漢字の覚え方 里
漢字には意味・発音・構造上の漢字の仲間があります。今日は『里(リ)』liという字を中心とした漢字の仲間について説明します。この漢字の仲間には里、裏、裡、理、厘、俚、哩、狸、貍、鯉、薶(埋)などの漢字が含まれ、里という共通部分を持ちます。読み方は漢音・呉音同じで『リ』liと読みます。ただし、特別な漢字である埋だけはマイと読みます。漢字学者の藤堂は、このような漢字の仲間を『単語家族』と表現していました。
『単語家族』は、足し算で表わす事が出来るので、里に何を足したらどんな漢字になるのかを考えていきます。里、理は小学校2年で習う漢字 、裏は小学校6年で習う漢字です。厘、埋は中学校で習う常用漢字です。学年、学校に関係なく、漢字の足し算で一緒に覚えましょう。
『里(リ)』liという漢字は 田に土・社(やしろ・土地神)を足した会意文字です。漢字の足し算では、田+土(社の略字=里(人が田を耕す。人里。土地神のいるところ。)です。部首は『里』、意味は『人里(ひとざと)』、『地方の田舎』を表します。また人がきちんと管理している田畑を表します。転じて、行政区画、距離(約500m、日本では約4km)を示します。
音読みは呉音・漢音ともに『リ』、訓読みでは『さと』と読みます。一里塚(イチリづか)の里です。
里(リ・さと)は小学校2年で習う漢字 です。
『俚(リ)』liは、里が行政区画や距離をしめすようになったので、人里を示すために作られた漢字・形声文字です。ただ、『里』が依然として人里も示すので、あまりつかわれる漢字ではありません。
漢字の足し算では、亻(人間)+里(ひとざと)=俚(ひとざと)です。部首は『亻・にんべん』。民間で歌われるはやり歌を里謡・俚謡(リヨウ)、いなか言葉を里語・俚語(リゴ)と言います。常用漢字ではありません。
俚(リ)は常用漢字から外れています。
『厘(リ・リン)』li という漢字があります。厂(ガン)に里(きちんとした区画)を足したものです。漢字の足し算で覚えるならば、厂(区切る)+里(きちんとした区画)=厘(きちんと区切った一部分。1/1000)です。漢字の部首は『厂・がんだれ』です。
厂は崖を表しており、ここでは区切りを示します。漢字の世界では、1/10が割、1/100が分、そして1/1000が厘になります。33.3%を漢字で示せば、三割三分三厘となります。厘は『リ』という音が本来ですが、慣用的に『リン』と読みます。また。明治以降、通貨の単位(一銭の1/10)としても使われます。
厘(リン)は中学校で習う常用漢字です。
『裏(リ)』liという漢字は 衣に里(きちんと区画した田畑)を足した形声文字です。衣服の裏側は縦糸と横糸が組み合って、きちんとした田畑(里)のようだからです。漢字の部首は『衣』。
漢字の出来方は、衣を上下に分割し、間に里を挟(はさ)んで作ります。漢字の足し算では、衣+里(縦横のきちんと区画した田畑)=裏衣服の裏地。うら)です。また『裡(リ)』という漢字は衣のかわりに衤(ころもへん)を合わせたもので、『裏』の異体字で、同じ漢字です。『裏』は小学校6年で習います
映像ではこんな感じです。
『裏(リ・うら)』は小学校6年で習う漢字です。
『表(ヒョウ)』biaoという漢字があります。『裏』の反対の漢字です。『表』は毛皮の衣服の表面を示した漢字なのです。漢字の足し算では、毛(毛皮)+衣(ころも・衣服)=表(毛皮の衣服の表部分。表す)です。
映像にするなら、こんな感じです。
『表』は衣服の表側を表しますが、表現などの内面を表す意味、図表など記号を使って表すこと、辞表など公式な文書の意味もあります。音読みは『ヒョウ』で、訓読みは『おもて』、『表す(あらわす)』、『表れる(あらわれる)』です。
『表』は小学校3年生で習う漢字です。俵が同じ仲間の漢字です。詳しくは『漢字の覚え方 表』をご覧ください。
美しい石を漢字で玉(ギョク)と言います。この漢字は玉(宝石)が3個縦につながった姿を表しています。玉が漢字の部分として扁(へん)になると、点が省かれて王(おうへん)になります。王様の王と同じになるのです。玉の中で筋目の入った美しいものを『理』と言います。
『理(リ)』lǐの説明です。物事に筋目を『理』と言います。漢字の成り立ちは玉に里(筋目)を足し合わせたもので、玉(宝石・ギョク)の中で、筋目のあるものを示す形声文字です。漢字の足し算で覚えるならば、王(ぎょく)+里(筋目)=理(玉に入っている筋目。きちんとした美しいもの。理)です。漢字の部首は『王・ぎょく』です。意味は、『きちんとした』、『美しい』です。
