漢字の覚え方 止・此
漢字には『単語家族』と呼ばれる漢字の仲間があります。今日は止、祉、歯、企、此、些、柴、疵、雌という『単語家族』について説明します。基本の漢字は『止』で、読み方は『シ』、意味は『止まる』です。
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『止』に何を足すとどんな漢字になるのかを考えます。小学校2年で止、3年で歯を習い、中学校で祉、企、紫、雌を習います。学校、学年に関係なくまとめて覚えてしまいましょう。
『止(シ)』zhǐは、人の足の形を漢字にしたものです。『止まる』、『活動をやめる』、『ふるまい』の意味があります。『止』は動かない足とされています。『歩』は交互に出す足の形を漢字にしたもので『歩く』の意味があります。漢字の部首は『止・とめる』です。
音読みは呉音・漢音ともに『シ』、訓読みは『止まる(とまる)』、『止める(とめる)』で、常用外の読み方に『止める(やめる)』、『止める(とどめる)』があります。静止(セイシ)、停止(テイシ)、中止(チュウシ)、止血(シケツ)、阻止(ソシ)、挙止(キョシ)の止です。
『止(シ)』は小学校2年生で習う漢字http://bit.ly/1CcJ09S です。
『歩(ホ・ブ・フ)』bùという漢字があります。が少(ショウ)の仲間ではありません。歩(ホ・ブ・フ)は止(シ)という漢字の親戚です。止(シ)という漢字は膝から下の足の象(かたど)ったものです。足は膝を含んだ足の象形です。歩くは左右の足を互い違いに出して歩くことから出来た漢字なのです。
漢字の部首は『止・とまる』、漢字の意味は『歩(ある)く』、『歩(あゆ)む』、『儲けの割合』、『勝敗の優劣』、『将棋の駒の一つ』です。
音読みは呉音が『ブ』、漢音が『ホ』、慣用音が『フ』、訓読みが『歩(ある)く』、『歩(あゆ)む』です。歩行(ホコウ)、進歩(シンポ)、徒歩(トホ)、歩(ブ)が悪いの歩です。
『歩(ホ・ブ・フ)』は小学校2年生で習う漢字です。
『祉(シ)』zhiは、神様がやってきて祝福することを表す形声文字です。漢字の足し算では、礻(しめすへん)+止(とまる)=祉(神様がやってきて止まる。祝福する)です。部首は『礻・しめすへん』、音読みは慣用音の『シ』が普通です、呉音・漢音の『チ』は使いません。訓読みは『さいわい』です。
神から受けた幸せを福祉(フクシ)といいます。現在は神というよりも『公的な配慮による幸せな生活』の意味で使っています。『福祉』と人名以外には使わない漢字です。社会生活の上で大変重要なので、『祉』は中学校で習う常用漢字に登録されています。
『企(キ)』qiは、立ち止まって、つま先立ちし、遠くを見る映像を漢字にしたものです。漢字の足し算では、人(ひとやね・人)+止(足)=企(先立ちして遠くを見る)です。部首は『人・ひとやね』、意味は『くわだてる』、『計画する』です。
音読みは『キ』、訓読みは『企てる(くわだてる)』です。努力して追いつくことを企及(キキュウ)、事業を企ておこすのが企業(キギョウ)、物事をしようと計画することを企画(キカク)といいます。
『企(キ・くわだてる)』は中学校で習う常用漢字です。
『歯(シ)』chiは、齒(は)を描いた漢字です。甲骨文字では、口の中の歯を描いた象形文字、篆文では、止(噛みとめる)と前歯を合わせた形声文字です。漢字の足し算では、止+凵(かまえ)+一(口のさかい)+人×4(上の歯と下の歯)=齒・歯(噛みとめる歯)です。漢字の部首は『歯』、意味は『歯(は)』です。
漢字では米を書いて煩雑(ハンザツ)な部分を省略することがあります。例えば、齒は<歯へ斷(ダン・ことわる)は断に省略されています。
音読みは呉音・漢音ともに『シ』、訓読みは『は』です。歯科医(シカイ)、歯牙(シガ)、年歯(ネンシ)、虫歯(むしば)、奥歯(おくば)、歯茎(はぐき)の歯です。
『歯(シ・は)』は小学校3年生で習う漢字です。
『此(シ)』ciは、此(この)という代名詞で、近いものを指す漢字です。『之(シ)』も近いものを指す代名詞で、『シ』に近いものという意味があります。音によって『此』の漢字が使われているだけです。漢字の原義には関係ありません。このように代名詞、助詞などの漢字は音によって本来の意味『小さい』、『ならんだ』に関係なく使われる事が多いです。
漢字の足し算では、止(シ・足)+ヒ(ヒ・さじ。女の人)=此(小さい足。ならぶ)です。『ヒ』は匙もしくは女の人の横向きの姿と言われています。漢字の部首は『止・とめる』、意味は『小さい』、『並んだ』、『これ』、『この』です。
音読みは呉音・漢音ともに『シ』、訓読みは『これ』、『この』です。仏教でこちら側の岸を此岸(シガン)、あちら側を彼岸(ヒガン)といいます。代名詞ですので此(この)、此(これ)という表現があり、中国の古典『漢文』で良くお目にかかります。『此』は人名用漢字です。
『些(サ)』xieは、此(シ・小さい)に二を足して作った形声文字です。漢字の足し算では、此(小さい)+二(二・存在をしめす)=些(ちいさいもの)です。『此』が代名詞になり、『小さい』の意味で使われなくなったため此に二を足して、作られた漢字です。漢字の部首は『二』です。
音読みは『サ』、訓読みは『些か(いささか)』、『些とも(ちっとも)』です。些細(ササイ)、些少(サショウ)、些末(サマツ)、些事(サジ)の些です。『些』は人名用漢字です。
