漢字の覚え方 右
漢字というのはある一定の決まりのもとに、パーツを組み合わせて出来ている性質があります。漢字には『単語家族』、『系列漢字』などと呼ばれる漢字の仲間があり、その『単語家族』は共通したイメージと音をもっています。
この『単語家族』は、同じ音を持っています。例えば右、又、有、友、佑、祐、雄という『単語家族』は、『ユウ』か『ウ』という同じ音をもっています。また、漢字の上の部分『ナ』が共通で、この部分には『右手』、『ささえる』というイメージがあります。
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来るので、『単語家族』ごとにまとめて漢字を覚えると便利です。『ナ』に何を足すと右、又、有、友、佑、祐、雄になるか漢字の成り立ちを考えていきます。
漢字の読み方は、漢字を中国から輸入したときの読み方音読みと大和言葉にあわせた訓読みがあります。音読みには、最初に輸入した中国江南地方の音である呉音(ゴオン)、遣唐使が持ち帰った長安の音である漢音(カンオン)、鎌倉仏教を通して入ってきた唐宋音(トウソウオン)があります。
『右』yòuという漢字は、呉音の『ウ』、漢音の『ユウ』という二種類の音読みと『みぎ』という訓読みがあります。
余談ですが、『未だ曾つて有ったことがない』を未曾有(ミゾウ)と言いますが、これは漢字を日本に輸入した時期の関係で、3文字とも呉音で(ミ、ゾウ、ウ)と読みます。漢音で(ユウ)と読んではいけません。未曾有(ミゾユウ)と読んで大変恥ずかしい思いをした人がいるので、気をつけましょう。
ちなみに未(ミ、ビ)は木が未だ成長してない象形、曾(ゾウ、ソウ)はセイロを重ねる象形で重ねる、増える、かつての意味があります。
曾、増、憎、贈、僧、層、噌は増える、重ねるを共通イメージに持つ漢字です。詳しい説明は又(また)の機会にします。詳しくは『漢字の覚え方 曾』をご覧ください。
小学校では1年で右、3年で有、2年で友を覚えるようになっていますが、別々に覚えるよりも一緒に覚えましょう。漢字の成り立ちからもお薦(すす)めです。
ナと又はもともと同じ漢字・パーツで、ナはそのデザイン上右、有、友など漢字の上の部分で活躍します。又は受など漢字の下の部分で使われています。
『又(ユウ・ウ)』youは、右手でささえるの意味が転じて『その上に』という意味で使われ、日本語では『また』という副詞に使われます。中学校で習う常用漢字です。ただ副詞はひらがな表記の『また』が推奨されているため、『又(また)』は殆ど使われません。
『右(ユウ・ウ)』yòuという漢字はナ(右手)に口(祝いの器)を合わせたものです。右手に祝器で『神を尋ねる』、『助ける』を表します。漢字の足し算で表すと、ナ(右手)+口=右(右手の意味。助ける。右)です。漢字の部首は『口・くち』、漢字の意味は『右』、『右に行く』、『西の』、『上位の』、『佑(たす)ける』、『保守的な』です。
書くときは指の部分から腕の部分へと書きます。左払い(指)、横棒(腕)の順で横棒の方を長くします。
音読みは呉音が『ウ』、漢音が『ユウ』。訓読みは『みぎ』です。左右(サユウ)、右往左往(ウオウサオウ)、座右(ザユウ)、右左(みぎひだり)の右です。
小学校1年で習う漢字http://bit.ly/1DkEWa9 です。
ちなみに『左(サ)』zuǒは左手で工具を持った漢字で、漢字の足し算では、ナ(左手)+工(工具)=左(左手の意味。助ける)です。漢字の部首は『工・こう』、漢字の意味は『左』、『左に行く』、『東の』、『下位の』、『佐(たす)ける』、『差』、『急進的な』、『酒呑み』です。
映像ではこんな感じです。書き順は横棒、左払い、指を表す横棒は短く書きます。
音読みは呉音・漢音ともに『サ』、訓読みは『ひだり』です。左と右は左右(サユウ)と言い、右も左も分からず混乱した状態を右往左往(ウオウサオウ)、それまでの官職から低い位置に遷ることを左遷(サセン)と言います。
古代中国では、右を尊び、左を卑しみました。我が国では、時代によって異なり左大臣・右大臣のように左(東の方角)を上位とすることもあります。
小学校1年で習う漢字http://bit.ly/1DkEWa9 です。
『有(ユウ・ウ)』youは、右手で肉を持った様子を表す形声文字です。存在を示します。漢字の足し算で示せば、ナ(右手)+月(にくづき・にく)=有(肉を持つ。有る)です。漢字の部首は『月・にくづき』です。書き順はノ(左払い)、一(横棒)の順番で、指を表すノ(払い)は短く書きます。
音読みは呉音が『ウ』で、漢音が『ユウ』です。訓読みは『有(あ)る』です。国に権利が有るのを国有(コクユウ)。能力があるのを有能(ユウノウ)。有ることと無いことを有無(ウム)、空にまだ月の残ったまま夜が開けることを有明(ありあけ)といいます。
