漢字の覚え方 白
今日は、白、拍、迫、泊、舶、箔、伯、珀、魄、柏、百の漢字の仲間『単語家族』を説明します。基本の漢字は『白』です。読み方は『ハク』。意味は『白(しろ)』、『打つ』、『頭(かしら)』、『静か』です。
『単語家族』の漢字は足し算で表すことができるので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『白』に何を足したら、どんな意味を持つ漢字になるか考えてみます。白は小学校1年生で習う漢字 、拍、迫、泊、伯は中学校で習う常用漢字です。学校、学年に関係なく一緒に覚えまましょう。
『白(ハク)』báiは、頭蓋骨(ズガイコツ・トウガイコツ)を象(かたど)った象形文字です(白川)。また、木の実(どんぐり)の白い部分を表す象形文字ともいわれています(藤堂)。漢字の部首は『白・しろ』です。意味は『白(しろ)』、『あきらか』、『申す』、『あたま』などです。
音読みは呉音が『ビャク』、漢音が『ハク』、訓読みが『しろ』、『しら』です。告げて申すのが告白(コクハク)、あきらかなのが明白(メイハク)、紅と白で紅白(コウハク)、白い蓮を白蓮(ビャクレン)、白くなった髪を白髪(ハクハツ・しらが)、白と黒を白黒(しろくろ)といいます。
『白(ハク)』は小学校1年生で習う漢字です。
『拍(ハク)』pāiは、手のひらを打つ音を表す漢字です。漢字の足し算では、扌(手)+白(パンと叩く音)=拍(手のひらを打つ音。うつ)です。部首は『扌・てへん』、意味は『打(う)つ』、『搏(う)つ』です。『搏(ハク)』poと同じ意味の漢字です。
音読みは漢音が『ハク』、呉音が『ヒャク』で、慣用音に『ヒョウ』があります。訓読みは『拍(う)つ』です。脈拍・脈搏(ミャクハク)、拍手(ハクシュ)、拍子(ヒョウシ)、拍手(かしわで)の拍です。
拍と柏は行書体で書くと同じに見えることがあり、昔から混同されています。神社に参拝して手を拍(う)つ『かしわで』ですが。漢字で書くと柏手、拍手と二通りの書き方になっています。
『拍(ハク・うつ)』中学校で習う常用漢字です。
『泊(ハク)』bó、pōは、舟が静かに停泊する様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、氵(水)+白(静か・水が迫る)=泊(水面に静かに泊る)です。漢字の部首は『氵・さんずい』、意味は『舟が泊まる』、『泊まる』、『静か』、『淡白な』、『湖』です。
音読みは漢音が『ハク』、呉音が『ヒャク』です。訓読みは『泊(と)まる』です。停泊(テイハク)、宿泊(シュクハク)の泊です。
『泊(ハク・とまる)』は常用漢字として追加登録され、中学校で習うようになりました。
『迫(ハク)』pòは、迫る様子を漢字にしたものです。漢字の足し算では、辶(進む)+白(手を打つ)=迫(手を打ちながら追いかける。迫(せま)る)です。部首は『辶・しんにょう』、意味は『迫(せま)る』、『圧力をかける』、『迫り出す』です。
音読みは漢音が『ハク』、呉音が『ヒャク』です。訓読みは『迫(せま)る』です。迫力(ハクリョク)、切迫(セッパク)、脅迫(キョウハク)、迫(せ)り出すの迫です。
『迫(ハク・せまる)』は中学校で習う常用漢字です。
『舶(ハク)』bóは、海を渡る大きな船を漢字にしたものです。漢字の足し算では、舟(ふね)+白(大きい)=舶(海を渡る大きな船)です。 漢字の部首は『舟・ふねへん』、意味は『大きな船』、『海を渡って』です。
音読みは漢音が『ハク』で、呉音が『ボン』です。船舶(センパク)、舶来(ハクライ)、舶載(ハクサイ)の舶です。
舟は漢字の世界では、ニュアンスが微妙に違います。
艇(テイ)はまっすぐ進む速いふね 『漢字の覚え方 廷』http://bit.ly/1FLcD6f
舟(シュウ)は小さいふね 『漢字の覚え方 舟』http://bit.ly/1DFvsUm
艦(カン)は戦う大きなふね 『漢字の覚え方 監』http://bit.ly/25ApacQ
船(セン)はやや大きなふね 『漢字の覚え方 㕣』http://bit.ly/1vmpZDd
舶(ハク)は海を渡るふね 『漢字の覚え方 白』 http://bit.ly/1rkEIHJ
艦艇(カンテイ)、船舶(センパク)、艦船(カンセン)、舟艇(シュウテイ)。漢字は二字で安定し、聞いた時に解かり易いので組み合わせて使うことがあります。
