漢字の覚え方 辰
漢字には『単語家族』と呼ばれる漢字の仲間があります。今日は『辰(シン)』という字を中心とした『単語家族』の説明します。この仲間の漢字は辰、蜃、振、震、賑、唇、脣、娠などが含まれ、『辰』という共通部分を持ち、漢音の『シン』という読み方が一般的です。振、震、唇、娠は中学生で習う常用漢字、辰、晨、賑は人名漢字です。一緒に覚えましょう。
『辰(シン)』chénという漢字は 『おおはまぐり』が足をのばしている姿の象形文字です。柔らかい足は素早くひっこめたり、伸ばしたりします。この漢字の意味は『元気に振う』、『柔らかく動く』です。漢字の部首は『辰・たつ』、音読みは漢音の『シン』、訓読みは『たつ』です。元気の意味から十二支の辰をあてはめました。
『辰』は、旧暦では3月、時間は朝7~9時、方角は東南東、動物では龍にあてられています。昔の人は十二支を使って、暦、時刻、方角を示したのです。
中国を中心とした東アジアの世界では、子 丑 寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌 亥の十二支を使って暦、時刻、方角を表しました。数字でもなんでもない漢字の順番を覚えるの大変です。そこで、神様に新年の挨拶に来た十二種類の動物になぞらえて、十二支を宛てて覚えたのです。
辰(龍・たつ)は五番目に挨拶に来た動物と覚えるわけです。ちなみに一番目は牛の背中に乗ってきた鼠(子・ねずみ)、十二番目は勢いよく走ってきて、神様の前を通り越してしまった猪(亥・いのしし)です。
人名・地名に使われる辰巳(たつみ)は辰と巳(み・南南東・へび)の間の方角で東南を示します。東京の地名、辰巳は江戸城の東南にあたるからです。苗字の辰巳さんも方角に由来するかたが多いようです。辰は人名漢字です。
辰が方角や時刻に使われるようになったので、『おおはまぐり』は虫を合わせた『蜃(シン)』shènを使います。普通の大きさのはまぐりは貝合せにに使うので、蛤です。漢字の足し算では 虫(生き物・貝類)+辰(貝の足が伸びる様子)=蜃おおはまぐり)です。漢字の部首は『虫・むし』です。『蜃』は義務教育で習う常用漢字ではありません。
画像ではこんな感じです。
二枚貝は、もやもやした白い物質を出します。昔の人は海にはおおはまぐりが棲んでいて、海上にスクリーン状もやもやを出して幻の建物を映し出すと考えていました。
おおはまぐりの出す幻なので、これを蜃気楼(シンキロウ)と呼んだのです。
『部首索引 虫(むし)』も御覧ください。
『振(シン)』zhènは、手の動きを貝の足を伸縮させる様子で示した形声文字です。漢字の足し算では、扌(手)+辰(元気に振う)=振(手を元気に振る・栄える)です。漢字の部首は『扌・てへん』です。自分から振り動かす場合に使います。『栄える 』の意味もあります。
映像ではこんな感じです。
音読みは呉音・漢音ともに『シン』、訓読みは『振(ふ)る』、『振(ふる)う』です。振り向く(ふりむく)、振り返る(ふりかえる)、振興(シンコウ)、振動(シンドウ)、振幅(シンプク)の振です。他へ移すの意味で振り替える(ふりかえる)等にも使います。
『振(シン・ふる)』は中学校で習う常用漢字です。
『震(シン)』zhènという漢字があります。こちらは自然界の振動を示した漢字・形声文字です。雨は天から水が降ってくる姿ですが、自然界の現象に使われます。漢字の足し算では、雨(自然界)+辰(振動する)=震(自然界が振動する)です。漢字の部首は『雨・あめ』です。自然におきる震え『武者震い(むしゃぶるい)』も震の漢字を使います。
音読みは呉音・漢音ともに『シン』、訓読みは『震(ふる)える』です。地震(ジシン)の震、自然におきる震え『武者震い(むしゃぶるい)』の震です。
東日本大震災で犠牲になられた方々に哀悼の意を表し、被災された方々に御見舞い申し上げます。被災地の復興を心よりお祈り致します。
『震(シン・ふるえる)』は中学校で習う常用漢字です。
『晨(シン)』chénという漢字があります。太陽が元気良く昇っていく朝を示す形声文字です。日に辰(元気が良い)を合わせます。人名用漢字です。あきら、あき○、あした、とき、あさ等の読み方があります。余談ですが、母校の寮に北晨寮(ホクシンリョウ)があります。
