漢字の覚え方 丁
今日は『丁(チョウ・テイ)』dīngという漢字の仲間について説明します。基本になる漢字は『丁』です。釘(チョウ・くぎ)を描いた象形文字(ショウケイモジ)です。丁、釘、町、頂、庁(廰)、灯(燈)、打、訂、汀、亭、停、などがこの漢字の仲間です。漢字学者の藤堂はこのような意味・発音・構造上の漢字の仲間について、『単語家族』という表現を使っていました。
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。ここでは基本漢字の『丁』に何を足したらどんな漢字になるか考えます。町は小学校1年生で習う漢字 、丁、打は小学校3年生で習う漢字 、灯、停は小学校4年生で習う漢字 、庁、頂は小学校6年生で習う漢字 、訂、亭は中学校で習います。漢字の足し算で、一緒にまとめて覚えてしまいましょう。
『丁(チョウ・テイ)』dīngは、釘(くぎ)を描いた象形文字(ショウケイモジ)です。漢字の部首は『一・いち』、意味は釘の頭から『平たい』、釘を打つ様から『あたる』、『一点』、あたるから転じて『丁度(チョウド)』、『偶数(グウスウ)』などがあります。
また、十干(ジッカン)の四番目(甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸)を表します。また、十干は(木→火→土→金→水)からなり兄弟で表すので、訓読みでは火(ひ)の弟(おとうと)ですので、丙(ひのえ)と読みます。
昔の成績表の『甲乙丙丁(コウオツヘイテイ)』の丁です。東洋では十干(幹・甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 葵)と十二支(枝・子丑寅卯)を使って60の組み合わせ(干支・えと)で、年を数えます。最近では西暦2007年が、丁亥(テイガイ)という亥(いのしし)年でした。
古代中国の自然哲学の思想によれば、万物は木火土金水の五元素からなり、互いに影響を与えあう。木は燃えて火を生み、火は灰になって土となり、土の中から金属が得られ、金属の表面には水滴が生じ、水によって木が養われるというものです。
音読みは呉音が『チョウ』、漢音が『テイ』、訓読みが『丁(ひのと)』です。丁度(チョウド)、包丁(ホウチョウ)、丁寧(テイネイ)の丁です。
『丁(チョウ・テイ・ひのと)』は小学校3年生で習う漢字です。
少し漢字の読み方の話をします。漢字の読み方は漢字を中国から輸入したときの読み方音読みと大和(やまと)言葉にあわせた訓読み(くんよみ)があります。音読みには、最初に輸入した中国江南地方(呉)の音である呉音(ゴオン)、遣唐使が持ち帰った長安の音である漢音(カンオン)、鎌倉仏教を通して入ってきた唐宋音(トウソウオン)、我が国で慣用的に使われる慣用音(カンヨウオン)があります。
『丁』の単語家族では、呉音が『チョウ』・『ジョウ』、漢音が『テイ』です。漢字によって様々で、呉音と漢音、両方使う漢字、呉音『チョウ』だけを使う漢字、漢音の『テイ』だけを使う漢字があります。平安朝に漢音に統一しようと法律を出したのですが、統一出来ませんでした。そのまま千年以上経過しています。一度言い慣れた発音は簡単には変えられないものです。『丁』は『チョウ』と読んだり『テイ』と読んだり非常に厄介(ヤッカイ)です。
一般的に呉音が『チョウ』・『ジョウ』のとき、漢音では『テイ』と読むことが少なくありません。音読みの呉音、漢音については『呉音と漢音』 もご覧ください。
『釘(チョウ)』dìngは、釘を示す漢字です。丁が色々な意味で使われるため、釘を表すためにつくられた漢字です。漢字の足し算では、金(かねへん・金属)+丁(くぎ)=釘(金属製のくぎ・釘)です。部首は『金・かねへん』、意味は『釘』です。
