漢字の覚え方 各
漢字の組み合わせ・覚え方
漢字は、214のパーツ(主に象形文字)の組み合わせで出来ています(康煕字典より)。また、漢字には発音・意味・構造上の仲間があり、漢字学者の藤堂は『単語家族』と表現していました(漢字源より)。
例えば『客(キャク)』という漢字は、『宀』と『各』という漢字の組み合わせ、『格(カク)』という漢字は『木』と『各』の組み合わせです。各、客、格は、『各』を基本漢字とした同じ漢字仲間の『単語家族』です。
今日は各、客、格、挌、額、閣、絡、酪、落、路、露、賂、蕗、略という『単語家族』について説明します。基本の漢字は『各』で、読み方は『カク』か『ラク』、共通したイメージは『つっかかる』です。
『単語家族』は足し算で表わすことができるので、まとめて覚えると便利です。『各』に何を足すと客、格、挌、額、閣、絡、落、路、露、賂、略になるのかを考えます。客、落は小学校3年生 、各は小学校4年生 、格、額、略は小学校5年生 、閣は小学校6年生 、絡、酪、露、賂は中学校で習います。学年・学校に関係なく、一緒に覚えましょう。
『各(カク)』geという漢字は、人が石に躓(つまづ)いた様子http://bit.ly/1LM7xaZ を表した文字です。漢字の足し算では、夂(人の足)+口(石)=各(人が石に躓く。つっかかる)です。漢字の部首は『口・くち』、漢字の意味は『つっかかる』、『おのおの』です。
各々(おのおの)というのは 映像にしてみると『つっかえつっかえ』という感じです。各だけでもおのおのと読みます。
石ではなく、神様が御神酒、祝器(口・サイ)に舞い降りてきた様子を表すという説(白川)もあります。ようするに『つっかかる。つかえて止まる』という状態を『各』は表現しています。
音読みは呉音・漢音ともに『カク』、訓読みは『各(おのおの)』です。各位(カクイ)、各論(カクロン)、各(おのおの)、各々(おのおの)の各です。
『各(カク・おのおの)』は小学校4年生で習う漢字です。
漢字の読み方の話をしましょう。漢字の読み方には、音読みと訓読みがあります。音読みは漢字を輸入したときの中国の読み方です。訓読みはその漢字に相当する日本古来の読み方です。
音読みには呉音(ゴオン)と言って最初に漢字を輸入した時の呉(江南)地方の音、漢音(カンオン)と言って遣唐使が持ち帰った唐時代の長安の音があります。呉音・漢音とも同じ場合は良いのですが、微妙に違う場合があります。
『各』の場合は呉音・漢音とも一緒、『客』の呉音は『キャク』、漢音は『カク』です。非常に面倒なので、当時の平安朝では遣唐使の持ち帰った漢音に統一しようとしました。ところが、一度使い始めた呉音は簡単にはやめられず、そのまま1000年以上経過して現在に至っています。なので、『客』は『キャク』と読んだり、『カク』と読んだりするのです。
『客(キャク・カク)』kèという漢字があります。漢字の足し算で示すと、宀(家)+各(つかえる)=客(宿につかえて止まる人)です。漢字の部首は『宀・うかんむり』、漢字の意味は『客(キャク)』です。
音読みは呉音が『キャク』、漢音が『カク』。客員(キャクイン・カクイン)、客観(キャッカン)、主客(シュキャク・シュカク)、乗客(ジョウキャク)の客です。
『客(キャク・カク)』は小学校3年生で習います。
『客』の反対にじっとしている人が『主(シュ)』です。主、注、柱、駐の『単語家族』は別の機会に説明します。詳しくは『漢字の覚え方
主』をご覧ください。
『格(カク・コウ)』geは、木と木がつかえる様子を表す漢字です。漢字の足し算では、木+各(つかえる)=格(木をつかえさせた枠。きまり)です。漢字の部首は『木』です。木に木を組み合わせてつかえさせたイメージです。写真で示せばこんな感じです。
木と木がつっかえて止まるのが『格』のイメージです。これを繰り返して格子状(コウシジョウ)にしたもの。いわゆる『格(カク)』で、きっちりした枠から規則、法律、本質などの意味が膨らんでいきました。
『格』の音読みは呉音が『キャク』、漢音が『カク』、慣用音(我が国で便宜的に発達した音読み)が『コウ』です。格という規則に合うのが合格(ゴウカク)、人の本質が性格(セイカク)、本質の言葉が格言(カクゲン)、木を組み合わせたものが格子(コウシ)です。
