漢字の覚え方 兆
漢字には発音・意味・構造上の漢字の仲間があります。今日は『兆(チョウ)』zhaoという漢字を基本とした兆(きざ)し、挑(いど)む、跳(と)ぶ、逃(にげ)る、桃(もも)という漢字の仲間を説明します。基本の漢字は『兆』で、読み方は『チョウ』で、漢字によっては『トウ』と読みます。漢字の意味は『占い』、『兆(きざ)し』、『分かれる』、『離れる』です。漢字学者の藤堂は、このような漢字の仲間について『単語家族』という表現を使っていました。
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『兆(チョウ)』に何を足したら挑、跳、逃、桃になるのかを考えます。兆は小学校4年生で習う漢字 習い、挑、眺は中学生 、跳、逃、桃は中学生 で習う常用漢字(一般生活で使う漢字)で、中学校で習います。何年で習うかは教科書によって違います。学年、学校に関係なく一緒に覚えましょう。
『兆(チョウ)』zhàoという漢字は、占(うらな)いに使う亀の甲羅に出来る『ひび』を表した象形文字です。漢字の部首うは『儿・ひとあし』です。意味は『分かれる』・『離れる』です。『兆』そのものは占いの意味の『兆(きざ)し』、『まえぶれ』の意味に使われています。
音読みは呉音は『ジョウ』、漢音が『チョウ』、訓読みは『兆(きざ)し』です。春の兆し(きざし)、兆候(チョウコウ)、前兆(ゼンチョウ)、吉兆(キッチョウ)の兆です。また数の単位として億の一万倍を兆といいます。縁起の良い漢字で『とき』、『よし』と読んで名前に使われます。
大きな数を億兆(オクチョウ)といいますが、人の考えられる(意)大きな数が億http://bit.ly/1wrFsP6 で、その上の数はもう兆(きざ)しというわけです。
兆(チョウ・きざし)は小学校4年生で習う漢字です。
少し読み方の話をしましょう。漢字には音(オン)読みと言って、漢字を輸入した時の中国の読み方、訓(くん)読みと言って漢字に合わせた大和言葉(やまとここば)の読み方があります。
音読みには呉音(ゴオン)と言って最初に漢字を輸入した時の呉(江南)地方の音、漢音(カンオン)と言って遣唐使が持ち帰った唐時代の長安の音があります。そのほかに鎌倉・室町時代入ってきた唐宋音(トウソウオン)、慣用的な読み方慣用音(カンヨウオン)があります。漢字によっては両方使ったり、片方だけを使ったりします。
『逃(トウ・チョウ)』táo という漢字は、辶(しんにょう・進む)に兆を合わせた形声文字で、逃(に)げる事を表します。漢字の足し算では、辶(しんにょう・進む)+兆(離れる)=逃(人が離れて逃げてゆく)です。部首は『辶・しんにょう』です。
音読みは漢音の『トウ』が普通で、慣用音の『チョウ』と読むこともあります。訓読みは、『逃(に)げる』、『逃(のが)れる』です。
言い逃れ(いいのがれ)、逃げ腰(にげごし)、逃亡(トウボウ)、逃避(トウヒ)、逃散(チョウサン)の逃です。
逃(トウ・チョウ・にげる)は中学生 で習う常用漢字です。
『眺(チョウ)』tiào は、目を左から右へと見渡す姿を表す形声文字で、眺(なが)めることを表します。漢字の足し算では、目+兆(離れる)=眺(見渡す姿。眺める。ながめる)です。漢字の部首は『目』、景色などの視界の広いものを、隅から隅まで見渡す事です。
音読みは呉音・漢音ともに『チョウ』で、訓読みは『眺(なが)める』です。遠くの風景を眺める事を眺望(チョウボウ)と言います。望(ボウ)http://bit.ly/1v84fty は、月が新月(亡)から満月(壬)にかけて成長していく様子を望む漢字で、『遠くを見る』、『満月』の意味があります。
漢字の世界では『みる』について、ニュアンスの違いがあります。
見(み)る 目立つ。目に止まる。現れる。見(ケン)http://bit.ly/ZCbIEZ
視(み)る 真っ直ぐ視る。注意して視る。視(シ)http://bit.ly/1Vps6QQ
看(み)る 手をかざして看る。よくみる。看(カン)http://bit.ly/1Z5TbdM
診(み)る 細かいところまですみずみまでみる。診(シン)http://bit.ly/1ygC0wK
察(み)る すみずみまでみる。察(サツ)http://bit.ly/1zwPD77
覧(み)る 高い所から下を覧る。覧(ラン)http://bit.ly/25ApacQ
臨(のぞ)む 高い所から下を臨む。臨(リン)http://bit.ly/1WvVxot
監(み)る 上から下のものをみて、みさだめる。監(カン)http://bit.ly/25ApacQ
