漢字の覚え方 京

　漢字には『単語家族』と呼ばれる漢字の仲間があります。今日は京、鯨、涼、諒、掠、景、影、憬という『単語家族』について説明します。基本の漢字は『京』で、読み方は『キョウ・ケイ』、意味は『高い』、『みやこ』です。

　『単語家族』は足し算で表わすことができるので『京』に何を足すとどんな漢字になるのかを考えます。小学校2年で京、4年で景を習い、中学校で鯨、涼、影、憬を習います。学校、学年に関係なくまとめて覚えてしまいましょう。

　『京』jingは、都市の高い建物の映像を漢字にした象形文字（ショウケイモジ）です。『高い』、『高い建物のある街』、『大きい』の意味があります。また大きいことから、数の大きい単位『兆』の万倍を『京（ケイ）』といいます。（中国では現在用いられていません）。

映像ではこんな感じです。

音読みは呉音が『キョウ』、漢音『ケイ』、唐宋音が『キン』です。訓読みは常用外の『みやこ』があります。漢字の部首は『亠・なべぶた』です。

音読みには呉音（ゴオン）と言って最初に漢字を輸入した時の呉(江南)地方の音、漢音（カンオン）と言って遣唐使が持ち帰った唐時代の長安の音があります。そのほかに鎌倉・室町時代入ってきた唐宋音（トウソウオン）があります。

呉音・漢音・唐宋音とも同じ場合は良いのですが、微妙に違うので面倒です。『京』の場合、呉音は『キョウ』、漢音は『ケイ』、唐宋音が『キン』です。現在の中国の読み方に近いのは唐宋音の『キン』です。平安時代に、読み方を統一しようとしたのですが、失敗し、日本では3種類とも残ってしまいました。大変面倒ですが、分けて覚える必要があります。

呉音の『キョウ』は漢音では『ケイ』になることがあります。音読みの呉音、漢音については『呉音と漢音』http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-adc3.html　をご覧ください。

京都（キョウト）、東京（トウキョウ）、京阪神（ケイハンシン）、京浜（ケイヒン）、上京（ジョウキョウ）、北京（ペキン）の京です。『京』は小学校2年生で習う漢字http://bit.ly/1gpSgnE です。

　『鯨（ゲイ）』jingは、鯨（くじら）を表した形声文字です。漢字の足し算では、魚（さかなへん・魚）＋京（みやこ。大きい）＝鯨（大きなさかな）です。鯨は魚と考えれていたのです。音読みは『ゲイ』、訓読みは『くじら』です。漢字の部首は『魚・さかなへん』です。

音読みは慣用音の『ゲイ』を使い、呉音の『ギョウ』、漢音の『ケイ』は使いません。訓読みは『くじら』です。鯨のように大量に飲む事を鯨飲（ゲイイン）、鯨を捕る事を捕鯨（ホゲイ）、猪の肉を山鯨（やまくじら）といいます。『鯨』は中学校で習う常用漢字です。

魚を使った漢字について詳しくは部首索引 魚(うお・さかな) をご覧下さい。

　『涼（リョウ）』liangは、高いところで人が風に当たり涼む漢字です。漢字の足し算では、氵（さんずい・みず、冷たい）＋京（高いところ）＝涼（高いところで涼む）です。部首は『氵・さんずい』、意味は『すずしい』、『ものさびしい』です。

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音読みは『リョウ』、訓読みは『涼しい』、『涼む』です。『京』は上古ではgliangと発音していたと考えられ、『涼』に『リョウ』liangの音が残ったと言われています。発音が違いますが『涼』も『京』の単語家族です。荒涼（コウリョウ）、涼風（リョウフウ・すずかぜ）、清涼（セイリョウ）、納涼（ノウリョウ）、夕涼み（ゆうすずみ）の涼です。『涼』は中学校で習う常用漢字です。

　『諒（リョウ）』liangは、言葉をはっきりさせることを表す形声文字です。漢字の足し算では、言（ごんべん・言葉）＋京（たかい・あきらか）＝諒（言葉があきらか。はっきりわかる）です。部首は『言・ごんべん』、意味は『まこと』、『あきらか』です。　

音読みは『リョウ』です。諒解（リョウカイ）、諒承（リョウショウ）の諒です。『諒』は人名漢字ですので、常用漢字の『了（リョウ）』を使うことが多いです。了解。了承です 。

　『掠（リャク）』lueは、かすめて奪い取る様子を示す漢字です。漢字の足し算では、扌（てへん・手の動作）＋涼（涼しいサッとした風）＝掠（物事をサッとかすめる。かすめて鞭打つ）です。部首は『扌・てへん』、意味は『かすめる』、『鞭打つ』です。

