漢字の覚え方 加
漢字には『単語家族』と呼ばれる漢字の仲間があります。今日は加、賀、架、駕、袈、嘉、伽、茄、という漢字の仲間について説明します。基本の漢字は『加』jiāで、読み方は『カ・ガ』、意味は『くわえる』です。
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。基本漢字『加』に何を足したら賀、架、駕、袈、伽、枷、嘉、茄になるかを考えていきます。小学校4年生で加、5年で賀を習い、中学校で架を習います。まとめて覚えてしまいましょう。
『加(カ)』jiāという漢字は、田畑を耒(すき)で耕し、生産力を加えることを示す会意(カイイ)文字です。田畑を耕す時に人は祝器である口(サイ)を添えるといわれています。
会意文字とは漢字と漢字を合わせた漢字の事です。漢字の足し算では、力(ちから・耒)+口(サイ・祝)=加(田畑に生産力を加える)です。漢字の部首は『力・ちから』です。田畑だけに限定せずに、あらゆるものに『くわえる』ことを『加』という漢字で表現します。
映像ではこんな感じです。篆文(テンブン)と呼ばれる古い書体も載せておきます。カが耒(すき)を表しているのがわかります。ちなみに耒を使った漢字に耕作の『耕』があります。
音読みは呉音が『ケ』、漢音が『カ』です。訓読みは『加(くわ)える・加(くわ)わる)』です。増加(ゾウカ)、加減(カゲン)、加入(カニュウ)、参加(サンカ)、添加(テンカ)の加です。
『加(カ)』は小学校4年生で習う漢字http://bit.ly/1JVSIGA です。
また、『加』の漢字の成り立ちですが、『力』を手の筋肉の様子、『口』を口(くち)で元気付けるの意味にとる解釈もあります。意味は同じで『加える(くわえる)・加わる(くわわる)』です。
『賀(ガ)』hèは、田畑を耒(すき)で耕し生産力を加える際に、農耕に重要な祝器・農具である『蜃・辰・貝(おおはまぐり)』を足した映像です。 『蜃・辰・貝(おおはまぐり)』は古来、生産力アップの象徴とされ、実際に田畑を耕す時にも農具として使われていました。漢字の『農』が辰に従うのはそのためです。
『賀(ガ)』は『貝(辰)』を加えて祈る事です。『口(サイ)』と『貝』ダブルで目出度い状態を示しています。また、『賀』の漢字の成り立ちですが、『貝』(財宝・お金)を加えることで目出度いとする解釈もあります。漢字の足し算では、加(田畑に生産力を加える)+貝(祝器を用いて生産力アップを祈る)=賀(祝う。めでたい状態)です。漢字の部首は『貝』です。
音読みは呉音が『ガ』、漢音が『カ』です。年賀(ネンガ)、賀正(ガショウ)、祝賀(シュクガ)、賀状(ガジョウ)の賀です。
『賀(ガ)』は小学校5年生で習う漢字http://bit.ly/1ViqkSL です。
『架(カ)』jiàは、柱と柱の上に木を加える作業を示す形声文字です。漢字の足し算では、加(加える)+木(き・木)=架(柱と柱の上に木を加える作業。かける)です。漢字の部首は『木』です。
音読みは呉音が『ケ』、漢音が『カ』、訓読みは『架ける(かける)』です。柱と柱に線を架けることを架線(カセン)、十字に木を加えたものを十字架(ジュウジカ)、橋を架けることを架橋(カキョウ)、地上高く架けることを高架(コウカ)、実際には架けていないことを架空(カクウ)といいます。
『架(カ)』は中学校で習う常用漢字です。
『駕(ガ)』jiàは、馬に馬車を加える事を示した形声文字です。漢字の足し算では、加(加える物)+馬(うま)=駕(馬に馬車を加える。馬車に乗る。乗り物)です。漢字の部首は『馬』です。
音読みは呉音が『ケ』、漢音が『カ』、慣用音が『ガ』です。乗り物、特に天子の乗り物を車駕(シャガ)、上に乗り他を凌ぐ(しのぐ)ことを凌駕(リョウガ)、また、特別な読み方で駕籠(かご)という読み方もあります。
『駕(ガ)』は人名漢字です。
『袈裟(ケサ)』という言葉があります。僧侶の衣服のことです。漢字の由来は、インドで僧侶の衣服を表すサンスクリット語(梵語)のkasayaに、『袈裟(ケサ)』の音をあてはめたことです。
『袈(ケ)』jiāを漢字の足し算で表わすと、加(カ)+衣(ころも)=袈(僧侶の衣服)です。袈裟は中国、日本と伝わり、仏教の法衣として定着しました。音読みは呉音が『ケ』、漢音が『カ』です。
『袈(ケ)』は人名漢字です。