『舶(ハク)』は中学校で習う常用漢字です。
『箔(ハク)』bóは、竹製の薄いすだれを漢字にしたものです。漢字の足し算では、竹(竹製)+泊(薄い)=箔(竹製の薄いすだれ)です。 漢字の部首は『竹・たけかんむり』、意味は『薄いすだれ』ですが、『すだれ』の意味では使うことはなく、『金箔(キンパク)』という使われ方が多いです。
音読みは漢音が『ハク』で、呉音が『ボン』です。金を薄く伸ばしたものを金箔(キンパク)といいます。
『箔(ハク)』は人名用漢字です。
『伯(ハク)』bóは、頭に立つ人、父母の兄を表す漢字にしたものです。漢字の足し算では、イ(にんべん・人物)+白(あたま)=伯(頭に立つ人)です。 漢字の部首は『イ・にんべん』、意味は『兄弟の序列で最年長者』、『伯爵』、『伯(かみ)・神祇官』です。
音読みは漢音『ハク』、呉音が『ヒャク』、訓読みに『伯(かみ)』があります。伯爵(ハクシャク)、伯仲(ハクチュウ)、伯父(おじ)、伯母(おば)の伯です。
中国では、男子の兄弟のうち、長男を伯(ハク)、次男を仲(チュウ)、三男を叔(シュク)、末弟を季(キ)という漢字を使って表します。実力伯仲(ハクチュウ)というのは長男と次男ではそれほど差がないという意味です。
非常に良い意味の漢字です。伯耆(ほうき・現在の鳥取県中西部)という律令制の国名、伯剌西爾(ブラジル)という外国名に使われます。また、『お』、『おさ』、『かみ』、『く』、『たか』、『たけ』、『とも』、『のり』、『はか』、『ほ』、『みち』と広く名前に使われます。
『伯(ハク)』は中学校で習う常用漢字です。
『珀(ハク)』pòは、黄白色の宝石・琥珀(コハク)を表す漢字です。漢字の足し算では、王(玉・宝石)+白(黄白色)=珀(黄白色の宝石。琥珀)です。漢字の部首は『王・おうへん』、意味は『琥珀(コハク)』です。木の樹脂が宝石になったもので、昆虫が入っていることがあります。
音読みは漢音が『ハク』、呉音が『ヒャク』です。琥珀(コハク)の珀です。
『珀(ハク)』は常用漢字から外れています。
『柏(ハク)』bǎi、bóは、柏(かしわ)の木を表す漢字です。漢字の足し算では、木+白(どんぐり状の小さい実)=柏(小さい実の生る木。かしわ)です。漢字の部首は『木・きへん』、意味は『側柏(このてがしわ)』、『柏(かしわ)』です。木は中国ではヒノキ類の総称、我が国ではブナ科の落葉樹を指します。
音読みは漢音が『ハク』、呉音が『ヒャク』です。訓読みは『柏(かしわ)』です。千葉県柏(かしわ)市、柏手(かしわで)、松柏(ショウハク)の柏です。
漢文で松柏(ショウハク)と言えば、マツとヒノキの常緑樹を指し、変わらない志(こころざし)の尊いことの比喩(ヒユ)に使います。
我が国では、昔から神事の食事には柏の葉を使用していました。そこで、食事の支度を意味する『膳(ゼン)』を膳(かしわで)と読むことがあります。
柏(かしわ)は槲(かしわ)http://bit.ly/1RAA0Cv とも書きます。
柏(ハク)は常用漢字から外れています。
『魄(ハク)』pòは、黄白色の宝石・琥珀を表す漢字です。漢字の足し算では、白(頭蓋骨)+鬼(霊)=魄(たましい)です。漢字の部首は『鬼・おに』、意味は『たましい』、『うつろなさま』です。
中国では『たましい』には精神を支える魂(コン)と身体を支える魄(ハク)http://bit.ly/1Tnh3Xf があって、死後、魂(コン)は直ちに空へ帰るのに対し、魄(ハク)はしばらく地上に留まると考えられていました。
音読みは漢音が『ハク』、呉音が『ヒャク』です。魂魄(コンパク)、落魄(ラクハク)の魄です。
『魄(ハク)』は常用漢字ではありません。
『帛(ハク)』bóは、白い絹の布を表す形声文字です。漢字の足し算では、白(白い)+巾(きれ・ぬの)=帛(白い絹の布。絹織物。帛(きぬ)。ぬさ)です。漢字の部首は『巾・はば』、漢字の意味は『白い絹布』、『ぬさ』です。
漢字の世界では、絹で織った布を帛(ハク)、綿や麻で織った布を布(フ)として区別することがあります。
音読みは呉音が『ビャク』、漢音が『ハク』、訓読みが『帛(きぬ)』です。絹に書かれれた文書を帛書(ハクショ)、絹と布のことを帛布(ハクフ)といいます。
帛(ハク)を使った漢字には綿(メン)がります。詳しくは『漢字の覚え方 綿』をご覧ください。
帛(ハク)は常用漢字からは外れています。
