漢字の覚え方 禾
今日は禾、季、委、萎、科、倭、和という漢字について説明します。基本になる漢字は『禾(カ)』héで、穀物(あわ・いね)の垂れ下がった様子を表す象形文字です。これらの漢字は『禾(カ)』héでという同じ構成要素をもつので、漢字の足し算で表すことが出来ます。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて、ごまとめて漢字を覚えると便利です。『禾』に何を足したら、季、委、萎、科、倭、和になるのかを考えていきます。科は小学校2年生で習う漢字 、委、和は小学校3年生で習う漢字 、季は小学校4年生で習う漢字 、萎は中学校で習い、倭は人名用漢字です。学年、学校に関係なく、漢字の足し算で一緒に覚えましょう。
『禾(カ)』héは、穀物(あわ・いね)の垂れ下がった様子を象った象形文字です。漢字の部首は『禾・のぎへん』です。意味は『垂れる』、『なよなよした』、『稲の』、『稔(みの)りの』です。
いねの象形であるとともに、軍門の象形とする説(白川)もあります。
読みは呉音が『ワ』、漢音ともに『カ』です。粟(あわ)や稲(いね)の穂を禾穂(カスイ)、粟や稲の苗を禾苗(カビョウ)といいます。『禾』は常用漢字から外れています。
『季(キ)』jìは、穀物のとれる時季を表した会意文字です。漢字の足し算では、禾(イネ)+子(収穫)=季(穀物のとれる時季。秋の時季。一年の四分の一)です。季は穀物の実る秋の三カ月を表しますが、春、夏、秋にも使われます。漢字の部首は『子・こ』です。意味は『三カ月』、『兄弟の年少者』、『実る』です。
古代中国では、一年の四分の一を季、二十四分の一を節としました。合わせて季節(キセツ)です。
音読みは呉音・漢音ともに『キ』です。季節(キセツ)、季語(キゴ)、四季(シキ)の季です。収穫に関係した、大変良い漢字で、『き』、『すえ』、『とき』、『とし』、『ひで』、『みのる』と名前に使われます。
『季(キ)』は小学校4年生で習う漢字です。
『科(カ)』kēは、作物の分類を示す会意文字です。漢字の足し算では、禾(イネ)+斗(ます)=科(稲をますではかって等級をつける。等級。部門。試験。科白)です。漢字の部首は『禾・のぎへん』、意味は『等級』、『部門』、『試験』、『科白(せりふ)』です。
音読みは呉音・漢音ともに『カ』です。訓読みは常用外の『科(しな)』があります。分類した目印を科目(カモク)、試験して推挙する制度が科挙(カキョ)、与えられた役割の言葉が科白(せりふ)です。
部門では役所・会社では『課』http://bit.ly/1uYJe4n、病院では『科』を使う慣例になっています。
『科(カ・しな)』は小学校2年生で習う漢字 です。
『委(イ)』wěiは、他人に委(ゆだ)ねる様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、禾(垂れた稲)+女(しなやか)=委(稲や女性の様に他人に委ねる)です。漢字の部首は『女・おんな』です。意味は『委(ゆだ)ねる』、『まかせる』、『すえ』、『末端まで』です。
音読みは呉音・漢音ともに『イ』、訓読みは常用外の『委(ゆだ)ねる』です。委ね任せることを委任(イニン)、選挙などで指名されて委ねられた人を委員(イイン)、細かく詳しいことを委細(イサイ)といいます。
『委(イ・ゆだねる)』は小学校3年生で習う漢字 です。
『萎(イ)』wěiは、植物の萎(しお)れる様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、艹(植物)+委(垂れさがる)=萎(植物が萎(しお)れる)です。漢字の部首は『艹・くさかんむり』です。意味は『萎(しお)れる』、『萎(な)える』です。
音読みは呉音・漢音ともに『イ』、訓読みは『萎(しお)れる』、『萎(な)える』です萎(な)えて縮(ちぢ)むことを萎縮・委縮(イシュク)、萎れた萎を委禾(イカ)といいます。
萎(な)えて縮(ちぢ)む萎縮(イシュク)は委縮(イシュク)とも書きます。萎は普段使う漢字常用漢字には登録されていなかったので、常用漢字の委で代用していましたが、萎は平成22年の改定で常用漢字に新たに登録され、普通に使えるようになりました。
ほぼ同じ意味ですが、畏(おそ)れて縮(ちぢ)むのを畏縮(イシュク)といいます。
萎(イ・なえる)は中学校で習う常用漢字です。
『倭(ワ)』wō、wēiは、背の低い人を表す形声文字です。漢字の足し算では、イ(人間)+委(しなやか)=倭(なよなよした背の低い人。倭人。わじん)です。漢字の部首は『イ・にんべん』です。意味は『背の低い人』、『倭人』、『倭(やまと)』です。古代中国では、日本、日本人を背の低い人として『倭』という漢字を使いました。
東夷(トウイ)、南蛮(ナンバン)など古代中国では周辺の国、民族を蔑(さげす)んで呼んでいました。呼ばれた側は面白くないので、大和(やまと)朝廷の頃から、良い意味の漢字である『和』を使うようになりました。
音読みは呉音・漢音ともに『ワ』wōです。『なよなよした』の意味にも使いその場合の音読みは呉音・漢音ともに『イ』wēiです。「倭人は帯方の東南大海の中に在り」(魏志倭人伝)の倭です。
