漢字の覚え方 主
漢字には『単語家族』とか『系列の漢字』と呼ばれる発音・意味上の漢字の仲間があります。今日は『主(シュ)』zhǔという字を基本とした『単語家族』を説明します。
この『単語家族』には主、注、柱、駐、註、住などがあり チュウ(漢音)、ジュウ(呉音)などと読みます。じっとしている。そこについている。という意味を表します。(呉音・漢音とは日本に入って来た時の中国由来の読み方です。最初に中国から入ってきた時の音が呉音、遣唐使が持ち帰った音が漢音です。また我が国で定着した音読みを慣用音といいます。)
『単語家族』の漢字は足し算で表わす事が出来ますので、まとめて覚えると都合が良いです。『主』に何を足したら注、柱、駐、註、住になるのかを考えます。主、注、柱、住は小学校3年生で習う漢字、駐は中学校で習う常用漢字です。常用漢字に関係なく一緒に覚えましょう。
『主(シュ)』zhǔという漢字は、燭台でじっと燃える様子の象形文字(ショウケイモジ)です。漢字の部首は『丶・てん』、意味は『じっとする』、『ついている』です。
主のロウソクは太く、安定感があります。漢字の上の点は、ロウソクの火を表しています。所を変えて旅するものを『客(キャク)』といいますが、とどまって動かないものを『主』というのです。
音読みは漢音の『シュ』が普通で、呉音の『ス』もあります。訓読みは『ぬし』、『おも』、『あるじ』です。主従(シュジュウ)、主客(シュカク・シュキャク)、主催(シュサイ)、坊主(ボウズ)、神主(かんぬし)の主です。
『主(シュ)』は小学校3年で習う漢字http://bit.ly/1NYbV9m です。
『柱(チュウ)』zhùという漢字がありますが、じっとひと所に立っている木を表します。住宅の柱ですね。足し算で表すならば、木+主=柱(じっとひと所に立つ材木。はしら)です。部首は『木・きへん』です。
音読みは漢音が『チュウ』、呉音が『ジュウ』、訓読みは『はしら』です。柱は丸くて太いものです。現在はコンクリート製ですが、電柱(デンチュウ)なんかも『柱』です。氷の柱を氷柱(つらら)といいます。
『柱(チュウ)』は小学校3年で習う漢字http://bit.ly/1UIX7zU です。
『注(チュウ)』zhùは、 水を柱状に注ぐ様子を表した形声文字です。漢字の足し算で示せば、氵(水)+主(はしら)=注(水が柱状に注がれている様子)です。部首は『氵・さんずい』、意味は『そそぐ』、意識を注ぐで『心や目をむける』です。
映像で『注』を表わすと、こんな感じです。
音読みは慣用音の『チュウ』、漢音の『シュ』・呉音の『ス』は使いません。訓読みは『注(そそ)ぐ』です。注意(チュウイ)、注射(チュウシャ)、注文(チュウモン)の注です。
水を注ぐ(そそぐ)ばかりでなく、註(チュウ 言葉について解説する)の代用として、言葉の注釈(チュウシャク)、脚注(キャクチュウ)にも『注』が使われます。
『注(チュウ)』は小学校3年で習う漢字http://bit.ly/1UIX7zU です。
☆言葉にじっとついて、その言葉の解説をするのが 『註(チュウ)』zhùです。今では、殆ど活躍の場所がなく、『注』の字で代用されています。『チュウシャク』とパソコンで入力してみて下さい。注釈、註釈と二通りに変換されます。
『註(チュウ)』の漢字は、マイナーな漢字として扱われていて、常に用いられる漢字常用漢字から漏れています。足し算では、言+主=註(言葉について解説する)です。漢字の部首は『言・ごんべん』です。
☆乗り物がじっと止まっている状態を 『駐(チュウ)』zhùという漢字で表します。昔は車とは馬車のことでした。したがって駐車の駐は 馬扁(うまへん)が用いられているのです。漢字の足し算で示せば、馬+主=駐(馬車をじっとそこにとどめる)です。現代では馬ではなく自動車ですね。部首は『馬・うまへん』です。
こんな感じです。
音読みは呉音・漢音ともに『チュウ』です。仕事のために派遣された人がとどまることを駐在(チュウザイ)と言い、『駐』 を使います。
『駐(チュウ)』は中学校で習う常用漢字です。