『百(ヒャク)』bǎiは、白(あたま・人)に一を足した漢字で、数字の百を表します。形声文字です。既存の漢字に一を足して数を表す漢字に百・千があります。漢字の足し算では、一(数字)+白(あたま・人)=百(多くの人。10の10倍。百)です。漢字の部首は『白・しろ』、意味は『百(ヒャク)』、『多くの』、『多くの人』です。
音読みは呉音が『ヒャク』、漢音が『ハク』、訓読みは『もも』です。百回(ヒャッカイ)、百薬(ヒャクヤク)、百代(ヒャクダイ・ハクタイ)、百合(ゆり)の百です。
漢詩などの古語は漢音で読むことになっています。桓武天皇が詔(みことのり)を出しています。
大変縁起の良い漢字で人名・地名に使われています。百合(ゆり)という漢字ですが、多くの鱗茎(リンケイ)が合わさっている根をもつため百合と書くようです。大和言葉(やまとことば)の『ゆり』は『揺れる(ゆれる)』が語源ともいわれています。
百合(ゆり)の他にも、百地(ももち)、百里(ヒャクリ)、八百津(やおつ)、八百善(やおゼン)、百子(ももこ)、小百合(さゆり)など地名・屋号・人名に良く使われ、『お』、『と』、『はげむ』、『も』、『もも』といった名前の読みもあります。お目出度い漢字の一つです。
百(ヒャク・もも)は小学校1年生で習う漢字です。
『畠(はたけ)』は、畠(はたけ)を表す会意文字です。漢字の足し算では、白(白く乾いた)+田=畠(白く乾いた畠。水をはらずに野菜をつくる畠。はたけ)です。畠は我が国でつくられた国字です。漢字の部首は『田・た』、漢字の意味は『畠(はたけ)』です。
訓読みは『畠(はたけ)』、音読みはありません。非常に重要な漢字で、『はた』、『はたけ』、と地名・人名に広く使われます。
『畠(はたけ)』は『畑(はたけ)』とも書きます。『畠』は常用漢字ではありません。
『畑(はたけ)』については『漢字の覚え方 田』をご覧ください。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-b39d.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.しろくろ( )を決める。
2.こくはく( )する。
3.はくしゅ( )をする。
4.ひょうし( )をとる。
5.船がていはく( )する。
6.しゅくはく( )研修。
7.はくりょく( )ある劇。
8.事態は せっぱく( )する。
8.せんぱく( )免許。
9.はくらい( )品の販売。
10.きんぱく( )で装飾。
11.実力 はくちゅう( )。
12.こはく( )色。
13.雪中の しょうはく( )。
14.千葉県 かしわ( )市。
15.らくはく( )の身。
16.ひゃくやく( )の長。
17.やおや( )。
出来ましたか?解答です。基本漢字は白です。扌で拍、氵で泊、辶で迫、舟で舶、竹と氵で箔、亻で伯、王で珀、木で柏、鬼で魄、一で百です。
白黒、告白、拍手、拍子、停泊、宿泊、迫力、切迫、船舶、舶来、金箔、伯仲、琥珀、松柏、落魄、百薬、八百屋。
漢字の成り立ちの話をしましょう。最古の辞書は後漢(西暦100年頃)の許慎(キョシン)の「説文解字(セツモンカイジ)」です。許慎はその中で漢字について六種の原理を説明しています。これを『六書(リクショ)』といいます。六種類のうち四種類は漢字の成り立ちについて、残りの二種類は漢字の使用法についてしるしています。
彼は、漢字の成り立ちを、物の形に象った(かたどった)『象形文字』(ショウケイモジ)、象形文字を基に点を打った『指事文字』(シジモジ)、文字を組み合わせた『会意文字』(カイイモジ)、意味と音・声を示す文字を組み合わせた『形声文字』(ケイセイモジ)の四種類に分類しました。
『白』は頭蓋骨を象った(かたどった)文字なので『象形文字』です。『拍』は『白(ハク)』という音・声(音符)と『扌』、『泊』は『白(ハク)』に『氵』、『迫』は『辶』、『舶』は『舟』、『箔』は『氵』と『竹』、『伯』は『亻』、『珀』は『王』、『柏』は『木』、『魄』は『鬼』、『百』は『一』を足した『形声文字』です。
漢字の殆どはこれらの『形声文字』です。漢字が足し算であるというのは、この漢字の成り立ちに関わっています。『形声文字』は音・声(音読み)が同じなので、音・声(音読み)を基に漢字の足し算で、漢字を覚えると良いわけです。
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