漢字の覚え方 土

　漢字には『単語家族』と呼ばれる漢字の仲間があります。今日は『土（ト）』tǔという字を基本とした『単語家族』を説明します。この『単語家族』には社、吐、徒、杜という漢字が含まれます。

『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『土』に何を足したら社、吐、徒、杜になるのかを考えてます。土は小学校1年生、社は2年生、徒は4年生、吐は中学校で習う常用漢字、杜は人名用漢字です。学校に関係なく一緒に覚えましょう。

　基本の漢字である『土（ト）』tǔは、土地を示した象形文字です。土が盛り上がっている様子を示します。漢字の部首は『土・つち』。漢字の意味は『土（つち）』、『土地』、『土地の神』、『土曜日』です。

音読みは呉音が『ツ』、漢音が『ト』、慣用音が『ド』、訓読みが『土（つち）』です。土砂（ドシャ）、本土（ホンド）、土地（トチ）、土佐（トサ）、黒土（くろつち）の土です。

『土（ト・つち）』は小学校1年生で習う漢字です。

　『社（シャ）』shèは、土地神の社（やしろ）を表す形声文字です。漢字の足し算では、ネ（神）＋土（土地）＝社（土地の神。やしろ）です。漢字の部首は『礻・しめすへん』、意味は『土地の神』、『社（やしろ）』、『氏神を中心にした団体』です。

音読みは呉音が『ジャ』、漢音が『シャ』、訓読みが『社（やしろ）』です。土地の神を中心にした集まり・世界を社会（シャカイ）、神様の社（やしろ）を神社（ジンジャ）、同士の集まった団体を結社（ケッシャ）といいます。会社（カイシャ）は和製漢語で江戸末期に作られたsocietyの訳語で、現在ではcompanyの意味に使います。

また、我が国では助詞の『こそ』にこの漢字をあてています。

良い意味の漢字で『あり』、『こそ』、『たか』、『やしろ』と名前に使われます。

『社（シャ・やしろ）』は小学校2年生で習う漢字です。

　『徒（ト）』túは、一歩、一歩を土を踏みしめて行く様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、彳（行く）＋土＋足＝徒（一歩、一歩を土を踏みしめて行く。かちありき）です。漢字の部首は『彳・ぎょうにんべん』、漢字の意味は『徒歩（かちありき）』、一歩、一歩から『歩兵』、『弟子』、『むなしい』、『徒（いたずら）に』です。

音読みは呉音が『ド』、漢音が『ト』です。訓読みは常用外に『徒（かち）』があります。乗り物に乗らないで一歩一歩行くことを徒歩（トホ・かち・かちありき）、むなしい苦労を徒労（トロウ）、弟子のことを徒弟（トテイ）といいます。東京の下町には御徒町（おかちま）という町があります。

走（はし）るは大＋疋（足）で漢字の成り立ちが違い、音読みも『ソウ』で違います。

徒（ト）は土（ト）の『単語家族』で、小学校4年生で習う漢字です。

　『吐（ト）』tǔ・tùは、口から物を吐き出す様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、口＋土（大地）＝吐（大地。いっぱいのものを口から吐き出す。吐く）です。漢字の部首は『口・くちへん』、意味は『吐く（はく）』です。土には大地のもつ力。いっぱいの意味があり、いっぱいのものを吐くと言われています。

呉音は『ツ』、漢音が『ト』、訓読みが『吐く（はく）』です。がっかりしたり、ほっとした時に吐く息を吐息（トいき）、血を吐くことを吐血（トケツ）、嘔く（はく）と吐く（はく）で嘔吐（オウト）、吐くことと下痢を吐瀉（トシャ）といいます。

『吐（ト）』は中学校で習う常用漢字です。

嘔く（はく）は屈（かが）んで嘔く（はく）様子を表す漢字です。區・区に屈むの意味があります。詳しくは 『漢字の覚え方 区』をご覧ください。

　『杜（ト）』dùは、神社の森を表す形声文字です。漢字の足し算では、木＋土（大地・土地の神。いっぱい）＝杜（神社の森。もり）です。漢字の部首は『木・きへん』、意味は『杜（もり）』です。土には大地のもつ力。いっぱいの意味があり、沢山の木、神聖な木々と言われています。

呉音は『ズ』、漢音が『ト』、訓読みが『杜（もり）』です。非常に縁起の良い漢字です。人名・国名に使われています。またこの漢字を使ったものには、杜若（かきつばた）、杜鵑（ほととぎす）など植物・鳥の名前。杜子春（トシシュン）という物語の主人公の名前。盛唐の詩人・杜甫（トホ）、宋の詩人・杜黙（トモク）などが有名です。『杜』は人名用漢字です。

