漢字の覚え方 兄・竟
漢字には『単語家族』と呼ばれる漢字の仲間があります。今日は兄(キョウ・ケイ)という漢字、竟(キョウ・ケイ)という漢字の『単語家族』を説明します。兄の『単語家族』は兄、況の2字、竟の『単語家族』は竟、境、鏡、競、兢の5字です。
小学校2年生で兄は小学校2年生 、鏡、競は小学校4年生、境は小学校5年生 、況は中学校 で習う常用漢字です。学校、学年に関係なく覚えてしまいましょう。
『兄(キョウ・ケイ)』xiōngは、口(サイ・祝器)にル(ひとあし・人間)を足したものです。漢字の足し算では、口(サイ・祝器)+ル(ひとあし・人間)=兄(祝祷を司る人。一家の長兄。大きい方)です。漢字の部首は『ル・ひとあし』です。
一族の神事に関しては長兄がこれを取り仕切っていました。神事に関して司る男性を兄、女性を巫と言ったのです。意味は。『祈る人』、『長兄』、『大きい人』、『あに』です。『祈る人』は違う漢字『祝』、『呪』があるため、『兄』を『祈る人』の意味で使うことはありません。
音読みは、古い読み方の呉音が『キョウ』、漢音が『ケイ』、訓読みは『あに』です。特別な読み方で『兄さん』を『にいさん』と読みます。
兄弟(キョウダイ・ケイテイ)、兄事(ケイジ)、父兄(フケイ)、諸兄(ショケイ)、従兄弟(いとこ)の兄です。『兄』は『キョウ』と読んだり『ケイ』と読んだりややこしいです。
『兄(キョウ・ケイ・あに)』は小学校2年生で習う漢字です。
漢字の読み方の話をしましょう。漢字の読み方には、音読みと訓読みがあります。音読みは漢字を輸入したときの中国の読み方です。訓読みはその漢字に相当する日本古来の読み方です。
音読みには呉音(ゴオン)と言って最初に漢字を輸入した時の呉(江南)地方の音、漢音(カンオン)と言って遣唐使が持ち帰った唐時代の長安の音があります。呉音・漢音とも同じ場合は良いのですが、微妙に違う場合があります。
どう微妙に違うかというと、『兄』の場合、呉音は『キョウ』、漢音は『ケイ』です。非常に面倒なので、当時の平安朝では遣唐使の持ち帰った漢音に統一しようとしました。ところが、一度使い始めた呉音は簡単にはやめられません。そのまま1000年以上経過して現在に至っています。そのほかに鎌倉・室町時代入ってきた唐宋音(トウソウオン)があります。
訓読みは日本古来の読み方です。『兄』という漢字は、日本古来の言葉(やまとことば)でいう『あに』に相当します。そこで『兄』は『あに』と読むわけです。また、広く読まれている例外的な読み方を、文部省が常用漢字付表として指定しています。『兄さん』を『にいさん』と読むのがこれで熟字訓(ジュクジクン)と呼ばれています。
弟(ダイ・テイ・おとうと)について、詳しくは『漢字の覚え方 弟』をご覧下さい。
『況(キョウ)』kuàngは、水が増える様子を表します。漢字の足し算では、氵(さんずい・水)+兄(大きい)=況(水が増えている様子)です。今よりも増える状況が『況』です。漢字の部首は『氵・さんずい』です。意味は『様子』、『ますます』、『ましてや』です。
音読みは呉音の『キョウ』、訓読みは『ましてや』を意味する『況や(いわんや)』です。状況(ジョウキョウ)、実況(ジッキョウ)、概況(ガイキョウ)、近況(キンキョウ)、況や(いわんや)の況です。増えない状況を不況(フキョウ)と言い、経済の言葉で使います。
『況(キョウ)』は中学校 で習う常用漢字です。
『兄』を『あに』の意味でなく、純粋に『祈る人』の意味に使った漢字に『祝(シュク)』、『呪(ジュ)』があります。『兄(キョウ)』とは読み方が違いますが、近い親戚筋の漢字です。もともと同じ漢字だったと言われています。良い方の祈りが『祝』、悪い方の祈りが『呪』として二つの漢字に分けられました。
『祝(シュク・シュウ)』zhùは、示(しめすへん・神事)に兄を足したものです。漢字の足し算では、示(神事)+兄(神に祈りを奉げる人)=祝(神に祈りを奉げている状況。祝う)です。漢字の部首は『示・しめすへん』です。
音読みは『シュク』zhù、『シュウ』zhòuで、訓読みは『祝(いわ)う』です。祝賀(シュクガ)、祝宴(シュクエン)、祝言(シュウゲン)、祝儀(シュウギ)、祝辞(シュクジ)、祝詞(のりと)の祝です。
祝詞(のりと)は義務教育では習いませんが、常用漢字表に掲載されている特別な読み方です。
『祝(シュク・シュウ・いわう)』は小学校4年生で習う漢字です。
『呪(ジュ・のろう)』zhòuは、口(くち・言葉)に兄を足したものです。漢字の足し算では、口(くち)+兄(神に祈りを奉げる人)=呪(神に祈りを奉げている状況。呪う)です。漢字の部首は『口・くち』です。
音読みは『ジュ』、訓読みは『呪う(のろう)』です。呪文(ジュモン)、呪術(ジュジュツ)、呪詛(ジュソ)の呪です。
『呪(ジュ・のろう)』は平成22年に新たに常用漢字として追加されました。中学生で習うようになった漢字です。
「人を呪わば穴二つ」という慣用句があります。穴とは墓穴であり、二人の墓穴です。他人を呪うと自分にも凶事がはねかえって来るという意味です。人生いろいろですが、決して他人を恨んだりしては不可(いけ)ません。前向きにコツコツと努力するのが良いのです。