小さな貝を表す漢字『瑣(サ)』suoも『小さい』を表す漢字で、瑣細、瑣少、瑣末、瑣事と書いても良いです。『漢字の覚え方 小』
もご覧ください。
『柴(サイ)』chaiは、薪にする小さな木の枝を表す形声文字です。漢字の足し算では、此(小さい)+木(木)=柴(薪にする小さい木)です。漢字の部首は『木』です。
音読みは呉音が『ゼ』、漢音が『サイ』で、訓読みは『柴(しば)』です。ちなみに柴と石で作った陣地が『砦(サイ・とりで)』zhaiです。とりでは『塞(ソク・サイ・ふさぐ・とりで)』saiとも書きます。
童話の「桃太郎」でおじいさんは山へ柴刈り(しばかり)に行きますが、芝刈り(しばかり・芝生の手入れ)をするにではありません。燃料になる薪(たきぎ)を採りに行くのです。芝生の手入れ)をするにではありません。
小さな木を編んで作った質素な門を、柴門(サイモン)、柴扉(サイヒ)、山へ柴を取りに行く事を柴刈り(しばかり)と言います。生活に必要な燃料ですから、非常に重要な漢字として活躍してきました。柴さん、柴田さん、柴沼さん。苗字にしている方も大勢いらっしゃいます。
『柴(サイ・しば)』は人名用漢字です
『紫(シ)』ziは、紫色に染められた布を示す形声文字です。漢字の足し算では、此(並んだ)+糸(いと・布)=柴(青と赤が並んだ、その中間色に染められた布。むらさき)です。漢字の部首は『糸』です。
糸は染色されるので、色を表す漢字に使われます。
紺http://bit.ly/1xOj18b 青を含む(甘)色
緑http://bit.ly/1FE8NJa、竹皮を剥(は)がす(彔)時の緑色
紫http://bit.ly/1sPxUXG 赤と青を並べて(此)混ぜた色
紅http://bit.ly/101tzpr、 口紅などの色
緋http://bit.ly/1qQSVwG 鮮やかな(非)美しい赤 などです。
天子の住む場所を紫宸殿(シシンデン)という様に、『紫』は高貴な色です。
音読みは呉音・漢音ともに『シ』で、訓読みは『むらさき』です。紫煙(シエン)、紫紺(シコン)、紫宸殿(シシンデン)、紫外線(シガイセン)、紫式部(むらさきシキブ)の紫です。
『紫』は中学校で習う常用漢字です。
『疵(シ)』ciは、ギザギザした疵(きず)を示す形声文字です(藤堂)。漢字の足し算では、疒(病気)+此(並んだ)=疵(ギザギザと並んだ疵。きず)です。漢字の部首は『疒・やまいだれ』、漢字の意味は『疵(きず)』、『欠点』です。
音読みは呉音が『ジ』、漢音『シ』で、訓読みは『疵(きず)』です。キズのあること・欠点のあることを瑕疵(カシ)といいます。
漢字の世界では『きず』について、ニュアンスの違いがあります。
傷(きず)傷ついた人。心の傷も表します。 傷(きず)http://bit.ly/1rjHdtB
創(きず)刀でつけられた切り創。 創(きず)http://bit.ly/1LEcVib
瑕(きず)宝石につけた表面の瑕。欠点。 瑕(きず)http://bit.ly/1JaXWcB
疵(きず)ギザギザした疵。欠点。 疵(きず)http://bit.ly/1sPxUXG
『疵』は中学校で習う常用漢字から外れています。
『雌(シ)』cíは、小さいほうの隹(とり)を表す形声文字です。漢字の足し算では、此(小さい)+隹(ふるとり・隹)=雌(ちいさい隹。めすの隹)です。漢字の部首は『隹・ふるとり』です。
音読みは呉音・漢音ともに『シ』で、訓読みは『めす』、『め』です。雌雄(シユウ)、雌伏(シフク)、雌花(めばな)の雌です。『雌』は中学校で習う常用漢字です。
では、『雄(おす)』はどうでしょうか。漢字の足し算で表わすと、厷(ひじ)+隹(ふるとり・隹)=雄(肱を張った威勢の良い隹。おすの隹)http://bit.ly/2gAU0hb です。漢字の成り立ちから言えば、『雄』は『肱(コウ)』と読むはずですが、異体字の『䧺(ユウ)』(右側にいる隹。中国では右側が優位。おすの隹)の影響を受けて『ユウ』 http://bit.ly/1D6K0Ps と読みます。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-296c.html
『漢字の覚え方 止・此』 止 歩 企 祉 歯 此 些 柴 紫 疵 雌
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.運動会が ちゅうし( )。
2.運転 ていし( )。
3.ふくし( )事業。
4.きかく ( )書の提出。
5.中小 きぎょう( )。
6.しかい( )へ治療の予約。
7. しが ( )にもかけない。
8.おくば( )が痛い。
9. 彼岸と しがん( )。
10. ささい ( )な出来事。
11.山へ しばか( )りに。
12. むらさき ( )式部の「源氏物語」。
13. しがいせん( )で日焼けする。
14. しふく ( )して機会を待つ。
15. しゆう ( )を決する。
解説です。止まるには足を描いた止、福祉は神の幸いで祉、人が計画するは人を上に足して企、噛み止めるは歯で、小さい足はここを示して此、小さいは些、小さい枝は柴、赤と青を並べて紫、小さいニワトリが雌です。
解答です。中止、停止、福祉、企画、企業、歯科医、歯牙、奥歯、此岸、些細、瑣細、柴刈り、紫、紫外線、雌伏、雌雄。今日はこの辺で終わりにします。
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