『伽(カ)』qiéは、人に加えるで添い寝をする映像です。漢字の足し算では、亻(にんべん・人)+加(加える物)=伽(添い寝をする。とぎ)です。部首は『亻・にんべん』、意味は『添い寝をする』です。
音読みは呉音が『ギャ』、漢音が『キャ』、慣用音が『カ。ガ』です。訓読みは『伽(とぎ)』です。添い寝をして話す話を御伽話(おとぎばなし)といいます。
『伽藍(ガラン)』という言葉があります。インドで僧侶が集まる所を表すサンスクリット語(梵語)のgharamaに、『伽藍(ガラン)』の音をあてはめた言葉です。
『伽(カ)』は人名漢字です。
『枷(カ)』jiāは、罪人にはめる枷(かせ)を表す形声文字です。漢字の足し算では、木(木製)+加(加える物)=枷(罪人に加える木製の枷。枷。かせ)です。部首は『木・きへん』、意味は『枷(かせ)』です。
音読みは呉音が『ケ』、漢音が『カ』です。訓読みは『枷(かせ)』です。頸(くび)にはめる枷を頸枷(ケイカ・くびかせ)、手にはめる枷を手枷(シュカ・てかせ)といいます。
『枷(カ)』は常用漢字から外れています。
『嘉(カ)』jiāは、 (コ・儀式の太鼓)に加を足したもので、良い事を示します。漢字の足し算では、 (めでたい太鼓)+加=嘉(めでたい事を加える。良い。良いとほめる)です。漢字の部首は『口・くち』、漢字の意味は『嘉(よ)い』、『嘉(よ)みする』です。
太鼓ではなく、豆(たかつき・めでたい器)に盛られた御馳走とする説もあります。
音読みは呉音が『ケ』、漢音が『カ』です。訓読みは常用外の『嘉(よ)い』、『嘉(よ)みする』です。めでたい兆しを嘉祥(カショウ)、めでたい礼式を嘉礼(カレイ)、良い料理を嘉肴(カコウ)といいます。
大変めでたい、縁起の良い漢字で『ひろ』、『よし』、『よしみ』、『よみし』と名前に使われます。
『嘉(カ)』は人名用漢字です。
壴(コ・チュウ)の『単語家族』である樹(ジュ)、鼓(コ)、喜(キ)、嬉(キ)については『漢字の覚え方 』http://bit.ly/1RRThoK をご覧ください。
『茄(カ)』qiéは、茄子(なす)を表す形声文字です。漢字の足し算では、艹(植物)+加(加える物)=茄(次から次へと花が加わる植物。茄子。なす)です。部首は『艹・くさかんむり』、意味は『茄(なすび)』です。
音読みは呉音が『ガャ』、漢音が『キャ』、慣用音が『カ』です。訓読みは『茄(なすび)』です。茄子は、実が出来ているのに、次々と花が加わるので、茄子(なす)という漢字が宛てられています。
『茄(カ)』は人名用漢字です。
また、『茄(カ)』jia、音読みを呉音『ケ』、漢音『カ』と読んで、『はす』を表す漢字としても使われます。漢字の足し算では、艹(植物)+加(加わる)=茄(上に花をのせる植物。はす)です。
蓮(はす)については『漢字の覚え方 連』をご覧ください。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-56da.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.集会に さんか( )する。
2.輸出が ぞうか ( )する。
3.てんか( )物の無い食品。
4.ねんがじょう( )を印刷する。
5.しゅくがかい ( )を開く。
6.かくう ( )取引。
7.キリスト教の じゅうじか( )。
8.僧侶の服装 けさ( )。
9. 相手を りょうが( )する。
10. おとぎばなし( )。
11.てかせ( )を外す。
12.畑のなす( )。
解説と解答です。加えるには基本漢字の加、目出度いは加に貝を足して賀、架けるには木を足した架、袈裟には衣を足して袈、添い寝にはイ(にんべん)を足して伽で、嘉(よ)いは鼓(たいこ)の右半分
足して嘉、枷(かせ)は木を加えて枷、茄子は艹を加えて茄です。参加、増加、添加、年賀状、祝賀会、架空、十字架、袈裟、凌駕、御伽噺、御伽話、手枷、茄子。
少し漢字の読み方の話をします。漢字の読み方には音(オン)読みと訓(くん)読みがあります。音読みには、漢字を輸入した時期により違いがあります。六朝時代の江南地方の読み・呉音(ゴオン)、唐の長安の読み・漢音(カンオン)、鎌倉時代に輸入した読み・唐宋音(トウソウオン)、日本で慣用的に読まれる慣用音(カンヨウオン)があります。訓読みは大和言葉(やまとことば)に合わせた読み方です。
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