漢字の覚え方 爿
漢字には『単語家族』と呼ばれる漢字の仲間があります。今日は爿(丬)、状、牀(床)、壮、荘(庄)、装、将、奨、醤、牆という『単語家族』について説明します。基本の漢字は『爿』(省略形は丬)で、読み方は『ショウ』、意味は『ベッド・几』、『長い』、『建築中』です。
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『爿』に何を足すとどんな漢字になるのかを考えます。状は小学校5年、装、将は6年、壮、荘、奨は中学校で習います。学校、学年に関係なくまとめて覚えましょう。
『爿(ショウ)』pánは、長い木・建築中の板を表した象形文字です。『ベッド』、『几・台』、『長い』、『建築中の板』、『建築中』などの多くの意味があります。
音読みは漢音が『ショウ』、呉音が『ソウ』です。漢字の部首は『爿(ショウ)』です。『爿』は常用漢字から外れています。
建築に使う板を『爿』といいます。版築(ハンチク)といって、板の間(あいだ)に土や石灰を入れて叩いて固める建築方法です(現在では土ではなくコンクリートを流しいれます)。
厳密に言うとこの板の左側が『爿(ショウ)』pánで右側が『片(ヘン)』piànです。丁度左右対称のデザインになっていることが解ります。『爿』は『木・ベッド・長い・大きい』関係の漢字、『片』は『片側』を示すように漢字に変化していきました。
『片(ヘン)』piànは、木の切れ端を描いた象形文字です。漢字の部首は『片・かた』、漢字の意味は『きれはし』、『平らな切れ端』、『片側』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ヘン』、訓読みが『片(かた)』です。木の切れ端を木片(モクヘン)、簡単な短い言葉を片言(ヘンゲン)といいます。
『片(ヘン)』は小学校6年生で習う漢字です。
『状(ジョウ)』zhuàngは、建物物の進み具合を表す漢字です。漢字の足し算では、丬(建築用の板)+犬(建築用の守り犬)=状(建築中の様子。状況。すがた)。漢字の部首は『犬』です。意味は『建築中』から派生した『すがた』、『書面』などがあります。
古代では塔、門などの重要な建築物には、必ず嗅覚の鋭い犬に邪悪な霊から守って貰っていました。場合によっては犠牲にして埋めていたのです。そこで漢字の成り立ちでは、建築中の状には犬が含まれています。
音読みは呉音が『ジョウ』、漢音が『ソウ』です。状況(ジョウ)、形状(ケイジョウ)、書状(ショジョウ)、賞状(ショウジョウ)、白状(ハクジョウ)の状です。良い意味の漢字で『かた』、『のり』の名前に使われます。
『状(ジョウ)』は小学校5年生で習う漢字です。
『牀・床(ショウ)』chuángは、ベッドや床(ゆか)を表す漢字です。漢字の足し算では、爿(建築用の板)+木(木製)=牀(板で出来た床。フロア)です。本来は爿を使っていた漢字ですが、意味の上から部首が『广・まだれ』に代わってしまいました。意味は『ゆか』、『とこ』、『上品な』、『床(ゆか)しい』です。
音読みは慣用音が『ショウ』、呉音が『ジョウ』、漢音は『ソウ』です。訓読みは『ゆか』、『とこ』です。温床(オンショウ)、臨床(リンショウ)、床屋(とこや)、寝床(ねどこ)の床です。『上品な』の意味が有り、『とこ』、『ゆか』と名前に使われます。
『床(ショウ)』は中学校でで習う常用漢字です。
『壮(ソウ)』zhuàngは、元気な様子を漢字にしたものです。漢字の足し算では、丬(長い)+士(男)=壮(長い男。元気な男)です。漢字の部首は『士・さむらい』、意味は『元気』、『さかん』、『勇ましい』です。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』です。壮大(ソウダイ)、壮快(ソウカイ)、悲壮(ヒソウ)、勇壮(ユウソウ)の壮です。勇ましく、立派な漢字で『あき』、『お』、『さかん』、『たけ』、『たけし』、『まさ』、『もり』と多くの名前に使われます。
『壮(ソウ)』は中学校で習う常用漢字です。