音読みは呉音が『チョウ』、漢音が『テイ』です。訓読みは『くぎ』です。釘(くぎ)以外にはあまり使いません。「釘を刺す」というのは、念のために釘を使う、という意味から転じた、「念を入れる」ことです。
『釘(チョウ・くぎ)』は常用漢字から外れています
『町(チョウ)』tǐngは、田畑の畔(あぜ)を漢字にしたものです。漢字の足し算では、田+丁(丁の字)=町(田畑の畦道)です。我が国では、畔道から転じた行政区画、町(チョウ・まち)の意味があります。部首は『田・た』、意味は『畔』から転じた『町(まち)』です。
音読みは呉音が『チョウ』、漢音が『テイ』です。訓読みは『まち』です。町内(チョウナイ)、町屋(まちや)の町です。
『町(チョウ・まち)』は小学校1年生で習う漢字です。
『頂(チョウ)』dǐngは、頭のてっぺんを漢字にしたものです。漢字の足し算では、丁(平たい)+頁(おおがい・頭)=頂(頭の平たい部分。てっぺん)です。部首は『頁・おおがい』、意味は『頂き(いただき)』です。
音読みは呉音の『チョウ』が普通、漢音の『テイ』は使いません。訓読みは『頂(いただ)き』です。頂上(チョウジョウ)、登頂(トウチョウ)、丹頂(タンチョウ)、頂戴(チョウダイ)の頂です。
『頂(チョウ・いただき)』は小学校6年生で習う漢字です。
『庁(チョウ)』tīngは、床の平たい役所の様子を漢字にしたものです。漢字の足し算では、广(まだれ・建物)+丁(平たい)=庁(平らな床の役所。役所)です。部首は『广・まだれ』、意味は『役所』です。
『庁』の本字は『廳・廰』です。民衆の声を聴く場所を指します。漢字の足し算では、广(まだれ・建物)+聽・聴(聴く)=廳(民衆の声を聴く場所。役所)です。常用漢字体は『庁』が登録されています。『庁』を使って下さい。
聴くという漢字は、素直な心で耳をかたむけるという漢字の成り立ちです。詳しくは『漢字の覚え方 直』を御覧下さい。
音読みは呉音が『チョウ』、漢音が『テイ』です。支庁(シチョウ)、庁舎(チョウシャ)の庁です。
『庁(チョウ)』は小学校6年生で習う漢字です。
『灯(トウ)』dēngは、一点の火を漢字にしたものです。漢字の足し算では、火(ひへん・火)+丁(一点)=灯(一点の火。あかり。ともしび)です。部首は『火・ひへん』、意味は『ともしび』です。元・明以来『燈』の代用字として使われてきました。
音読みは呉音が『チョウ』、漢音が『テイ』、唐宋音が『チン』です。他に代用字として『トウ』と読みます。訓読みは『ひ』、『灯り(あかり)』、『ともしび』です。『灯』は『燈』の代用字ですので『トウ』と読むことが多いです。稀に『チン』と読みます。灯火・燈火(トウカ)、灯台・燈台(トウダイ)、点灯・点燈(テントウ)、提灯(チョウチン)の灯・燈です。
『灯(トウ・ひ)』は小学校4年生で習う漢字、『燈』は人名用漢字です。
『灯』の本字は『燈』です。登(持ち上げられた)火を指します。漢字の足し算では、火(ひへん・火)+登(持ち上げられた)=燈(高く持ち上げられた火。ともしび)です。音読みは呉音・漢音ともに『トウ』です。
燈(トウ)は登(トウ)、豆(トウ)、頭(トウ)などと同じ仲間の漢字『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 豆』 をご覧ください。
『灯台(「トウダイ)もと暗し』という成語は、灯台の真下は実は暗いことから、身近なことはかえってわかり難いという意味です。
『打(ダ)』dǎは、釘を打つ様子を漢字にしたものです。漢字の足し算では、扌(てへん・手)+丁(釘)=打(釘を打つ。打つ)です。部首は『扌・てへん』、意味は『打つ』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ダ』です。訓読みは『打つ(うつ)』はです。打撃(ダゲキ)、殴打(オウダ)、打合せ(うちあわせ)の打です。
