漢字の覚え方 己
漢字に『単語家族』と呼ばれる漢字の仲間があります。今日は 己(コ・キ)jǐ という字を中心とした『単語家族』を説明します。『単語家族』の漢字は足し算で説明出来ますので、己に何を足すとどんな漢字になるかを考えて行きます。
この仲間の漢字は己、記、起、紀、忌、杞などが含まれ、己という共通部分を持ち、記は小学2年生、起は小学3年生、紀は小学4年生、己は小学6年生で習います。読み方は漢音のキが一般的で、己の字の時には呉音のコが普通です。
『己(コ・キ)』jǐ は、『自ら始める』、『気づく』の意味で、糸巻きの始めを表す象形文字です。『自ら始める』から『己(おのれ)』、『自分自身』の意味に使われるようになりました。また、『始める』の意味は糸偏の紀(キ)に引き継がれるようになりました。漢字の部首は『己・おのれ』です。
また、十干(ジッカン)の六番目(甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸)を表します。また、十干は(木→火→土→金→水)からなり兄弟で表すので、土(つち)の弟(おとうと)ですので、己(つちのと)と読みます。
古代中国の自然哲学の思想によれば、万物は木火土金水の五元素からなり、互いに影響を与えあう。木は燃えて火を生み、火は灰になって土となり、土の中から金属が得られ、金属の表面には水滴が生じ、水によって木が養われるというものです。
音読みは呉音の『コ』が普通で、漢音の『キ』はあまり使いません。訓読みは『おのれ』、『つちのと』です。自己(ジコ)、克己(コッキ)の己です。
『己(コ・キ・おのれ)』は小学校6年生で習う漢字 です。
ちなみに、糸を巻いて膨らんでいくのは『壬(ジン・ニン)』renです。妊娠(ニンシン)の妊、任、賃なんかがこの仲間の漢字です。また別の機会http://bit.ly/21AIQI3 に紹介します。
『起(キ)』qǐは、ベットから起き始めるの意味を表す漢字です。。足を使うことから走(そうにょう)に己を合わせます。漢字の足し算で表わすならば、走(あし)+己(はじめる)=起(足で起き上がる。起きる)です。漢字の部首は『走・そうにょう)』。意味は『起(お)きる』です。
画像ではこんな感じです。
音読みは漢音の『キ』が普通で、呉音が『コ』は使いません。訓読みは『起(お)きる』、『起(お)こす』です。起床(キショウ)、決起(ケッキ)の起です。物事を起こすの意味にもつかわれます。起源(キゲン)ですね。
非常に縁起の良い漢字で、『おき』、『おこす』、『かず』、『たつ』、『ゆき』と人名に使われます。
起(キ・おきる)は小学校3年生で習う漢字です。
『記(キ)』jìは、言葉を『書き始める』、『記(しる)す』の意味を表す漢字です。言葉を書くので言(ごんべん・言葉)に己を合わせます。漢字の足し算で示すと、言(言葉)+己(はじめる)=記(言葉を書き始める。記す)です。
音読みは音読みは漢音の『キ』が普通で、呉音が『コ』は使いません。訓読みは『記(しる)す』で。言葉にして覚えるのが記憶(キオク)、書き記(しる)すのが書記(ショキ)、毎日書きとめたものが日記(ニッキ)、しるしのことを記号(キゴウ)といいます。
『記(キ・しるす)』は小学校2年で習う漢字です。
物事を覚える、筋道を表す非常に良い意味の漢字で、『しるす』、『とし』、『なり』、『のり』、『ふさ』、『ふみ』、『よし』と広く地名・人名に使われます。
『紀(キ)』jìという漢字は、糸偏を使って『順序良く始める』、『順序良く仕事する』、『順序良くしるす』の意味に使います。糸を巻き始めるそのもので、『始める』です。日本書紀の紀は日本の歴史の書き始めです。漢字の足し算では、糸(いと)+己(はじめる)=紀(糸巻きのはじめ。始める)です。漢字の部首は『糸』です。漢字の意味は『始める』、『紀(しる)す』、『筋道・のり』、『正しい』、『重要な』です。
音読みは漢音の『キ』が普通で、呉音が『コ』は使いません。訓読みは常用外に『紀(しる)す』があります。建国した元になる最初を紀元(キゲン)、旅行中の出来語を紀(しる)したものを紀行(キコウ)、年代の初めから百年を世紀(セイキ)、日本の歴史の書き始めを日本書紀(ニホンショキ)、要点を紀(しる)したものを紀要(キヨウ)といいます。
『紀(き・しるす・はじめ)』は小学校4年で習う漢字です。
物事の始め、筋道、正しさを表す非常に良い意味の漢字で、『あき』、『おさ』、『おさむ』、『かず』、『かなめ』、『こと』、『しるす』、『すみ』、『ただ』、『ただし』、『つぐ』、『つな』、『とし』、『のり』、『はじめ』、『もと』、『よし』と広く地名・人名に使われます。