『荘(ショウ)』zhuāng は、地方のお屋敷を表す漢字です。漢字の足し算では、艹(植物・地方の)+壮(長い・大きい)=荘(地方のお屋敷)です。部首は『艹・くさかんむり』、意味は『屋敷』、『おごそか』、『立派な』です。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』です。別荘(ベッソウ)、山荘(サンソウ)、荘厳(ソウゴン)、荘園(ショウエン・ソウエン)の荘です。厳(おごそ)かで立派な漢字で、『これ』、『さこう』、『たか』、『たかし』、『ただし』、『まさ』と多くの名前に使われます。
『荘(ショウ)』は中学校で習う常用漢字です。
『荘(ショウ)』zhuāngの異体字に、『庄(ショウ)』zhuāngがあります。意味は同じで地方のお屋敷、田舎の家です。漢字に土が使われている分、田舎・農家のニュアンスがあります。豪邸・御屋敷のイメージは同じです。漢字の足し算では、广(家)+土(農村)=庄(地方のお屋敷・田舎の農家)です。漢字の部首は『广・まだれ』、意味は『屋敷』、『たいら』です。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』です。荘と同じです。我が国では、村の責任者、村長を庄屋(ショウヤ)と呼びます。良い意味の漢字で『たいら』、『まさ』と人名に使います。
『庄(ショウ)』は人名用漢字です。
『粧(ショウ)』zhuāngは、化粧する様子を表す漢字です。漢字の足し算では、米(粉・おしろい、粋・きれい)+庄(たいら・屋敷)=粧(白粉などで綺麗に化粧する。けしょう)です。漢字の部首は『米・こめへん』、意味は『化粧』、『身づくろいをする』です。米には、粉(こな・おしろい)、粋(いき・きれい)、精(きれい)の意味があります。
異体字に妝(ショウ)zhuāngがあります。こちらの成り立ちはすらりと容姿を整えるです。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』です。『装(ショウ)』と同じ漢字といわれています。白粉(おしろい)・口紅(くちべに)をつけてよそおうには『粧』、着飾るには『装』を使い分けています。化粧(ケショウ)の粧です。『粧』は中学校で習う常用漢字です。
『装(ショウ・ソウ)』zhuāngは衣装を示す漢字です。漢字の足し算では、壮(長い)+衣(衣服)=装(長い衣服。恰好良い服。飾る。装う)です。部首は『衣』、意味は『装う』、『装う』から転じた『そなえつける』です。
音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』です。訓読みは『装う(よそおう)』です。衣装(イショウ)、装飾(ソウショク)、装置(ソウチ)、装備(ソウビ)の装です。
『装』は『裳(ショウ)』shangとほぼ同じイメージの漢字です。衣装(イショウ)、衣裳(イショウ)は同じ意味の漢字です。『裳』が中学校で習う漢字であるのに対し、『装』は小学校で習う漢字なので衣装の方を使う傾向にあります。
『装(ショウ・ソウ)』は小学校6年生で習う漢字です。
『将・將(ショウ)』jiàngは、将軍を表す漢字です。漢字の足し算では、爿(供物の台)+月(肉)+寸(手)=将・將(祭肉を手に持った将軍)です。漢字の『将』成り立についてです。進軍時に将軍は、祭肉を携えて行動しました。『将』はその様子を表しているといわれています。漢字の部首は『寸・すん』、意味は『ひきいる』、『ゆく』、『持つ』、『携える』、『まさに』、『おこなう』、『助ける』、『正しい』です。
また、一説では『将』jiàngは長い指(爿+月+寸)でリダーシップを表しているといわれています。将指(ショウシ)は手では中指、足では親指のことです。字体は常用漢字に登録されている『将』を使って下さい。
音読みは呉音が『ソウ』、漢音が『ショウ』です。訓読みは『将に(まさに)』、『将いて(ひきいて)』です。将軍(ショウグン)、将校(ショウコウ)、主将(シュショウ)、将来(ショウライ)の将です。非常に良い意味の漢字で、『すけ』、『すすむ』、『たすく』、『ただし』、『たもつ』、『のぶ』、『はた』、『ひとし』、『まさ』、『もち』、『ゆき』と多くの名前に使われます。
『将(ショウ)』は小学校6年生で習う漢字です。
『奨・奬(ショウ)』jiǎng は祭肉を祖廟に奨(すす)める様子を表しています。漢字の足し算では、将(祭肉を手に持った将軍)+犬(祭肉)=奨(祭肉を祖廟に奨(すす)める)です。