とても縁起の良い漢字で『あり』、『すみ』、『たもつ』、『とお』、『とも』、『なお』、『なり』、『みち』、『もち』、『り』と広く地名・人名に使われます。
『有』は小学校3年で習う漢字http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/3-e460.htmlです。
月は空の月ではなく、肉の月(にくづき)です。映像ではこんな漢字になります。
『鮪(イ・まぐろ)』weiは、回遊魚の鮪(まぐろ)を表す形声文字です。漢字の足し算では、魚+有(存在する)=鮪(存在する魚。回遊する魚。鮪。まぐろ)です。
音読みは呉音・漢音ともに『イ』、訓読みが『鮪(まぐろ)』です。鰹(かつお)とともに、我が国で最も好まれている遠洋性回遊魚です。赤身の魚で、脂の乗った部分はトロと呼ばれ非常においしい魚です。
魚についての漢字は部首索引 魚(うお・さかな) もご覧下さい。
『友(ユウ・とも)』youは、右手と右手が重ねたデザインで、良好な人間関係を表す漢字です。書き順は横棒、左払いの順に書きます。左払いを長く書きます。漢字の足し算では、ナ(右手)+又(右手)=友(右手と右手を重ねる。友情の証)です。漢字の部首は『又』です。『友』は小学校2年で習う漢字です。
映像ではこんな感じです。
右には助けるの意味がありますが、神が助けるのが『祐(ユウ)』youです。天祐の祐ですね。漢字の足し算で示せば、ネ・示(しめすへん・神)+右=祐(神の助け。祐)です。漢字の部首は『ネ・しめすへん』、大変良い意味の漢字で人名用漢字になっています。
ちなみに『助ける』という字は且(ショ・ソ。物を積み重ねる)に力を合わせたもので、力を加えて助けるの意味です。且、租(稲を重ねて納税する)、阻(土を重ねて行く手を阻む)、祖(世代を重ねた先祖)、爼(肉を重ねたまな板)、組(糸を重ねて組む)、助(力を重ね助ける)これは別の系列の漢字なので、又の機会『漢字の覚え方 且』で説明します。
右には助けるの意味があると書きましたが、人を右側から助けるのが『佑(ユウ)』youです。天佑(テンユウ)の佑はこちらの漢字も使います。足し算では、イ(にんべん・ひと)+右=佑(人を右側から助ける。佑)です。漢字の部首は『イ・にんべん』、大変良い意味の漢字で、人名用漢字になっています。日本ではジョウと読んで神祇官の位に使われたりしました。
映像で示すならばこんな感じです。
右から助けるなら、左から助ける漢字もあります。補佐の『佐(サ)』です。足し算では、イ(にんべん・ひと)+左=佐(人を左側から助ける。補佐する)です。日本ではスケと読んで衛門府(エモンフ・皇居を守る機関)の位に使われたりしました。『佐』は中学校で習う常用漢字です。
映像ではこんな漢字です。
『左』について興味ある方は『漢字の覚え方 左』lご覧下さい
少し変わった仲間の漢字に『雄(ユウ。おす・お)』xióngがあります。『厷(コウ)』は『肱(ひじ)』http://bit.ly/2gAU0hb を表す象形なので、雄は(コウ)と読むはずですが、(ユウ)の音で読みます。異体字に『䧺(ユウ)』があり、もともと同じ字です。意味はひじを張って偉ぶっている隹(とり)の姿で、おすを表しています。雄大(ユウダイ)、英雄(エイユウ)、雄叫び(おたけび)の雄です。『雄』は中学校で習う常用漢字です。
メスを表す漢字は『雌(シ・めす・め)』cíです。此に小さいの意味があります。例えば、些少(サショウ)の些が同じ漢字仲間です。雌は小さい隹(とり)の姿でめすを表しています。両方で雌雄(シユウ)と言います。『雌』は中学校で習う常用漢字です。
『雄』・『雌』ともに漢字の部首は『隹・ふるとり』です。
『此(シ)』について興味のある方は 『漢字の覚え方 止・此』をご覧ください。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-d82c.html
http://bit.ly/1D6K0Ps 『漢字の覚え方 右』 右 友 有 鮪 佑 雄
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.みぞう( )の大事件。
2.自動車が うせつ( )する。
3.さゆう ( )逆になっている。
4.ゆうじょう( )の証(あかし)。
5.ゆうのう( )な人間。
6.うむ( )を言わさない。
7.しんゆう( )を誕生日に招待する。
8.天の助けを てんゆう( )と言う。
9.部長の仕事を ほさ( )する
10.しゆう( )を決する。
解答です。
未曾有、右折、左右、友情、有能、有無、親友、天祐、天佑、補佐、雌雄。
今日はこの辺で終わりにします。
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