漢字の覚え方 豆
漢字には『単語家族』と呼ばれる発音・意味上の漢字の仲間があります。今日は『豆(ズ・トウ)』dòuという字を中心とした『単語家族』を説明します。この『単語家族』には豆、頭、登、燈、短、逗、厨、樹、痘、闘という漢字が含まれます。
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『豆』に何を足したら、頭、登、燈、澄、逗、厨、痘、闘になるのかを考えていきます。頭は小学校2年生、豆、登、短は3年、樹は小学校6年生で習う漢字 、澄、痘、闘は中学校で習う常用漢字です。学年、学校に関係なく一緒に覚えましょう。
『豆(ズ・トウ)』dòuは、『たかつき』という儀式用の食器を表わす象形文字です。古い字体の篆文(テンブン)もご参照ください。植物の豆(まめ)は膨らんだ部分が『たかつき』に似ていることから使われています。漢字の部首は『豆・まめ』、意味は『たかつき』、『豆(まめ)』、『とどまる』です。
『説文解字』には古食肉器也とあります。
音読みは呉音が『ズ』・漢音が『トウ』です。訓読みは『豆(まめ)』です。納豆(ナットウ)、豆腐(トウフ)、小豆(あずき)、大豆(ダイズ)の豆です。
豆(ズ・トウ)は小学校3年生で習う漢字です。
『頭(ズ・トウ)』tóuは、頭(あたま)を表す形声文字です。もともと豆は足の高い食器(たかつき)を表す象形文字です。身体の中で豆(たかつき)に似た部分なので頭という漢字が出来ました。漢字の足し算では、豆(首のある儀式用の食器)+頁(人間の頭部)=頭(人間の頭。頭)です。漢字の部首は『頁・おおがい』、意味は『頭(あたま)』、『頭(かしら)』、『ほとり』、『大きな動物を数える単位』です。
音読みは呉音が『ズ』、漢音が『トウ』、慣用音が『ト』、訓読みは『頭(あたま)』、『頭(かしら)』です。頭にかぶる巾(ぬの)を頭巾(ズキン)、頭を蓋(おお)う骨を頭蓋骨(ズガイコツ・トウガイコツ)、街の頭(ほとり)を街頭(ガイトウ)、リーダーのことを頭と目で頭目(トウモク)といいます。
頭(ズ・トウ)は小学校2年生で習う漢字です。
医学用語では、頭蓋は頭蓋(トウガイ)と漢音で読むのが慣(なら)わしのようです。(『医学大辞典』 第2版 医学書院 p1969 -本辞典では1943(昭和18)年制定の解剖学用語での読み<トウガイ>に準じた。)
『登(トウ・ト)』dēngは、台の上に登(のぼ)る様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、癶(はつがしら・左右の足)+豆(たかつき。台)=登(足で台の上にのぼる。登る)です。古い字体では両手をさらに添えて物を持ち上げる様子を表しています。漢字の部首は『癶・はつがしら』、意味は『登(のぼ)る』、『進む』、『高い地位に就く』、『書面に載せる』です。
音読みは呉音・漢音ともに『トウ』、慣用音が『ト』、訓読みは『登(のぼ)る』です。山に登るを登山(トザン)、学校に進み出ることを登校(トウコウ)、書面に載せて記(しる)すことを登記(トウキ)といいます。
大変に縁起の良い漢字で『たか』、『ちか』、『とみ』、『とむ』、『とも』、『なり』、『なる』、『のぼる』、『のり』、『み』、『みのる』と名前に使われます。『のぼる』は『上(のぼ)る』とも書きます。
登(トウ・ト)は小学校3年生で習う漢字です。
『燈(トウ)』dēngは、高く登(持ち上げられた)火を指します。漢字の足し算では、火(ひへん・火)+登(持ち上げられた)=燈(高く持ち上げられた火。ともしび)です。
音読みは呉音・漢音ともに『トウ』、唐宋音に『ドン』があります。訓読みは『ひ』、『燈り(あかり)』、『ともしび』です。燈台(トウダイ)、燈明(トウミョウ)、行燈(アンドン)の燈です。
正字は燈ですが、常用漢字体(一般生活で使われる漢字)としては灯(トウ)が使われます。
漢字の足し算では、火(ひへん・火)+丁(一点)=灯(一点の火。あかり。ともしび)dengです。部首は『火・ひへん』、意味は『ともしび』です。元・明以来『燈』の代用字として使われてきました。
音読みは呉音が『チョウ』、漢音が『テイ』、唐宋音が『チン』です。他に燈の代用字として『トウ』と読みます。訓読みは『ひ』、『灯り(あかり)』、『ともしび』です。『灯』は『燈』の代用字ですので『トウ』と読むことが多いです。稀に『チン』と読みます。灯台(トウダイ)、灯明(トウミョウ)、提灯(チョウチン)の灯です。