観(み)る 多くのものを比べて観る。批評する。観(カン)http://bit.ly/11kw1b1
眺(なが)める 右に左にと広く見渡す。眺(チョウ)http://bit.ly/2t44mNH
望(のぞ)む 遠くの見えにくいものをもとめみる。望(ボウ)http://bit.ly/1v84fty
眺(チョウ・ながめる)は中学生 で習う常用漢字です。
『跳(チョウ)』tiào は、足に兆を足し合わせた形声文字で、跳(と)ぶことを表します。漢字の足し算では、足+兆(離れる)=跳(足が地面から離れる。跳ぶ)です。漢字の部首は『足』、足で地面を蹴って跳ぶことです。
音読みは漢音の『チョウ』を使い、呉音の『ジョウ』は使いません。訓読みは『跳(と)ぶ』、『跳(は)ねる』です。跳躍(チョウヤク)、跳力(チョウリョク)、走り幅跳び(はしりはばとび)の跳です。
『とぶ』は漢字の世界ではニュアンスの違いがあります。二字組み合わせて使うこともあります。飛躍(ヒヤク)、飛翔(ヒショウ)、跳躍(チョウヤク)などです。
飛(と)ぶ 羽を使って空高く飛ぶ
跳(と)ぶ 足を使って地面から離れる
翔(と)ぶ 神の使いが空を翔(かけ)めぐる
躍(おど)る 足を使って高く躍(おど)りあがる
躍(ヤク)については、翟(羽で飛ぶ鳥の様子)に足を合わせたものです。『とぶ』・『おどる』の意味があります。この『翟』を中心にした躍(ヤク・上にとぶ)、曜(ヨウ・上で輝く星)、濯(テキ・洗って上にあげる)は別の機会http://bit.ly/1jZuz7n に説明します。
跳(チョウ・とぶ)は中学生 で習う常用漢字です。
『挑(チョウ)』tiāo 、tiǎo は、手を使って、硬いものを二つに割る映像を表す形声文字です。転じて『挑む(いどむ)・挑戦する』の意味を表す漢字として使われています。漢字の足し算では、扌(てへん・手の動作)+兆(二つに割る)=挑(難しい事に挑む、挑戦する)です。漢字の部首は『扌・てへん』です。意味は『挑(いど)む』、『えらぶ』、『はねる』です。
映像ではこんな感じです。
音読みは呉音・漢音ともに『チョウ』、訓読みは『挑(いど)む』です。『跳』と同じ『はねる』意味に使われるときは『トウ』と読みます。挑戦(チョウセン)、挑発(チョウハツ)、挑達(トウタツ)の挑です。
挑(チョウ・いどむ)は中学生 で習う常用漢字です。
『桃(トウ)』táo は、実が二つに分かれている桃(もも)を表す形声文字です。漢字の足し算では、木+兆(二つに割れる)=桃(二つに割れる実のなる木)です。部首は『木』です。桃は、若さの象徴であり、悪気を払うとされ縁起の良い木として知られています。
音読みは呉音が『ドウ』で、漢音の『トウ』を使います。訓読みは『桃(もも)』です。桃の生えている理想郷を桃源郷(トウゲンキョウ)といいます。桃李(トウリ・ももとすもも)、桃太郎(ももタロウ)の桃です。
桃(トウ・もも)は中学生 で習う常用漢字です。
中国のことわざに『桃李不言下自成蹊』というのがあります。桃や李は自らの言葉を言わないけれど、自然に人が寄って来て蹊(みち)http://bit.ly/1AzEFkx ができる。人格者、徳の有る人の意味に使われます。非常に良い漢字で、名前に使われている方もいます。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-f88d.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.春の きざ( )し。
2.良い出来事の ぜんちょう( )する。
3.言いのが( )れる。
4.に( )げ腰。
5.犯人が とうぼう( )する。
6.ちょうぼう( )の良い場所。
7.景色を なが( )める。
8.ちょうやく( )。
9.格上の相手に ちょうせん( )する。
10.戦いを いどむ( )。
11.とうり( )言わざれども下(した)自ずから蹊(みち)をなす。
12.とうげんきょう( )。
解説です。基本の漢字は兆、逃(に)げるのは辶(しんにょう)を足して逃、跳(と)ぶは足を足して跳、眺(なが)める場合は目を足して眺、挑(いど)むのは扌(てへん)を足して挑、桃は木を足して桃と書きます。
解答です。兆し、前兆、言い逃れる、逃げ腰、逃亡、眺望、眺める、跳躍、挑戦、挑む、桃李、桃源郷
今日はこの辺で終わりにします。
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