『奨』には大を犬につくる字体があります。もともとの字体は犬(祭肉を表す)だったといわれています。漢字の部首は『大』、意味は『奨める』、『たすける』です。
また『奨』は、将軍が大きく前進する様子を漢字にしたものともいわれています。
省略した字体の『奨』が常用漢字に登録されています。常用漢字体の『奨』を使って下さい。 音読みは呉音が『ソウ』、漢音が『ショウ』です。訓読みは『奨める(すすめる)』です。奨励(ショウレイ)、推奨(スイショウ)の奨です。良い意味の漢字で、『すけ』、『すすむ』、『たすく』、『つとむ』と多くの名前に使われます。
『奨(ショウ)』は中学校で習う漢字です。
『醤(ショウ)』jiàngは、肉を発酵させた醤(ひしお)を示す漢字です。漢字の足し算では将(肉を持つ)+酉(お酒・壺)=醤(肉を発酵させた醤)です。漢字の部首は『酉・とり・さけづくり』です。
音読みは呉音が『ソウ』、漢音が『ショウ』です。訓読みは『ひしお』です。醤油(ショウユ)の醤です。現在の醤油は大豆と麹から造られています。醤油(ショウユ)は正油(ショウユ)とも書きます。
『醤(ショウ)』は常用漢字ではありません。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-b050.html
『漢字の覚え方 爿』 片 状 床 壮 荘 庄 粧 装 将 奨 醤
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.じょうきょう( )を把握する。
2.しょじょう( )が届く。
3.けいじょう( )記憶合金。
4.被告人が はくじょう( )する。
5.薬品の りんしょう( )試験。
6.とこや( )で散髪。
7.そうだい( )な計画。
8.べっそう( )へ行く。
9.しょうえん( )整理令。
10.村の しょうや( )。
11.けしょう( )をする。
12.いしょう( )を飾る。
13.しょうぐん( )と兵隊。
14.しょうらい( )性
15.節電を しょうれい( )する。
16.しょうゆ( )と味噌。
解説です。基本漢字は爿、状態は犬を足して状、床は广(まだれ)に木で床、元気な男(士)で壮、艹(地方の)お屋敷で荘、長い衣で装、長い指で将、奨めるは犬(祭肉)を足して奨、肉を発酵させるは酉(お酒・壺)を足して醤です。
解答です。状況、書状、形状、白状、臨床、床屋、壮大、別荘、荘園、庄屋、化粧、衣装、衣裳、將軍、将軍、將来、将来、奨励、奬励、醤油。
« 漢字の覚え方 射 | トップページ | 漢字の覚え方 章 »
いつも、勉強させていただいております。
感謝しています。
大変な作業に
ただただ脱帽です。
ドライアイとか緑内障とか、目の負担が大きいのでくれぐれもご自愛ください。
投稿: 坂本智惠子 | 2017年1月16日 (月) 06時14分
坂本智惠子 様
コメント有難う御座います。暖かい言葉有難う御座います。
甲骨文字の解釈まで行き届かず、白川先生の説の紹介が少ないので、これから
補っていこうと考えております(説文解字・藤堂先生の説が多いです)。
貴女と同じで、漢字は絵を伴って覚えていければと考えております。
大変良い仕事をなさっている御様子。
寒さ厳しい折、御健康・御活躍をお祈り申し上げます。
投稿: 風船 | 2017年1月16日 (月) 06時56分
私は、このような覚え方の辞書とかを探しましたが、ありませんでした。
こちらのサイトを偶然見つけて、覚えやすく、ためになるなぁと思いました。
あなたのサイトに出会えて、本当にうれしいしだいです。
これからも、こちらで勉強させていただきますのでよろしくお願いします。
投稿: 野うさぎ | 2017年11月22日 (水) 21時19分
野うさぎさん コメントどうも有難う御座います。ただの愛好家ですから。。
今、凹んでおりまして。力づけて頂き、大変有難う御座います。
どうも色々と誤りがあるようでして。申し訳ありません。見つけ次第訂正して参ります。
さる大学の教授の方が、私の解からない所で、こそこそ御批判なさっているようでして。
弱い者なんか間接的に叩かずに、直接コメントしてもらったら良いのにと思います。
知識の持ち合わせている方が、もっと解かり易いもの公開してくれれば好いのにと思います。
有難うございます。微力ながら頑張って参ります。
投稿: 風船 | 2017年11月22日 (水) 21時30分