せま)る 追(お)う 遂(と)げる 逢(あ)う 遇(あ)う 遭(あ)う 遘(あ)う 邂(あ)う 逅(あ)う 連(つら)なる 通(とお)る
☆後ろ向きの場合 退(しりぞ)く 逆(さか)らう 逃(に)げる 逡(しりぞ)く 遁(のが)れる 避(さ)ける 遠(とお)のく 遺(のこ)す 迭(か)わる 迂(まが)る
☆廻る場合 廻 (めぐ)る 巡(めぐ)る 辺(あた)り 遊(あそ)ぶ 遍(あまね)く 遥(さまよ)う
『通る』、『出世する』、『通じる』、『物事がうまく運ぶ』と縁起の良い漢字で、『とお』、『とおる』、『とおり』、『かよ』、『なお』、『ひらく』、『みち』、『みつ』、『ゆき』と名前に使われます。
通(ツウ・とおる)は小学校2年生で習う漢字http://bit.ly/1TnGI2d です。
『痛(ツウ)』tòngは、つきぬける痛みを表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、疒(病気・けが)+甬(上下に通す)=痛(つきぬける痛みを)です。漢字部首は『疒・やまいだれ』、意味は『痛(いた)い』、『とことんまで』、『心が痛む』です。
音読みは呉音が『ツウ』、漢音が『トウ』、訓読みは『痛(いた)い』です。腰の痛みが腰痛(ヨウツウ)、心を痛めることを痛心(ツウシン)、とことんまでお酒を飲むことを痛飲(ツウイン)といいます。
建物が傷(いた)む、果実が傷(いた)む、死を悼(いた)む、故人を悼(いた)む、と漢字を使い分けています。
痛(ツウ・いたい)は小学校6年生で習う漢字http://bit.ly/1rMjElI です。
『桶(ツウ)』tǒngは、つきぬける様な筒状の桶(おけ)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、木(木製)+甬(上下に通す)=桶(つきぬける様な筒状の桶。おけ)です。漢字部首は『木・きへん』、意味は『通(おけ)』です。
音読みは呉音が『ツウ』、漢音が『トウ』、訓読みは『桶(おけ)』です。棺桶(カンおけ)、湯桶(ゆおけ・ゆトウ)、桶川(おけがわ)、桶狭間(おけはざま)、香桶(こおけ)の桶です。生活に重要な水を表す大変重要な漢字で、人名・地名に多く使われます。
漢字は原則、音読みと音読み(呉音と呉音、漢音と漢音、唐宋音と唐宋音)、訓読みと訓読みを重ねますが、湯桶(ゆトウ)のように訓読みと音読み(この場合は漢音)を重ねることもあります。このような読み方を湯桶(ゆトウ)読みと言っています。
桶(トウ・おけ)は人名用漢字です。
『樋(ツウ)』tōngは、木製の樋(とい)を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、木(木製)+通(通す)=樋(木製の水を通す樋。とい)です。漢字部首は『木・きへん』、意味は『樋(とい・ひ)』、『懸樋・樋(かけい)』です。
音読みは呉音が『ツウ』、漢音が『トウ』、訓読みは『樋(とい・とひ)』、『樋(かけい・かけひ)』、『樋(ひ)』です。樋口(ひぐち)、樋門(ひモン)、樋遣(ひやり)、樋春(ひはる)、懸樋(かけひ)の樋です。生活に重要な水を表す大変重要な漢字で、人名・地名に多く使われます。
樋(かけひ・かけい)は筧(かけひ・かけい)と書く場合が多いです。筧は見、硯などの『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 見』http://bit.ly/ZCbIEZ をご覧ください。
樋(トウ・かけい・とい・ひ)は常用漢字から外れています。
『誦(ショウ)』sòngは、御経を誦(とな)える様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、言(言葉)+甬(上下に通す)=誦(よどみなく通る声で誦(とな)える。そらんずる)です。漢字部首は『言・ごんべん』、意味は『誦(とな)える。』、『そらんずる』です。
音読みは呉音が『ズ』、漢音が『ショウ』、訓読みは『誦(とな)える』です。見ないで誦(とな)えること暗誦・暗唱(アンショウ)といいます。誦は常用漢字から外れています。
誦(とな)えるは唱(とな)えるhttp://bit.ly/1zg3qCW と書くのが普通です。
誦(ショウ・となえる)は常用漢字から外れています。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-2162.html
『漢字の覚え方 用』 用 庸 傭 踊 涌 蛹 勇 湧 通 痛 桶 樋 誦
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.食材購入 ひよう( )。
2.食事の ようい( )。
3.人材の とうよう( )。
4.ようへい( )部隊。
5.日本 ぶよう( )。
6.盆おど( )り。
7.水が わ( )き出る。
8.ゆうき( )のある行動。
9.ゆうかん( )に突撃。
10.きょうつう( )の知人。
11.つうがく( )路。
13.ずつう( )で休む。
14.おけ( )狭間の合戦。
15.用水路の ひもん( )。
16.詩を あんしょう( )する。
解説です。基本の漢字は用、マ(人)を足して甬、庚を足して庸、傭(やと)うはイを足して傭、踊るは足を足して踊、涌くは氵(さんずい)を足して涌、蛹(さなぎ)は虫を足して蛹、勇気は力を足して勇、湧くは氵(さんずい)に勇を足して湧、通るは辶(しんにょう)を足して通、痛いは疒を足して痛、桶(おけ)は木を足して桶、樋(とい)は通に木を足して樋、誦(とな)えるは言(ごんべん)を足して誦です。
解答です。費用、用意、登用、登庸、傭兵、舞踊、盆踊り、涌、湧、勇気、勇敢、共通、通学、頭痛、桶、樋門、暗誦・暗唱。
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