☆人がじっとしているのが、『住む』です。
『住(ジュウ)』zhùは、人がそこに住む様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、亻(にんべん・人)+主(じっとしている)=住(居住を定めてじっとする。そこについている)です。部首は『亻・にんべん』です。意味は『住(す)む』です。
音読みは呉音が『ジュウ』、漢音が『チュウ』、訓読みは『住(す)む』、『住(す)まう』です。住居(ジュウキョ)、住宅(ジュウタク)、住民(ジュウミン)、住み込み(すみこみ)の『住(ジュウ)』です。
鳥や獣が棲(す)むは棲(す)むhttp://bit.ly/1DUGnR6 を使います。
『住(ジュウ)』は小学校3年生で習う漢字http://bit.ly/1NYbV9m です。
ここで例外を書いておかなければなりません。 『往』(オウ)です。読み方が違う通り、主 とは違う系列の漢字で、上の点が『止(シ・歩くの意味)』省略形のため、『主』と同じ字体になっているのです。王が行くの意味で(前進する。過ぎ行く。過ぎ去る。)などの意味があり、別の系列の漢字です。
『往(オウ)』wǎngという漢字は、王様が行進する様子を表す形声文字です。漢字の足し算では、行(自分)+ヽ(止・足)+王=往(王の行列。往く。ゆく)です。漢字の部首は『彳・ぎょうにんべん』です。
音読みは呉音・漢音ともに『オウ』です。訓読みは常用外の『往く(ゆく)』があります。往復(オウフク)、往来(オウライ)、往診(オウシン)の往です。王については『漢字の覚え方 王』をご覧ください。
漢字は系列毎にイメージで覚えると良いのです。漢字もそうした性質を持っています。
『往(オウ)』は小学校5年生で習う漢字です。
http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-1879.html
参考図書http://bit.ly/1Xs359Oです。漢字についてより詳しく知りたい方は、←左記ブログページの本をお読みください。
少し練習しましょう。
1.しゅかく ( )転倒。 しゅきゃく とも読みます。
2.インフルエンザの予防 ちゅうしゃ ( )。
3.でんちゅう ( )に貼紙の禁止。
4.えんちゅう ( )体積は、半径×半径×円周率×高さ。
5.竪穴式 じゅうきょ ( )。
6.論文に ちゅうしゃく ( )をつける。
7.北国では落雪 ちゅうい ( )の看板がある。
8.自動車を ちゅうしゃ ( )場に入れる。
9.ちゅうざい( )所の警察官。
10. しゅかん( )的な考え。
主客、注射、電柱、円柱、住居、注釈、註釈、注意、駐車、駐在、主観
『シュ』・『チュウ』と聞いたら『主』、『注』、『柱』、『駐』、『住』が頭の中に浮かんできて、車がじっとするなら馬で駐車と書き、液体を射つなら水関係なので注射と書けるようになればしめたものです。漢字は沢山あるのですが、全部覚える必要は無く、主なパーツを音で覚えて、足し算(木扁、さんずい、馬等)で組み合わせていけば宜しいのです。
今日はこの辺で終わりにします。
« 漢字の覚え方 昜 | トップページ | 漢字の覚え方 工 »
「サ行(シュ)」カテゴリの記事
コメント
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/587183/56327712
この記事へのトラックバック一覧です: 漢字の覚え方 主:
王の上の点は何の省略形?
投稿: ざりがにさんかえるさん | 2013年1月24日 (木) 21時47分
ざりがにさんかえるさん
古い字形では止(シ)になっています。止(シ)は止まるの意味もありますが、本々足の象形で歩くの意味もあります。漢字の成り立ち 小 の最後の部分をご覧下さい。
ですから、王様が行く、歩くの意味になります。点がありませんが、旺盛の旺も仲間の漢字と考えられています。ご指摘に応じ記事の内容を変更致します。
投稿: 風船 | 2013年1月25日 (金) 12時21分