『格(カク)』は小学校5年生http://bit.ly/1ViqkSL で習います。
挌闘技(カクトウギ)の挌は本来『挌(カク)』geが正統、木扁の格は代用字です。手と手をつかえさせて、組み合わせた映像です。足し算で示すと、扌(手)+各=挌(腕と腕を組んだ状態。挌)です。漢字の部首は『扌・てへん』です。挌闘技の『挌』です。格闘は代用字です。
音読みは呉音が『キャク』、漢音が『カク』です。常用漢字(日常で使う漢字)から外れているので、『格』で代用するのが普通です。
『額(ガク)』éという漢字がありますが、人のなかでコツンとあたる、つかえる部分を示しているそうです。どこでしょうか?ひたいの部分です。額は人の『ひたい』の事です。漢字の足し算では、客(こつんと止まる人)+頁(顏)=額(顔の中でコツンとあたる場所。ひたい)です。漢字の部首は『頁・おおがい』です。
音読みはは呉音が『ギャク』、漢音が『ガク』、訓読みは『ひたい』です。額は人間の高い部分ですから、高いところに飾るものも額といいます。額縁(ガクブチ)の額ですね。面に掲げられた価格を額面(ガクメン)といいます。
『額(ガク・ひたい)』は小学5年で習う漢字 です。
黄河の支流に洛水(ラクスイ)という川があって、その川につかえている街が洛陽(ラクヨウ)で、中国の都です。
『洛(ラク)』luoは、都の事を指します。漢字の足し算で示すと、氵(さんずい・水)+各(つかえる)=洛(水のほとりにある都。洛)です。漢字の部首は『氵・さんずい』 です。漢字の意味は『都(みやこ)』。昔の中国では洛陽。日本では京都のことになります。
音読みは呉音・漢音ともに『ラク』です。中国の昔の都(みやこ)を洛陽(ラクヨウ)、都の中・我が国では京都の街中を洛中(ラクチュウ)といいます。
『洛』は人名用漢字(常用漢字ではありませんが、人の名前や地名に使える漢字)です。
少し古代の発音の話をします。『各(カク)』geは古代ではklakという音であったと考えられています。それがkak→ge、ke(各、客、格、挌、閣)とlak→la→lu(洛、絡、落、路)という二系統の発音に分かれて、日本に輸入されたので『カク』と『ラク』という二系統の音読みがあるといわれています。
『落(ラク)』lào、là、luòという漢字がありますね。これも各の仲間の漢字です。落ちるというのは、葉につかえていた水滴が落ちるイメージで、葉(艸)と水(氵)を使います。 足し算で示せば、艹(くさかんむり)+氵(さんずい)+各(つかえる)=落(葉につかえていた水落ちる様子。落ちる)です。漢字の部首は『艹・くさかんむり』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ラク』、訓読みは『落(お)ちる』です。落日(ラクジツ)、落第(ラクダイ)、集落(シュウラク)の落です。
『落ちる』には落成(ラクセイ)のように出来上がる、集落(シュウラク)のように人々が落ち着いて住むの意味もあります。
『落(ラク・おちる)』は小学校3年で習う漢字 です。
『閣(カク)』geという字は、扉をつかえさせる石の事で、転じて宝物の建物、高い建物、行政の最高機関を示すようになりました。漢字の足し算では、門+各(つかえる)=閣(扉止めの石。閣)です。漢字の部首は『門・もんがまえ』です。
映像で示すと、矢印↑の部分です。
音読みは、呉音・漢音ともに『カク』、常用外の訓読みに『閣(たかどの)』があります。内閣制度(ナイカクセイド・行政機関)、天守閣(テンシュカク・高い建物)の閣です。
『閣(カク・たかどの)』は小学6年で習う漢字 です。
『擱(カク)』geは、動きを止める様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、扌(動作)+閣(扉を止める石)=擱(動きを止める)です。漢字の部首は『扌・てへん』、漢字の意味は『動きを止める』、『擱(お)く』です。
音読みは、呉音・漢音ともに『カク』、訓読みは『擱(お)く』です。書くのをやめて筆を擱くことを擱筆(カクヒツ)、船が浅瀬に乗り上げて泊ることを擱坐(カクザ)といいます。
