漢字の覚え方 巠
漢字には『単語家族』と呼ばれる漢字の仲間があります。今日は巠、徑(径)、經(経)、輕(軽)、頸(頚)、脛、莖(茎)、勁という漢字の仲間『単語家族』を説明します。基本の漢字は『巠』です。意味は『たて』、読み方は『ケイ』が基本です。元になる映像は機織(はたおり)の縦の糸です。『巠 』の漢字自体使われませんが、多くの漢字のパーツとして活躍しています。
『単語家族』は足し算で表わすことができるので『巠』に何を足すとどんな漢字になるのかを考えます。軽は小学校3年で習う漢字 、径は小学生4年で習う漢字、経は小学校5年で習う漢字、茎は中学校で習う常用漢字です。学年、学校に拘らず一緒に覚えましょう。
『巠(ケイ)』jīngという漢字は、機織(はたおり)の縦(たて)の糸を漢字にした象形文字です。漢字の部首は『巛・まがりかわ』、意味は『たて』です。『巠』は単独で使われることはありませんが、その省略形の『圣』が、径、経、軽などの漢字のパーツとして活躍しています。
『説文解字』には「水脈なり」とあります。
『徑・径(ケイ)』jìngは、」人が歩く姿に巠を足した形声文字です。漢字の足し算では、彳(ぎょうにんべん・人が歩く姿)+巠(たて)=徑(人が直線状に歩く。近道)です。漢字の部首は『彳・ぎょうにんべん』です。
現在は常用漢字体である『径』を使うのが普通です。戦争に負ける前は、省略していない正字体(旧字体)の『徑』が使われていました。戦争に負けてからは省略した『径』が当用漢字・常用漢字として登録されたので、正字体の『徑』は使われなくなりました。
音読みは漢音の『ケイ』が普通です。呉音の『キョウ』と読むことはありません。訓読みは『みち』です。意味は『小径(こみち)』、『まっすぐに』、『ただちに』です。
数学では円の中心を通る(縦の)線を直径(チョッケイ)といいます。まっすぐな行いを径行(ケイコウ)といいます。銃口などの直径を口径(コウケイ)、直径の半分を半径(ハンケイ)、小さい径・路を径路(ケイロ)、本当に小さい径(みち)を小径(こみち)、山の中の径を山径(やまみち)といいます。
『径(ケイ・みち)』は小学生4年で習う漢字です。
たてを示す漢字には『縦(ジュウ・たて)』zougがあります。糸と従(人がたてに並んで歩く姿)を合わせた漢字http://bit.ly/1FfCTWO で、糸が縦に伸びる様子を表します。
よこを表す漢字『横(オウ・よこ)』hengは、木に黄(火が横に燃える様)を合わせた漢字http://bit.ly/1w2Lh5I で、横に広がる木を表します。
『經・経(ケイ・キョウ)』jīngは、上下にまっすぐ伸びる縦糸を表す形声文字です。漢字の足し算では、糸+巠(ケイ・たて・まっすぐ)=経(真っ直ぐな縦糸。筋道)です。漢字の部首は『糸・いとへん』です。意味は『織物の縦糸』、『縦の方向』です。
現在は常用漢字体である『経』を使うのが普通です。戦争に負ける前は、正字体(旧字体)である『經』が使われていました。
音読みは漢音の『ケイ』が普通で、呉音の『キョウ』と読むこともあります。訓読みは『経て(たて)』、『経つ(たつ)』、『経る(へる)』です。
『経緯(ケイイ・いきさつ)』という言葉がありますが、縦糸(経)と横糸(緯)のことで、事の経過をしめす言葉です。
『経路(ケイロ)』という言葉がありますが、縦の道(経)と横の道(路)のことで、通ってきた道順、道筋を示す言葉です。例えばバスの運行経路(ケイロ)のように使います。
『経』については時間の概念が有り『通り過ぎる』、『へる』、『おさめていく』の意味があります。宗教の教えを書いたものを『経(キョウ)』といいます。経て(たて)に長い文章だからです。
体験を経ることを経験(ケイケン)、英語のeconomyの和訳を経済(ケイザイ)、事業をおさめ、営むことを経営(ケイエイ)、時間が過ぎゆく(経つ)ことを経過(ケイカ)、地球の縦方向を経線(ケイセン)、お経を読むことを読経(ドキョウ)といいます。
『経済』の語源ですが『経世』(ケイセイ・世の中をおさめる)と『済民』(ザイミン・民をすくう)から来ています。この理想的な政策なことを『経済』(ケイザイ)といいました。明治時代にエコノミーの和訳に『経済』という漢字をあてたため、『経済』は人々の生産・消費活動に関する言葉として使われるようになったのです。
『経(ケイ・たて)』は小学校5年で習う漢字です。
『輕・軽(ケイ)』qīngは、まっすぐ速く走る軽量戦車を表す形声文字です。軽量戦車の反対が荷物を積んで走る戦車で輜重(シチョウ)といいます。漢字の足し算では、車(馬車)+巠(まっすぐ)=軽(まっすぐ走る軽い戦車。軽い)です。漢字の部首は『車・くるまへん』です。