杜撰（ズサン）についての説明です。宋の詩人・杜黙（トモク）の詩には格式はずれのものが多かったという故事から、誤りの多い著述を杜撰（ズサン）と呼ぶようになりました。『撰』とは詩文をつくることです。

御酒を造る杜氏（トウジ・トジ）さんの漢字の由来ですが、杜康（トコウ）という古代中国の御酒の神様にちなんだという説があります。我が国では口噛みという醸造法で酒を造っていた主婦を刀自（トジ）といいます。刀自（トジ）を受け継いで、杜氏（トウジ）という漢字を宛てたともいわれています。

『杜（ト・もり）』dùは人名用漢字です。

土（ト)を使った漢字に庄（ショウ）、粧（ショウ）、字形が同じ漢字に牡（ボ）があります。

　『庄（ショウ）』zhuāngは、地方の豪邸、田舎の御屋敷を表す漢字です。漢字に土が使われているますが、元の漢字が『荘（ショウ）』zhuangだったので、『ショウ』と読みます。漢字の足し算では、广（家）＋土（農村）＝庄（地方のお屋敷・田舎の農家）です。漢字の部首は『广・まだれ』、意味は『屋敷』、『たいら』です。

『庄（ショウ）』zhuāngは、『荘（ショウ）』zhuāngの異体字なので、厳密にいうと『土（ト）』tuと同じ『単語家族』ではありません。荘は、爿（丬）、状、牀(床）、壮、荘、装、将、奨、醤、牆と同じ『単語家族』です。詳しくは『漢字の覚え方 爿』をご覧ください。

音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』です。荘と同じです。我が国では、村の責任者、村長を庄屋（ショウヤ）と呼びます。良い意味の漢字で『たいら』、『まさ』と人名に使います。

『庄（ショウ）』は人名用漢字です。

　『粧（ショウ）』zhuāngは、化粧する様子を表す漢字です。漢字の足し算では、米（粉・フン・おしろい）、粋（スイ・きれい）＋庄（たいら・屋敷）＝粧（白粉などで綺麗に化粧する。けしょう）です。漢字の部首は『米・こめへん』、意味は『化粧』、『身づくろいをする』です。

音読みは呉音が『ショウ』、漢音が『ソウ』です。『装（ショウ）』と同じ漢字といわれています。白粉（おしろい）・口紅（くちべに）をつけてよそおうには『粧』、着飾るには『装』を使い分けています。化粧（ケショウ）の粧です。

『粧（ショウ）』は中学校で習う常用漢字です。

牡（おす）については、土（ト）ではなく士（シ）http://bit.ly/1odU71P であったとされています（藤堂）。

　『牡（ボ）』mǔは、牡（おす）の様子を表わした形声文字です。漢字の足し算では、牛＋士（男）＝牡（男の牛。おすの牛。おす）です。漢字の部首は『牛・うしへん』、意味は『牡（おす）』、『牡の牛』です。

音読みは呉音が『ム・モ』、漢音が『ボウ』、慣用音が『ボ』。訓読みは『牡（おす）』です。牛だけでなく獣や鳥の牡にも使われます。牡丹（ボタン）、牡蠣（ボレイ・かき）の牡です。

『牡（ボ）』は人名用漢字です。

http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-30a7.html

『漢字の覚え方 土』 土 社 吐 杜 庄 粧 牡

参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。

少し練習しましょう。

1.どしゃ（　　　）降り。

2.どようび（　　　　　）。

3.地元の じんじゃ（　　　）。

4.畑の つち（　）。

5.かいしゃ（　　　）へ出勤。

6.しゃかい（　　　）人。

7.肺病で とけつ（　　　）する。

8.といき（　　　）をする。

9.李白と とほ（　　　　）。

10.ずさん（　　　）な著述。

11.酒造りの とうじ（　　　）。

12.村の しょうや（　　　）。

13.けしょう（　　　）をする。

解説です。土（つち）、土曜はの基本漢字の『土』、社（やしろ）はネ（しめすへん・神）を足して『社』、吐く（はく）は口（くちへん）を足して『吐』、杜（もり）は木（きへん）を足して『杜』です。

解答です。土砂、土曜日、土、神社、会社、社会、吐血、吐息、杜甫、杜撰、杜氏、庄屋、化粧。