音読みは『リャク』、訓読みは『掠める（かすめる）』です。『涼』、『諒』と同じくｌ（リ）の音を持った漢字です。罪人を鞭打って調べる事を掠考（リャクコウ）、掠め奪う事を掠奪（リャクダツ）、侵し掠める事を侵掠（シンリャク）といいます。奪い取るの意味では常用漢字の『略（リャク）』を使う事が多いです。『掠』は常用漢字から外れています。

　『景（ケイ・ヱイ）』jing、yingは、高い建物によった光と影を漢字にしたものです。漢字の足し算では、日（ひ・日の光）＋京（高い建物）＝景（光と影、高いところからの眺め、景色。様子。日の影）です。漢字部首は『日』です。

意味は大きく分けて二種類あり、読み方が違います。『光と影』、『明暗』、『景色』の意味には景『ケイ』jingと読みます。純粋に『光の影』、『影をうつす』の場合、景『ヱイ』yingと読みます。　

やがて、『光の影』、『影をうつす』専用の漢字『影（ヱイ）』が出来たので、『光の影』、『影をうつす』の意味に『景』を使うことは殆どなくなりました。

音読みは漢音の『ケイ』、漢音の『ヱイ・（エイ）』です。呉音の『キョウ』、『ヨウ』は使いません。現在のわが国ではヱとエを区別していません。景印（エイイン）、景観（ケイカン）、光景（コウケイ）、夜景（ヤケイ）、絶景（ゼッケイ）、景色（ケシキ）、景気（ケイキ）の景です。『景』は小学校4年生で習う漢字です。　

『景色・ケシキ』は常用漢字音訓表の付表に出ている特別な読み方です。『ケイシキ』ではありません。これは日本人の口唇の問題といわれています。『ケ』から口を横に広げた『イ』さらにややすぼめて『シ』と発音するより、『ケ』から『シ』に持っていった方が口と唇が滑らかに動きます。なので、『イ』が省かれるようになったといわれています。また、顔色を表す『気色・ケシキ』 と同じ語源であるため『ケシキ』と発音するともいわれています。

　『影（ヱイ）』yingは、彡（さんづくり・良い光）に景を足して作った漢字です。漢字の足し算では、景（日のかげ）＋彡（さんづくり・良い光）＝影（光の影。光。ものの姿。写真に写された像）です。部首は『彡・さんづくり』です。

『影』は『光の影』、『影をうつす』、『写された像』を表すために作られた専用の漢字です。そのために読み方が『エイ』yingと他の『単語家族』と少し違います。

音読みは漢音の『ヱイ』です。呉音の『ヨウ』は使いません。訓読みは『影（かげ）』です。です。影響（エイキョウ）、撮影（サツエイ）、幻影（ゲンエイ）、投影（トウエイ）、月影（つきかげ）、面影（おもかげ）、影絵（かげエ）の影です。『影』は中学校で常用漢字です。

　『憬（ケイ）』jingは、忄（りっしんべん・心）に景を足して作った形声文字です。漢字の足し算では、忄（りっしんべん・心）＋景（光の影）＝憬（心に浮かぶ像。憬れ）です。部首は『忄・りっしんべん』です。

音読みは漢音の『ケイ』を使い、呉音の『キョウ』は使いません。訓読みに『憬れる（あこがれる）』があります。熟語には憬れを意味する憧憬（ショウケイ・ドウケイ）があります。『憧（ショウ・ドウ）』・『憬（ケイ）』は平成22年から常用漢字に追加登録され、中学校で習う漢字になりました。

http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-952b.html 

『漢字の覚え方 京』 京 鯨 涼 諒 景 影 憬

参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。

少し練習しましょう。

1.きょうと（　　　）に旅行する。

2.けいひん （　　　　）工業地帯。

3.中国の首都 ペキン （　　　　）。

4.げいいん （　　　　）馬食。

5.ほげい（　　　　）船の出港。

6.せいりょう（　　　　）飲料水。

7.縁側で ゆうすず（　　　　）みする。

8.すず（　　）しい風が吹く。

9. 注文の内容を りょうかい（　　　　）する。

10. 綺麗な やけい（　　　　　）。

11.良い けしき（　　　　）に感動する。

12. けいき （　　　　）が回復する。

13. 人に えいきょう （　　　　）を与える。

14. かげえ （　　　　）を見て楽しむ。

15. 写真の さつえい （　　　　　）。

16.都会暮らしを しょうけい（ 　　　　）する。

解説です。みやこ関係は京、大きな鯨は魚を足して鯨、高い所で氵（さんずい・水）を足して涼み、明らかな言葉で諒、高い所の景色は景、日の影は彡（さんづくり・良い光）足して影、心に浮かぶ景色で憬です。

解答です。京都、京浜、北京、鯨飲、捕鯨、清涼、夕涼み、涼しい、諒解、了解、夜景、景色、景気、影響、影絵、撮影、憧憬。

今日はこの辺で終わりにします。