常用漢字体である『軽』を使うのが普通です。戦争に負ける前は、正字体(旧字体)である『輕』が使われていました。
音読みは漢音が『ケイ』が普通で、呉音の『キョウ』は使いません。唐宋音の『キン』は稀(まれ)に使います。訓読みは『軽い(かるい)』、『軽やか(かろやか)』です。
軽快(ケイカイ)、軽視(ケイシ)、軽傷(ケイショウ)、軽量(ケイリョウ)、剽軽(ヒョウキン)、気軽(きがる)の軽です。
『軽(ケイ・かるい)』は小学校3年で習う漢字です。
『頸・頚(ケイ)』jǐngはまっすぐな頸(くび)を表した形声文字です。漢字の足し算では、巠(ケイ・まっすぐ)+頁(顏)=頸(頭の下のまっすぐな部分)です。部首は『頁・おおがい』、意味は『くび』です。
音読みは『ケイ』、訓読みは『くび;』です。刎頸(フンケイ)、頸椎(ケイツイ)、頸部(ケイブ)、喉頸(のどくび)の頸です。字体としては『頸』の字が正統です。『頚』の字は省略形であり、常用漢字ではないので正式な文章では使いません。
『頸(ケイ・くび)』は常用漢字ではありません。
『脛(ケイ)』jìngは真っ直ぐな脛(すね)を表した形声文字です。漢字の足し算では、月(にくづき・体の部分)+巠(まっすぐ)=脛(体のまっすぐな部分。すね)です。部首は『月・にくづき』です。
音読みは『ケイ』、訓読みは『すね』、『はぎ』です。脛毛(すねげ)、脹脛(チョウケイ・ふくらはぎ)の脛です。
『脛(ケイ・すね)』は常用漢字ではありません。
『莖・茎(ケイ・コウ)』jìngは植物のまっすぐな部分の茎(くき)を表した形声文字です。漢字の足し算では、艸艹(くさかんむり・植物)+巠(まっすぐな)=茎・莖(植物のまっすぐな部分。くき)です。部首は『艸・くさかんむり』です。
常用漢字体である『茎』を使うのが普通です。戦争に負ける前は、正字体(旧字体)である『莖』が使われていました。
音読みは慣用読み『ケイ』が普通で、『コウ』という読み方もあります。訓読みは『くき』です。地下茎(チカケイ)、根茎(コンケイ)、茎若布(くきわかめ)、歯茎(はぐき)の茎です。
『茎(ケイ・コウ・くき)』は中学校で習う常用漢字です。
この『単語家族』には痙攣(ケイレン)の『痙(ケイ)』jìngがあります。疒(やまいだれ・病気)に巠(たて)を足した漢字です。筋肉が経てに引き攣(つ)ることを痙攣(ケイレン)といいます。
『痙(ケイ)』は常用漢字ではありません。
妖怪(ヨウカイ)の『怪(カイ)』guàiという漢字があります。『巠(ケイ)』ではなく『圣(カイ)』の仲間の漢字です。厳密に言うと『巠(ケイ)』jīngと『圣(カイ)』shèngとは全くの別字ですので、『怪』』guàiは『巠・ケイ・たて』とは関係ありません。
『怪(カイ)』guàiは、土の霊に関係している形声文字です。漢字の足し算で表すと、忄(心・霊)+又(手)+土=怪(土地の霊に対する畏敬の気持ち。怪しい)です。漢字の部首は『忄・りっしんべん』、漢字の意味は『怪(あや)しい』です。
音読みは漢音の『カイ』が普通です。呉音の『ケ』と読むときもあります。訓読みは『怪(あや)しい』、『怪(あやかし)』です。不思議な力を持つ存在・怪(あやかし)を妖怪(ヨウカイ)、正体のわからない超常的な存在・並外れた人間のことを怪物(カイブツ)、怪(あや)しみ訝(いぶか)るいぶかること・不思議に思うことを怪訝(ケゲン)といいます。
怪(カイ)は中学生で習う常用漢字です。『漢字の覚え方 届』も御覧ください。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-88c3.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.哲学の こみち ( )。
2.円の中心を通る ちょっけい( )。
3.お きょう( )を読む。
4.物事の けいい( )。
5.会社の けいえい( )状態。
6.時間の けいか ( )。
7.バスの運行 けいろ( )。
8.けいざい( )が良くない。不景気である。
9.けいけん ( )が足りない。
10.けいしょう( )で済んだ。
11.けいかい ( )な動き。
12.けいつい( )を痛める。
13.すねげ( )が見えてしまう。
14.植物の くき( )。
15.ようかい( )が現われそうな森。
解説です。近道の関係は『径』、おさめる。時間を経るには『経』、軽いは車を足して『軽』、首は頁を足して『頸』、すねは月を足して『脛』です。くきは艸・艹(くさかんむり)を足して『茎』です。
解答です。小径、直径、経、経緯、経営、経過、経路、経済、経験、軽傷、軽快、頸椎、脛毛、茎、妖怪
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