漢字足し算では、日+辰(元気良く動く)=晨(太陽が元気良く昇る朝)です。 部首は『日』、『晨』は人名漢字です。
辰を『柔らかく動く』の意味に使った漢字に『唇・脣(シン)』chúnという漢字があります。口(くち)、月(にくづき・体の一部)に辰を合わせます。どちらの漢字も 『くちびる』を表します。唇は常用漢字です。ですから唇の方が多く使われています。漢字の足し算では、口(くち)+辰(柔らかく動く)=唇(くちびる) 、月(体の一部)+辰(柔らかく動く)=脣(くちびる脣)です。脣は常用漢字ではありません。
『娠(シン)』shēn という漢字があります。女性のお腹の赤ちゃんが元気良く動く様子を漢字にした形声文字です。漢字の足し算では、女(女性)+辰(元気に動く)=娠(元気に動く子供を身ごもった女性)です。漢字の部首は『女』です。
音読みは呉音・漢音ともに『シン』、訓読みは常用外の『娠む(はらむ)』があります。妊娠(ニンシン)の娠です。
ちなみに壬(ジン)は糸巻きがふくれた様子で、妊(ニン)は女性のお腹がふくらんだ様子です。
『娠(シン・はらむ)』は中学校で習う常用漢字です。
『賑(シン)』zhènは、貝(お金・商売を表します)に辰(元気に動く)を合わせた形声文字です。商売が活気溢れることで、賑(にぎ)わうことを示します。漢字の足し算では、貝(商売)+辰(元気)=賑(商売が活気あふれる。賑わう)です。漢字の部首は『貝・かい』、漢字の意味は『賑(にぎ)わう』、『元気づける』です。
音読みは呉音・漢音ともに『シン』、訓読みは『賑(にぎ)わう』です。賑わうことをを殷賑(インシン)、被災者に金銭や品物を配って元気づける事を賑救(シンキュウ)といいます。
非常に良い意味の漢字で『とみ』、『とも』と名前に使われます。
『賑(シン・にぎわう)』は人名用漢字です。
『辰』の親戚筋の漢字に、『辱(ジョク)』、『褥(ジョク)』、『縟(ジョク)』があります。この場合の辰は『元気に動く』ではなく、『柔らかいの』の意味で使われます。
『辱(ジョク)』rǔは、強さをくじけさせ、辱(はずかし)めを与える様子を表す漢字です。漢字の足し算では、辰(柔らかい)+寸(手の動作)=辱(手で押さえて態度を柔らかくさせる)です。漢字の部首は『辰・たつ』です。意味は『辱(はずかし)める』と『辱(はずかし)める』から転じた『辱(かたじけな)い』です。
音読みは呉音が『ノク・ニク』、漢音が『ジョク』、訓読みは『辱(はずかし)める』と常用外(義務教育で習わない)『辱(かたじけな)い』です。恥辱(チジョク)、屈辱(クツジョク)、雪辱(セツジョク)、辱め(はずかしめ)を受けるの辱です。『辱』は中学校で習う常用漢字です。
織田信長が家臣の明智光秀の頭を押さえつけ、多くの面前で辱めを与えたと言われています。やがて、信長は本能寺の変で光秀に殺されました。多くの人の前で侮辱(ブジョク)するのは良くないですね。
辱(かたじけな)いは忝(かたじけな)いとも書きます。こちらは天(テン)や添(テン)の仲間の漢字です。詳しくは詳しくは『漢字の覚え方 天』をご覧下さい。
褥(ジョク)は柔らかい布団、縟(ジョク)は綺麗で丁寧な刺繍のしてある衣、転じて丁寧すぎることを表します。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-d8ec.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょうか
1.たつみ( )の方角。
2.しんきろう ( )。
3.景気の しんこう ( )策。
4.名前を呼ばれて ふ( )り返る。
5.大きな じしん( )がおきる。
6.くちびる ( )。
7.姉が にんしん( )する。
8.市場が にぎ( )わいをみせる。
9.会社の ふりかえ( )休日。
10.対戦前の むしゃぶるい ( )い。
11.面前で ちじょく ( )を与える。
自分の意思で振り動かす場合は扌をつけた振を、意思とは関係ない震えは震を使い分けます。女性に関係する事には女をつけた娠、おおはまぐりの出す幻には虫を付けた蜃を使い分けてください。
辰巳、蜃気楼、振興、振り返る、地震、唇、脣、妊娠、賑わう、振替、武者震い、恥辱
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