漢字の覚え方 至
今日は『至(シ)』zhìという漢字の仲間(発音・意味上の漢字仲間)について説明します。基本になる漢字は『至』です。音読みは『シ』、意味は『いきづまる』、『至る』、『まっすぐ届く』です。至、室、致、窒、到、倒などがこの漢字の仲間です。これらの漢字は同じ『至(シ)』という構成要素からなるので、漢字の足し算で表すことが出来ます。
漢字は足し算で表わす事が出来るものについては、意味を考えて漢字の足し算で覚えると便利です。『至』に何を足すとどんな漢字になるのか漢字の構成を考えます。室は小学校2年生で習う漢字 、至は小学校6年生で習う漢字 、致、到、倒は中学生、窒は中学生で習う常用漢字、緻は中学生で習うようになった常用漢字 です。中学何年生で習うかは教科書によって異なります。学年、学校に関係なく一緒に覚えましょう。
『至(シ)』zhìの説明をします。『至』は矢が目標に届いた様子を漢字にしたものです。古い字体の篆文(テンブン)を参考にして下さい。部首は『至・いたる』、意味は『至る(いたる)』、『いきづまり』、『まっすぐ届く』、『ぎりぎりまで届く』です。
音読みは呉音・漢音とも『シ』、訓読みは『至(いた)る』です。非常に急ぐことを至急(シキュウ)、この上なく高く届いた様を至高(シコウ)、最も道理に合った言葉を至言(シゲン)、太陽が最も高くなる日を夏至(ゲシ)といいます。
『至(いた)る』の反対の『自(よ)り』については『漢字の覚え方 自』をご覧ください。
『至(シ・いたる)』は小学校6年生で習う漢字です。
『室(シツ)』shìは、奥の部屋を表す形声文字です。漢字の足し算では、宀(家)+至(まっすぐ届く)=室(奥まで届いた部屋。奥の部屋)です。部首は『宀・うかんむり』。意味は『部屋』・『室(むろ)』、『家人。奥様。令嬢』です。『室(シツ)』が奥の部屋なのに対し、表の広間を『堂(ドウ)』といいます。
音読みは呉音の『シチ』は使わず、漢音の『シツ』を使います。訓読みは『室(むろ)』です。御内室(ゴナイシツ)、職員室(ショクインシツ)、側室(ソクシツ)、暗室(アンシツ)、氷室(ひむろ)の室です。
宇多天皇が譲位(ジョウイ)の後、仁和寺に御座所を設け、御室(おむろ)と呼ばれました。京都にある地名、御室(おむろ)の由来です。また電子機器メーカーのオムロン発祥の地として有名です。
『室(シツ・むろ)』は小学校2年生で習う漢字です。
『致(チ)』zhìは、気持ち・動作が目標まで届く様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、至(目標まで届く)+攴・攵(動作)=致(気持ち・動作が目標まで届く。致す)です。漢字の部首は『至・いたる』、意味は『致す(いたす)』、『結果』、『役人を辞める』、『気持ちの致すところ』です。
動作を表す攵(ぼくづくり)は、篆文で攴(ボク)pū楷書体では攵(ボク)pūのデザインをとります。
音読みは呉音・漢音ともに『チ』、訓読みは『致す(いたす)』です。命に致す傷を致命傷(チメイショウ)、死に致すことを致死(チシ)、仕事を辞めることを致仕(チシ)、結果が合うことを合致(ガッチ)・一致(イッチ)、こちらまで招き致すのが招致(ショウチ)といいます。
『致(チ・いたす)』は中学生 で習う常用漢字です。
『緻(チ)』zhìは、糸と糸の隙間がなく、きめ細かい様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、糸+致(目標まで届く)=緻(糸と糸の隙間がなく、きめ細かい)です。漢字の部首は『糸・いとへん』、意味は『きめ細かい』です。
音読みは呉音が『ヂ』、漢音が『チ』です。きめ細かいことを緻密(チミツ)、極めて細かく精巧な様を精緻(セイチ)といいます。
『緻(チ)』は平成22年度より中学生で習う常用漢字に登録されました。
『窒(チツ)』zhìは、穴の中で行き詰った様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、穴(あな)+至(届く)=窒(穴の中で行き詰まる。窒がる)です。漢字の部首は『穴・あなかんむり』です。意味は『窒(ふさ)がる』、『ゆきづまる』です。
