漢字の覚え方 奇
今日は『奇(キ)』qí、jīという漢字の『単語家族』について説明します。基本になる漢字は『奇』です。身体を曲げた人の姿を表しています。意味は『変わった』、『寄りかかった』、『かたよった』、『奇数の』です。奇、寄、埼、崎、騎、椅、綺がこの漢字の『単語家族』です。
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『奇』に何を足すと寄、埼、崎、騎、椅、綺になるのかを考えます。寄は小学校5年生で習う漢字 、奇、埼、崎、騎は中学校で習い、綺は人名用漢字です。一緒にまとめて覚えてしまいましょう。
『奇(キ)』qí、jīは、身体を曲げた人の姿を漢字にしたものです。漢字の足し算では、大(大人の人)+可(曲がった)=奇(身体を曲げた人、斜めの人、寄りかかった人)はです。漢字の部首は『大・だい』、意味は『変わった』、『あやしい』、『寄りかかった』、『かたよった』、『奇数の』です。『かたよった』の意味から、『奇数(キスウ)』の意味が生じました。
『説文解字』には「異なり。一曰く耦にあらず。大に従い可に従う」とあります。
音読みは呉音が『キ・ギ』、漢音が『キ』です。異常で珍しい事を奇異(キイ)、あやしいさまを奇怪(キカイ)、予想外の計略を奇計(キケイ)、ちぐはぐな運命(数)を数奇(スウキ)、かたよった数を奇数(キスウ)といいます。
ちなみに偶数(グウスウ)の偶は人形のペアを指します。詳しくは『漢字の覚え方 禺』をご覧ください。
『奇(キ)』は中学校で習う常用漢字です。
『寄(キ)』jìは、家をたよりにする様子を漢字にした形声文字です。漢字の足し算では、宀(家)+奇(寄りかかる)=寄(家に寄りかかる。頼りにする。寄りつく)です。漢字の部首は『宀・うかんむり』、意味は『寄りかかる』、『たよりにする』、『寄りつく』です。
音読みは呉音・漢音ともに『キ』、訓読みは『寄(よ)る』です。宿をたよるのを寄宿(キシュク)、新聞などに原稿を寄せるのを寄稿(キコウ)、他の人にたよって生活するのを寄生(キセイ)、人に金品を寄せることを寄付(キフ)といいます。
『寄(キ・よる)』は小学校5年生で習う漢字です。
『埼(キ)』qíは、山の陸地の突き出た部分を漢字にしたものです。漢字の足し算では、土+奇(かたよった。とがった)=埼(山の陸地の突き出た部分。みさき)です。漢字の部首は『土・つちへん』、意味は『みさき』です。また、同じ意味の漢字に『崎(キ)』qíがあります。
音読みは呉音が『ギ』、漢音が『キ』です。訓読みは『さき』です。埼玉(さいたま)の埼です。地名の由来ですが、奈良時代の前玉(さきたま)、幸魂(さきみたま)が転じて埼玉(さいたま)になったとされていますが、諸説あります。
『埼(キ・さき)』は平成22年より追加された中学校で習う常用漢字(ジョウヨウカンジ・一般社会で使用する漢字2136字)です。
『崎(キ)』qíは、山の陸地の突き出た部分を漢字にしたものです。漢字の足し算で覚えるならば、山+奇(かたよった。とがった)=崎(山の陸地の突き出た部分。みさき)です。漢字の部首は『山・やまへん』、意味は『みさき』、『けわしい』です。
異体字に嵜があります。
音読みは呉音・漢音ともに『キ』です。訓読みは『さき』です。地名、名字に使われます。長崎(ながさき)、崎陽軒(キヨウケン)、田崎(たざき)、井崎(いざき・いさき)、西崎(にしざき)、枕崎(まくらざき)、山崎(やまざき・やまさき)、川崎(かわさき)の崎です。
『崎(キ・さき)』は中学校で習う常用漢字です。
『綺(キ)』qǐは、綺麗(キレイ)な織物を表す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、糸(織物)+奇(曲がった模様)=綺(綺麗な織物。綺麗。あや)です。漢字の部首は『糸・いとへん』、意味は『綺麗(キレイ)』、『あや』、『美しい』です。