灯(トウ)は丁(一点)の仲間の漢字です。詳しくは『漢字の覚え方 丁』をご覧ください。
灯は小学校4年生で習う漢字 、燈(トウ)は人名用漢字です。
『澄(チョウ)』chéng、dèngは、水の澄んだ様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、氵(水)+登(登る)=澄(水の澄んだ上の部分)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、意味は『澄(す)む』です。水は汚れた部分が下に沈み、清らかな部分は上にたまります。この様子を『澄(す)む』といいます。
音読みは呉音が『ジョウ』、漢音が『チョウ』、訓読みは『澄(す)む』です。澄んで清らかなことを澄清(チョウセイ)、心を澄ますことを澄心(チョウシン)といいます。
大変良い意味の漢字で『きよ』、『きよし』、『きよみ』、『きよむ』、『すみ』、『すむ』、『すめる』、『とおる』と名前に使われます。
澄(す)むは清(す)むとも書きます。『清(セイ)』qingは水が青く清んだ様子を表す漢字で、青の仲間です。詳しくは『漢字の覚え方 青』をご覧ください。
澄(チョウ・すむ)は中学校で習う常用漢字です。
『逗(トウ)』dòuは、とどまる様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、辶(進む)+豆(とどまる)=逗(歩いて来てとどまる)です。漢字の部首は『辶・しんにょう』、意味は『とどまる』です。
音読みは呉音が『ズ』、漢音が『トウ』です。一か所に長くとどまることを逗留(トウリュウ)、宿にとどまることを逗宿(トウシュク)といいます。
逗宿(トウシュク)は常用漢字(一般社会で使用する漢字2136字)の投を使って投宿(トウシュク)と書くのが普通です。
逗(トウ)は常用漢字から外されています。
『痘(トウ)』dòuは、天然痘(テンネントウ・ほうそう)を表す形声文字です。漢字の足し算では、疒(やまいだれ・病気)+豆(豆状のできもの)=痘(豆状のできものが出来る病気。天然痘)です。漢字の部首は『疒・やまいだれ』、意味は『天然痘』です。
音読みは呉音が『ズ』、漢音が『トウ』です。皮膚に豆状のおできが出来る伝染病です。痘瘡(トウソウ・もがさ)とは天然痘(テンネントウ)・疱瘡(ホウソウ)のことです。致死率が高い病気として恐れられていましたが、ワクチンの普及により、ウイルスの撲滅に成功しました。
痘(トウ)は中学校で習う常用漢字です。
『厨(チュウ)』chúは、整えられた台所・料理場を表す形声文字です。漢字の足し算では、厂(がけ・ここでは广の省略形・家)+豆+寸(たかつきを手でたてる・調える・食器を持つ)=厨(整えられた台所・厨房)です。『豆+寸』に『一定の場所にたてる』、『食器を持つ』の意味があり、整理整頓された台所を指します。漢字の部首は『厂・がんだれ』、意味は『厨房(チュウボウ)』です。
正字は廚(チュウ)http://bit.ly/1RRThoK で、漢字の足し算では、广(家)+尌(たかつきを手でたてる・調える)=廚(整えられた台所・厨房)で、意味は同じですが、書くのにはより簡単な厨が使われます。
音読みは呉音が『ズ・ジュウ』、漢音が『チュウ』です。訓読みは『厨(くりや)』があります。整えられた料理をする部屋(房)を厨房(チュウボウ)といいます。
インターネット上の隠語(インゴ)で、青二才のことを中坊・厨房(チュウボウ)というようですが、本来の使い方ではありません。厨は『整えられた』・『立派な』という意味があって大変良い意味の漢字です。
厨(チュウ)は常用漢字から外されています。
『樹(ジュ)』shùは、きちんと立っている樹木(ジュモク)を表す形声文字です。漢字の足し算では、木(樹木)+尌(たかつきを手でたてる・きちんとしている)=樹(きちんと立っている樹木。立派な樹)です。漢字の部首は『木・きへん』、意味は『きちんとした木』、『立派な木』、『立派な』、『しっかりとした』です。
音読みは呉音が『ズ・ジュ』、漢音が『シュ』です。訓読みは常用外の『樹(き)』があります。しっかりと立てることを樹立(ジュリツ)、樹を植えることを植樹(ショクジュ)、樹(しっかりとした木)と木(一般の木)で樹木(ジュモク)といいます。