『忌(キ)』jìという漢字がありますが、心を使って始める心を表します。自らつつしむの意味です。やがて避けるの意味にも使われ、忌む(いむ)という訓読みがあてられています。漢字の足し算では、心+己(はじめる)=忌(心を使って始める。自らつつしむ)です。漢字の部首は『心』。『忌』は中学校で習う常用漢字です 。
親族が亡くなり、つつしんでいる最中・期間が 忌中(キチュウ) です。ちなみに喪中(モチュウ)もほぼ同じ意味に使いますが、こちらは 『喪』が『哭く(なく)』と『亡くなる』からきており、悲しみで哭いている最中、期間です。
『忌(キ・いむ)』は中学校で習う常用漢字です 。
近い親戚筋の漢字に、『改(カイ)』gǎiがあります。 この場合の己のイメージは『きづく』、『やり直す』とされています。動作を示す漢字である攵(ぼくづくり)に己を合わせます。漢字の足し算では、己(やりなおす)+攵(ぼくづくり)=改(あらためる)です。漢字の部首は『攵・ぼくづくり』。意味は改める(あらためる)です。
音読みは『カイ』、訓読みは『改める(あらためる)』、『改まる(あらたまる)』です。善く改めるで 改善(カイゼン)、改めて修理するで 改修(カイシュウ)、心を改めるで 改心(カイシン)などと使います。
『改(カイ・あらためる)』は小学校4年で習う漢字です。
あまり使われない漢字に、杞憂(キユウ)の『杞(キ)』qǐがあります。昔、中国に杞という国があり、その国の有る人が『天が落ちてきたらどうしよう』と心配して眠れなくて憂い(うれい)たことから、取り越し苦労の事を杞憂(キユウ)と言うようになりました。
遠い親戚筋の漢字に、『配(ハイ)』、『妃(ヒ)』があります。この場合の『己』のイメージは『そばにいる人』、『かがんだ人』とされています。直接的には関係がないので読み方が違います。『漢字の成り立ち 配』にも記述し、練習問題も載せています。
『配(ハイ)』pèiは、御酒を配る様子を表す漢字です。漢字の足し算では、酉(酒樽)+己(そばにいて配る人)=配(御酒を配る人。配る)です。漢字の部首は『酉・さけづくり・とり』。意味は『配る(くばる)』、『役目を与える』、『つれそう』です。
音読みは漢音の『ハイ』が普通で、呉音の『ヘ・ハイ』は使いません。訓読みは『配る(くばる)』です。御酒を配るの意味から、配達(ハイタツ)、配当(ハイトウ)。役割を与えるの意味で、支配(シハイ)、配下(ハイカ)。つれそう人の意味から配偶者(ハイグウシャ)等多くの熟語があります。
『配』は小学校3年で習います。
日本語では『ン』の後のh音は、pかb音に変化します。唇が動きやすいからです。従って『ハイ』は、年配(ネンパイ)、軍配(グンバイ)のように『パイ』、『バイ』読むことがあります。
『妃(ヒ)』fēiは、王様のそばにいる女性で妃(キサキ)を表します。漢字の足し算では、女+己(そばにいる人)=妃(王様のそばにいる女性)です。漢字の部首は『女』です。意味は『妃(きさき)』です。 音読みは呉音・漢音ともに『ヒ』、訓読みは『きさき』、『きさい』、『ひめ』です。皇太子妃(ヒ)さま、楊貴妃(ヨウキヒ)の妃(ヒ)です。『妃』は中学校で習う常用漢字です。
さらに遠い仲間の漢字に、巻(カン)があります。巻の旧字体(正字体)は卷です。巻は氾(ハン)、犯(ハン)と近い漢字なので別の機会『漢字の覚え方 犯・氾』、『漢字の覚え方 巻』 で紹介します。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-4cf2.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょうか。
1.じこ( )流のやり方。
2.けっき( )集会。
3.道路の かいしゅう( )工事。
4.若い時の きおく( )。
5.古事記と にほんしょき( )。
6.土佐 にっき( )。
7.あんき( )して覚える。
8.きげんぜん( )2000年。
9.四十九日の間 きちゅう( )。
10.生命の きげん( )を探る。
解説です。日本書紀、紀元、紀行文 以外に紀を使うことはあまりありません。言葉関係は記を使う方が多いです。起こる、起きる関係は起を、自分関係は己(コ)、やり直すのは改(カイ)を使い分けて下さい。
解答です。自己、決起、改修、記憶、日本書紀、日記、暗記、紀元前、忌中、起源
今日はこの辺で終わりにします。
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