音読みは呉音・漢音ともに『キ』です。訓読みは『綺(あや)』です。綺(あや)のように麗(うつくしい)ことを綺麗(キレイ)、綺(あやぎぬ)と綺羅(うすぎぬ)の美しさを綺羅(キラ)、美しく光る多くの星・はなやかな様子を綺羅星(キラぼし)といいます。良い意味の漢字ですので『あや』と名前に使われます。
『あや』について、漢字の世界では幾通りも漢字があり、ニュアンスの違いがあります。
文 紋(あや) 文字や家の紋章などの模様 『漢字の覚え方 文』
采 彩 綵(あや) 果物の色模様や色のついた模様 『漢字の覚え方 采』
斐 (あや) 左右対称の美しい模様 『漢字の覚え方 非』
絢(あや) 糸が旬(めぐ)る美しい模様 『漢字の覚え方 旬』
綾(あや) 糸が浮き出る美しい模様 『漢字の覚え方 夌』
綺(あや) 糸や織物の綺麗で美しい模様 『漢字の覚え方 奇』
『麗(レイ)』lìは、鹿の角が並んで麗(うるわ)しく美しい様子
『綾(リョウ・あや)』língは、糸が夌(浮き出る)る模様の美しい様子
『絢(ケン・あや)』xuànは、糸が旬(めぐ)る様な模様の美しい様子
『華(カ・はな)』huá は、花の様に美しい様子
『美(ビ・うつくしい)』měiは、古代中国人が大切にしていた羊の美しい様子
『羅(ラ)』luóは、網状の薄い絹織物の美しさを表す漢字です。
『綺(キ・あや)』は人名用漢字です。
『騎(キ)』qíは、馬に乗る様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、 馬+奇(たよりにする・よりかかる)=騎(馬に乗る)です。漢字の部首は『馬・うまへん』、意味は『馬に乗る』です。古代中国では馬は乗るのではなく、車を引っ張る動物でした。戦国時代も戦車が主流であり、本格的な騎馬隊が編成されるのは漢の武帝の頃からです。
音読みは呉音が『ギ』、漢音が『キ』です。馬に乗ることを騎馬(キバ)・騎乗(キジョウ)、馬に乗った兵士・西欧のナイトを騎士(キシ)といいます。
優れた武人のことを一騎当千(イッキトウセン)といいます。一騎で千人の敵に対抗できるほど優れているという意味です。武人に限らず優れた技術・能力を持つ人に使う四字熟語です。
『騎(キ)』は中学校で習う常用漢字です。
『椅(イ)』yǐは、人が寄りかかる椅子(イス)を漢字にした形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、木(木製)+奇(寄りかかる)=椅(寄りかかる木製の椅子。いす)です。漢字の部首は『木・きへん』、意味は『椅子』です。
音読みは呉音・漢音ともに『イ』です。子は名詞表すことが出来る漢字なので、寄りかかる背もたれのある腰かけを椅子(イス)といいます。
『椅(イ)』は平成22年に新たに登録された常用漢字です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-04e8.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.きすう( )と偶数。
2.すうき( )な運命。
3.赤十字に きふ( )する。
4.寮に きしゅく( )する。
5.さいたま( )県。
6.ながさき( )県。
7.きれい( )な女性。
8.いっき( )当千。
9.西欧の きし( )。
10.いす( )にもたれる。
解説です。基本の漢字は奇、家にたよるが宀(うかんむり)を足して寄、埼玉県は土を足して埼、長崎県は山を足して崎、馬によりにする騎乗は馬に奇をたして騎、椅子は木を足して椅です。
解答です。奇数、数奇、寄付、寄宿、埼玉、長崎、綺麗、一騎、騎士、椅子
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奇付ではなくて寄付だと思います。
投稿: kakaka | 2022年8月19日 (金) 11時50分
ありがとうございます ご指摘の通りです。
投稿: 風船 | 2022年8月19日 (金) 18時15分