音読みは呉音・漢音ともに『リ』、訓読みは常用外の読み方で『理(おさ)め)』、『ことわり』があります。きちんと正しく解ることを理解(リカイ)。きちんとした考えのもとにイメージする(想う)ことを理想(リソウ)。髪をきちんとすることを理髪(リハツ)。きちんとした考え方の由(いきさつ)を理由(リユウ)と言います。漢字に玉(ギョク・たま)が付いていて良い意味に使われ、とても大事な漢字です。
追記:リオ五輪 水泳女子200m平泳ぎ 金藤理絵(かねとうりえ)選手 金メダル獲得おめでとございます。お疲れ様でした。
『理(リ・おさめる)』は小学校2年で習う漢字 です。
『鯉(リ)』lǐという漢字は 魚に里(きちんとした区間)を足した形声文字です。鱗の配列がきちんと列をなしている魚だからと言われています。人に良く慣れる魚だからとも言われています。漢字の足し算では、魚(さかな)+里(鱗のきちんとした)=鯉(こい。鯉)です。部首は『魚(うお)』です。
音読みは呉音・漢音ともに『リ』、訓読みは『鯉(こい)』です。鯉を養うことを養鯉(ヨウリ)といいます。
黄河上流にある滝、竜門(リュウモン)を登ることのできた鯉は竜になるといわれており、立身出世の御目出度い魚です。
★我が国では、恋(こい)に鯉(こい)を掛けた 及ばぬ鯉(こい)の滝登り という洒落もあります。
鯉は人名用漢字です。部首索引 魚(うお・さかな) も御覧ください。
『狸・貍(リ)』li という漢字は 犭(けものへん)・豸(むじなへん)に里(人里)を足したものです。犭(けものへん)・豸(むじなへん)は動物を示しますから人里に出てくる動物、たぬきを示す漢字です。狸・貍どちらの漢字もたぬきを表します。漢字の足し算では、犭・豸(動物)+里(人里)=狸・貍(人里近くに棲む動物。たぬき。常用漢字です)。
狸・貍 (リ・たぬき)は常用漢字から外れています。
『薶・埋(マイ)』maiという漢字は 貍(たぬき)に艸(くさかんむり)をあわせたものです。貍を土や草で埋(う)める様子・埋(い)ける様子を表します。字形は『薶』が正字体で『埋』が省略した形の漢字です。唐宋時代からは埋が多く使われるようになりました。
白川のよれば、昔の中国では人里の境界に穴を掘り、犠牲にした貍を埋め、邪悪な霊・病・侵入者から人里を守ってもらいました。埋はとても大事な字なのです。当時は疫病やイナゴ、侵入者などで人里が全滅することは珍しいことではありませんでした。人里を守る漢字が『埋』です。
コメント欄もご覧ください。
ちなみに川を守る漢字が『沈』です。川には牛を生贄(いけにえ)として捧げ、人々を守ってもらいました。その映像が『沈(チン)』です。沈、枕は別の機会に説明致します。
漢字の足し算で覚えるならば、艸(くさ)+貍(たぬき)=薶・埋(生贄をうめる)。漢字の部首は『艸・くさかんむり』と『土・つち』、漢字の意味は『埋(う)める』、『埋(うず)める』、『埋(い)ける』です。
音読みは呉音が『マイ・メ』・漢音が『バイ』、訓読みは『埋(う)める』で、常用外に『埋(うず)める』、『埋(い)ける』があります。埋(うず)もれて見えなくなること・没頭して他を顧みないことを埋没(マイボツ)、地中に埋め隠すこと・鉱物資源が地中に埋もれていることを埋蔵(マイゾウ)といいます。
『埋(マイ・うめる)』は中学校で習う常用漢字です
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-9f09.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう
1.ひとざと( )。
2.いちりづか( )。
3.民間で歌われる歌を りよう ( )という。
4.こい( )のぼり。
5.正しく りかい( )する。
6.りゆう( )を説明する。
7.ちり( )と歴史。
8.表と うらがわ( )。
9.三割三分三 りん( )。
10.石油の まいぞう( )量。
ひとざとや距離(4km)には場合は里を、きちんとした美しいものには理を、衣を足した裏、衤(ころもへん)を足した埋を使い分けます。里に何を足したらどんな漢字になるのかを考えていきましょう。
人里、一里塚、里謡、俚謡、鯉、理解、理由、地理、裏側、厘、埋蔵
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漢字の「埋」の本字は、「薶」で、「貍」(たぬき)が草の中に身を隠す意とされ、「薶」から音符として「里」を借り、「土」を加えたのが「埋」であるらしい。土をかけて外から見えなくするのが本義で、日本語の他動詞「うめる」に相当する。佐藤武義「日本語の語源」明治書院
投稿: | 2019年10月23日 (水) 00時48分
コメント、御指摘誠に有難う御座います。
投稿: 風船あられ | 2019年10月23日 (水) 14時04分