『打(ダ・うつ)』は小学校3年生で習う漢字です。
『訂(テイ)』dìngは、訂正する様子を漢字にしたものです。漢字の足し算では、言(ごんべん・言葉)+丁(平たくする)=訂(言葉を平たくする。訂正する)です。部首は『言・ごんべん』、意味は『訂正する』です。古代中国では、文字の訂正は竹簡(チクカン)という竹製の書類を削って平らにして訂正しました。
音読みは漢音の『テイ』を使い、呉音の『ジョウ』は使いません。訂正(テイセイ)、改訂(カイテイ)の訂です。
『訂(テイ)』は中学校で習う常用漢字です。
『汀(テイ)』tīngは、なぎさの様子を漢字にしたものです。漢字の足し算では、氵(さんずい・水)+丁(平たくする)=汀(平たい波打ち際。なぎさ)です。部首は『氵・さんずい』、意味は『なぎさ』、『みぎわ』です。なぎさは、砂が集まる水辺で『渚(ショ)』zhuとも書きます。
渚(なぎさ)は者の『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 者』をご覧ください。
音読みは漢音の『テイ』が普通で、呉音の『チョウ』は使いません。訓読みは『なぎさ』、『みぎわ』です。汀線(テイセン)、汀曲(テイキョク)の汀です。
『汀(テイ・なぎさ)』は人名用漢字です。
『亭(テイ)』tíngは、高台の一軒屋を漢字にしたものです。漢字の足し算では、高(高台)+丁(一点)=亭(高台の一軒屋。一時的な休息所。飲食の建物)です。漢字の書き方は、高の中の口は省略して、丁を中に書きます。部首は『亠・なべぶた』、意味は『飲食の建物』、『休息所』などです。
音読みは呉音が『ジョウ』、漢音が『テイ』、唐宋音が『チン』です。駅亭(エキテイ)、料亭(リョウテイ)、亭主(テイシュ)の亭です。
『亭(テイ)』は中学校で習う常用漢字です。
『停(テイ)』tíngは、停止する様子を漢字にしたものです。漢字の足し算では、亻(人の動作)+亭(一点)=停(一点に止まる。停止する)です。部首は『亻・にんべん』、意味は『止まる』、『とどまる』です。
音読みは呉音が『ジョウ』、漢音が『テイ』、慣用音が『チョウ』です。訓読みは常用外の『停(とど)まる』、『停(と)まる』があります。停止(テイシ)、停戦(テイセン)、停留所(テイリュウジョ)の停です。
『停(テイ・とまる)』は小学校4年生で習う漢字です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/post-2bea.html
『漢字の覚え方 丁』 丁 釘 町 頂 庁 灯 打 訂 汀 亭 停
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.お豆腐 いっちょう( )。
2.ちょうど( )良い加減。
3.くぎ( )を刺す。
4.ちょうちょう( )選挙。
5.ちょうじょう( )決戦。
6.北海どうちょう( )。
7.とうだい( )もと暗し。
8.だげき( )の神様。
9.設問を ていせい( )。
10.波打ち際のラインを ていせん( )という。
11.ていしゅ( )元気で留守が良い。
12.りょうてい( )の味。
13.一時 ていし( )。
解説です。丁度は基本漢字の丁、釘は金属で釘、田を足して町、頁を足して頂、建物は广で庁、ランプはは火で灯、釘を打つは扌で打、訂正は言葉で訂、なぎさは氵で汀、料亭は高いで亭、とどまるは人の動作で亻の停です。
解答です。一丁、丁度、釘、町長、頂上、道庁、道廰、灯台、燈台、打撃、訂正、汀線、亭主、料亭、停止
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