倭(ワ)は人名用漢字です。
『和(ワ)』hé、huòは、和(やわ)らぐ様子、和(なご)むを様子表す形声文字です。漢字の足し算では、禾(しなやか)+口(動作)=和(稲の様にしなやかに、和らぐ様子)です。漢字の部首は『口・くち』です。意味は『和(やわ)らぐ』、『和(なご)む』、『和(あ)える』、『大和(やまと)』、『日本』です。
軍門において和議を行う意味である(白川)という説もあります。
音読みは呉音が『ワ』、漢音が『カ』、唐宋音が『オ』、訓読みは『和(やわ)らぐ』、『和(なご)む』、『和(あ)える』です。平らか(諍いのない)に和んだ様子を平和(ヘイワ)、丸くおさまって解決することを和解(ワカイ)、良くまとまった状態を調和(チョウワ)、現在の奈良県、日本の古い国名を大和(やまと)、良い天気を日和(ひより)といいます。
異体字に咊(ワ)、龢(ワ)、?(ワ)などがあります。
『和』の草書体から、ひらがなの『わ』、旁(つくり・漢字の右側)からかたかなの『ワ』が出来ました。
『和(ワ・やわらぐ)』は小学校3年生で習う漢字です。
非常に良い意味の漢字で『あい』、『あえ』、『かず』、『かた』、『かつ』、『かのう』、『たか』、『ちか』、『とし』、『とも』、『な』、『のどか』、『ひとし』、『まさ』、『ます』、『みきた』、『やす』、『やすし』、『やまと』、『やわ』、『やわら』、『よし』、『より』、『わたる』と名前に使われます。
「和の文字には秘められた「やがては枯れ果てる」意味があり良くない漢字である」と書く人、姓名判断の本を売る人、それをそのまま調べないで転載する人がいます。「やがては枯れ果てる」という秘められた意味などありません。
和は最高の徳行を示す語とされている(白川)。
『字源辞典』、『新漢和辞典』、『学研漢和大辞典』、『漢字源』、『字統』、『字通』、『新漢語林』、『甲骨文字小字典』のどこにも書いてありません。
禾(カ)を使った漢字に秋(シュウ)http://bit.ly/1rrjF5Y があります。
『秋(シュウ)』qiūは、収穫した麦を乾かしている様子を表わす会意文字です。漢字の足し算では、禾(穀物・麦)+火(乾かす)=秋(収穫した麦を乾かす季節。秋。あき)です。漢字の部首は『禾・のぎへん』、意味は『秋(あき)』、『重要なとき』です。
現在、実際には火で乾かす訳ではありませんが、漢字では火が使われています。害虫を火で払っていた名残りとも考えられています。亀(虫)と火、束などが旁(つくり)に使われるなど、秋には多くの字体がありましたが、現在では『秋』が使われています。
音読みは呉音が『シュ』、漢音が『シュウ』、訓読みは『秋(あき)』、『秋(とき)』です。秋におりる霜を秋霜(シュウソウ)、晩(おそ)い秋を晩秋(バンシュウ)、危険がせまり生きるか亡(ほろ)びるかの重大な時期を危急存亡の秋(とき)といいます。
秋(シュウ)は小学校で2年生で習う漢字です。
秋(シュウ)の『単語家族』には、愁、萩などがあります。詳しくは『漢字の覚え方 秋』をご覧ください。
禾(カ)を使った漢字に年(ネン)があります。
『年(ネン)』niánは、禾(実った稲)をもつ人を表す会意文字で、年一度の収穫の時期を表す漢字です。漢字の足し算では、禾(稲)+人・千=年(年一度の収穫。年)です。漢字の部首は『干・かん』です。
加藤の『字源辞典』では、形声字としており、白川の『字統』では会意、藤堂の『漢字源』では会意兼形声、鎌田の『新漢語林』では形声とあります。解釈はおおむね同じです。
音読みは呉音の『ネン』を使い、漢音の『デン』は使いません。訓読みは『とし』、『とせ』です。一年(イチネン)、年間(ネンカン)、今年(ことし)、年魚(あゆ)、一昨年(イッサクネン・おととし)の年です。鮎(あゆ)は一年で大きくなるので年魚(あゆ)と書きます。
一般的に、呉音のナ行は漢音ではダ行に変わることがあります。内(ナイ・ダイ)、納(ノウ・トウ)、男(ナン・ダン)、年(ネン・デン)、念(ネン・デン)などです。呉音・漢音どちらが残っているかは漢字によって違います。
年(ネン)は小学校1年生で習う漢字です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-ecd0.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.春の きせつ( )。
2.しき( )折々。
3.受験 かもく( )。
4.学級 いいん( )。
5.いさい( )承知。
6.気持ちが いしゅく( )する。
7.魏志 わじん( )伝。
8.やまと( )朝廷。
9.戦争と へいわ( )。
解説です。基本の漢字は禾、季節は子を足して季、委(ゆだ)ねるは女を足しては委、萎(な)えるは委に艹(くさかんむり)を足して萎、低い人がイ(にんべん)を足して倭、和(なご)やかは口を足して和です。
解答です。季節、四季、科目、委員、委細、萎縮、委縮、倭人、大和、平和
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