非常に良い意味の漢字で『いつき』、『き』、『しげ』、『たつ』、『たつき』、『な』、『みき』、『むら』と名前に使われます。
廚(チュウ)・樹(ジュ)について『漢字の覚え方 』もご覧ください。
樹(ジュ)は小学校6年生で習う漢字です。
『闘(トウ)』dòuは、二人の武人が武器を持って闘(たたか)う様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、門(鬥の略字・トウ・二つの武器)+豆+寸(斲の略字・タク・切る)=闘(二人の武人が武器を持って闘(たたか)う)です。漢字の部首は『門・もんがまえ』、意味は『闘う』です。常用漢字体の闘は、鬭(トウ)の略字です。書くのが大変なので、一般の生活では常用漢字の闘を使います。
正字の鬭(トウ)は、鬥(二つの武器)+斲(切る)=鬭(二人の武人が武器を持って闘(たたか)う)です。漢字の部首は『鬥・たたかいがまえ』、漢字の意味は同じです。
音読みは呉音が『ツ』、漢音が『トウ』、訓読みは『闘(たたか)う』です。戦う・闘うことを戦闘(セントウ)、手を組んで(各)闘うことを挌闘・格闘(カクトウ)、牛と牛を闘わせる競技を闘牛(トウギュウ)といいます。
闘(トウ・たたかう)は中学校で習う常用漢字です。
豆に近い漢字で短(タン)duǎnがあります。豆の短いものと矢の短いものを合わせて短(みじか)いことを表す会意文字です。漢字の足し算では矢(矢の短いもの)+豆(豆の短いもの)=短(短いもの。みじかい)です。漢字の部首は『矢・や』、意味は『短(みじか)い』、『足(た)りない』です。
音読みは呉音・漢音ともに『タン』、訓読みは『短(みじか)い』です。足りないところを短所(タンショ)、短い刀を短刀(タントウ)、短い命を短命(タンメイ)、長いことと短いことを長短(チョウタン)といいます。
短(タン)は小学校3年生で習う漢字です。
短いの反対は長いです。老人の長い髪の毛からきているといわれています。詳しくは『漢字の覚え方 長』をご覧ください。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-3f8a.html
『漢字の覚え方 豆』 豆 頭 樹 登 燈 逗 痘 厨 短 澄 闘
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.なっとう( )と とうふ( )。
2.だいず( )と あずき( )。
3.ずのう( )明晰。
4.盗賊の とうもく( )。
5.がいとう( )演説。
6.とざん( )。
7.住宅の とうき( )。
8.港の とうだい( )。
9.高く す( )んだ空。
10.長く とうりゅう( )する。
11.てんねんとう( )。
12.料理屋の ちゅうぼう( )。
13.記録の じゅりつ( )。
14.かくとうぎ( )。
15.せんとう( )体制。
16.自分の たんしょ( )。
解説です。基本の漢字は豆、頭は頁を足して頭、穴から癶を足して登、燈は火を足して燈(灯)、澄むは氵を足して澄、逗はを足して逗、厨(くりや)は厂に豆と寸を足して厨、樹は尌に木を足して樹、闘うは鬥・門(たたかいがまえ・もんがまえ)に豆と寸を足します。短いは矢と豆を足して短です。
解答です。納豆、豆腐、大豆、小豆、頭脳、頭目、街頭、登山、登記、燈台、灯台、澄む、清む、逗留、天然痘、厨房、廚房、樹立、格闘技、挌闘技、格鬭技、挌鬭技、戦闘、戦鬭、短所
明治・大正の文豪、夏目漱石は幼少の頃に種痘が原因で天然痘にかかり、病気の痕が残ったことを苦にされていたようです。
私は漱石の作品が好きで、『こころ』は中でも一番好きです。人間がどのように生きたらよいのかを考えていた作家だと思います。高校の教科書にも取り上げられていました。まだ、読まれていない方には薦めたい一冊です。
漱石(ソウセキ)の名前の由来については『漢字の覚え方 束』をご覧ください。
« 漢字の覚え方 内 | トップページ | 漢字の覚え方 鳥 »
「サ行(ス・ズ )」カテゴリの記事
「タ行(トウ)」カテゴリの記事
- 漢字の覚え方 沓(2014.07.27)
- 漢字の覚え方 冬(2014.07.27)
- 漢字の覚え方 東(2014.05.18)
- 漢字の覚え方 刀・刂(2015.04.12)
- 漢字の覚え方 豆(2014.04.20)
コメント