『擱(カク・おく)』は常用漢字から外れています。
基点をもとにして情報を伝達するのが、『絡(ラク)』lao、luoです。連絡(レンラク)の絡です。糸は情報が人から人へ伝わる様子を表しています。糸電話みたいですね。漢字の足し算で表すと、糸(いと)+各(基点と基点を結ぶ)=絡(人から人へ情報を伝える。絡)です。漢字の部首は『糸』、漢字の意味は『つながる』、『絡(から)む』、『すじ』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ラク』、訓読みは『絡(から)む』、『絡(から)まる』です。点と点の間をつなぐことを連絡(レンラク)、血管の流れるすじ・物事の道筋を脈絡(ミャクラク)といいます。
情報を伝達する良い意味の漢字で、『つら』、『なり』と名前に使われます。
糸を情報の伝達に使う漢字は、他にも紹介(ショウカイ)の紹(ショウ)http://bit.ly/1wP9wED なんかもそうです。
ちなみに訓読みの『絡(から)む』、『絡(から)まる』を映像にしてみると、こんな感じです。相手を巧みな言葉で絡めてまるめ込むことを籠絡(ロウラク)といいます。
『絡(ラク・からむ)』は中学校で習う常用漢字です。
『酪(ラク)』laoは、乳製品を固めたものを表す漢字です。漢字の足し算で示すと、酉(酒の壺)+各(つかえて止まる)=酪(壺の中でつかえて固まった乳製品。バターやチーズ)です。漢字の部首は『酉・さけのとり』 、漢字の意味は『固められた乳製品』です。
音読みは呉音・漢音ともに『ラク』でし。牛を飼い、乳を生産したり、バターやチーズをつくったりする農業を酪農(ラクノウ)といいます。
『酪(ラク)』は中学校で習う常用漢字です。
『路(ロ)』luという漢字がありますが、これも各の系列の漢字です。音が(ロ)と少し違うのですが、基点と基点を結ぶイメージは『絡(ラク)』luoと同じです。扁(へん)には足を使います。漢字の足し算では、足+各(基点と基点を結ぶ)=路(基点と基点を結ぶ横の路。みち)です。漢字の部首は『足・あしへん』、意味は『みち』、『考え方』、『行き方』です。
イメージとしては、こんな感じです。
音読みは呉音が『ル』、漢音は『ロ』、訓読みは『路(みち)』、『路(じ)』です。線路(センロ)、帰路(キロ)、陸路(リクロ)、信濃路(しなのじ)、小路(こみち)の絡です。
『路(ロ・みち)』は小学校3年生で習う漢字http://bit.ly/1vlSD7s です。
大変重要な漢字で、『じ』、『のり』、『みち』、『ゆく』と名前に使われます。
ちなみに経(た)てのみちを『経・經(ケイ)』と表現します。詳しくは『漢字の覚え方 巠』をご覧ください。通過する道筋、たてよこのみちを経路(ケイロ)といいます。
路、賂、露、蕗、鷺(ロ)がこの路(ロ)の系列の漢字で、(ロ)luという音を持っています。
貝(宝・財貨)を持って通う特別なルート(路)を『賂(ロ)』luといいます。
『賂(ロ)』luは、ある特別なルートを使って賄賂(ワイロ)を贈る様子を表す漢字です(藤堂)。漢字の足し算では、貝(財宝)+各(基点と基点を結ぶルート)=賂(特別なルートを使って賄賂(ワイロ)を贈る。賄賂)です。漢字の部首は『貝・かい』、意味は『賄賂(ワイロ)』、『まいない』です。
音読みは呉音が『ル』、漢音は『ロ』です。特別な便宜をはかって貰うために人に金品を贈ることを賄賂(ワイロ)といいます。
『賂(ロ・まいない)』は中学校で習う常用漢字です。
路(みち)で雨にさらされる事を『露(ロ)』lùといいます。
『露(ロ)』lùは、雨にさらされる様子を表す漢字です。漢字の足し算では、雨(あめ)+路(みち)=露(路で雨にさらされる。さらす。あらわす。水があらわれる露。つゆ。中が透けて見える。透明)です。漢字の部首は『雨・あめかんむり』、意味は『雨にさらされる』、『さらす』、『露(あら)わ』、『露(つゆ)』、『透明』です。
音読みは呉音が『ル』、漢音が『ロ』、訓読みが『露(つゆ)』で、常用外に『露(あら)わ』があります。雨晒(ざら)しの状態・屋根のないことを露天(ロテン)、悪事などが暴(あば)かれて露(あら)わになることを暴露(バクロ)、透けてみえることを露出(ロシュツ)、あらわすの意味があるので、水蒸気が水になって表れるのを露(つゆ)といいます。