音読みは呉音が『チチ』・漢音が『チツ』。訓読みは常用外(中学校で習わない)の『窒(ふさ)がる』です。窒素(チッソ)、窒息(チッソク)の窒です。
『窒(チツ・ふさがる)』は中学生 で習う常用漢字です。
窒素(チッソ・N2 )ですが、窒素で満たされた部屋では生物の息が出来ないので、漢字の『窒』が宛てられています。
『姪(テツ)』zhíは、親族の女性のうち、姪(めい)を表わす形声文字です。漢字の足し算では、女(女性)+至(行きとどく)=姪(親族の女性で届いた人。系図上で端の人。姪)です。漢字の部首は『女・おんな』、漢字の意味は『姪(めい)』です。
音読みは呉音が『デチ』、漢音が『テツ』です。訓読みは『姪(めい)』です。中国では三国時代以降、甥(おい)の意味にも使われます。
姪(テツ)は常用漢字からは外れています。
『到(トウ)』dàoは、物が目的の場所や時間に届く様子を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、至(まっすぐ届く)+刂(りっとう・刀・曲線)=到(物が曲がって届く。行き着く。到る)です。部首は『刂・りっとう』。意味は『行き着く』・『到る(いたる)』です。『至(シ)』が矢の様に真っ直ぐに届くのに対し、曲がって届くのが到です。
音読みは呉音・漢音ともに『トウ』。訓読みは『到る(いたる)』です。到達(トウタツ)、到来(トウライ)、未到(ミトウ)、周到(シュウトウ)の到です。
音読みの『トウ』は刀(トウ)・刂(トウ)からきています。『刀』については『漢字の覚え方 刀』、到(トウ)・倒(トウ)については『漢字の覚え方 到』もご覧ください。
未到(ミトウ)は未だ到達していないことです。記録、目標に使います。未踏(ミトウ)とは未だ足を踏(ふ)み入れていない場所に使います。
『到(トウ・いたる)』は中学生 で習う常用漢字です。
『倒(トウ)』dǎoは、逆さまに倒れる様子を示す形声文字です。漢字の足し算では亻(にんべん・人の動作)+到(矢が曲線を描いて届く)=倒(人が曲線を描くように逆様に倒れる。倒れる)です。部首は『亻・にんべん』、意味は『倒れる(たおれる)』です。
『仆(フ)』はパタリと前に仆(たお)れるのに対し、『倒(トウ)』は仰向(あおむ)けに倒れる様子を表します。どちらも部首は『亻・にんべん』です。常用漢字の『倒』を使う事が多いです。仆については『漢字の覚え方 卜』をご覧ください。
音読みは呉音・漢音ともに『トウ』。訓読みは『倒れる(たおれる)』。倒産(トウサン)、倒置(トウチ)、卒倒(ソットウ)、転倒(テントウ)の倒です。
『倒(トウ・たおれる)』は中学生 で習う常用漢字です。
他に至の『単語家族』には膣があります。『膣(チツ)』zhìは、女性生殖器のうち、奥の行き詰まった場所を表す漢字です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-7b70.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.しきゅう( )な用事。
2.しこう( )のメニュー。
3.太陽が最も高くなる日 げし( )。
4.しょくいんしつ( )。
5.あんしつ( )で現像。
6.オリンピック しょうち( )。
7.ちめいしょう( )を負う。
8.ちみつ( )な計算。
9.死因は ちっそく( )。
10.甥と めい( )。
11.合格点に とうたつ( )。
12.用意 しゅうとう( )。
13.てんとう( )防止柵。
14.企業の とうさん( )。
解説です。基本の漢字は至、部屋は宀(うかんむり)を足して室、致すは攵(ほこづくり)を足して致、緻密(チミツ)は、糸を致に足して緻、窒(ふさ)がるは穴(あなかんむり)を足して窒、到達するは刂(りっとう)を足して到、倒れるは到に亻(にんべん)を足して倒です。
解答です。至急、至高、夏至、職員室、暗室、招致、致命傷、緻密、窒息、姪、到達、周到、転倒、倒産。
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