『竟(キョウ・ケイ)』jìngは、音(おと・神の返答)にル(ひとあし・人間)を足したものです。漢字の足し算で覚えるならば、音(おと・神の返答)+ル(ひとあし・人間)=竟(儀式に神の返答があり、儀式が終わる。おわる。ついに)です。漢字の部首は『立・たつ』です。
音読みは、呉音が『キョウ』、漢音が『ケイ』、訓読みは『竟(つい)に』です。
『おわること』・『つまりは』を畢竟(ヒッキョウ)、宴をおわることを竟宴(キョウエン)といいます。明治・大正の頃の小説には『畢竟』という言葉が良く使われていました。『竟』は常用漢字から外れたために今では殆ど使われません。しかし、境・鏡の漢字の一部として活躍しています。
『竟(キョウ・ついに)』は常用漢字から外れています。
『境(キョウ・ケイ)』jìngは、土(つち・土地)に竟(キョウ・おわる・区切る)を足した形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、土(つち・土地)+竟(キョウ・おわる・区切る)=境(土地の境目。特に神事の場所の境目)です。漢字の部首は『土・つちへん』です。
映像ではこんな感じです。
意味は『土地の境目』、『一定の区切られた場所』、転じて『置かれた状態』を表します。音読みは、呉音が『キョウ』、漢音が『ケイ』、訓読みは『境(さかい)』です。
境界(キョウカイ)、環境(カンキョウ)、辺境(ヘンキョウ)、境遇(キョウグウ)、境内(ケイダイ)、国境(コッキョウ・くにざかい)の境です。
『境(キョウ・ケイ・さかい)』は小学校5年生で習う漢字です。
『鏡(キョウ)』jìngは、金(かねへん・金属)に竟(境目)を足した形声文字です。漢字の足し算では、金(かねへん・金属)+竟(境目=鏡(境目がはっきり映る金属。鏡)です。漢字の部首は『金・かねへん』です。
音読みは『キョウ』、訓読みは『かがみ』です。特別な読み方で『眼鏡』の訓読みを『めがね』といいます。眼鏡(ガンキョウ・めがね)、鏡台(キョウダイ)、望遠鏡(ボウエンキョウ)、手鏡(てかがみ)の鏡です。
『鏡(キョウ・かがみ)』は小学校4年生で習う漢字です。
眼鏡(めがね)も常用漢字表の付表に掲載されている特別な訓読み、熟字訓(ジュクジクン)です。
『競(キョウ・ケイ)』jìngは、竟(神に祈る。神の返答)×2の映像です。漢字の足し算で覚えるならば、竟(神に祈る。神の返答)+竟(神に祈る。神の返答)=競(二人で神に祈る姿)です。漢字の部首は『立・たつ』です。
二人並んで神に祈る姿からやがて『競(きそ)う)』、『くらべる』、『競り合う(せりあう)』の意味になりました。字形的には、音の中の-が抜けた形になっています。書く時に竟竟にならないように注意してください。
『競』の漢字の成り立ちですが、言(言葉)+ル(ひとあし・人間)と解釈し、人が言い争うという説があります。それは篆文(テンブン)の字体では、言と音がほぼ同じ字体であるためです。『言』か『音』かどう採るかによって解釈が違うわけです。篆文とは現在使われている楷書体(カイショタイ)の元になる字体です。
音読みは呉音が『キョウ』、漢音が『ケイ』、訓読みは『競う(きそう)』、『競る(せる)』です。競演(キョウエン)、競技(キョウギ)、競争(キョウソウ)、競走(キョウソウ)、競売(キョウバイ・ケイバイ)、競輪(ケイリン)、競馬(ケイバの競です。競売(キョウバイ)』ですが、法律用語としては『ケイバイ』と読みます。
『競(キョウ・ケイ・きそう)』は小学校4年生で習う漢字です。
『兢(キョウ)』jīngは、古い書物に『競』と同じ語源とあります。竟(神に祈る。神の返答)×2の映像です。漢字の足し算では、竟(神に祈る。神の返答)+竟(神に祈る。神の返答)=兢(二人で神に祈る姿。神をおそれる。慎む)です。
こちらの漢字は二人並んで神に祈る姿から『神をおそれる』、『慎(つつし)む』の意味になりました。漢字の使用例としては『戦々兢々(センセンキョウキョウ・緊張してびくびくするさま)』があるのみです。実際は『兢』が常用漢字ではないため『戦々恐々』と書きます。
『キョウ』とは字音が違いますが、『克(コク)』kè(兜を被って耐える。緊張する)×2であるという説もあります。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-ca9f.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.きょうだい( )喧嘩(げんか)。
2.円高による ふきょう( )。
3.じょうきょう( )を把握する。
4.しゅうげん( )をあげる。
5.じゅもん( )を唱える。
6.かんきょう( )に配慮する。
7.お寺の けいだい( )を歩く。
8.ぼうえんきょう( )を見る。
9.てかがみ( )を使う。
10.めがね( )をかける。
11.陸上 きょうぎ( )。
12.価格の自由 きょうそう( )。
解説です。兄は兄、状況に水が増えるで況、祝うは示を足して祝、呪うは口を足して呪、境界は竟に土を足して境、鏡は金属で鏡、競うは(音の-なし)+ル)×2で競です。
解答です。兄弟、不況、状況、祝言、呪文、環境、境内、望遠鏡、手鏡、眼鏡、競技、競争
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