『露(ロ・あらわれる)』は中学校で習う常用漢字です。
『蕗(ロ)』lùは、路(みち)に生(は)える蕗(ふき)を表す形声文字です。漢字の足し算では、艹(植物)+路(基点と基点を結ぶ。路)=蕗(路(みち)に生(は)える蕗。ふき)です。漢字の部首は『艹・くさかんむり』、意味は『蕗(ふき)』です。
音読みは呉音が『ル』、漢音は『ロ』、訓読みは『蕗(ふき)』です。路(みち)に生える植物で、食用になります。塩などで灰汁(あく)を抜いてから使います。砂糖と醤油での佃煮にしたものうぃ伽羅蕗(キャラぶき)といいます。
『蕗(ロ・ふき)』は人名用漢字です。
『鷺(ロ)』lùは、透き通るような白い鷺(さぎ)を表す漢字です。漢字の足し算では、露(透き通る)+鳥(とり)=鷺(透き通るような白い鳥。鷺。さぎ)です。漢字の部首は『鳥・とり』、意味は『鷺(さぎ)』です。
音読みは呉音が『ル』、漢音は『ロ』、訓読みは『鷺(さぎ)』です。透き通るような白い鷺を白鷺(ハクロ・しらさぎ)、舞に使う鷺の羽を鷺羽(ロウ)といいます。
『鷺(ロ・さぎ)』は人名用漢字です。
『略(リャク)』lüèは、田畑を測量してはかる事を表す形声文字です。漢字の足し算では、田(田畑)+各(基点と基点を結ぶ)=略(基点と基点を結ぶんで測量する。はかる)です。
やがて『はかりごと』を表す策略(サクリャク)など知恵の意味がつき、省略(ショウリャク)など省くの意味になりました。他人の土地をはかって、税金をとることから侵略(シンリャク)の意味にも使われます。
漢字の部首は『田・た』、意味は『はかる』、『省(はぶ)く』、『ほぼ』、『侵略する』です。
映像のイメージはこんな感じです。
音読みは呉音が『ラク』、漢音が『リャク』、訓読みは常用外に、『略(はか)る』があります。策略(サクリャク)、省略(ショウリャク)、侵略(シンリャク)、略図(リャクズ)の略です。
『略(リャク・はかる)』は小学校5年生で習う漢字 です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-266b.html
『漢字の覚え方 各』 各 格 閣 額 客 洛 落 酪 絡 路 賂 露 鷺 略
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.おのおの( )の問題。
2.入試試験に ごうかく ( )する。
3.プロレスは かくとうぎ ( )。
4.大阪城の てんしゅかく( )。
5.らくよう( )の紙価を高める。
6.秋になり木々が らくよう ( )する。
7.しゅかく( )転倒。 しゅきゃく とも読みます。
8.れんらく( )をつける。
9.バスの運行 けいろ ( )。
10.わいろ( )を要求する。
11.一部を しょうりゃく( )する。
12.他国への しんりゃく( )。
解答です。
各各、合格、格闘技、挌闘技、天守閣、洛陽、落葉、主客、連絡、経路、賄賂、省略、侵略
このブログは漢字をある共通したイメージをもって、映像で解説し、漢字の記憶に役立てる事です。常用漢字(中学校で習う)の映像による解説を目標にしますが、当面の目標は小学校で習う1006字の教育漢字の解説です。とりあえず今日はこの辺で終わりにします。
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おもしろーい!
投稿: 小吉 | 2012年12月 4日 (火) 17時16分
ねえねえ、面白くてよくわかるけど、なんで各から始めたの??
投稿: ざりがにさんかえるさん | 2012年12月13日 (木) 19時59分
小吉さん かえるさん コメント有難う御座います。
ア 亜(建物の基礎の象形。支える、次ぐ、つかえるの意味)、唖(言葉につかえる)、悪(胸がつかえた嫌な感じ)から始めようと思いましたが、適当な写真がなかったので。。。
写真や絵はオリジナルをなるべく使おうかと思っています。
昜はみんなのサイエンスの関係です。
たまって来たら索引をつけようかと。
投稿: 風船あられ | 2012年12月13日 (木) 22時04分